2024年10月から!「パート・アルバイトの社会保険適用拡大」を解説
2024年01月29日 06:00
この記事に書いてあること
2022年10月から、パート・アルバイトの社会保険加入が、企業規模に応じて段階的に義務化。2024年10月から対象企業がさらに広がります。そこでこのコラムでは、制度変更に備えて企業がとるべき対応について解説。適用拡大にあたり新たに対象となる従業員に伝えるべき社会保険加入のメリットや、企業側のメリットもお伝えします。
パート・アルバイトの社会保険加入はどう変わる?
2020年5月に、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」が成立しました。この法改正によって、これまで従業員数501名以上の企業で働くパート・アルバイトが対象だった社会保険加入の義務化について、企業規模に応じて段階的に適用が拡大されることが決定。2022年10月から、従業員数101人~500人の企業で働くパート・アルバイトが、新たに社会保険適用の対象になりました。
そして2024年10月からは、従業員数51人~100人の企業に対して、パート・アルバイトを社会保険に加入させることが義務化されました。
なお、対象企業の従業員の数え方は、フルタイムで働く従業員と、週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員を合計した、現在の厚生年金保険の適用対象者の数です。
パート・アルバイトの社会保険適用拡大で企業がとるべき対応
2024年10月からパート・アルバイトの社会保険加入が義務化される企業には、どのような対応が求められるのでしょうか。
加入対象者の把握
まず必要なのは、新たな社会保険加入対象者の把握です。対象となるパート・アルバイトは、以下のすべての条件を満たした従業員です。
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・1ヵ月あたりの賃金が88,000円以上
・2ヵ月を超えて雇用される見込みがある
・学生ではない
新たな加入者数を把握した上で、その後に社内で必要な取り組みや、手続きの準備を進めましょう。
新規加入対象者に制度変更を周知
新たに加入対象となるパート・アルバイト従業員に対して、社会保険加入に関する制度変更について周知します。イントラネットやメールなども使い、対象の従業員に情報を整理して正しく伝えることが重要です。
対象者数が多い、または部門が多岐にわたるケースなどは、説明会や個人面談などの場を設けて、対象者に丁寧に説明を行いましょう。伝える際には、社会保険加入のメリットや、今後の労働時間延長やキャリアアップの希望についても話し合うことがポイントです。
被保険者資格取得届を届け出る
加入対象者を把握して社内への十分な説明を行ったら、厚生年金保険の「被保険者資格取得届」をオンラインで届け出ましょう。
2024年9月上旬までに、日本年金機構から、自社が新たにパート・アルバイトの社会保険適用拡大の対象になることを知らせる通知が届きます。届書を準備し、2024年10月7日までに、被保険者資格取得届をオンラインで届け出る必要があります。
「被保険者資格取得届」の作成やオンライン申請について詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
【事業主の皆さまへ】新たに健康保険・厚生年金の被保険者となる従業員の手続きに関するご案内
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/shutoku.html
電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)
https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/index.html
社会保険適用拡大に伴う企業側のメリット
パート・アルバイトの社会保険適用拡大に伴い、企業側にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
パート・アルバイト従業員が社会保険に加入できる「社保完備」の会社は、求職者にとって魅力的な職場です。求人面で有利になると同時に、既に雇用しているパート・アルバイト従業員にとっても、安心して働ける環境が整い、離職防止につながります。
また、これまで配偶者の扶養基準(年収130万円)内の範囲で働いていた社員には、社会保険に加入して、扶養の範囲を超えて働くという選択肢が増えます。また、パート・アルバイトの社会保険適用拡大を機に、キャリアアップ助成金を活用して従業員の労働時間延長や正社員化を行えば、人財の活躍の幅が広がります。
なお、労使が合意すれば、施行期日に先がけて、パート・アルバイト従業員を社会保険に加入させる「選択的適用拡大」の制度を利用する事も可能です。2022年10月からは100人以下の企業、2024年10月からは、50人以下の企業が対象となり、この制度を利用すると、生産性向上のための補助金が優先的に受け取れるというメリットがあります。「ものづくり補助金」と「IT導入補助金」の審査にあたって、選択的適用拡大を行った企業に対しては、応募要件の緩和や加点などの後押しがあります。
対象となる従業員に伝えるべきメリット
新たに社会保険加入の対象となる従業員とのコミュニケーションで重要なのは、加入のメリットを説明することです。次の4点の主なメリットを、対象者に伝えましょう。
保険料の自己負担額が減る可能性も
新たに会社の社会保険に入ると、これまで支払っていた国民年金・国民健康保険料が、厚生年金保険料・健康保険料に変わります。厚生年金保険料と健康保険の保険料は会社が半分を負担するため、収入や働き方によっては、全額を負担していた時よりも、自己負担額が減る可能性があります。
将来受け取る年金額が増える
将来の年金額が増えるのも、従業員側のメリットです。厚生年金保険に加入することで、年金が国民年金と厚生年金の2階建てになり、国民年金のみに加入していた時から厚生年金分の給付が上乗せされて、将来的に受け取れる金額がアップします。
医療保険が充実する
健康保険加入によって、受けられる医療保険が充実します。病気で休業中に給与の2/3相当が受け取れる傷病手当金や、産休の間、給与の2/3相当が支給される出産手当金の制度を利用できます。傷病で働けなくなるリスクや、出産による休業に対する備えができるため、より安心して働けます。
キャリアアップの道が開ける
パート・アルバイトの働き方でも、月額88,000円以上などの要件を満たせば社会保険に加入でき、保険料の半分を会社に負担してもらったり、医療保険の制度を使えたりというメリットを得られます。それまで、配偶者の扶養の範囲内で働くために労働時間を制限していた従業員も、社会保険に加入して、上限を気にせず働くという選択ができるようになります。
また、社会保険適用拡大を機に企業がキャリアアップ助成金を活用する場合、パート・アルバイト従業員が、労働時間の延長や、正社員への転換について会社と相談ができます。社内でさらに能力を発揮したり、正規雇用に働き方を変えたりといった、キャリアアップに踏み出せます。
パート・アルバイトが安心して働ける環境を整えよう!
働き方の幅が広がり、年齢や性別にとらわれない多様な人財の就労が進む中で実施された、今回のパート・アルバイトの社会保険適用拡大。法改正に対応することで、企業でさまざまな形で活躍する人が、安心して働ける土台を作ることができます。対象となる従業員は、今後、より自分に合ったスタイルで仕事に取り組むことができるでしょう。
※記事内の内容は2024年1月時点の情報に基づいて記載しています。最新の情報は、官公庁のホームページにてご確認ください。
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