法改正に対応してますか?就業規則見直しのポイント

From: バックオフィスラボ

2023年11月15日 06:00

この記事に書いてあること

時間外労働の上限規制や「同一労働同一賃金」関連の法律など、近年、働き方に関する法改正が相次いで行われています。テレワークの普及など労働環境が大きく変わった会社も少なくないと思いますが、就業規則の見直しをお忘れではないですか。そこで今回は、就業規則に関する基本ルールから、見直す際に必要なステップ、スムーズな変更に欠かせないポイントまで解説します。

就業規則の基本ルール

就業規則の見直しについて解説する前に、まずは、基礎知識をお伝えします。

就業規則とは?

就業規則とは、労働基準法などの法律に基づいて会社が決めた、就業に関するルールです。社員の雇用や賃金の決定、労働時間や、異動・退職の手続きなどは、すべて就業規則に従って行う必要があります。これによって適切な労務管理ができるとともに、働く上でのモラルを守れます。

情報漏えいなど会社の不利益を招く社員の行動を禁じることで、トラブルも防げます。社員と会社の間で雇用や賃金に関する認識の違いが生じた時も、就業規則に基づいて話し合いを進めることができます。

就業規則が必要な会社の条件は?

就業規則が必要なのは、常時10人以上の労働者を使用する事業所です。労働基準法で、この条件に該当する企業は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。変更する場合も同様に、労働基準監督署長に届け出る必要があります。

労働者への周知も必須です。見やすい場所へ掲示する、備え付ける、書面を交付するなどの方法で、働く人がいつでも内容を確認できるようにしなければいけません。就業規則の作成や届出の義務に反すると、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。

就業規則に記載すべき事項

就業規則の内容としては、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」があります。以下のとおりです。

絶対的必要記載事項
①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合は就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め切りと支払いの時期、昇給に関する事項
③解雇の事由も含む、退職に関する事項

また、会社として制度を定める場合には、以下の「相対的必要記載事項」も記載する必要があります。

相対的必要記載事項
①退職手当に関する事項
②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③食費、作業用品などの負担に関する事項
④安全衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰、制裁に関する事項
⑧その他、全労働者に適用される事項

こんな時は就業規則の変更が必要

10人以上が働く事業所では就業規則を定めることが義務付けられていますが、作成するだけでなく、状況に応じて見直していくことで有効に機能します。では具体的に、どのような時に変更が必要になるのでしょうか。

働き方に関する法改正があったとき

労働に関する法改正が行われた時は、賃金や労働時間などを定める就業規則の変更が必要です。

最近の働き方に関する大きな法改正は、時間外労働の上限規制です。2019年から(中小企業は2020年から)、労働基準法で残業時間の上限が原則月45時間・年360時間と定められました。労使間の合意があっても、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満というルールを超えることはできません。この法改正を受けて、労使協定で定める事項や、時間外労働の上限時間、また特別な事情のある際の上限といった、就業規則の見直しが求められています。 

また、パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法で、正規雇用者と非正規雇用者の間の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」が定められました。同じ労働をしているのであれば、契約社員やアルバイトなどの非正規労働者にも正社員と同じ賃金を払い、福利厚生や教育の機会も同じように与えることを決めた制度です。この法改正は、就業規則内の賃金の計算方法や、福利厚生、職業訓練関係の事項に関わります。

テレワーク・在宅勤務を導入する時

感染症や災害などのリスク対策や、多様な働き方を推進するためにテレワーク・在宅勤務が広がりました。こういった制度を導入する際にも、就業規則の見直しが必要です。労働時間や労働条件が変わらない場合は問題ありませんが、従業員の通信費の負担など、テレワーク・在宅勤務に特有の事項が発生する場合は、就業規則の変更が必要です。

就業規則が会社の実態に見合っていない

就業規則を作ってから一度も内容を見直していないというケースでは、内容が時代の変化や法改正に対応していないことがあります。社員がルールに基づいて安心して働くためにも、就業規則を定期的に確認して、見直していくことが重要です。

就業規則を見直す際に必要なステップ

では、就業規則の変更は、どのような手順で進めればよいのでしょうか。

労働者の意見を反映して改定案を作成

就業規則の見直しが必要になったら、まずは人事部や総務部などの担当部署で、変更内容を検討します。内容がまとまったら、労働組合や労働者代表といった労働者側にも意見を聞いて、改定案を作成しましょう。内容に、労働関係の法令への違反などの問題がないかを確認して、経営層の承認を得ます。

就業規則変更届・意見書を作成

変更内容が固まったら、就業規則変更届を用意します。様式の指定はないため、任意の用紙に、事業所の名称、事業所の所在地、使用者氏名などを記載して書類を作成します。変更点が分かるように、改正前と改正後の内容を併記すると良いでしょう。

就業規則変更の届出には、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者の意見を聞いたことを証明する「意見書」の添付が必要です。労働者からのヒアリングをもとに、その内容をまとめた意見書を作成しましょう。

なお、下記の厚生労働省のサイトからは、就業規則変更届と意見書のフォーマットをダウンロードできます。

主要様式ダウンロードコーナー (労働基準法等関係主要様式) | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

労働基準監督署へ提出

就業規則変更届と意見書が作成できたら、変更後の就業規則と合わせて、所轄の労働基準監督署へ提出します。改定日から遅滞なく届け出る必要があると法律で定められているため、就業規則を見直したら、できるだけ早く書類を提出しましょう。

就業規則変更時のポイント

就業規則の変更を、トラブルなくスムーズに行うためのポイントは、以下のとおりです。

変更内容は必ず従業員に周知する

就業規則を変更したら、必ず従業員に周知しましょう。就業規則を作成・変更した場合は社内に周知させることが労働基準法で義務付けられていて、これに違反すると30万円以下の罰金が科せられる場合もあります。また、周知していない就業規則は効力がないため注意しましょう。

変更に関して記載した文書を社内に掲示するなどして、労働者が就業規則をいつでも確認できる環境を用意しましょう。

労働者に不利益な変更には合理的理由が必要

賃金の引き下げや休日の削減など、労働者にとって不利益な変更は、労使間の合意がなければできません。ただ、経営状況の悪化などの合理的な理由があり、その内容が周知されるという条件の下では、変更が認められます。

従業員にとって不利益な変更をする場合は、変更を行う理由と、働く人にどのような影響があるのかを、社員に丁寧に説明することが重要です。

事業所ごとに管轄の労働基準監督署への提出が必要

就業規則を変更した場合は、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。本社や支社など複数の拠点を持っている場合でも、一括ではなく、各事業所での届出が原則です。

一括して届け出る本社と支社の就業規則が同じであることや、届出を行う事業所の数だけ就業規則や意見書を用意できるなどの要件を満たせば一括届出ができる「就業規則一括届出制度」もあります。

必要に応じて経過措置を設定する

就業規則の変更に伴う従業員への大きな影響が懸念される場合は、混乱やトラブルを防ぐために経過措置を設けることも有効です。特に、給与規定の変更や、定年年齢の引き下げなどの変更の際には、従業員をフォローできる体制を整えることが大切です。不利益を補う制度や、変更までに日数をもうけるなどの対応を準備しましょう。

労働環境改善のため就業規則を定期的に見直そう!

就業規則は、従業員が安心・安全に働くために必要な基本的なルールです。法改正や経営状況の変化に応じて時代に適した内容に変更していくことが、労働環境改善のために欠かせません。変更を行う際の手順やポイントをおさえて、見直すべきタイミングに備えましょう。

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