裁量労働制が可能な職種は?必要な手続きと導入のポイントも解説
公開日:2026年01月06日
この記事に書いてあること
本記事は、掲載時点における法令・制度等の情報をもとに作成しています。以降の法改正や通達等により、内容が現状と異なる場合があります。正確な情報については、最新の法令や公的機関の発表をご確認ください。
多様な働き方を実現する制度のひとつが、裁量労働制です。労働環境の改善や、従業員が能力を発揮できる環境作りの施策として取り入れられています。しかし、制度の概要は知っているものの、導入可能なケースや目的について、詳しく知らない方もいるでしょう。そこで今回は、裁量労働制の仕組みやメリット・デメリット、さらに導入の方法や、制度運用の注意点も解説。導入を検討している人に役立つ情報をお伝えします。
裁量労働制とは?
裁量労働制とは、労働者と使用者の間で取り決めた「みなし労働時間」の分を働いたとして賃金を支払う制度のこと。企業が、従業員に対して、労働する時間ではなく仕事の成果を求める働き方です。
従業員に働き方の裁量を与えることで生産性を向上するのが、裁量労働制の目的です。仕事の進め方や時間の使い方を自分で決められるため、働く人が創造性を発揮して、効率的に業務を進められるという効果が見込まれています。
裁量労働制が認められる職種
裁量労働制は、すべての業務に対して認められているわけではありません。自分の裁量で仕事を進めることで成果を発揮しやすい、以下のような「専門業務型」と「企画業務型」の職種で導入が可能です。
専門業務型裁量労働制の対象業務
- ・研究開発
- ・システムエンジニア
- ・新聞や出版、放送の取材・編集
- ・衣服、製品、広告等のデザイナー
- ・番組や映画のプロデューサー・ディレクター
- ・コピーライター
- ・システムコンサルタント
- ・インテリアコーディネーター
- ・ゲーム用ソフトウェアの開発
- ・証券アナリスト
- ・金融商品の開発
- ・大学の教授研究(教授、助教授、講師)
- ・M&Aアドバイザー
- ・公認会計士
- ・弁護士
- ・建築士
- ・不動産鑑定士
- ・弁理士
- ・税理士
- ・中小企業診断士
企画業務型裁量労働制の対象業務
次の①~④のすべてを満たす業務の中から、労使間で対象業務を決定します。
① 事業の運営に関するものであること
② 企画、立案、調査及び分析の業務であること
③ 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
④ 業務の遂行の手段や時間配分の決定について、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
最新の対象業務の定義および手続きの詳細は、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。
裁量労働制のメリット
では、裁量労働制の導入には、どのようなメリットがあるのでしょうか。企業側、従業員側それぞれのメリットは、次のとおりです。
企業側のメリット
企業側のメリットのひとつは生産性の向上です。従業員が自分に合ったスタイルで働くことで、成果が上がり、創造性もより発揮できるようになるでしょう。また、みなし労働時間の範囲内であれば残業代は発生しないため、人件費の把握がしやすく、時間外労働時間の管理の手間も減らせます。また、自分の裁量で働きたい人にとって魅力的な職場になれば、採用活動においても有利です。
従業員側のメリット
裁量労働制で働く従業員は、労働時間に縛られずに、無理なく自分のペースで働くことができます。自分に合った効率的な仕事の進め方を選択できるのもメリットです。また、労働時間を自分で調整できるため、私生活の事情や、スキルアップのための勉強等との両立がしやすくなります。
裁量労働制のデメリット
裁量労働制を導入する際には、企業や従業員にとって、以下のような注意すべき点やデメリットもあります。
企業側のデメリット
働き方や労働時間の判断を従業員に委ねるため、企業側が、従業員の労働の実態を把握しにくくなります。管理職や上司の指導が行き届きづらいため、従業員の長時間労働や、仕事の持ち帰りにつながるというリスクにも配慮が必要です。また、導入の際には、労使協定の締結や労基署への届出等の手続きが必要です。出社時間や働き方がバラバラになり、チームワークが損なわれる可能性がある点にも注意しましょう。
従業員側のデメリット
従業員側のデメリットは、みなし労働時間の範囲であれば、長時間働いても給与が上がらない点です。仕事量に応じた報酬が得られないという不平感が生じないよう、注意が必要です。また、自己管理や時間配分が苦手な人にとって、裁量労働制は負担やストレスにつながることもあります。業務量が増えた際の計画的な業務遂行が難しく、長時間労働を招く可能性があるという点もデメリットです。
導入に必要な手続き(専門業務型裁量労働制)
次に、裁量労働制の導入方法を解説します。以下は、専門的な知識や技術を使って働く人向けの「専門業務型裁量労働制」の導入ステップです。
労使協定で決議
専門業務型裁量労働制を導入するためには、まずは、対象とする業務や労働者の範囲等に関して労使協定を締結する必要があります。事業場ごとに、過半数労働組合又は過半数代表者と、以下の事項について労使協定を結びましょう。
- ・制度の対象とする業務
- ・みなし労働時間
- ・対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が適用労働者に具体的な指示をしないこと
- ・適用労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
- ・適用労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
- ・制度の適用にあたって労働者本人の同意を得なければならないこと
- ・制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
- ・制度の適用に関する同意の撤回の手続
- ・労使協定の有効期間
- ・労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
労働基準監督署長へ届出
締結した労使協定の内容を「専門業務型裁量労働制に関する協定届」に記載して、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ます。また、締結した労使協定をもとに労働契約書や就労規則を整備して、従業員に周知しましょう。
従業員の同意を得る
専門業務型裁量労働制が適用される従業員から個別に同意を得て、制度を実施します。なお、労使協定の必須項目に含まれているとおり、裁量労働制に同意をしない労働者や、同意を撤回した労働者に対して不利益な扱いをすることは禁じられています。
導入に必要な手続き(企画業務型裁量労働制)
企画業務型裁量労働制の導入には、専門業務型裁量労働制よりも多くの手続きが必要です。そのステップは以下のとおりです。
労使委員会を設置
企画業務型裁量労働制について決議を行う、労使委員会を設置します。委員会の要件は、「委員の半数について、各事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されている」「委員会の議事について、議事録が作成・保存されるとともに労働者への周知が図られていること」などです。
労使委員会で決議
労使委員会で、次の事項について決議します。決議には、委員の5分の4以上の決議が必要です。
- ・制度の対象とする業務
- ・対象労働者の範囲
- ・みなし労働時間
- ・対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
- ・対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
- ・制度の適用にあたって労働者本人の同意を得なければならないこと
- ・度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
- ・制度の適用に関する同意の撤回の手続
- ・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
- ・労使委員会の決議の有効期間(※3年以内とすることが望ましい)
- ・労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
労働基準監督署長へ届出
労使委員会で決議が行われたら、「企画業務型裁量労働制に関する決議届」を、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ます。また、決議をもとに労働契約書や就労規則を整備して、従業員に周知しましょう。
従業員の同意を得る
企画業務型裁量労働制が適用される従業員から個別の同意を得て、制度を実施します。なお、同意をしなかった従業員や、同意を撤回した従業員に対する不利益な取り扱いは禁じられています。
労働基準監督署への定期報告
企画業務型裁量労働制の運用に関しては、導入の初回は6ヵ月以内に1回、その後、1年以内ごとに1回、所轄の労働基準監督署へ定期報告を行う必要があります。対象労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、同意及びその撤回の実施状況について、所定様式を使って報告しましょう。
効果的な裁量労働制導入のためのポイント・注意点
では、裁量労働制で働く従業員に活躍してもらうためには、どのようなことに注意して導入・運用すれば良いのでしょうか。主なポイントは、次のとおりです。
労働時間の正しい把握は必須
裁量労働制のもとでは、労働時間の配分は自分で決められるものの、企業側には、労働時間の管理や、長時間労働を防ぐ取り組みが求められます。裁量労働制は、みなし労働時間を決定しますが、みなし労働時間を超えた時間や、休日労働や深夜労働には割増賃金が発生します。勤怠管理システム等で正確に労働時間をチェックして、割増賃金を含めた給与を支払う必要があります。
成果を評価する人事制度を整備
裁量労働制は、実際に働いた時間の長さではなく、従業員の成果に対して報酬を支払う仕組みです。貢献度や業務の質を正当に評価する仕組みが、従業員の、モチベーションを持って自律的に働く動機につながります。裁量労働制を導入する際には、勤続年数や年齢等ではなく、成果を重視する人事評価制度を整備することが必要です。
従業員の健康を守る取り組みが必要
裁量労働制に関する法律では、制度を導入する事業所に、従業員の健康を確保する取り組みが求められています。終業から始業までに一定時間の休息を確保する勤務間インターバル制度や、月あたりの深夜業務の回数制限、連続した有給休暇の取得促進などで、長時間労働の抑制や休息の確保を行いましょう。また、裁量労働制の導入にあたっては、対象者の労働状況や健康状況をふまえて”労働時間が一定時間を超えた場合に制度の適用を解除する”ことが望ましいと決められています。そのほか、健康診断や医師による面接指導、ストレスチェック等の取り組みで、従業員の健康状態や労働環境の改善を図ることが大切です。
不公平感を生まない工夫が重要
裁量労働制を導入する際には、対象となる従業員だけでなく、裁量労働制ではない従業員の不公平感を生まない工夫も重要です。裁量労働制向けの合理的な評価制度を整えた上で、働き方や賃金制度について相談ができる窓口を設けるなど、制度を効果的に活用できる環境を整えましょう。
また、裁量労働制の対象者以外の従業員が、裁量労働制の従業員の自由な働き方や、短い労働時間でもみなし労働時間分の給与を得られることに不公平感を抱くこともあります。新しい働き方を受け入れてもらえるよう、裁量労働制の効果や目的を全社に周知した上で、働き方が違う人の間でもサポートし合える体制作りや、信頼関係を築くためのコミュニケーション促進に努めましょう。
多様なニーズに応える制度の導入で働き方の選択肢を広げよう!
裁量労働制の導入は、自分の職種や特性に合った働き方を望む従業員の選択肢を増やすことにつながります。企業側にとってのメリットも大きい一方で、効果的に運用するためには、健康面や社内のコミュニケーションに関する配慮や、現場の従業員の要望に沿った制度作りが欠かせません。まずは、裁量労働制の効果や注意点を正しく理解して、自社にとってのメリットや懸念点について従業員の意見を聞いてみるのもおすすめです。働き方の可能性を広げ、誰もが生き生きと働ける職場作りを進めてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
バックオフィスラボ編集部 (リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、 法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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