今さら聞けない仮払金と前払金の違いを解説!
2024年02月27日 06:00
この記事に書いてあること
経費の支給や仕入の支払いなどに関する勘定科目である、仮払金と前払金。代金を先に支払うという点では共通するため、これらを扱う経理担当者や若手社員の中には、その違いについて正しく知らない人もいるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、仮払金と前払金の違いを解説。仕訳の方法や、使い分けのポイントについてもお伝えします。
仮払金とは?
仮払金とは、用途や金額が未確定の経費を、会社が概算で一時的に支払うお金を計上するための勘定科目です。
仮払金のわかりやすい例が、出張にかかる交通費や宿泊費を、従業員に先に渡しておくという用途です。金額は出張が終わらないと確定しないものの、一定の費用がかかることが見込まれるため、事前に概算で出張費を従業員に支給します。なおこの場合は、金額が確定した後、できるだけ早い精算が必要です。
なお、仮払金は、従業員などに一度貸し付けているお金のため、仕訳では「資産」に分類されます。
前払金とは?
前払金は、取引で発生した商品やサービスの代金の全部、または一部を、先に支払っておく際に使う勘定科目です。金額が確定して代金を支払っているものの、商品やサービスを受け取っていない場合、そのお金を前払金として扱います。
材料費や仕入代金の前払いや、商品の手付金、宿泊費や交通費などの前納などが前払金にあたります。該当するサービスや商品を受け取った後に、仕入高などの適切な勘定科目に切り替える必要があります。
前払金も、支払うことで商品やサービスを受け取る権利を得たことになるため、仕訳では資産として扱われます。
仮払金と前払金の違い
事前に支払うという点では同じ仮払金と前払金ですが、そのふたつは何が違うのでしょうか。
もっとも大きな違いは、用途や金額が確定しているかどうか、ということです。仮払金は、支払先や金額が未定のため概算で支払いますが、前払金は、支払いの段階で内容も金額も確定しています。金額が決まっていない経費を先に社員に支給したい場合は仮払金を使うなど、状況によって選択しましょう。
仮払金の仕訳上の処理方法
では、経理担当者が、仮払金について取引内容や金額に関して仕訳を行う際、どのように処理をすれば良いのでしょうか。
たとえば、社員に、出張費用として10万円の現金を事前に支給した場合、会社の資産から仮払金の用途で現金が10万円減ります。仕訳としては、下記のように、10万円を借方の勘定科目に「仮払金」として記載し、借方に10万円の「現金」を記載します。
借方
仮払金 100,000円
貸方
現金 100,000円
後日、出張費用の内容と金額が確定したら、仮払金を、該当する勘定科目に振り分ける必要があります。貸方に「仮払金」として支払った金額を記載し、借方に、実際に使った金額を「交通費」「宿泊費」などの勘定科目で仕訳します 。たとえば、交通費が5万円、宿泊費が5万円だった場合は次のとおりです。
借方
交通費 50,000円
宿泊費 50,000円
貸方
仮払金 100,000円
仮払金が余って一部が社員から返金された場合は、下記の通り、借方に「現金」として余った金額を計上し、貸方と借方が同じ金額になるように仕訳を行います。たとえば、概算で受け取っていた10万円のうち、交通費が3万円、宿泊着が5万円で2万円が余った場合の仕訳は次のとおりです。
借方
交通費 30,000円
宿泊費 50,000円
現金 20,000円
借方
仮払金 100,000円
また、出張費が仮払金よりも多くかかり、社員が現金で不足分を支払った場合には、確定した金額と内容を借方に仕訳して、追加でかかった金額を「現金」として、貸方に追記します。交通費・宿泊費がそれぞれ6万円だったため、受け取っていた仮払金の10万円では足りずに、社員が2万円を自費で一時的に負担した場合は、社員に不足分を支払い、次のように仕訳を行いましょう。
借方
交通費 60,000円
宿泊費 60,000円
貸方
仮払金 100,000円
現金 20,000円
前払金の仕訳上の処理方法
前払金の仕訳は、発生時と商品・サービス納入時に行います。材料費や仕入れの代金を先に支払った場合は、その金額を「前払金」として処理し、商品が納品されたら「仕入高」に振り替えます。
たとえば、仕入れのため10万円の物品を購入し、その費用を現金で前払いした場合は、次のように、借方に「前払金」、貸方に「現金」という勘定科目を記載します。
借方
前払金 100,000円
貸方
現金 100,000円
その後、物品が納品されたら、借方に「仕入」、貸方に「前払金」を記載して仕訳を行います。
借方
仕入 100,000円
貸方
前払金 100,000円
なお、10万円の代金のうち、2万円を前払金として支払い、物品が納品されたタイミングで残りの8万円を現金で支払った場合の仕訳は、次のとおりです 。
借方
仕入 100,000円
貸方
前払金 20,000円
現金 80,000円
仮払金と前払金を扱う時のポイント
では、仮払金と前払金の勘定科目を使う際には、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。主なポイントを解説します。
金額や用途が未定の場合は仮払金を使う
金額や具体的な用途が決まっていないものの、一定の金額が必要だとわかっている場合に事前に支払いを行いたい場合は、仮払金を使いましょう。
遠方への出張にかかる交通費や宿泊費は、数万円単位になることが見込まれるものの、出張が終わるまで費用が確定できないケースがほとんどです。出張に行く社員が費用を立て替えると、金銭的な負担になります。出費がある業務への社員の不安を解消するために、概算で支払える仮払金を活用しましょう。
仮払金と前払金はともに帳簿の追記が必要
仮払金、前払金ともに、一度、仕訳を行った後に、再度帳簿の追記が必要です。仮払金は、業務に必要な費用を事前に支給することができますが、あくまで「仮」であり、一時的に使用できる勘定科目です。仮払金として渡したお金を使った後に内容や金額が確定したら、できるだけ早く適切な勘定科目に振り替えて、費用の精算も行いましょう。
前払金も、サービスや商品を受け取った時点で、「仕入」などの勘定科目に振り替える必要があります。会計上の整合性のため、すぐに清算を行いましょう。
前払金は一部か全部で仕訳が異なる
前払金を使う際は、確定している費用すべてを前納するのか、一部を支払うのかによって、仕訳の方法が異なるので注意しましょう。
全額を前払金として支払った場合は、「借方:前払金」、「貸方:現金や預金」という勘定科目を立てて処理し、商品を受け取った後に、借貸方 に「仕入」という勘定科目を記載して計上し直します。
代金の一部を手付金として支払った場合は、その金額だけを前払金として仕訳します。商品を受け取った際に残額を支払った際には、貸方に残額を「現金」「買掛金」などの勘定科目を立てて、残額を記載します。残額分についても、必ず勘定科目を記載するのがポイントです。
ポイントを押さえて適切に使い分けよう!
ここまで解説したとおり、仮払金と前払金の違いは、実はとてもシンプルです。それぞれの目的や仕訳方法のポイントを押さえれば、迷わずに使い分けることができます。会社のお金の流れを正しく記録するために、仮払金、前払金の使い方をマスターしましょう!
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