「印刷媒体には賞味期限がある」
さかのぼって在庫状態を調査し、追加分にRICOH Proを活用するなど、印刷媒体の在庫を削減。
オンデマンド事業部 部長 高部 謙司氏
創業は1968年(昭和43年)。企業名のアテナは、宛名書きをビジネスとする企業として考えられた。以来、DM(ダイレクトメール)の企画制作から発送代行まで行うメーリング業務、在庫管理と梱包加工を独自のシステムで運用するロジスティック業務、通信販売やキャンペーンなどの事務代行を一貫してサポートするフルフィルメント業務、データベース構築や各種業務システムの開発運用を担うシステム業務、オンデマンド印刷を核に戦略的な企画提案を行うオンデマンド業務によって、ダイレクトマーケティングのトータルアウトソーサーともいえる広範なビジネスを展開。すべての業務には個人情報保護、情報セキュリティというポリシーが貫かれ、セキュリティを重視する企業として注目されている。
「オンデマンド事業部にとって、POD(Print On Demand)のPはパブリッシングの感覚です。パブリッシングは情報伝達の方法です。紙はもちろん、クロスメディアの重要性が叫ばれている中、スマートフォンやタブレットなどのツール活用も視野に入れています。デジタルメディアは増えていくでしょうが、紙はなくなることはありません。実際に情報をCD-ROMから紙へ印刷し、使用するシーンもありますから」
オンデマンド事業部、高部謙司部長は、ミッションはパブリッシングのためのメディア制作だと語った。
PODへの取組みのきっかけは、8年前にさかのぼる。当時研修で訪れた、ドイツのdrupa(国際印刷・メディア産業展)で見つけた制作物に衝撃を受けたという。ドイツ自動車メーカーから依頼され、オーナーひとりひとりにオリジナルのマニュアルを用意しているという事例だった。そのドイツ車はオーナーの希望によって、外装、内装、オプションなど、一台ごとに異なる。マニュアルもその仕様に合わせオンデマンドで制作し、オーナーから高い評価を得ているとのことだった。
研修に参加したメンバーはPODへの関心も高く、帰国後自分たちのビジネスへの展開を模索する。1年後、アテナにとってはじめての本格的なPOD提案が実現。通販会社のDM40万通すべてに、お客様の嗜好に合った商品を紹介するレコメンド情報を組込み、異なる内容で制作し発送。アテナにとっても、業界にとっても画期的なDMだったという。
従来、複数メーカー複数機種体制で印刷を行っていたオンデマンド事業部。
「複数台あるのですが、スペックは異なり印刷品質にも差があります。スピードもそれぞれで効率的ではなかったですね。急ぎの案件でも、色のギャップがでたりする不具合があるため、複数台動かしたくてもできないという状況でした」
「新機種導入には悩みましたが、次は同じメーカー同じ機種にしようと決めていました。リコーはこの分野で後発ということもあるのでしょうが、POD機の改善ポイントをよく把握し、新しいPOD機で解消していました。速い、キレイ、静か、コンパクト。RICOH Proはアテナのメーリングという業務に非常に適したマシン、という決断に達したのです」
高部部長の言葉から、リコーへの期待の高さが伺えた。
「倉庫は意外と管理できていない場所です。冊子などの印刷媒体には賞味期限がありますから、期限切れのものは不要在庫とみなして廃棄しなくてはなりません。アテナでは得意先に適正在庫という提案を行っています。1年から2年のログをとり倉庫の状態をチェックし、本当に必要な在庫量を把握。初期ロットはオフセットで印刷し、追加分はPODで制作する。滞留在庫が減るわけですから、倉庫トータルの在庫量は減ります。もちろんPODで制作すると一冊のコストはアップしますが、エコの面からもCO2削減につながり、トータルコストを削減できるわけです」
と、オンデマンド事業部の熊谷亮次アカウントマネージャーは語る。某企業のマニュアルでの適正在庫提案では、年間約2000万円の削減効果を実現したという。
創業以来のセキュリティ重視主義は、アテナの特長のひとつ。個人情報保護など、得意先のセキュリティニーズが年々大きくなる中、とくに保険・金融・教育の分野で高く評価されている。
「メーリングビジネスによって個人や企業情報の扱いには長けており、アテナはセキュリティに大きな自信を持っています。RICOH Pro導入後はメーリングだけではなく、DM本体の制作の受注も増えてきています。 DMの8割はバリアブルで、バリアブルには個人情報などが付随しています。情報処理もDM制作も発送も、この館内だけですべて行うことができ、情報が漏れることはありません。この信頼感が、得意先からの受注増加につながっているのは間違いないでしょう」。
「RICOH Proの解像度には満足しています。画像はもちろんですが、小さな文字が太らずくっきりなのがいいですね。ある得意先へ印刷物を持っていったのですが、完全にオフセット印刷だと思い込んでいたほどです」
熊谷アカウントマネージャーは、RICOH Pro導入が印刷品質を向上させ、提案の幅を広げたという。薄手の紙を使用したフリーペーパー冊子、塾ごとに制作できる成績帳票をはじめ、カラーバリアブルのDMも好評とのこと。
「きれいに仕上がるため、得意先の満足度が違います。オフセットオンリーだった得意先にも、積極的にアピールしていこうと思っています」
POD、倉庫、物流を併せもっていることが、他社の追従を許さないアテナのアドバンテージになっている。得意先からの依頼は増加傾向で、オンデマンド事業は右肩上がりを続けているという。
「得意先の情報を処理し、DMや冊子などをオンデマンド印刷し、倉庫在庫を管理し、配送する。高いセキュリティのもと、入り口から出口まですべてを任せていただける。それがアテナのフルアウトソーシングです」
「将来的にはRICOH Proを介した、パートナー企業とのネットワークを構築したいですね。データを送り、現地のRICOH Proで印刷することで、時間短縮、物流コスト削減。ワールドワイドにも展開できる夢のある事業です」高部部長の頭の中には、すでにイメージができあがっているようだ。
ひとつのジョブを複数台でこなす
従来の複数メーカー複数台体制では、ひとつのジョブを一緒に実行できるのは2台ほどであり、瞬発力に欠けていたという。
「RICOH Pro体制になり、ひとつのジョブを複数台でこなせるようになりましたから、生産性はかなりアップしています。ダウンタイムはメンテナンスの時くらい。非常に安定しています」
アウトラインデータでも文字が太らない
1,200dpi×4,800dpiという高画質が、画像をよりリアルに再現。小さな文字もくっきりで表現力も向上したという。
「オフセット印刷と比べ、小さな文字はアウトライン化していることもあり、オンデマンド印刷では太ってしまいがちでした。解像度のおかげでしょうか、RICOH Proの文字の美しさは秀逸です。小さな文字もシャープに再現され、オフセット印刷に匹敵するほど。得意先に満足いただいているのは、言うまでもありません」
デカーラユニットが、印刷用紙のカールを矯正
「紙のカール、とくにエッジカールには悩まされていました。カールしたままだと断裁機にかけられません。カールをとるために印刷後、一晩寝かすこともありましたが、それでもカールは完全に取れるわけではありませんでした。ところがRICOH Proで印刷すると、まったくカールしないで、そのまま断裁機へ。助かっています」
デスクワークを邪魔しない静粛性
セキュリティの面からオンデマンド事業部はひとつの部屋になっている。当然オンデマンドプリンターも同じ部屋に設置。稼働音は通常のオフィスワークにも影響を与える。
「間違いなく以前より静かです。同じ部屋で印刷も行うため、稼働中は音が気になって仕方ありませんでしたが、RICOH Proは静かですね。ほとんど意識しなくなっています」
株式会社アテナ
本ページに掲載されている情報は、2012年12月現在のものです。