交際費非課税の飲食費上限が5,000円から1万円に。引き上げの背景や条件は?
2024年10月30日 07:00
この記事に書いてあること
2024年4月の税制改正で、交際費課税に関する特例の内容が改正。交際費から除外される飲食費の上限金額が、1人あたり5000円から1万円に引き上げられました。この変更は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか?
そこで今回は、法改正の背景や該当条件などの基準引き上げの概要と、変更に関する注意点や、企業に必要な対応を解説します。
交際費等の損金不算入の特例とは?
今回の、非課税飲食費の基準額引き上げを含む租税制度が、「交際費等の損金不算入」の特例です。
交際費とは、接待や贈答など、取引先や顧客との関係を深めるために支出される費用です。法人が支出する交際費は、原則として損金不算入、つまり経費にできないと定められています。
ただし、企業の資本金または出資金の額に応じて、交際費を一定額、損金の額に算入することが、特例として認められています。期末の資本金等が1億円以下の中小企業は、「年800万円」と「飲食費の50%相当額」とのいずれかを上限に、交際費を損金に算入できます。また、期末の資本金等が1億円超100億円以下の企業は、「接待飲食費×50%」を上限に、交際費の損金算入が可能です。なお、資本金等が100億円超の大企業は、交際費は全額、損金に算入できません。
また2024年3月までは、すべての企業を対象に、接待飲食代のうち、1人あたりの飲食代が5000円以下の飲食代は交際費から除外することができる、つまり全額を経費にできると定められていました。
2024年度の交際費に関する税制改正の内容
この交際費課税に関する特例について、2024年4月に税制が改正されました。その内容は以下のとおりです。
経費にできる飲食費の上限額が5000円→1万円に
交際費から除外される、つまり経費にできる取引先との飲食代の基準金額が変更。1人あたり5000円だった上限が、2024年4月から1万円に引き上げられました。この基準は、2024年4月1日以降に支出する飲食費に適用されます。
交際費等の損金算入限度額の特例が3年延長
「年800万円」「接待飲食費×50%」を上限に交際費を損金算入できるという中小企業向けの特例は、2024年3月31日までに開始する事業年度までと定められていました。今回の税制改正で、この特例の適用期限が、2027年3年31日までに延期されました。
飲食費上限引き上げの理由は?
今回の交際費課税に関する飲食費の基準額の引き上げは、中小企業の経済活動を活性化する目的で実施されました。またその背景には、飲食業界を支援する側面もあります。物価上昇で飲食費が高騰する中でのデフレマインドの払拭や、コロナ禍後に伸び悩む、企業の飲食需要を喚起するという狙いもあります。
今回の引き上げで、5000円という基準をもとに定められていた接待飲食費のルールの見直しや、交際の機会の増加による営業活動の活性化が進むと見込まれています。企業は、既存顧客との取引維持というメリットや、新規顧客獲得の機会を得られるでしょう。また、飲食店にとっても、客単価引き上げや売上拡大、また従業員の賃上げにもつながると期待されています。
「交際費から除外される飲食費」の条件と必要な対応
1人あたりの基準値が大幅に拡大された、交際費等から除外される接待飲食費の上限額。ただ、1万円以下の飲食費を経費にするためには、以下の条件を満たす必要があります。
飲食費の定義に該当すること
ひとつめの条件は、法律が定める「飲食費」の定義に該当することです。交際費から除外される飲食費は、法律で、「飲食その他これに類する行為のために要する費用(役員や従業員、またはこれらの親族に対する接待に使う飲食費は除く)」と定められています。
具体的には、「従業員が、取引先などを接待して飲食するための飲食費」「飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料など」「取引先との飲食のために支払う会場費」「得意先等の業務の遂行やイベントの開催に際して差し入れる弁当代」「飲食店での飲食後に、その飲食店で提供されている飲食物を取引先に持ち帰ってもらうお土産代」などが該当します。ゴルフや観劇、旅行などの間に発生する飲食費や、飲食店への送迎費、飲食物の詰め合わせの贈答物などは、この場合の飲食費にはあたりません。
1人あたりの金額が1万円であること
経費に計上するには、1人あたりの金額が1万円以下であることが条件です。その金額は、個々の参加者が実際にどの程度の飲食をしたかに関わらず、飲食費の合計金額を、会合に参加した人の数で割った額で判定します。
また、消費税分の取り扱いについては、飲食費を支出した企業の適用している経理方式によって異なります。税込経理方式の場合は税込で1万円以下までが対象で、税抜経理方式の場合は、税抜きで1万円以下であれば経費にできます。たとえば、1人あたりの飲食費が1万1千円だった場合、税込経理方式の企業では、基準をオーバーするという判定になります。
明細を記載した書類を保存する
1万円以下の飲食費に関して、必要事項を記載した書類を残すことも条件です。下記の情報を帳簿書類に記録し、保存しておきましょう。
- ①
その飲食等のあった年月日
- ②
その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- ③
その飲食等に参加した者の数
- ④
その金額と飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称や所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
- ⑤
その他、飲食費であることを明らかにするために必要な事項
上限額引き上げに対応する上での注意点
1万円までの取引先との飲食費を非課税の経費として扱うためには、以下の点にも注意が必要です。
1万円を超えた場合は全額対象外になる
1人あたりの飲食費が基準値の1万円を超えた場合の扱いについても、注意が必要です。飲食費が1万円を超えた場合は、超えた費用すべてが交際費等に該当し、経費にすることができません。超えた部分だけが交際費の範囲から除外されるわけではないため、注意しましょう。
ただ、資本金等が1億円以下の中小企業に対しては、2027年3月まで、交際費を800万円まで全額損金計上ができる特例措置があります。この範囲内で、取引先との飲食費を経費として活用できます。
2024年はふたつの基準額の混在に注意
交際費から除外できる飲食費の基準額は、2024年4月以降の支出を対象に、引き上げられました。そのため、企業によっては、同一の事業年度内で、5000円(2024年3月までの上限)と1万円(2024年4月以降の上限)というふたつの基準を扱うケースもあるため、計上の際には注意が必要です。
交際費課税を正しく理解してビジネスを広げよう!
顧客や取引先とのコミュニケーションを支える支出のひとつである交際費。経済活動の活性化を狙った今回の交際費課税に関する法改正を正しく理解することが、ビジネスの拡大にもつながります。
飲食費が値上がりする中で、交際費非課税の上限金額が上がることで、接待の場や飲食店選びの選択肢も広がるでしょう。
今回の引き上げを機に、取引先や新規顧客と良好な関係作りを積極的に進めてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
バックオフィスラボ編集部(リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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