職場での旧姓使用を進めるには? スムーズな運用のポイント

From: バックオフィスラボ

2024年02月05日 06:00

この記事に書いてあること

働く人のキャリア継続志向や多様性を受け入れる社会の流れから、職場での呼称や名刺などでの旧姓使用を認める企業が増えています。そうした流れがある一方で、旧姓使用を許可していない企業の間では、そのメリットや運用上の注意点を把握できていないケースもあるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、旧姓使用を認めることの企業側のメリット・デメリット、さらに、旧姓使用のルール作りにおけるポイントを解説します。

職場での旧姓使用の現状は?

婚姻によって夫婦のいずれかが改姓した際に検討が必要になるのが、仕事での名前です。結婚後に変更後の姓を名乗るケースもあれば、旧姓のままで働く人もいます。実際、企業での旧姓使用はどの程度、浸透しているのでしょうか。

内閣府が平成28年度に行った旧姓使用に関する企業調査(https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/mname_h28_gaiyo.pdf)によると、何らかの形で旧姓使用を認めている企業は、49.2%。旧姓使用を検討したことはなく、使用も認めていないという企業が30.6%でした。企業規模が大きいほど、旧姓使用を認める割合が高いこともわかっています。旧姓使用を運用している企業が使用を認める範囲は呼称や座席表がもっとも多く、名刺や名札、社員証などでも旧姓が多く使われています。

働く人の利便性やプライバシー保護の観点から、職場での旧姓使用を認める企業が多い一方で、人事関連や給与支払い手続きの煩雑さなどを理由に、使用を認めていない企業も一定数に上っています。

旧姓使用のメリットは?

国内の約半数の企業で、働く人の希望に応じて認められている旧姓使用。では、企業側にとって、旧姓使用を認めることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

改姓による社員の不利益を防げる

旧姓使用を認めることで、社員が婚姻前と同じ名前のまま働き続けたいという希望に沿うことが可能です。名前を変えると、仕事先との信頼関係や人脈が失われてしまうのではないかという不安も解消できます。旧姓使用によって、結婚後もキャリアを継続できるという安心感を持つことができ、取引先へ名前変更の連絡をする手間もかかりません。改姓による社員の不利益や手間を防ぎ、働く上での安心感を与えられるのが、旧姓使用のメリットです。

また、社内結婚の場合も、旧姓を使用すれば2名の社員が同じ姓になることがないため、本人や周りも混乱なく、それまで通り仕事を進めることができます。

名刺やメールアドレスを使い続けられる

社員の姓を変更すると、業務で使用する名刺や印鑑、設定によってはメールアドレスなども変更する必要があります。旧姓を使い続けることで、社員側や管理職、管理部門にとって手間のかかる変更作業の必要がなくなり、新規調達のコストも削減できます。

社員のプライバシーを守れる

社員のプライバシーの観点からも、旧姓使用はメリットがあります。婚姻による改姓があっても、社員がそれまでと同じ名前を使い続けることで、結婚や離婚などのプライベートの事情を公開することなく、仕事を続けることができます。

旧姓使用のデメリットや不都合は?

旧姓使用はキャリアを継続する上での不安感や手間を減らす上で有益ですが、旧姓使用を認めることに、デメリットはあるのでしょうか? 注意したい主な点は、下記のとおりです。

戸籍名と通称を扱う手続きが煩雑

旧姓使用を認めると、社員の給与支払いや保険の手続きなどを行う人事や経理の担当者が、戸籍名と会社での通称を両方把握し、使い分ける必要があります。社員が戸籍名で口座を持っている金融機関との連携が難しいなど、人事や給与関連の手続きが煩雑になるといったデメリットがあります。

書類ごとに名前を使い分ける必要がある

社員が仕事で旧姓を使用すると、社内で扱う書類の種類に応じて、ふたつの名前を使い分ける必要があることにも注意が必要です。社内向けの書類では旧姓を使用し、社会保険や年金、税金関係などの公的な書類には戸籍名を使う必要があるため、手間や混乱が生じる点もおさえておきましょう。

戸籍名での連絡が来る際の確認が必要

改姓後の戸籍名が社内で浸透していないと、戸籍名が使われるケースで、混乱を招くことがあります。銀行口座開設時の本人確認や、親族、保育園などの社外から本名宛に電話連絡を受けた人が、戸籍名を知らずに本人に取り次ぐことができない、というケースもあり得ます。旧姓を使用していることを都度、本人が周りに説明するなどの、確認やフォローが必要なこともあります。

旧姓使用を運用する際のポイント

では、社員の希望に従って旧姓使用を認める際、企業にはどのような注意が必要なのでしょうか。運用のポイントを解説します。

旧姓使用を認めるケースと範囲をルール化

旧姓使用を認める際には、通称に関する社内のルールを決め、就業規則に掲載するなどして明示しましょう。たとえば、「名刺」や「通称」など旧姓使用を認める範囲や、名簿や給与明細などの社内書類に戸籍名と旧姓どちらを記載するか、旧姓使用を中止したい場合などについて、定めます。連絡の取次ミスや書類関連の混乱を防ぐためにも、自社が旧姓使用を認めていることを社内で周知することも大切です。

旧姓使用の手続き方法を定めて周知する

旧姓使用の申請方法や申請期限などの手続き方法をまとめたルールや、マニュアル作りも進めましょう。スムーズな手続きのため、申請書のフォーマットや必要な書類、申請窓口を周知することも大切です。婚姻の届出などと合わせ、通称についてもワンストップで申請できるシステムを整備すれば、旧姓使用がより浸透するでしょう。

ふたつの姓を管理する人事システムを活用

戸籍名と通称のふたつの名前に関する事務処理の混乱が懸念される場合は、社員の旧姓を管理できる人事システムや、給与システムを導入しましょう。旧姓使用に対応したツールを活用することで、社員の名前に関する書類のミスを防げるほか、管理部門の事務作業を効率化できます。

働く人の希望に沿った旧姓使用の運用を!

仕事上の名前は、過去の実績や、取引先との信頼関係を今後につなぐアイデンティティとも言えます。結婚で姓が変わっても、社員がそれまでと同じように自信を持って働き続けるための選択肢として、旧姓使用の運用を検討してみてはいかがでしょうか? ご紹介したメリットや注意点をふまえてルール作りを進め、社員が自分らしく、長く働き続けられる環境を整えましょう!

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

バックオフィスラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

バックオフィスラボ

https://www.ricoh.co.jp/magazines/back-office/

「バックオフィスラボ」は、バックオフィスに関連した法令解説やトレンド紹介など、日々の業務に役立つヒントをお届けします。

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:バックオフィスラボ 編集部 zjc_back-office-lab@jp.ricoh.com