「お客様の役に立つ業態変革を」
代表取締役社長
佐川 正純 氏
成長のために変化しつづける組織にとって、RICOH Pro導入は不可欠だった。
愛媛県松山市を拠点とする佐川印刷の社章は、お客様との信頼を第一とする分銅マーク。江戸時代、両替商をしていた佐川家。お金を表す図案として両替商の看板などに使われていた分銅が、現在の佐川印刷の社章となって受け継がれている。佐川家は明治維新を迎え、新たに金物商を創業し、激しく変化する時代を生き抜いていく。祖先の遺訓である「代々初代」は佐川家の家訓となり、常に自己改革するという企業精神へ。印刷業創業は1947年。活版印刷からスタートした佐川印刷はその後も、オフセット、写真製版、DTP、POD(Print On Demand)を先駆けて導入。トップ自らの手で革新をという「代々初代」の精神の元、現在も印刷業を核に積極的な業態変革を進めている。
代表取締役 佐川正純社長は、「お客様のパートナーとして認められよう」と、営業や制作部門を問わずすべての社員に声かけしているという。
「パートナーとして認められるということは、お客様から相談されるということです。しかし、印刷の仕様設計と見積りだけをやってきた社員が、提案営業のセミナーを受けたとしても、おそらく変わることはできません。
印刷業界では指図されたことを正確に行うことが労働として認められてきましたから」必要なのは、自分から動き、自分たちのこととして動くこと。これまでは仕事に対して受け身すぎたと語る佐川社長。
「お客様がいて、何かを考え、自ら行動できる。経営感覚を備えた人材をどうやって育成するのかが、大きな課題でした。知識や情報の習得は会社が強制的にやらせても成功しません。自分から吸収しようという意識を芽生えさせる環境を会社が用意できれば、社員は自分自身をアップグレードさせるために頑張りやすいのではと考えました」
指示された仕事をこなすワーカーではなく、自ら考え動くプレーヤーを育てるために、段階に応じてサポート。佐川社長は、知識・能力をステップごとに身につける独自の人材育成支援を「可能性の土づくり」だと語る。
「まずは、一般常識を得るために新聞を読むこと。次にマーケティング業界における専門知識の習得。一般紙は社員が自ら、専門誌は会社が負担して定期購読させ、勉強会などで発表の場を持ちました。次のステップでは、マネジメントにも役立ち経営感覚を養うために有効な「ITパスポート」資格などの取得を目指してもらいます」
「4つめのステップでは、ここまで得た知識や情報を活用しながら、お客様の強みを言葉にします。最後は、お客様にとって創造的な企画やアイデアを生み出すトレーニング。佐川印刷で『脳立大学』と呼んでいる週一回の勉強会です。営業だけではなく、制作やデジタルメディアのスタッフも一緒に毎回異なるテーマと向き合い、アイデアを出し評価し合う実践形式。ここまでくると、実際の企画提案が見えてきます」
一般常識と業界の専門知識で土台を作り、それを活用するスキルを習得していく。今では社員自らが楽しんでチャレンジしているという。
佐川社長の人材育成は成果となって現れている。2011年12月にRICOH Proが導入されたことでPODと季節商材というテーマから生まれた年賀名刺。発案者は、企画営業チームの重松正嗣サブマネージャだ。
「アイデアはいたってシンプル。年始の挨拶回りで使用する名刺を、お年玉付き年賀状に似せてつくろうというものです。名刺では見たことのないデザイン、しかもナンバリングによる当たりくじ付き。裏にはQRコードが印刷されていて、いつでもWebでの当たりをチェックできます。これなら、抽選日まで大切にされるだろうという期待もありました」企画は大成功。初めての提案に対し、約50社もの企業や団体から受注。お客様の満足度も高いという。「プレーヤーは、育ってきました。彼らの提案を形にするPOD環境整備のために、私はRICOH Proを選びました。モノクロ機で実感したリコーのお客様指向の考え方が、佐川印刷が目指す方向と同じだったからです」
オフセットからPODに変えることで、お客様からさらに高い信頼を得ることができた案件もあると、企画営業チームの浦部千恵主任は語る。「ある製造業の取扱説明書をオフセットで毎回3000部を印刷していたのですが、使用するのは年に1000部ほど。しかも年に数回の変更もあり、その度に刷り直しでした。そこでRICOH Proを利用し、PODで500部印刷を提案したところ、低コスト、短納期、無駄な廃棄の激減が、お客様に非常によろこばれています。佐川印刷としてもPDF入稿の採用による作業効率と在庫管理の面で、大きなメリットが生まれました」
佐川印刷では、Webを利用したビジネスも積極的に展開している。ホームページ制作はもちろん、さまざまなサービスをWebで訴求。愛媛県から全国へ。セールスプロモーションに有効なツール制作から、地元宇和島の柑橘を中心とした産直品のインターネット販売まで。これらのサービスを支えているのも多品種少量印刷に適したPODであり、佐川印刷のWeb展開には、切っても切れない存在である。
佐川社長は、各部門にそれぞれのアイデアによるWeb展開を求めている。いち早く対応した営業チームは、「佐川脳立大学」サイトを公開。Webでお題を求め、それに応えるアイデアを無料で提供するという大胆な試みだ。業態変革の推進とともに、会社の雰囲気が変わりはじめているという。「人材も成長しPOD環境も整ってきました。これからが面白くなりそうです。佐川印刷は愛媛県でチャレンジしつづけている自負があります。リコーにも同様の姿勢を感じています。佐川印刷にとってリコーは、同じスタンスで一緒にチャレンジしていけるグッド・パートナーです」佐川社長は、まだまだこれからと笑顔で語ってくれた。
オフセットとPODの両方を管理している川上工場長。両方のよさを活かし、バランスを見ながら運用している。「以前のカラーPOD機はオイルを使う仕様だったため、印刷面にテカリがありどうしてもオフセットとの差異が気になっていました。バランスよくPODを活用していくには、オフセットと比べ、遜色ない品質が必要です。また佐川社長から、できる限りの自動化を求められている時期でもありました。両方の機械的な課題をRICOH Proが解決してくれると考えたのは、さまざまな機種を比較してきた工場長としての判断です。自信を持って社長へ要望を出しました。導入後は予想通りの効果が上がっています」製造チームの伊地知氏も「オイルレスのカラー品質は非常に満足です。数時間の自動運転が任せられる出力トレイのおかげで、昼休みをまたぐ作業もRICOH Proにお任せで、ゆっくりとランチできるのが助かります」と、高く評価している。
RICOH Proの実力を把握していた川上工場長は、社内の金額設定を下げて稼働率を上げましょうという提案をする。それまで200枚というオフセットとの分岐点を、500枚に変更するという。「この変更によって500枚までの印刷物をPODで受注できるようになり、作業効率はもちろんですが、トータルコストを下げることができ、大きなメリットを生んでいます。稼働率も2倍ほどになっていますね。実は自信がありました。この数年、オフセットよりもPODに適していると思う案件が増えつづけているのを、実感していました。それにリコーの保守サービスの素晴らしさは、先に導入したモノクロ機で理解していて、間違いないと感じていましたから」
佐川印刷株式会社