「もっと早く導入すべきだった」
RICOH Proによる小ロットカラー印刷とともに、総合印刷業へ飛躍
代表取締役社長
西 智樹 氏
帳票印刷の企業として、札幌で60年以上の実績
創業は1948年。帳票印刷事業を開始し、1962年会社設立。札幌を中心に、帳票・フォーム印刷によって北海道の組合や企業の活動をサポート。1987年には、社名を株式会社パスカル・プリンティングへ変更。以来、組織に不可欠な帳票類の印刷を60年以上にわたり担い、カラー商業印刷やWeb制作の領域にも進出。北海道の地域に根付いた印刷会社として大きな信頼を得ている。
「帳票印刷で創業したこともあり、当時はビジネスフォームと手書き伝票の印刷が90%以上を占めていたと聞いています。私が入社した30数年前でもその比率は80%でした。しかし時代とともに、ビジネスフォーム印刷は徐々に減りつづけ、社長に就任した2006年には70%程度に。代わってカラーの商業印刷の需要が伸び30%に達するようになっていました」西智樹代表取締役社長は、ビジネスフオーム印刷に頼る経営からの脱却を考えていたと語る。
「商業印刷が増えてくれるのはありがたいことですが、社内に制作チームも設備もないためすべて外注でした。売上が年々上昇していく中、カラー商業印刷のためのオフセット印刷機導入を本気で考えていたところ、社員がPOD(Print On Demand)という選択肢をアドバイスしてくれたのです」
商業印刷の内製化をPODで実現するアイデアは、制作チームと設備を含む業務拡張によってカタチになる。
「PODに対する私のイメージはカラー品質が落ちるというものでしたが、いい意味で裏切られました。今はここまできているのかと、技術の進歩に驚かされました。POD案件受注は魅力的に思えましたが、これまでビジネスフォームの仕事がほとんどでしたから、営業チームもカラー印刷に対して自信がなかったはずです。商業印刷受注は、外注先へ丸投げ状態でした。ですから、彼らにPODの仕事をとってくるようにとは言いませんでした。PODは社員達のリクエストでもあります。彼らを信じ、しばらく任せてみることにしました。」西社長は、PODを営業の武器として使っていければいいと考えていた。
制作チームとPOD設備によりカラー商業印刷の内製化がはじまるが、同時に課題も見えてきたという。
「名刺や販促ツールを中心にスタートしました。制作チームはPODの経験が豊富で信頼できるのですが、既存設備は経年変化のせいもありカラー品質が不安定でした。しかも印刷できる紙が限定されていて、オフセットに近い印刷を求めるのは難しいと、設備の限界に気づきはじめていました」
生産管理部の本間哲人部長は、社長とともに新機種導入の検討に入る。各社のPOD機を展示会などで確認し、用紙対応力とメンテナンスに対する信頼性の高さで、RICOH Proが選ばれた。
「種類はもちろん、厚紙、薄紙に対する対応力がベストでした。既存設備との入れ替えですから、用紙対応力にはこだわりました」
RICOH Pro導入後これまで使えなかった紙に印刷できることで、商業印刷の内製化は一気に加速していったという。
「営業は、積極的に提案できるようになり、いろいろな紙のニーズがある名刺印刷では、得意先のリクエストに応えることができるようになり、よろこばれています。用紙対応力は3倍以上になったといっていいでしょう」
帳票・フォーム印刷が主業務となるパスカル・プリンティングでは、PODによる薄紙への対応を模索している。活版印刷機の減少などにより、ナンバリング印刷へのニーズは高くなる一方。本間部長は、RICOH Proの潜在能力に期待しているという。
パスカル・プリンティングの営業部員は5名体制。PODだけの営業活動は行っていないという。
「RICOH Pro導入後、得意先へ案内に回りました。PODだからできること。小ロット、いつでも変更が可能、オフセット印刷並みのカラー品質などです。半年くらい経った頃から、徐々に案件が動き出しました。帳票での得意先でもある輸送業の会社案内では、これまでオフセット印刷で3,000部ほどを印刷していましたが、在庫がなくなるまで使わねばならない、人事などの変更に対応できないといった悩みがあったそうです。PODでの会社案内(カラー中綴じ8ページ)を100部で提案したところ、カラー品質とトータルコスト、変更にすぐに対応できるという面でも高く評価いただき、新規受注に成功しました」
営業部を束ねる橋場秀幸部長は、たとえ小ロットでも社内で制作できるため、デザインや撮影といった前工程での利益が見込めることが、強みになっていくとつづけてくれた。
その他にも、オフセット印刷からの変更で予算内での裏面写真印刷が可能になった大学のオープンキャンパスカード、6種類のバリアブル印刷を行った専門学校の相談会案内など、小ロットながらさまざまなPOD案件を受注している。
社内制作チームにより、名刺、ハガキ、冊子、ポスターなどの商業印刷に関わる制作の内製化が可能に。これまで外注に支払っていたデザイン、コピー、撮影、イラストといった制作費用が、社内の売上となり利益を生み出す構造に変化したという。
「今でもオフセット印刷が必要な場合はすべて外注です。しかし制作を受注することで、制作費で利益を得ることができるようになりました。すべて外注先に丸投げしていた以前のスタイルと比較すると、PODでの利益はもちろんですが、制作での利益も加わり、商業印刷での利益は、案件によっては5倍以上になっています。こんなことだったらRicoh Proをもっと早く導入すべきでした」と西社長は、語った。
パスカル・プリンティングは、環境への配慮にも力を注いでいる。環境方針を設定し、本社工場は「グリーンプリンティング認定工場」として2010年に認定される。2013年の更新時にはデジタル印刷工程も認定を受けている。北海道で初の快挙だ。
「GPマーク認定は、企業としての認知度向上、社長のリクエスト、何より得意先からの要望に応えたいという想いで取り組んでいます。認定を受けるにあたり、環境に配慮した証明書類などリコーからの惜しみない協力に、あらためて絆の強さを感じました」本間部長は、当時の苦労を語ってくれた。
「パスカル・プリンティングは、PODを導入することで総合印刷業として活動できるようになりました。札幌という市場サイズを考えれば、大量印刷が必要なケースは稀です。PODが商業印刷ニーズに応えてくれるはず。得意の帳票・フォーム印刷をきっかけに、商業印刷受注へ攻勢をかけていきます」西社長の言葉には、自信がみなぎっていた。
RICOH Pro導入で、デザインの自由度が向上
アートディレクションを担当している生産管理部企画課の櫛桁(くしげた)強課長は、RICOH Pro導入以前の設備に対し課題を感じていたという。「甘い表裏見当、カールしてしまう用紙、1分間に3枚という厚紙印刷の遅さには、毎日使っているので慣れてはいましたが、正直何とかならないかなと思っていました。画像のテカリも気になっていましたし、オイルがのっているためメニューなどラミネートの要望も断っていました」
「設備がRICOH Proになって、仕事は大助かりです。印刷精度、カラー品質、速度ともに満足しています。ラミネートも可能で、デザインの自由度が増したのはいうまでもありません」
A3ポスターのグラデーションを美しく再現するために、さまざまな方法にチャレンジ
制作チームの試行錯誤が、美しい再現に結びついている。
「データを預かったA3ポスターの事例ですが、緑のグラデーションをいかに美しく再現するか。非常に苦労しました。平網ではムラがでるため、すべての網を試し、いちばんいい状態を発見。これまでの経験から、テクスチャーを入れるときれいに再現されるなど、RICOH Proの特性に合わせた解決方法に気づくことができました」
得意先の要求に応える黒ベタ白抜きのポイントカード
「得意先の要求は、黒ベタ白抜きのデザイン。PODの苦手とするデザインですが、トライしてみると予想以上に美しく仕上げることができました。設定や工夫次第で、ほぼ思った通りのカラー再現が可能です。攻めたデザインをRICOH Proで実現する。これが、制作チームのテーマです」
株式会社パスカル・プリンティング
本ページに掲載されている情報は、2013年12月現在のものです。