目指すのは、顧客目線のオンデマンドビジネスです
ドキュメントパートナーディベロップメント室長
小川 広高 氏
1950年(昭和25年)、株式会社太陽社は青写真焼付を主業務とする企業としてスタート。その後プリント部で軽印刷を開始し、トレース、印刷、製本と業務を拡大。2000年にはPOD(Print On Demand)ビジネスにも進出、現在に至る。得意先は県や市など各諸官庁から大手民間企業まで幅広く、マニュアルなどの冊子からDMや名刺までさまざまな印刷物を手がけて、電線配置地図入力/製作では九州地区において有力な企業として知られている。
東京でのPODビジネス経験を持ち、2009年から太陽社に勤務しているドキュメントパートナーディベロップメント室 小川室長は、生まれ育った熊本でのPODビジネス成功を思い描いている。
「いざ熊本に戻り太陽社に入社してみると、そのギャップの大きさに戸惑いました。PODビジネスとは名ばかりで、オフセットの補完として小ロット印刷のために存在するだけで、ビジネスとして成立しているとはいえません。これを変えるのはかなり大変だぞと、自分に言い聞かせたのを覚えています」
小川室長は、まず太陽社の現状分析を行った。
1.営業の提案力不足
2.PODのメリットをビジネスに活かせていない
3.効率の悪いワークフロー
分析から浮かび上がってきた課題に、小川室長は社員の意識改革からはじめなければと思った。
「東京と同じとは言わないまでも、熊本でもPODはビジネスとして成立するはず。もちろん最新のPOD機導入は視野にありましたが、その前 に仕事を顧客目線で捉えるという姿勢を社内に植え付けようと考えました。しかし教えたいことは山ほどもあるものの、教えるノウハウがありません。そんな時にリコーさんから『提案力アップ』『営業体質改善』を主眼としたコンサルティングの提案があったのです」
2010年6月に社内メンバーによる『POD研究会』を発足し、月1回の勉強会を実施。勉強会の中では、得意先、得意先の顧客、設備、人材、立地、技術・ノウハウ、コネクションといった太陽社の資産を、徹底的に棚卸しし、まずは、自社の強みや課題を認識することから始めたという。リコーのコンサルサポートを交えながら、顧客ごとの実践シナリオを作り上げ、その結果、徐々にではあるが社員の意識に変化が見えてきた。
勉強会をはじめる前は価格や納期に関する相談ばかりであったが、終了の頃には得意先提案の内容についての相談も増えてきたという。「私はマネジメントやマーケティングを難しく捉えてほしくありません。得意先のお客様を理解しようというシンプルな考えを皆に持ってほしいだけです。勉強会を重ねてきたおかげで、ある社員は自分では気づかずに自然と現状把握・分析、計画、実践、評価、改善のサイクルで仕事を進めていたりします」
小川室長は勉強会の終了に合わせ、PODのためのプロジェクトチームを立ち上げた。各案件を上記のサイクルで回し、品質の維持・向上および継続的な業務改善を推進していくのが狙いだ。その効果はすぐに表れた。得意先(造園資材業)は例年DMプロモーションを行っていたが、競合のホームセンターに押され気味という。そこで太陽社は富裕層にターゲットを絞り、ガーデニング入門のオリジナルセット商品を案内するDMプランを提案。PODを活用したエリアマーケティングは見事に当たり、これまで3%ほどのリターン率は4.5%へ上昇。しかも新規顧客からのリターンは3.5%に上ったという。「得意先は、非常によろこんでいます。これまでとは異なる提案に不安もあったようですが、今では次の提案もぜひ!と依頼を受けました」と、小川室長は笑顔で話してくれた。
勉強会開催時点では新たなPOD機導入は確定していなかった。既存のPOD機メーカーを含め最新機種が比較検討され、2011年2月最終的にRICOH Proが選ばれた。
「最新機種は速くて色がいいのは当たり前だと思っています。導入のポイントは、ワークフローに合っているかどうかです。太陽社ではモノクロカラー混在の冊子などの案件が多く、従来モノクロはオフセットで、カラーはPODで印刷し、合本製本。このワークフローに大きな無駄を感じていました。しかしRICOH Proであればモノクロとカラーで同じ紙が使えるため、モノクロカラー混在印刷を一気通貫で行うことができ、ワークフローはスムーズで時間も短縮。このマッチングが導入決定に大きく影響しました」RICOH Pro導入後、得意先への積極的なPOD提案によって案件は着実に増えている。印刷クオリティに対しても高評価で、すでに選挙DMや病院の広報誌などに採用されているという。
「RICOH Proが入ったことで、PODの仕事は、前年対比でモノクロが400%以上、カラーも180%くらいになっているでしょう」
印刷をオフセットからPODへ切り替えることで、高い利益率に加えワークフロー整備による人件費抑制を可能にし、利益をアップさせた。もちろん得意先への価格貢献も、非常によろこばれている。
太陽社の将来を見据える小川室長は、新しいビジネスモデルを模索している。「東京と違って何万という印刷物でコミュニケーションするケースは稀です。地方都市だからこそ、たとえば数百であってもその内容が異なるOne to Oneのコミュニケーションが活きるのではないでしょうか。それを可能にするのがPODです。熊本には得意先予備軍となる多くの中小企業が存在し、私がPODにこだわる理由はここにあるのです。熊本の中小企業が抱える課題をPODで解決していくことが、私の使命だと思っています。顧客目線のオンデマンドビジネス。太陽社の新たな目標です」
他社POD機との比較でもベタの品質と紙を選ばないという点で好印象を持ちました。
印刷部 安本 昌弘氏
機種選定の際にも関わった安本氏は、各社のPOD機の中でベタの品質と紙を選ばないというポイントでRICOH Proが秀でていたという印象を持ったとのこと。
「実際に使ってみると、コートの68㎏や上質の55㎏といった薄紙が通ることが大きいですね。以前はモノクロページを55㎏でオフセット印刷し、カラーページを70㎏でPOD出力していましたが、RICOH Pro導入後は同じ紙で出せますから非常に効率はよくなりました。モノクロカラー混在の案件が多いものですから非常に重宝しています。以前のPOD機は導入後10年ほど経っていますから同レベルでは比較できないかもしれませんが、合わずに困っていた表裏の見当もピタリです。スピードにいたっては、圧倒的な差を感じます。感覚的に1.5倍以上でしょう」「オプションで中とじのフィニッシャーを導入しましたが、本格的な活用はこれからです。中とじ製本までの仕事ならRICOH Proで一気にできます。ワークフローもいたってシンプル。営業的にも期待できると思っています」
午前依頼され当日納品といった超短納期にも、さらに対応しやすくなりました。
情報処理課 宮崎 章氏
主に電力関連企業の電線配置地図を制作している宮崎氏は、得意先からのマニュアルや会議資料制作の際、RICOH Proを活用している。
「得意先から手書きの原稿が送られてきて、それをデータ入力し会議などの資料として仕上げています。問題は納期です。午前に受けて当日納品といったスケジュールが多く、従来のオフィスプリンタでは四苦八苦していました。RICOH Proが導入されて、そのスピードでかなり助かっています。しかもクオリティも高くなっていますから、得意先の評価は上々。数100ページのマニュアル制作も、今ではRICOH Proに任せている状態です」
「Web制作も任されるようになりましたから、今後はホームページから印刷物の受注といった案件が増えていきそうです」
株式会社 太陽社