経費で落とせるものは何? 科目や気を付けるべきポイントを紹介

From: バックオフィスラボ

2024年06月12日 06:00

この記事に書いてあること

「できれば税金の支払いは最小限に抑えたい」と節税を考えている経営者は多いでしょう。節税のひとつとして、経費としての計上が挙げられますが、経費で落とせないものまで落としてしまうと、ペナルティが課せられることがあるので注意が必要です。では、具体的にどのようなことに気を付けたらいいのでしょうか。

この記事では、経費で計上できるもの をご紹介します。気を付けるべきポイントを踏まえたうえで、適切な節税対策をしてみてくださいね。

経費の定義とは

はじめに、経費の定義を解説していきます。

経費とは

そもそも経費とは、事業に関する目的で使用した費用のことをいいます。具体的には、従業員の給与、交通費などです。

「経費で落とす」の意味とは

経理部でよく使われる「経費で落とす」とは、企業の儲けを下げることで納税額を低くすることを目的に、事業に関する目的で使用した費用を経費として計上する行為を意味します。

経費で落とせるものと落とせないものの基準

先述したように、経費は「事業に関する目的で使用した費用」を指すため、事業に関係しない費用は経費で落とせません。しかし、事業に関するといっても一部に私用のものが含まれていたり、複数人分の支払い等で実際に支払っていない分が含まれていたりする場合など、すべてが経費として必ず通せるとは限らず、事業に関係のない領収書まで混ざっているのではないかと怪しんだ税務署からの調査が入る可能性があります。どのような内容が経費として計上できるのか、次章以降で詳しく解説していきます。

経費で落とせるもの|法人・個人事業主がよく使う勘定科目

この章では、経費で落とせるものをご紹介します。まずは、法人・個人事業主が使うことの多い勘定科目を見ていきましょう。

1.接待交際費

まず、接待交通費です。接待交通費は、経理に関わる人だけでなく、営業や管理職などさまざまな人が関わる科目といえます。

接待交際費の具体例としては「飲食代」が多く、取引先との会食や、取引先に送るお中元などが挙げられます。

しかし、接待交際費があまりにも多い場合、事業には関係のない、個人的な飲食代が混ざっているのではないかと税務署から疑いが生じる場合があります。とくに人数と金額がアンバランスであったり、休日に飲食が集中していたりといった場合も、税務署から目を付けられやすいので気を付けましょう。

2.消耗品費

消耗品費では、コピー用紙やボールペンなどの消耗品はもちろんのこと、デスクやロッカーなども計上できます。購入した品の耐用年数が1年未満、かつ取得価額が10万円未満のものを購入した場合に「消耗品費」として処理されます。

3.新聞図書費

新聞図書費は、雑誌や新聞の購読料や書籍購入費などが挙げられます。また、事業のリサーチのために購入した書籍も含まれます。電子書籍なども計上できるため、処理の際には忘れないように注意しましょう。

経費で落とせるもの|法人の運営・事業に関わる勘定科目

続いて、法人がよく使用する勘定科目をご紹介します。

法人の運営に関わる勘定科目

まず、法人の運営に関わる勘定科目です。

1.人件費

まず、人件費です。人件費のなかでも「給与」、「旅費交通費」、「福利厚生費」について解説していきます。

●給与

給与は、従業員の給与を意味します。「給与」と似た用語として「給料」が挙げられますが、「給料」は給与の一部であり、時間外労働手当などの諸手当を除いたものをいいます。

●旅費交通費

旅費交通費とは、勤務先から出張先に向かう費用などを意味します。通勤にかかる交通費も含まれると思われがちですが、通勤時の費用は、企業の場合だと、通勤手当として給与と同時に支給されることが一般的です。

●福利厚生費

福利厚生費には、企業側が社員の健康管理やコミュニケーションの活性化などを目的に使用する業務には関係しない費用全般が入ります。

福利厚生費には法律で決められている「法定福利費」と、事業者側が決められる「法定外福利厚生費」があります。具体的には、健康診断にかかる費用や保険料などが「法定福利費」、レクリエーション費用などが「法定外福利厚生費」と処理されます。

2.通信費

通信費には、企業で使用する電話料金やインターネットの利用料が挙げられます。郵送で取引先に請求書や契約書を送付する場合の切手代・レターパック代なども通信費として処理されます。

3.修繕費

修繕費は、建物や備品などの固定資産の維持管理や原状回復に関する費用のことをいいます。しかし、購入後に物理的に付け加えた部分の金額や、当初と用途を変更した場合の模様替えなどは修繕費として計上できない可能性が高いため気を付けてください。

4.広告宣伝費

広告宣伝費とは、企業のサービスや製品を不特定多数に宣伝するためにかかった費用を指します。チラシやパンフレット、試供品などが広告宣伝費にあたります。

5.地代家賃

地代家賃とは、土地の賃借料と建物の賃料の総称です。地代家賃は、通常の家賃などと同じく、前月の間に当月分に前払いをすることが多い勘定科目です。

6.減価償却費

減価償却費とは、固定資産を購入した際の金額を、その固定資産の耐用年数(通常想定される用途用法に従って使用した場合、その効果をあげられるとみなされる期間)で分割し、一年ごとに計上する際の勘定科目をいいます。

7.租税公課

租税公課は、国税や地方税などの税金(租税)と、国や地方公共団体などから課せられている会費や、交通反則金といった罰金(公課)の総称です。具体的には固定資産税や印紙税などが挙げられます。

8.リース料

リース料とは、保険料や物件価格のリース契約にかかるリース料金を、企業に対してそれらを長期間賃貸するリース会社に支払う際の勘定科目です。リースは、コピー機などリース物件の所有権を持っているリース会社が、企業に対して物件を長期間賃貸する行為を意味します。基本的には、毎月一定額をリース会社に支払います。

法人の事業に関わる勘定科目

続いて、法人の事業に関わる勘定科目をご紹介します。

1.研究開発費

研究開発費とは、事業に関する研究や自社製品の開発にかかった費用のことをいいます。研究開発のために使用されている場合は、人件費や原材料費もすべて研究開発費になります。

2.支払手数料

支払手数料とは、購入した商品や受けたサービスそのものではなく付随する手数料を支払った際のことを指します。具体的には、銀行の振込手数料や宅配便の代引き手数料が挙げられます。

もし経費の計上を誤ったらどうなるのか? 課されるペナルティ

これまで勘定科目についてご紹介しましたが、それらの経費の計上を誤った場合、どのようなペナルティが課されるのでしょうか。この章では、経費計上を誤った場合に起こると考えられることを解説します。

1.過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税が課される

ひとつ目が、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税が課される可能性があることです。

過少申告加算税…確定申告の期限内に提出した書類の納付額が実際に納付すべき額より少ない場合に課せられる税
無申告加算税…期間内に対象者が確定申告をしなかった際に課される税
不納付加算税…期限までに源泉所得税の納付が行われなかった際に課される税
重加算税…納税額を実際のものよりも少なく申告された際に課される税

何を経費として計上するかで最終的な納税額が確定するため、経費計上を誤ってしまうと、たとえ意図的でなくとも追加で徴税される恐れがあります。

2.銀行からの融資に影響が出る

ふたつ目が、銀行からの融資に影響が出る可能性があることです。追加で徴税されたり、税金を滞納したりした場合、銀行からの信頼が下がり、融資に影響が出るかもしれません。

もし経費の計上を誤ってしまった場合はすぐに申告を行なってください。確定申告の期限前であれば「訂正申告」を、税額が多かったり、還付が少なかったりした場合は「更正の請求」を、反対に、税額が少なかったり、還付が多かったりした場合には「修正申告」を行いましょう。

注意すべき領収書とは? 気を付けるポイントを解説

先述したように、事業に関わるものであれば経費として計上できますが、但し書きが曖昧だったり、あまりにも高額だったりした場合、税務署から怪しまれ、目をつけられる可能性がなくなったわけではありません。

ただ流れ作業で経費を計上するのではなく、怪しい点がないか確認することが必要です。そこでこの章では、経理担当者に向けて、経費として計上する前に確認すべき領収書の特徴と気を付けるべきポイントをご紹介します。

1.高額な領収書

ひとつ目が、高額な領収書です。たとえば、大人数での接待費用を全額負担した場合であっても、領収書の金額があまりにも高額だと本当に全員分を負担したのか税務署に疑われることがあります。

また、日頃使ったことのないような高額な店で飲食するといったことも不自然で、税務署に目を付けられる可能性があります。大人数で食事をした際の領収書をとっておく際に、人数や取引先名などの詳細を控えておくといいでしょう。

2.無関係な業種の領収書

ふたつ目は、無関係な業種の領収書です。たとえば営業の仕事をしている場合、取引先との接待が多いため、飲食店の領収書は自然に発生するものととられますが、家具屋や美容院の領収書は非常に不自然です。もし営業に必要なものとして購入した場合は、使用用途もあわせて記録しておくことをおすすめします。

3.「お品代」の領収書

最後に、「お品代」の領収書です。商品を購入した場合、「お品代」と書かれていれば、たとえ事業に関連しない商品であってもわからないと考えている方もいるかもしれませんが、それは異なります。高額な「お品代」などに税務署が疑いを持てば電話一本で購入先に照会され、内容を把握されてしまいます。そのため、「お品代」の領収書を受け取った場合には担当者に内訳など詳細も確認しましょう。

【個人事業主向け】節税のためにできること

最後に、個人事業主の方に向けて節税対策としてできることを解説していきます。

1.青色確定申告を行う

ひとつ目が、青色確定申告を行うことです。青色申告とは、簡易的な記録で良い白色申告とは異なり、取引の記録を詳細に記録し、確定申告の際に「損益計算書」と「貸借対照表」を作成しなければなりません。

青色申告をする場合には税務署に開業届を提出しなければなりませんが、白色申告では税制上の優遇措置がないのに対して、青色申告では最大65万円の控除がされるため、節税につながります。

2.家事按分を行う

ふたつ目が、家事按分を行うことです。家事按分とは、個人事業主が自宅で仕事をしていたり、事務所としていたりする場合、家賃やインターネット代、水道光熱費などの一部を経費として計上できることをいいます。

家事按分の際には、業務にかかった分を比率として計上しなければならないため、割合を明確に示せる根拠を提出しましょう。具体的には、仕事部屋がある場合は拠点のなかでどの程度の割合を占めるかを計算するなどが必要です。

3.税理士に相談する

最後におすすめなのが、税理士に相談することです。自分で確定申告を行う場合、すべての領収書を経費として計上してしまったり、勘定科目を誤ったりしてしまうことが考えられます。不安のある方は、税理士に相談すると良いでしょう。領収書の割り振りや、確定申告の申請を代理でお願いしたり、ふるさと納税など節税のコツなどを相談したりすることができます。

まとめ

本記事では経費の計上に関して解説させていただきました。正しく理解し、適切に計上しましょう。

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