法定福利費の内訳とは?建設業で必須の見積書への記載方法も解説
公開日:2026年01月13日
この記事に書いてあること
本記事は、掲載時点における法令・制度等の情報をもとに作成しています。以降の法改正や通達等により、内容が現状と異なる場合があります。正確な情報については、最新の法令や公的機関の発表をご確認ください。
本記事では、2026年1月に施行された**「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:中小受託取引適正化法/取適法)への改正を踏まえ、旧法である「下請代金支払遅延等防止法」(通称:下請法)**に基づく用語を最新の表記に統一しています。
企業の福利厚生に関する費用のひとつである、法定福利費。従業員が安心して働くために必要な費用で、法律で企業に支払いが義務付けられています。また、建設業においては、工事の見積書への記載が必要な費用です。法定福利費の種類や計算方法と、建設業の見積書への記載の手順・ポイントについて、解説します。
法定福利費とは?
法定福利費とは、福利厚生に関わる費用のうち、法律で定められた企業が支払うべき費用のことです。健康保険や厚生年金、労災保険などの保険料のうちの事業者負担分が、法定福利費にあたります。従業員の病気やケガ、失業などのリスクに備えた保障を維持し、安心して働ける環境を作るために必要な費用です。
法定外福利費との違い
法定外福利費とは、法律で義務付けられていない、企業任意の福利厚生にかかる費用のことです。福利厚生費には、企業が支払う義務がある法定福利費と、企業独自の福利厚生に関する法定外福利費があります。企業が、従業員やその家族の健康維持や生活をサポートするために設けている福利厚生に関する経費を、法定外福利費と呼びます。
法定福利費の種類と計算方法
法定福利費にあたるのは、以下の6つの制度に関わる保険料などの費用です。
健康保険
従業員やその家族が病気やケガをした際に適用される健康保険の保険料は、法定福利費に含まれます。保険料は、健康保険組合や協会けんぽ(全国健康保険協会)で定められた保険料率に基づいて、以下のように計算されます。なお、健康保険料の負担は、基本的に労働者と企業で折半されます。
健康保険料の事業者負担分=標準報酬月額(標準賞与額)×健康保険料率×1/2
厚生年金保険
厚生年金保険は、働く人の将来の年金を支える保険です。65歳以上の老齢になった際や、障害や死亡に対して適用されます。厚生年金の保険料も、基本的には労使の折半で支払われます。保険料の計算方法は、以下の通りです。
厚生年金保険料の事業者負担分=標準報酬月額(標準賞与額)×厚生年金保険料率×1/2
雇用保険
要件を満たした労働者が失業した際に、失業保険や再就職手当を支給して収入を支える制度が、雇用保険です。雇用保険には、週の所定労働時間や雇用見込期間など、加入するための要件が定められています。保険料は労働者と企業が支払いますが、保険料率や事業者の負担割合は業種によって異なります。雇用保険料は、以下のとおり算出できます。
雇用保険料の事業者負担分=賃金総額×雇用保険料率×負担割合(業種によって異なる)
労災保険
労災保険は、労働者が、仕事や通勤の中でケガをしたり、業務が原因で病気になったりした際に保障を行う制度です。労災の保険料は、事業者が全額負担します。計算方法は以下の通りです。
労災保険料の事業者負担分=賃金総額×労災保険料率(業種によって異なる)
介護保険
65歳以上で介護が必要になった際に、その費用の一部を保障する介護保険の保険料も法定福利費に含まれます。介護保険は、従業員が40歳に達した月から加入が必要で、保険料の支払いが発生します。介護保険料は以下のように算出できます。健康保険と同様に介護保険料も労使の折半です。
介護保険料の事業者負担分=標準報酬月額(標準賞与額)×介護保険料率×1/2
子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金は、国や地方自治体の子育て支援サービスのために企業が支払う費用で、法定福利費に分類されます。子ども・子育て拠出金は以下のとおり、従業員の負担はなく、企業側が100%支払います。
子ども・子育て拠出金=標準報酬月額(標準賞与額)×こども・子育て拠出金率
建設業では法定福利費を記載した見積書作成が必須
建設業においては、工事を受注する中小受託事業者が、工事を発注する委託事業者に見積書を提出する際に、法定福利費を記載することが求められています。
その理由は、建設業で働く人の社会保障や健康の確保と、労働環境の改善です。建設業においては、特に中小規模の受託事業者において、コスト削減などを理由に、社会保険未加入のまま業務を受託してしまうケースがあり、課題とされています。社会保険未加入の従業員は、ケガや病気の際の治療費の給付や、退職後の年金の受給といった公的な保障を受けることができません。
見積書への法定福利費の記載は、建設業に従事する人が安心して働ける環境を整え、建設業界の人材を確保するために定められたルールです。
中小受託事業者は、見積書において、適切に法定福利費を計上していることを示す必要があります。
また、委託事業者も*、提示された見積書に法定福利費の記載があることを確認した上で、業務を発注する必要があります。
建設業の見積書の書き方
工事の見積書に明示しなければならない法定福利費は、原則として、現場労働者(技能労働者)の、健康保険料(介護保険料を含む)、厚生年金保険料(子ども・子育て拠出金を含む)、雇用保険料のうちの事業者負担分です(労災保険料は、委託事業者による一括加入として納付されるケースが一般的ですが、その費用は中小受託事業者の見積価格に適切に反映させる必要があります)。
法定福利費を含めた見積書の書き方の手順と方法は、以下のとおりです。
労務費を算出する
まずは、法定福利費を決める根拠となる労務費を計算します。法定福利費は、賃金総額に法定保険料率を掛けて計算します。ただ、個別の工事の見積もりに関する賃金の総額を把握することは難しいため、工事に必要な作業人数や日数をもとに労務費を決めて、法定福利費を算出する方法が一般的です。労務費は、以下のような方法で算出しましょう。
- ・労務費=必要な人数×平均日額
- ・労務費=工事価格×平均的な労務費比率
法定福利費を算出する
労務費をもとに、法定福利費を算出します。労務費に保険料ごとの保険料率を掛けて計算する方法のほか、以下のように、自社の施工実績に基づいて割り出した平均的な法定福利費の割合や、工事当たりの平均的な法定福利費から算出することもできます。
- ・法定福利費=工事費×工事費当たりの平均的な法定福利費の割合
- ・法定福利費=工事数量×1回の工事あたりの平均的な法定福利費
事業者負担分を見積書に記載
算出した法定福利費の事業者負担分を、見積書に記載します。なお、本人負担分は記載の義務はありませんが、本人負担分を含むと明示した上で、見積書に記載することも可能です。
なお、各専門工事業団体は、業種別に法定福利費を内訳明示するための「標準見積書」を作成しており、国土交通省は以下のサイトに、その一覧と連絡先を記載しています。見積書作成の参考にご覧ください。
法定福利費記載のポイント
見積書を作成する際には、以下のポイントに注意して法定福利費を記載しましょう。
経費は法定福利費を除いて記載
工事の経費の欄には、法定福利費を除いた金額を記載しましょう。法定福利費の事業者負担分は、別途、明記する必要があります。
介護保険料は加入率を加味した金額を記載
介護保険の加入者は40歳から65歳までで、全労働者ではないため、加入率を加味した保険料を算出する必要があります。工事に携わる労働者の40歳以上の割合を把握するのが難しい場合は、健康保険組合や協会けんぽのウェブサイトに掲載されている、被保険者全体内の40~65歳の割合の数字を使って計算することも可能です。
法定福利費も消費税の対象
法定福利費も消費税の対象となるため、消費税の金額も忘れずに記載しましょう。
参考:法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順│国土交通省
働く人の安心を支える法定福利費を理解しよう
法定福利費は、従業員の健康や生活を守るために欠かせない費用です。病気やケガ、失業などの不測の事態だけでなく、将来の年金受給も支える法定福利費を正しく知って適切に支払うことが、安心して働ける職場の土台作りにつながります。従業員が生き生きと能力を発揮できる環境を整えるために、自社の法定福利費をチェックしてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
バックオフィスラボ編集部 (リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、 法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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