
親会社の業務を強力にバックアップ
販促物、マニュアルを高付加価値化
取締役
奥村 康成 氏
オージーライブデザイン株式会社は、介護浴槽やリハビリ機器の総合メーカーであるオージー技研株式会社の新規事業会社として1979年に創業した。創設当初は個人向けリハビリ機器の販売を主要事業としていたが、7、8年前から損害・生命保険の代理店業務に転換。4年前には「グループ会社として活性化して欲しい」というオージー技研の奥田社長の意向を受け、経営企画に携わっていた奥村康成取締役が異動し、新事業の立ち上げに着手した。
現在、同社では、シニア向けフリーマガジン「シニアNavi岡山」「つなぐ通信」の発行から、オージー技研の総合カタログ、製品カタログ、マニュアル、パンフレットの企画、デザイン制作や、Webサイト・基幹システムの構築、運用、保守まで、多岐にわたる事業を展開している。いずれも4年前からはじめた新規事業である。同社の奥村取締役は、「オージー技研のメディア関連の業務を担う機能会社のような位置付けでもありますが、何業と一括りにせず、様々な業務を手掛けて、オージー技研との相乗効果による売上拡大を目指しています」と語る。
当初は、名刺のみ自社で印刷していた。それ以外の印刷物はデザイン、データ制作を手掛け、印刷を外部委託していた。内製化していた名刺に関しても、複合機と卓上のレーザープリンターのみで出力しており、品質的にも十分な印刷物を提供できる体制になかった。
RICOH Pro C651 EXを導入したのは2013年3月。狙いは高品質で生産性が高く、オペレーションに柔軟性のある生産機を持つことで、既存の経営資源の有効活用と自社の強みを創出することだった。
POD(Print On Demand)機の導入はオージー技研でもかつて検討していた。当時はまだ技術的に未成熟で、品質の要求レベルに達していないと判断。また、初期投資コスト、ランニングコストとも損益分岐点を考えた上でも見合わなかったため、導入計画は白紙に戻った経緯がある。
しかし、奥村取締役は現行のPOD機が以前よりも数段、レベルアップしており、品質、生産性、コストの面から十分に利益を創出できると評価。また、名刺に限らず、オージー技研が使っている小ロット印刷物の多くをカバーでき、新規事業の立ち上げにつながると見込んだ。機器選定にあたっては、全国営業所へヒアリングを実施して、「メンテナンスサービスが優れている」という声が圧倒的に多かったRICOH Proを導入することにした。
同社では、企画からデザイン制作まで、クリエイティブを手掛ける人材という経営資源がすでに揃っていた。このため、RICOH Pro導入により、自社で出力業務まで全て内製化できれば、より大きな経営効果が期待できると考えた。
現在、奥村取締役を含め10名いる社員全員がRICOH Proのオペレーションができるようにしている。同社の業務内容は印刷製造だけではなく、オージー技研内の基幹システムの運用・保守や介護施設のオペレーション、プロモーション全般の企画など多岐にわたる。必然的に一人で何役もこなす必要がある。オージー技研グループ内でのPODの認知度が高まったことで、受注量が予想を超えているが、少数精鋭の陣営で対応しており、原則として10部以上、納期1週間で受注しているが、即日発送にも対応している。
RICOH Proを導入する以前からオージー技研のカタログは少なくても数千部のロットで発注されていた。多いものでは万単位が在庫として保管され、しかも、多品種にわたるため、一部屋がまるまるカタログの倉庫と化していた。しかし、その割には使用頻度が低く、製品の仕様や営業所の住所が変更されるたびに作り直しが発生し、カタログ在庫の無駄と廃棄にかかるコストが問題となっていた。
奥村取締役は、オンデマンドでカタログが制作できれば、無駄が大幅に削減できると親会社に提案。リコーから取り寄せた出力見本が親会社の厳しい品質評価基準をクリアし、RICOH Proを導入してカタログの印刷をスタートした。これにより必要な時に必要な部数を印刷することで、在庫や廃棄コストが圧縮できた。
「単純に印刷出力のランニングコストの単価で比較すると、その効果を感じることは難しいかもしれませんが、在庫コスト、廃棄コストなどのトータルコストを含めると十分にその効果が期待できました」(奥村取締役)。今では大量印刷が必要な総合カタログ以外は全てオージーライブデザインで内製化されている。
RICOH Proの導入の効果は、オージー技研の製品の取扱説明書にも表れた。POD機導入以前、取扱説明書は工場内に設置した複合機でモノクロコピーしていた。オージー技研が扱う介護浴槽やリハビリ機器の中には数千万円の製品がある。「それに相応しい品質の取扱説明書を」というのは製造現場を含めて全社的な課題だった。奥村取締役はモノクロでも2色でも、カウンターチャージが同じというRICOH Proの料金体系を活かし、本文の2色化を提案。表紙をカラーにしても従来と変わらないコストで生産できることや、ユーザーにとっても取扱説明書のポイント部分をカラー化することで、読み易く、理解し易くなる点が評価され、採用された。「モノクロではどの商品の説明書か一目でわからなかったので、分野別で表紙に色を付けました。表紙の色は総合カタログの分野別インデックスと同色にしています。リコーさんの機械はモノクロと2色のカウンターチャージ料が同一なので、うまく活用すればモノクロ印刷と差別化することができます。また、コストを上げずに品質も向上できたので喜んで頂けています」と語る。
2色印刷マニュアル
RICOH Proは全国の営業所で行う販促活動も改善させた。
オージー技研の各地の営業所は、販売店と共同で地域限定のキャンペーンを展開している。全国一律のキャンペーンと異なり、パンフレットなどの販促物は多くて数百部単位で済むが、これまでは少部数印刷が割高となるため、印刷会社への印刷発注を控えていた。
RICOH Proの導入後は、各地の営業所ごとに小ロットの販促物の制作が可能になった。販促物にはバリアブル(可変)印刷でそれぞれの営業所の営業所名や所在地、連絡先を名入れしている点も、これまでにはない付加価値として受け入れられている。また、試験的に制作したオージー技研のオリジナルノートでは、オージー技研の休日を記したカレンダーや案件のチェックリストなど、業務に必要な情報を盛り込んで制作したところ、社内で高い評価を得た。このノートは翌年も受注し、定番商品となりつつある。
RICOH Proによりオージー技研が利用する印刷物の多くがオージーライブデザインで内製化された。その効果はトータルコストの削減だけでなく、オージー技研のオペレーションの軽減にも繋がっている。今では大量印刷する総合カタログ以外の印刷物を全て同社が制作する。奥村取締役は「POD事業はまだ開始して1年ちょっとですが、予想以上の受注があり、売上を伸ばしています」という。今後は「一度、落ち着いて体制を整えたいと考えていますが、小ロット印刷のニーズは、グループ以外にも十分あるはずです」と、親会社以外への受注拡大に意欲を見せる。また、総合的なプロモーションの提案にも力を注ぎ始めた。医療機器メーカーは一昔前まで対外的な宣伝が規制されていた。このため規制緩和後も積極的に広告しない風土が定着している。そのような環境の中で同社は、生活者の認知度を高め、「業界ダントツトップ」を中期経営ビジョンに掲げるオージー技研に対し、タレントを起用した認知度拡大というプロモーションを提案した。「これまでの業界の風土からタレントを使った宣伝というのは考えられないことでした。そこで短期間でビジョンを達成するため、業界に先立って効果的なプロモーションを提案することも当社の役割だと思いました」と振り返る。早速、医療機器のPR活動で配布する製品カタログにタレントの写真を追加して印刷。プロモーションに合わせてタイムリーな内容を盛り込んだカタログを提供できるのもPODがあったればこそだった。
発注から納品までをスピーディ
RICOH Proのオペレーション研修を受けた津崎靖考氏は、グラフィック系のデザインなどディレクションを担当している。オージー技研でデザインを手がけていた津崎氏は、奥村取締役の要望で同社に入社。主に製品カタログやパンフレットのデザイン制作を担当している。
グラフィックデザインの経験がある津崎氏は、POD導入に際して、予備知識として色や紙合わせが必要だという感覚を持った。そのため、複合機のように簡単に操作できるものではないだろうと、不安を抱えていた。ところが、「想像していたよりも複合機に操作感が似ていたので使いやすかったです」と、非常にスムーズに動かせた。
実際に自らの手で印刷すると「本になるのがすごく面白い」と笑顔で語る。今までトンボをつけた原稿の段階までしか見ることはなく、出来上がってから現物を手にしていた。しかし、PODはすぐに本物の印刷物が1部から作れる。津崎氏はすぐにイメージが形になることで、デザイン自体への波及効果を強調する。依頼があれば見本をすぐに作ることができ、スピーディな対応が喜ばれている。「印刷物を内製化すると聞いた時、これまでに必要なかった業務が増えると感じましたが、今までなら見積り依頼からサンプルの取り寄せ、修正といった作業で外部委託先とのやり取りに時間を取られていたことを考えると、発注から完成品までのスピードで相殺されていることが判りました」
アフターフォローで安心オペレーション
リコーのアフターフォローについては、「名刺印刷の経験はありましたが、それ以外の印刷に関して私たちは全くの素人でした。もちろんノントラブルとはいきません。それでも何かあればすぐにリコーさんが駆けつけて対処してくれるので安心して利用できています。PODに関して聞けばほとんどのことにすぐ応えてくれますし、難しいことも一緒になって考えてくれるのが嬉しいです」と強調する。
オージーライブデザイン株式会社
本ページに掲載されている情報は、2015年1月現在のものです。