発注書(注文書)とは? 定義や法律についてわかりやすく解説
2025年03月31日 07:00
この記事に書いてあること
社会人であれば、「発注書」の名前を聞いたことのない人はいないと言えるでしょう。
「発注書」には決まった形式がなく、会社や業種によってさまざまです。そのため、「発注書」を使用する場合には、書類に必ず入れなければならない内容を把握したうえで、自社の使いやすい形式を選ぶ、または作成する必要があります。
この記事では、「発注書」の定義や満たさなければならない内容について、解説します。あわせて「注文書」「注文請書」との違いや、保存期間についても紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
発注書とは?
まず、発注書の基本的な知識を押さえていきましょう。
発注書とは
発注とは、商品や資材等の注文を出す行為を意味します。発注書はその際に用いる文書です。
発注書の2つの目的
発注書を用いるには、大きく分けて2つの目的があります。
1.取引をスムーズに進めるため
1つ目が、取引をスムーズに進めるためです。注文した内容を書式にまとめることで、お互いの認識を確認し合うことができます。また、複数の注文取引を同時に進めている場合も、注文書で個数や納品予定日を管理しておくことで漏れを防ぎ、円滑に取引を進められます。
2.相手先とのトラブル防止のため
2つ目が、相手先とのトラブル防止のためです。電話注文などの際には聞き間違いや漏れの可能性がありますが、書面に記載したものを発行しておけば、ミスやトラブルの防止に役立ちます。そのため、発注書は、ビジネスをスムーズに行う際の欠かせないツールのひとつといえるでしょう。
発注書と注文書・注文請書との違い
続いて、発注書と似た書類として知られる、注文書と注文請書との違いについてご紹介します。
発注書と注文書との違い
まず、発注書と注文書との違いです。ふたつの用語には、意味合いでも大きな違いがないうえに、企業によってどちらを使用するかは異なるといわれています。
一般的には、「加工や作業を伴う取引を注文する場合」には「発注書」を、「形のある物品を注文する場合」には「注文書」を使用すると考えられています。たとえば、「木材を100枚注文したい」「小麦粉を100kg注文したい」といったような依頼を行うときは「注文書」、「業務用チラシを印刷してほしい」「会計業務を委託したい」といったときには「発注書」が使われることが多いようです。
発注書と注文請書との違い
発注書と注文請書との違いは、送り先の立場にあります。依頼者側が、どのような内容のお願いしたいかをまとめた「発注書」を提出し、その内容を確認した相手方が、依頼者側の“注文”を受ける意思を表明した書類が「注文請書」といわれています。
企業によっては、「発注書」に対応する書類を「発注請書」、「注文書」に対応する書類を「注文請書」と呼んでいるところもあります。
発注までの流れと使用書類
続いて、発注までの流れと、タイミングによって使用する書類を解説していきます。

1.見積もりを依頼【見積書/見積請書】
まず、発注者が受注者に見積もりを依頼します。見積もりでは、依頼したい作業や発注内容に対する金額を受注者に確認します。その内容を確認した受注者から受け取る書類が「見積書」または「見積請書」です。
見積書を使用する場合
見積書は、発注者側の要望に対して「この金額なら対応可能」という目安を伝える書類です。はじめての取引などで使用されることが多く、一般的には「見積書」を用いる企業が多いといわれています。
見積請書を使用する場合
一方で、見積請書は、見積書に記載するような金額などに加えて、どのような条件で受注するか、いつ頃納品するかといった具体的な動きも記載されています。何度か取引を重ねて、お互い信頼関係がある企業間で取り交わされることが多いと考えられます。
2.発注をする【発注書/注文書】
見積書もしくは見積請書の内容で問題なければ、発注をします。その際に使用するのが「発注書」か「注文書」です。先述したように、これらの用語は大きな違いはありません。
3.納品後、検品作業をする【納品書】
発注者側から発注した内容に沿って、受注者は作業や製作を行います。その作業を「完了」もしくは「納品」した際に受注者から発行されるのが「納品書」です。製品とちがい、作業などの目に見えない動きによっては「完了届」が添えられることもあります。発注者側は、発注した内容が揃っているかを検品する必要があります。
4.支払い手続きを進める【請求書・領収書】
発注者側が検品作業を終えたあと、受注者側から発行された「請求書」をもって支払い手続きをします。そして支払いを確認した受注者から「領収書」を受け取り、取引は終了します。
発注書の書き方|必要な3つの内容
続いて、発注書に必ず入れなければならない3つの内容を解説していきます。
1.件名(発注書)
ひとつ目が、件名です。発注から納品まで、さまざまな書類が使用されます。混同しないように、必ず件名を入れましょう。
2.発注先/発注元の情報
発注先/発注元の情報も欠かせません。納品先を間違える等、取引のトラブルを防げるうえに、納品書や請求書と付け合わせをしやすくなります。
3.発注内容
発注内容についても、しっかりと記載しましょう。具体的な内容としては、発注番号・発注日・納期・発注内容・発注金額などが挙げられます。とくに納期や金額といった数字の部分は、お互いの認識を再確認するためにも必要な項目です。
発注書(注文書)の保存義務期間
続いて、発注書(注文書)の保存義務期間について解説していきます。法人か個人かによって期限が異なるため、注意しましょう。
法人の場合
法人の場合は、発注書や注文書の保管期間は、国税庁が定める「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」に従う必要があります。
2024年2月現在、確定申告の提出期限から7年間の保存期間が指定されています。また、欠損金が発生した場合(=赤字になった場合)は10年間の保存期間が定められています。発注書は、「保管期間は 7年間は必須。そして 10年間保存ならより良い」 と肝に銘じましょう。
個人の場合
個人の場合は、法人より保存期間が短く、5年間とされています。これは発注書だけでなく、契約書や見積書など、取引に関する書類全般にいわれています。
発注書(注文書)の保存をしなかった場合の罰則
個人の場合は、発注書(注文書)の保存をしなかった際の罰則は規定されていませんが、法人の場合は、会社法違反として100万円以下の過料が課せられる可能性があるので注意しましょう。
また、個人でも、青色申告の承認が取り消されるリスクがあるため、油断せずに保存することが大切です。
発注書の発行は「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の遵守にも効果的
発注書の発行は、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の遵守にも効果的です。最後に、この章では、下請法の概要や、下請法における発注書の役割を解説していきます。
下請代金支払遅延等防止法とは
「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」とは、下請事業者の利益を守り、かつ取引の適正化を目的とした法律です。
「親事業者」・「下請事業者」の適用範囲は、発注内容と資本金額によって変わります。
「物品の製造、修理」の場合は、「親事業者」の資本金が3億円超もしくは1千万円超3億円以下の法人、「下請事業者(個人含む)」の資本金が、親事業者の資本金額より少ない事業者をいいます。
「情報成果物の作成」または役務の場合は、金額が変わり、「親事業者」の資本金が5千万円超もしくは1千万円超5千万円以下であり、「下請事業者(個人含む)」の資本金が親事業者の資本金額より少ない事業者を指します。
下請代金支払遅延等防止法(下請法)における発注書の役割
通常では、取引における発注書の発行は義務とされていません。しかし、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用範囲内に含まれている場合は、発注書を発行しなければなりません。下請法の適用範囲内の企業では、発注書の発行そのものが下請法の遵守の役割を果たしてくれるといえます。
まとめ
今回は、「発注書」の概要や、取引に関わる書類について、見本を用いながら解説しました。民法上による契約は、口頭で成立するもののため、「発注書」は、下請法の適用などの例外を除いて発行義務はありません。しかし、円滑な取引や伝達ミスを防ぐためには欠かせない書類といえます。書類の重要性を認識・周知したうえで、発注書を活用してみてください。
記事執筆
バックオフィスラボ編集部(リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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