「辞令」の意味とは? 交付までのステップや辞令書の書き方を解説

From: バックオフィスラボ

2024年06月07日 06:00

この記事に書いてあること

会社に勤める方であれば、「辞令」という言葉は身近に感じるものかもしれません。しかしどのように交付されるのか、「内示」や「任命」など似た用語との違いを知らない人も多いでしょう。

そこでこの記事では、「辞令」の意味を解説します。あわせて交付までのステップや辞令書に記載すべき内容についてもご紹介するので、人事の経験が浅い方などもぜひご参考ください。

辞令とは? 意味や似た用語との違い

はじめに、「辞令」の意味や似た用語との違いを解説していきます。

辞令の種類

「辞令」は「官職・役職などの任免の際、その旨を書いて当事者に渡す文書」を意味します。辞令には、下記のようなものがあります。

●採用辞令
●退職辞令
●出向辞令
●異動辞令
●昇進、降職辞令
●任命、解任辞令

採用や退職はもちろんのこと、勤務先変更や店舗異動、出向等の配置変更も含まれます。さらに、会社貢献者に対する表彰や、懲戒解雇などの懲戒処分を行なったときにも「辞令」は使用されます。

また、「辞令」は書類によるものはもちろん、口頭であっても有効とされています。

「辞令」と似た用語との違い

続いて、「辞令」と一緒によく使われている「内示」「発令」「任命」との違いを解説していきます。

「辞令」と「内示」の違い

「辞令」が正式な告知であるのに対し、「内示」はあくまで「非公式に通知する」ものです。「内示」は、公式の告示を前提に、それに先立って当事者に「内密に」決定内容を示すことを指します。

「内示」はあくまで正式な「辞令」の前の非公式な段階であり、対象となる当事者以外には知らされません。「辞令」の前にわざわざ「内示」を出す理由として、引っ越しや各種手続きなどの準備に向けて、一定の期間を当事者に与えることが挙げられます。

「辞令」と「発令」の違い

「発令」とは、「辞令」を当事者に告げることを意味します。具体的には、「退職辞令を発令する」「出向を発令する」といった使われ方をします。辞令を出す日が「発令日」となるため、辞令に記載されることがほとんどです。世間一般など表向きに広く知らせる「発表」とは意味が異なるため、注意しましょう。

「辞令」と「任命」の違い

「任命」とは、特定の役職に就くことを命令する行為を意味します。具体的な使い方としては「課長に任命する」「部長に任命する」などが挙げられます。「任命」する内容が書かれた文書を「辞令」として「発令」するという流れになります。

「辞令」の効力はどこまである?

続いて、「辞令」の効力を解説していきます。

「辞令」の法的効力はない

会社においては「公式」の書類である「辞令」ですが、契約書などとは異なり法律で規定された書類ではないため、法的効力はありません。

ただし、会社は給与を払って労働力を得ており、両者の間には労働契約が存在しています。そのため、会社は、労働契約の範囲内において人事に関する権利を持っています。

人事に関する命令を行なうのは会社の権利であるため、会社内においては「辞令」があたかも法律のように有効なものとなるのです。

「辞令」は原則として拒否できない

通常、異動や解雇などの取り決めついては就業規則に記されているため、従業員は入社時点でその内容に同意したものと見なされます。そのため、従業員は、処遇にかかわる「辞令」は原則として拒否できません。

ただし、内示の段階によっては交渉できる可能性があります。交渉したい場合には曖昧な理由ではなく、自身のキャリアに関する考え方や理由などを明確に挙げることが大切です。人事担当者はなぜそうしたのか、理由を説明できるようにしておきましょう。

「辞令」を拒否できるケースもある

原則として「辞令」は受け入れなければならないものですが、問題がある場合には例外的に「辞令」を拒否することが可能です。

たとえば、これまでに問題があると指摘された「辞令」には、次のようなものがあります。

●労働者への嫌がらせが目的の異動命令の場合
●異動命令そのものがパワハラにあたる場合
●労働者を自主的に退職させるのが目的の異動命令の場合
●合理的な理由が説明できない異動命令の場合

さらに、下記のケースが問題となったこともあります。

●治安悪化により生命の危険が生じる地域での勤務を指示したもの
●長年経験してきた業務と全く異なる業務への異動
●これまでの知識経験をまったく活かせない業務への異動
●雇用契約で勤務地が明確であるのに、通勤が不可能なほど遠方への転勤
●家族ができてすぐのタイミングでの異動命令

このように、理不尽な理由での「辞令」は認められません。就業規則の内容によっては、従業員が会社からの「辞令」を受け入れられない場合は解雇される可能性もありますが、不当だと感じた場合には規則を読み返したうえで交渉するのもひとつの手です。

企業が「辞令」を書面で出す3つの理由

ご紹介したように「辞令」には法的効力はありません。また、口頭であっても社内では有効とされています。しかし、多くの場合、企業では「辞令」を発令し、書面で交付します。なぜ「辞令」を書面で出すのか、3つの理由を解説していきます。

1.社内の記録のため

1つ目が、社内の記録のためです。小規模の会社であれば口頭で辞令を済ませるケースもあるようですが、ある程度の人数が働く会社では、口頭では全員に伝えることが難しくなります。また、人事に関する変更件数も多くなるため、記録が必要となります。「辞令」は、社内で記録することによる会社の利便性のために存在しているといえます。

2.口頭での誤解を防ぐため

2つ目が、口頭で伝えることによる誤解を防ぐためです。たとえば出向や異動など、意味が似ている内容の場合、口頭で伝えると、相手によって内容が誤解されてしまう可能性があります。確実に内容を伝えるという意味でも「辞令」は効果的な存在です。

3.重みを加えるため

3つ目が、重みを加えるためです。会社からの伝達を「辞令」の形で伝えることで、責任が伴い、行為の重みが加わることも大きいでしょう。正式で、なおかつ重要な意味を持った伝達であるということが「辞令」の形をとることで当事者にも伝わります。

辞令交付までの4ステップ

それでは、具体的に「辞令」はどのように交付されるのでしょうか。この章では、「内示」から「着任」までのステップを解説していきます。

1.内示

当事者に対し、「辞令」の内容を非公式に告げることを「内示」といいます。「内示」というと、事前準備が必要な人事異動に関する内容を浮かべるひとも多いかもしれませんが、役職の変化や降格といったネガティブな内容でも「内示」は行われます。

先述したとおり、「内示」では、やむを得ない状況などを伝えれば交渉の余地はあります。しかし、必ず希望が通るわけではないので、注意が必要です。

2.発令

「内示」した「辞令」の内容を正式なものとして命令することを「発令」といいます。

3.交付

「発令」と同時に行われることの多い「交付」ですが、正確には、書面を手渡す行為を意味します。しかし、「辞令」には交付義務がないため、口頭で済ませたり、「発令」のタイミングと合わせたりと、「発令」との境界線が曖昧なのが特徴です。

4.着任

交付された「辞令」の内容に沿った行動に移るフェーズを「着任」と呼びます。たとえば、異動であれば異動先に到着することを「着任」といいます。似た用語として「入社」が挙げられますが、「入社」は、対象者が社会保険に加入する資格を習得できた日を呼ぶので、違いを認識しておきましょう。

「辞令」を交付するまでの注意点

続いて、「辞令」を交付するまでの注意点を2つご紹介します。

1.情報を漏洩しないように気をつける

1つ目が、情報を漏洩しないように気をつけることです。これは「内示」の際にもとくに気をつけたいポイントです。不確定な情報も多いなかで漏洩してしまうと、従業員の不信感につながります。そのため、内示の際には従業員に対しても緘口令を敷いておきましょう。

2.内示の方法などをルール化する

2つ目が、内示の方法などをルール化することです。具体的には、どのような義務・責任が伴うか、どの範囲の関係者に共有するかなどを考えます。大規模な組織の場合は、対象者や内容はダブルチェックを行うなど工夫をするといいでしょう。ルール化することで情報漏洩の防止にもつながるのでおすすめです。

辞令書に必要な項目

「辞令書」には、次の項目を必ず入れるようにしましょう。

●発令日
●受令者
●発令者
●内容

1.発令日

まず、辞令が効力を発する日(発令日)を記入します。西暦か和暦かの決まりはありませんが、企業でフォーマットを統一しておくと便利です。

2.受令者

続いて、受令者を記入します。受令者とは、辞令を伝える対象となる社員のことです。氏名だけでなく現在の役職名も記載しておきましょう。

3.発令者

また、発令者の記入も忘れてはいけません。発令者とは、辞令を発令する会社の責任者のことを意味します。通常は代表取締役や社長を発令者として辞令を作成することが多いです。

4.内容

最後に「辞令」で伝達する内容を、簡潔に記載します。曖昧な表現は避け、わかりやすく伝えるようにしましょう。

まとめ

今回は、「辞令」の意味や交付から着任までのステップを解説しました。ご紹介したように、「辞令」には明確なルールはなく、会社によってさまざまな方法があります。自社での作業を円滑に進めやすい「辞令」を作成してみてください。

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