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ビジネスケアラーはどう働く? 企業に必要な支援を解説

From: バックオフィスラボ

2024年11月19日 07:00

この記事に書いてあること

少子高齢化や労働力不足が進む中、介護をしながら仕事をする「ビジネスケアラー」の問題が顕在化し、今後、さらに大きな社会問題になると見込まれています。企業は、介護を理由にした人材の離職や経済的損失を防ぐために、どのような対策をとるべきなのでしょうか。

このコラムでは、そんなビジネスケアラーの問題の概要と、企業に必要なビジネスケアラー支援策や人事制度について、お伝えします。

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ビジネスケアラーとは?

「ビジネスケアラー」とは、働きながら家族の介護に従事する人を指します。介護と仕事の両立を目指す人が、身体的・精神的な負担増や、仕事への意欲低下、離職を迫られるなどの課題に直面しているのが、ビジネスケアラーをめぐる現状です。

また、ビジネスケアラーの数は年々増え続けています。経済産業省が公表している「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」は、高齢化や人材不足の加速を受けて、介護と仕事の両立を目指す企業の従業員の数は、今後も増加すると指摘。2020年時点のビジネスケアラーの人数は262万人で、2030年には318万人にまで増えると試算しています。労働力人口に占める割合では、21人に1人がビジネスケアラーになると見込まれています。

仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン

ビジネスケアラー問題が企業に与える影響

働く人を悩ませる、介護と仕事の両立の問題。ただ、ビジネスケアラーの課題は、個人だけの問題ではありません。企業にも次のような影響が生じています。

働く人の生産性低下による経済損失

働く人の介護と仕事の両立困難は、企業に経済的な影響を与えます。ビジネスケアラーが抱える介護による物理的・精神的負担が、労働生産性の低下を引き起こします。また、介護離職によって、労働力の損失や、代替人員採用のためのコストも発生。経済産業省の試算によると、その経済損失額は、2030年には約9兆1,792億円にのぼると見込まれています。

また、この損失額を企業1社あたりに換算すると、大企業(製造業・従業員数3000名)では年間6億2,415万円、中小企業(製造業・従業員数100名)では年間773万円です。この損失額は、今後も増えると予想されています。

経験豊富な人材の離職

ビジネスケアラーの課題は、人材の観点からも対処が必要です。家族などの介護が必要になる可能性が高い年代は、40代~50代のベテラン層や管理職・経営層です。経験豊富な人材が介護を理由に離職することで生まれる損失は、特に中小企業にとって大きく、人材難の中、代替人員の確保も困難です。ビジネスケアラー問題が引き起こす人手不足が、企業活動に多大な影響を与えます。

また、介護と仕事が両立しやすい環境を整えることは、全社的にも有効な人事施策です。労働環境改善によって企業全体の労働生産性低下や離職を防ぐというリスクマネジメントの観点からも、ビジネスケアラー支援が求められています。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)への影響

企業経営の側面においても、ビジネスケアラー支援は重要です。従業員のスキルや知識を最大限に活用することで、企業価値や企業のパフォーマンス向上につなげる「人的資本経営」にも、介護と仕事の両立を目指す取り組みが欠かせません。

また、介護だけでなく、育児などの家族のケアをしながら働く人を含む従業員の支援は、健康経営や、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の施策としても有効です。さまざまな価値観や経験を持つ多様な人材が活躍できる環境がイノベーションを創出し、企業価値向上にもつながります。

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企業が取り組むべきビジネスケアラー支援の具体策

では、ビジネスケアラー支援は具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか。主な取り組みは、以下のとおりです。

ビジネスケアラーの実態調査と戦略立案

支援の第一歩として、まずはビジネスケアラーに関する企業内の実態を把握しましょう。介護と仕事の両立に関して、アンケートやヒアリングで調査を実施。介護に関する現状や、将来的に必要になる可能性を確認し、介護が発生している場合は、被介護者の要介護度や同居の有無などを確認しましょう。

調査結果をふまえて、ビジネスケアラーが活躍できる環境を整備する人事戦略や、支援策を立案します。介護に従事する従業員へのネガティブな評価がなされないような人事制度の整備も必要です。

介護休業と介護休暇の使い方の周知

介護と仕事の両立に関する法律と利用できる各制度について、社内に改めて周知することも重要です。

育児・介護休業法では、従業員が、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回、通算93日まで介護休業を取得できると定められています。93日の介護休業は、3回に分けて取得が可能です。また、介護をする従業員は、「短時間勤務制度」や「フレックスタイム制度」、「始業・就業時刻の繰り上げ、繰り下げ」などの時短勤務制度を利用できます。

また、要介護状態にある家族の介護をする従業員は、年間5日の介護休暇をとることもできます。介護休暇は、当日申請でも取得が可能です。こうした休業・休暇制度や短時間勤務の措置について、利用する当人だけでなく、全社に周知しましょう。

情報提供や研修の実施

ビジネスケアラーの労働環境整備のため、会社全体にビジネスケアラー支援に関する情報を発信しましょう。介護の問題は全社員が直面する可能性があり、またビジネスケアラーが介護と仕事を両立するためには周囲の理解も不可欠です。そのため、当事者が必要なタイミングで情報を取得する形ではなく、企業側から全社員に周知することが大切です。

自社で作成したパンフレットや、自治体や省庁の資料による情報提供も可能です。また、講師を招いた講義やオンラインセミナーなどの研修では、従業員が主体的に介護・仕事の両立について学ぶことができます。介護と仕事の両立に関して上司に相談できる環境作りや、人事労務制度について確認できる窓口のアナウンスも行いましょう。

ビジネスケアラー支援制度の拡充

育児・介護休業法で義務付けられている休業・休暇制度や時短勤務制度に加えて、企業独自のビジネスケアラー支援のための人事制度も整備しましょう。その主な取り組みは、以下のとおりです。

  • リモートワーク…自宅で仕事ができる環境を整えることで、仕事の合間に介護に従事したり、通勤をなくした分の時間を有効活用できたりといった形で柔軟に働ける。

  • サバティカル休暇…一定期間勤務した従業員に与える長期の休暇制度。介護を理由にした取得や、数ヶ月~1年単位での取得を認める取り組みが進んでいる。

  • Uターン制度…家族を介護するための移住を希望する社員に、企業内や、グループ企業の別拠点への異動を認める制度。

  • ダブルキャスト制…2人体制で仕事を担当する仕組み。属人性をなくすことで、介護や通院のために従業員が休んでもパートナーがフォローできるため、仕事が円滑に進む。

ビジネスケアラー支援策が浸透しやすい職場環境を作ろう!

経済的損失や人材不足のリスクを防ぎ、企業活動を活性化させるために欠かせないビジネスケアラー支援。介護や育児などの「ケア」に直面する従業員を支えることが、会社全体の労働環境改善にもつながります。

ただ、そうした支援制度を整えても、浸透せず、使われなければ意味がありません。休暇や制度の利用がしやすい環境を作るため、管理職への研修や情報発信など、まずは社内の理解促進を積極的に進めましょう。

記事執筆

バックオフィスラボ編集部(リコージャパン株式会社運営

バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。

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