2025年4月から65歳までの雇用確保が義務化!企業に必要な対応とは
2024年01月25日 06:00
この記事に書いてあること
企業での高年齢者の活躍を推進するための法律である、高年齢者雇用安定法。2021年4月には、対象となる労働者の年齢を拡大する法改正が行われました。そして2025年4月には、「65歳までの雇用継続」に関する経過措置が終了し、希望者全員への対応が求められます。そこでこのコラムでは、2025年4月から変わる高年齢者雇用安定法の内容と、変更にあたって企業に必要な対策を解説します。
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高年齢者雇用安定法とは
高年齢者雇用安定法とは、高齢化が進んで労働人口が減少している中、働く意欲のある高齢者が、年齢に関わらず、能力を十分に発揮して活躍できる環境を整備するための法律です。
2021年4月に改正される前は、企業に対して、主に以下の措置が義務付けられていました。
・60歳未満の定年を禁止…企業が定年を定める場合に、その年齢を60歳以上にする必要がある。
・65歳までの雇用確保措置…定年を65歳未満に定めている場合は、「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」のうち、いずれかの高年齢者雇用確保措置を講じなければならない。
上記のような高年齢者雇用確保制度の実施について、ハローワークの指導を繰り返し受けたにも関わらず具体的な取り組みを行わない企業には勧告書が出され、勧告に従わない場合は、企業名が公表される場合があります。
高年齢者雇用安定法の改正内容とは
高年齢者雇用安定法は、2021年4月に改正されました。それまでの「60歳未満の定年禁止」「65歳までの雇用確保措置」の義務に加えて、以下の5つのうち、いずれかの措置を講じることが企業の努力義務として定められました。
① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
上記のとおり、「70歳までの就業確保」が努力義務として追加されました。
2025年4月からの変更内容は?
では、2025年4月からは、高年齢者雇用安定法に関して何が変わるのでしょうか。
高年齢者雇用安定法で定められている継続雇用制度については、適用年齢を段階的に引き上げる経過措置が設けられていました。
雇用継続制度とは、今、雇用している高年齢の従業員を、本人の希望に応じて定年後も引き続き雇用する制度です。具体的には、定年で一度退職した従業員と新たに雇用契約を結ぶ「再雇用制度」と、定年で退職とせず、従業員を引き続き雇用する「勤務延期制度」があります。
この継続雇用制度について、2013年3月31日までに、継続雇用制度の対象者を限定する基準を労使協定で設けている場合、以下のとおり、対象者を限定することが認められました。
2013年4月1日~2016年3月31日…61歳以上の人に対して
2016年4月1日~2019年3月31日…62歳以上の人に対して
2019年4月1日~2022年3月31日…63歳以上の人に対して
2022年4月1日~2025年3月31日…64歳以上の人に対して
この経過措置が、2025年3月末で終了します。2025年4月からは、65歳までの継続雇用制度が義務化され、定年を超えても働き続けたいと希望する従業員全員を、65歳まで雇用する必要があります。
ただしこの制度は、65歳までの定年延長の義務化ではないので注意が必要です。「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」のいずれかを導入すればよいため、65歳までの雇用継続制度を設ければ、65歳までの定年引き上げは必要ありません。
2025年4月から企業に求められる対応
では、2025年4月以降、高年齢者雇用安定法に対応するために、企業には何が求められるのでしょうか。主なポイントは以下のとおりです。
就業規則の変更
65歳までの継続雇用制度を導入する上で必要なのが、就業規則の変更です。希望者全員を65歳まで継続して雇用する場合、定年に関する記載に加えて、「本人が希望する場合は、65歳まで継続雇用する」という旨を記載しましょう。
シニア人財の活躍を推進するためには、短時間勤務や隔日勤務、フレックスタイムなど、高年齢者の希望や体力に応じた働き方が選択できる制度を導入することも大切です。就業規則を変更したら、過半数組合または労働者の過半数代表からの意見書を添付して、管轄の労働基準監督署に届け出ましょう。
賃金規定の見直し
継続雇用後の賃金を適切に設定して、賃金規定に追加しましょう。賃金を検討する際に大切なのは、年齢的な要素を重視するのではなく、本人の能力や職務内容、労働時間に応じて給与を定めること。生活面の安定を確保し、シニア人財がモチベーションや満足度を高く持って働くことができる合理的な賃金規定を設けましょう。
雇用契約の見直し
継続雇用制度の導入にあたり、雇用契約の見直しも必要です。継続雇用前と同一の労働条件の場合は、新たに雇用契約を交わす必要はありません。労働条件に変更がある場合は、新しい雇用契約書や労働条件通知書を作成して、従業員との間で取り交わしましょう。
高年齢者に対する安全衛生研修
シニア人財が能力を発揮できるよう、それまで培った知識や経験を継続雇用後の仕事に活かすための職業訓練の場を用意しましょう。また、年齢を重ねても安心して働くために、安全や衛生に関する教育も欠かせません。加齢に伴う身体機能低下の可能性や、健康を維持する生活習慣など、業務上のリスクや事故を防ぐための知識を確実に伝えることが重要です。
雇用継続前と違う仕事に従事する場合は特に、新しい業務に関する研修も必須です。シニア人財の管理監督者や一緒に働く社員たちに対しても、高年齢者の特徴や働き方に関する注意点を学ぶ研修を行いましょう。
企業内の災害防止対策
シニア人財の労災を防止するための取り組みも重要です。職場の危険な箇所の修繕や、身体的な負担なく働くための空調の整備、機械設備や照明などの改良などを行い、労働環境を整えましょう。
健康状態を把握するために健康診断や体力チェックも、労災対策のひとつです。検査結果に応じて業務内容の変更や、職場環境の見直しを行いましょう。健康関連の福利厚生の拡充や、運動習慣につながる取り組みを進めるなど、シニア人財の心身の健康を保つ仕組みを取り入れることも重要です。
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法改正への準備を進めて高齢者が活躍できる企業に!
労働人口が減る中で、企業が変わらず発展していくためには、シニア人財の活用が欠かせません。また、高年齢者雇用安定法改正に対応するための職場環境の整備は、高年齢者だけではなく、幅広い年代にとって働きやすい職場作りにつながります。大切な人財に能力を存分に発揮してもらうためにも、2025年4月に向けて、早めに対策を進めましょう!
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