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Main Content古田さん、それって使いやすいですか?

 

第17回 :
「取説不要」が本当に良い製品?

掲載日:2006年11月15日

 皆さんは何か新しい製品を買った時、付属のマニュアル(取扱説明書)はご覧になりますか?昨今、このマニュアルを取り巻く状況が色々と様変わりしてきています。今回はその辺りにスポットを当ててみたいと思います。

■マニュアルの現状

 かれこれ1年程前のことになりますが、テクニカルコミュニケーションシンポジウムというマニュアルを制作している業界のイベントに参加させていただいたことがあります。そこでご専門の方に色々話を伺ったのですが、今この業界はちょっと元気がない状態が続いてるんだそうです。
 ユーザーからは「どうせ読んでもわからない」と責められる。かといって丁寧に書くと「分厚くて読む気が起きない」なんて言われてしまう。結局操作に必要な最短ステップを並べるだけで、背景理解を促すような解説はほとんどなされておらず、ちょっと特殊な場面になると全く応用が利かないということになります。
 開発行程でも「オマケ」扱いされており、あまりコストや時間をかけることを許されず、いかに前モデルの版を流用しつついかに最小限の改編で作るかが勝負どころ。新しい試みなんて試せもしない、という悲しい現況にあるようです。
 そもそも、コスト削減のしわ寄せで紙媒体での添付を取り止め、付属ソフトウェアと一緒にCD-ROMにPDF形式で収録、といったスタイルを採る製品も増えてきましたしね。

■製品とマニュアルの理想的な在り方

 個人的にはこういった状況はとてももったいないことだと思います。本来マニュアルにはもっと果たせる役割があると思うんです。
 以前にも触れましたが、製品を初めて使う人と使い慣れた人では必要とする情報が異なります。当然望ましい製品デザインの姿も違ってきます。ところが、世界は猫も杓子も「マニュアル読まなくても使える製品が良い製品」とする風潮が優勢です。つまり、“初めての人に必要な情報を全て盛り込んだ製品”を目指さざるをえなくなり、同時に“使い慣れた人には余分な情報が多くて煩わしい製品”になってしまう可能性も高いということです。
 本来は、そういった一度覚えてしまったら不要な情報はマニュアルの側に配置すれば良いのではないでしょうか?紙媒体には一覧性など面で優位性があり、多量の情報を伝達するのには優れています。我々消費者が「マニュアル読まなくても使える製品が良い製品」という先入観を少しだけ引っ込めれば、メーカー側も製品とマニュアルをトータルにみてバランスの取れた、“最初に習得しやすく、且つ慣れた後も使いやすい製品”というのを実現してくれるんじゃないかと思います。自動車や産業機械など、操作時の効率が優先される製品では、最初の導入は大変なことが多いです。時として教習所に通う必要すらあります。でもそれを対価にスムーズな運用が可能になっているのです。今お使いのキーボードも、最初「”」を出すにはSHIFTキーを押しながら「2」キーを押すんだってことを読んだり習ったりしなければわからなかったと思います。でも、そんな初期学習が必要でないように、「”」など記号専用ボタンを必要数設ける方針でデザインされていたらどうなっていたでしょう?
 マニュアル不要の製品は、究極の理想として追求すれば、いつかは実現するかも知れません。ただ一方で、今日明日の妥協案として、「すみませんけど最初にこれだけは読んで理解、習得しておいてください。そしたら今よりずっと使えるようになるはずです。」と謳った製品があっても良いのではないでしょうか?

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