減価償却費とは?定額法と定率法の違いや計算のポイントを解説

From: バックオフィスラボ

2023年11月22日 06:00

この記事に書いてあること

税法上、定められている経費計上方法のひとつである減価償却費。事業に使う固定資産に関して、知っておくべき会計処理とは理解しつつも、計算方法が難しいと感じている人もいるのではないでしょうか。このコラムでは、減価償却の基本的な考え方を解説したうえで、定額法や定率法といった主な算出方法と、計算を行う際の注意点もお伝えします。

減価償却とは?

「減価償却」とは、事業で使う固定資産の経費を、耐用年数に応じて、取得にかかった金額を年ごとに分割して計上する会計方法のことです。建物や設備、自動車など、使用や年月の経過によって価値が下がっていく資産の経費を、年数に応じたコストとして帳簿上に記録するのが、減価償却の目的です。

固定資産のうち、使用期間が1年以上、取得価額が10万円以上で、経年によって価値が減少していくものが対象となり、減価償却ができる固定資産を、減価償却資産と呼びます。

なお、「固定資産」とは、流通や販売を目的とせず、企業が長期にわたって保有する資産や、1年を超えて現金化・費用化される資産のことを指します。対して「流動資産」は、1年以内に使用するものや、短い期間で現金化することが可能な資産のこと、具体的には現金や預金、売掛金などを指します。

ちなみに、「取得価額」とは、固定資産の価格だけでなく、運送費や設置費用、関税などの取得費用も含めた金額を指します。

減価償却によって、購入した後に下がっていく価値に応じた正しい経費計上が可能です。企業にとっては、高額な固定資産の経費を数年にわたって計上し続けることで、その分、利益額を下げ、税金を抑えられるというメリットがあります。

減価償却資産の対象となる主な資産

減価償却ができる固定資産とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。主な資産は次のとおりです。

・建物
・建物の設備
・車両・運搬具
・工具
・機械、装置
・生物(農業などに使用する牛や馬、果樹など)
・無形固定資産(パソコンソフト、商標権など)

建物は減価償却の対象ですが、土地は対象外です。また、借地権、美術品、骨董品など、時間の経過で価値が下がらないものは減価償却の対象外です。所有はしているものの現在は使っていない設備なども対象外です。なお、金額が10万円以下のものは、減価償却はせずに、購入した年の経費として一括で計上します。

減価償却資産には、法律で「耐用年数」が定められています。耐用年数は、その固定資産の価値が0になるまでの期間という考え方で定められていて、この年数で分割して経費を計上します。減価償却費の計算に欠かせない重要な数字のため、国税庁のサイトでチェックしましょう。

主な減価償却資産の耐用年数表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算方法には、定額法、定率法、生産高比例法、級数法があります。ここでは、個人や会社で主に用いられている定額法と定率法をご紹介します。

定額法

定額法とは、減価償却資産の購入費に、毎年一定の割合(償却率)を掛けて減価償却費を算出する方法です。計算式は次のとおりです。

減価償却費=取得価額×定額法の償却率

取得価額に掛ける割合である償却率は、固定資産の耐用年数ごとに定められています。たとえば、耐用年数が4年の資産の定額法償却率は、0.250です。具体的な例を出して説明すると、耐用年数が4年で、取得価額が100万円の小型自動車の場合、1年目から4年目までの減価償却費は、25万円となります(※4年目は、利用中の資産であることを示すために1円を残し、249999円になります)。

定額法は、計算方法がシンプルで、毎年同じ金額を経費として計上できるというメリットがあります。

定率法

定率法は、未償却残高に対して定率法の償却率を掛けて、減価償却費を算出する方法です。計算式は次のとおりです。

減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

未償却残高とは、資産の取得価額から、前年までに計上した減価償却費を引いた金額のことです。定率法は、未償却残高の減少にともなって、減価償却費が毎年、少なくなっていくのが特徴です。また、計算の結果が「償却保証額」以下になる年からは、計算方法が次のように変わります。

減価償却費=改定取得価額×改定償却率

「改定取得価額」とは、その前年までの減価償却費を引いた未償却残高のことです。「償却保証額」は、償却資産の取得価額に、耐用年数ごとに定められた償却保証率を掛けて計算します。

たとえば、取得価額が100万円の小型自動車の定率法の償却率は0.500のため、1年目の減価償却費は、「100万円×0.50050万円」です。2年目は、未償却残高である50万円に0.500を掛けて、「50万円×0.50025万円」となります。

そして、計算式が変わる基準となる償却保証額は、「100万円×0.12499124,990円」です。4年目の減価償却費を定率法で計算すると、「12.5万円×0.50062,500円」となり、「124,990円」を下回ります。そのため4年目は、改定取得価額である「12.5万円」に、改定償却率である「1.000」を掛けた「12.5万円」が、減価償却費になります。

1年目 100万円×0.500=50万円
2年目 (100万円-50万円)×0.500=25万円
3年目 (50万円-25万円)×0.500=125000円
4年目 12.5万円×1.000=12万5000円 ※4年目は、利用中の資産であることを示すため1円を残し、12万4999円となります。

なお、定額法、定率法の償却率は、国税庁作成の下記のページで確認できます。

減価償却資産の償却率等表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

減価償却費計算で注意すべきポイント

減価償却費を間違いなく計上するためには、計算式や償却率を知るだけでなく、届出などに関する注意点を押さえておくことが大切です。主なポイントは、次のとおりです。

定額法と定率法は選べる?

定額法と定率法は、個人事業主や法人が自ら、どちらを利用するか選べるのでしょうか。原則として、定額法は個人事業主が使用する方法で、定率法は法人向けの方法です。ただ、申請をすることで減価償却方法の変更が可能な資産もあります。

計算の基本となる耐用年数をチェック

定額法、定率法ともに、減価償却費の計算の基準となるのが、耐用年数です。減価償却資産を購入したら、国税庁のサイトで、まずは耐用年数を確認しましょう。

主な減価償却資産の耐用年数表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

中古で入手した固定資産は、新品と耐用年数が異なるため注意が必要です。下記のとおり、耐用年数の経過状況によって、計算方法が異なります。

1. 法定耐用年数をすべて経過した資産
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
2. 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数

中古資産の耐用年数に関して、詳しくは、国税庁の下記のページをご確認ください。

中古資産の耐用年数
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm

償却方法の届出を行う

管轄の税務署長宛に届出を行います。資産を入手した年の翌年315日までに、「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」を提出しましょう。

年度途中で取得した場合は月割り計算

減価償却資産を年度途中で取得した場合の計算にも注意が必要です。固定資産取得のタイミングに応じて、1年目の減価償却費を月割りで計上しましょう。

月割り計算は、「取得価額×定額法または定率法の償却率×使用月数÷12ヵ月」の式を使用します。3月決算の企業が、100万円の小型自動車を1月に購入した場合の1年目の減価償却費は、「100万円×0.500×3÷12=125000円」(3ヵ月使用、定率法で計算)となります。

ポイントを押さえてスムーズな減価償却を!

減価償却は、固定資産の種類によって耐用年数や計算方法が変わるため複雑に見えます。ただ、その考え方と計算のベースとなる数字を押さえれば、理解が深まるのではないでしょうか。

減価償却は税務上のメリットも期待できるため、正しい計算によって計上することが大切です。イレギュラーなケースに対処できるポイントも押さえて、減価償却をマスターしましょう。

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

バックオフィスラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

バックオフィスラボ

https://www.ricoh.co.jp/magazines/back-office/

「バックオフィスラボ」は、バックオフィスに関連した法令解説やトレンド紹介など、日々の業務に役立つヒントをお届けします。

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:バックオフィスラボ 編集部 zjc_back-office-lab@jp.ricoh.com