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SAPのサポートが2027年に終了。今、企業に求められる対応は?

From: バックオフィスラボ

2024年09月26日 08:00

この記事に書いてあること

今、世界中で注目されている「SAP2027年問題」と、日本のDXの課題のひとつである「2025年の崖」の問題。2025年、2027年が迫る中で、企業はこの問題にどう対処すべきなのでしょうか? 

このコラムでは、「SAP2027年問題」と、それに関連する「2025年の崖」について、概要と背景を解説。2025年、2027年に実際に起こることと、企業に必要な具体策もお伝えします。

統合基幹業務システム・SAPとは

「SAP」とは、ドイツのソフトウエア会社・SAP社が提供しているERPシステムです。世界中で多くの企業が導入しており、日本企業でも広く使われています。

ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、統合基幹業務システムのこと。各部門が管理している情報などの経営資源を一元化することで、業務を効率化するシステムです。「SAP ERP」はERP製品のひとつで、財務や人事、生産管理や品質管理など、幅広い業務範囲をカバーしているのが特徴です。

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」

「SAP2027年問題」が注目されたきっかけのひとつが、「2025年の崖」です。2025年の崖とは、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を経て発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」で示した概念です。

このレポートは、日本企業は今、基幹システムの複雑化・ブラックボックス化や、全社横断的なデータ活用が進んでいないという問題を抱えており、この解決が急務だと指摘。IT人材不足の拡大や、基幹系システムを長年使い続ける企業の割合が6割を超える、またSAP ERPのサポート終了といった危機が訪れる2025年までに対策をとらなければ、日本企業はDXを実現できないだけでなく、2025年以降、最大で毎年12兆円の経済損失が生じる可能性があると伝えています。

SAP2027年問題で何が起こる?

「2025年の崖」の背景のひとつが、SAP ERPのサポート(保守)終了です。今、多くの企業で使われている「SAP ERP Central Component 6.0(SAP ERP 6.0)」の標準保守が2025年末で終了することを受けて、ユーザー企業が基幹系システムの刷新や変更を迫られる事態が「SAP2025年問題」と呼ばれていました。

しかし2020年、SAP社は、顧客アンケートの結果や要望を受け、柔軟な選択肢を提供するという理由で、SAP ERP 6.0のサポート期限を2027年まで延長することを発表。新たに、SAPを使う企業が対応すべき「SAP2027年問題」が発生しました。

企業のビジネスを根底から支えるIT基盤であるSAPのサポート終了を前に、今、多くの企業が、SAPの次世代システムへの移行や、それに伴う業務プロセスの見直しなどの判断や対応を迫られています。

日本企業のDXの現状と課題

「2025年の崖」や「SAP2027年問題」の背景には、日本のDXの遅れがあります。経済産業省のDXレポートは、日本企業には、データ活用の遅れや、保守・運用の担い手不足によるセキュリティリスクやトラブル等のリスクの高まりといった問題を提示。企業へのアンケートからは、老朽化・複雑化したレガシーシステムの保守・運用に、IT人材のリソースや、維持管理費が多く費やされていることもわかっています。

またDXレポートは、「2025年の崖」に直面する中でシステム上の課題を放置した場合、爆発的に増加するデータを活用しきれずデジタル競争の敗者になる、IT予算の圧迫で業務基盤の維持が困難になるなどの事態が起きると、警鐘を鳴らしています。

各国との比較からも、日本のDXの現状がわかります。スイスの国際経営開発研究所(IMD)は2017年から、「知識」「技術」「未来への準備」という3つの観点から、政府・企業・社会の変革につながるデジタル技術を導入・活用する能力を評価する「デジタル競争力ランキング」を発表しています。その2023年版の64ヵ国・地域を対象としたランキングで、日本は32位。この結果から、他の先進国に比べても日本はデジタル化の余地が多いと言えます。

2027年に向けて企業がやるべきこと

では、「SAP2027年問題」で言及される2027年に向けて、SAP ERP 6.0を導入している企業は今、何をすべきなのでしょうか。

SAP ERP 6.0のサポート終了に向けてまず必要なのは、アップグレードや基幹システムの切り替えなどの経営判断です。保守期間が2年延長されたものの、システム移行には長期間の準備やコスト、さらに大規模な業務プロセスの見直しが必要になるケースもあるため、早期の決定が重要です。方針が決まったら、次世代のSAPや別のERPサービス移行などのプロジェクトのスケジュールや予算を定めましょう。

また、SAP導入支援が可能なコンサルタントなどのIT人材不足も懸念されています。スムーズかつ安全な移行のため、外部パートナーやコンサルタントの確保も進めましょう。

SAP2027年問題に対処する方法

SAP ERP 6.0のユーザー企業に求められる「SAP2027年問題」の具体的な対応策は、次のとおりです。

SAPの次世代ERP「SAP S/4HANA」への移行

ひとつめの方法は、SAP ERPの最新パッケージである「SAP S/4HANA」への移行です。

SAP S/4HANAは、クラウド化や高速データ処理、UI向上などの特徴を持つ最新世代のSAP製品です。業務効率化やデータ活用の推進のほか、セキュリティ強化など運用面のメリットも大きく、SAP社も、SAP S/4HANAへの移行を推奨しています。

保守期間を延長してSAPの使用を継続

2027年以降も、SAP ERP 6.0を使い続けるという選択肢もあります。保守サービスが終了しても、セキュリティプログラムは更新されるため、2028年以降もSAP ERP 6.0を使うことは可能です。また、保守料金に2%を追加することで、保守期間を2030年まで延長することもできます。

別のベンダーによる保守を受けながら、使い続けるという方法もあります。ただ、SAP ERP 6.0の機能が拡張されることはないため、デジタル化やデータ活用促進の観点からは、最新世代への移行やシステムの切り替えが望ましいでしょう。

他のERPサービスへ切り替え

SAP ERP 6.0保守終了のタイミングで、ERPをSAPから他のサービスへ切り替える方法もあります。幅広い選択肢から自社に合ったシステムを選ぶことは、業務プロセスを刷新する好機にもなるでしょう。

一方で、他社サービスへの切り替えは、システム選定の時間や、システム移行の手間がかかる可能性もあります。SAP社製品とは使い勝手が異なることで、導入や教育面の負担が生じる点も考慮しましょう。

業務効率化やDX推進のため早めの対策を!

基幹システムの移行は、人材やコストも要する大型プロジェクトです。サポート終了が2年延期されたとはいえ、保守終了直前になって準備や人材不足に困らないために、早めのシステム移行の検討や準備を進めましょう。

また、基幹システムの移行や刷新は、デジタル化の推進だけではなく、社内の業務プロセス見直しや、グローバル展開など新しいビジネスにもつながる有益な取り組みです。時代の変化に対応して成長するためにも、基幹システムを起点にDXの取り組みを進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

バックオフィスラボ編集部(リコージャパン株式会社運営

バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。

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