財務会計と管理会計の違いは?煩雑な会計業務を効率化する方法
2025年02月21日 07:00
この記事に書いてあること
すべての企業にとって重要な会計。その業務は大きく、財務会計と管理会計のふたつに分類できます。そしてどちらもそれぞれ、企業活動において大きな役割を果たします。
このコラムでは、このふたつの業務内容や目的の違いを解説。さらに、それぞれの業務の課題と、正確かつ効率的に会計を行うためのポイントも解説します。
財務会計とは?
財務会計とは、社外に向けた会計処理のことです。税務署や、投資家や取引先などのステークホルダーに対して、自社の財務状況や経営状況を報告する目的で行います。
財務会計は、投資家に向けて、投資の判断材料として自社の財政や業績に関する情報提供をする機能を持っています。また財務会計は、社内向けに任意で行う管理会計とは異なり、企業に対して義務化されています。法律で決められた書式に基づいて、企業が所有している資産や負債などの財政状況と業績を、決算報告書として開示する必要があります。
財務会計の業務内容
財務会計は、具体的にはどのような業務を指すのでしょうか。財務会計の業務は、日々の「仕訳伝票の入力」と、「固定資産の管理」「決算書の作成」の3つに分けられます。
仕訳伝票の入力
日常的に必要な財務会計の業務は、仕訳伝票の入力です。日々、行われている会社の取引や資産の動きを、「貸方」と「借方」に分類して、金額や勘定科目を仕訳帳へ記入していきます。
固定資産の管理
固定資産の管理や、減価償却の計算も必要です。土地や建物、車、ソフトウェアなど、企業が長期間使用するもので、経年や使用によって価値が減少する固定資産については、費用を耐用年数に応じて配分して経費として計上する必要があります。月次決算を行う場合は、月ごとに減価償却費の会計処理を行います。
決算書の作成
月次や年次の単位で、仕訳伝票や減価償却費などをもとにデータを集計して、決算書を作成します。期末には決算整理仕訳を行い、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表をまとめます。
財務会計の課題
財務会計業務を円滑に行うためには、対処すべき課題もあります。
ひとつ目の問題は、仕訳作業で起こる人的ミスです。仕訳は、複雑で入力件数が多く、時間や手間を要します。また財務会計の仕事は専門性が高いため、業務が属人化する可能性があるという点にも注意が必要です。
期末の決算時期や月末に業務量が偏り、担当者の労働時間が増えるという問題もあります。請求書や領収書など、取り扱う紙書類が多く確認や処理に時間がかかるのも、財務会計業務の課題のひとつです。
財務会計業務を効率化する具体策
では、財務会計業務を効率的に行うためには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。主な具体策は以下の通りです。
会計システムの導入
会計システムを活用することで、日々の仕分や決算業務を効率化できます。銀行口座や他のシステムとの連携機能によって、手作業で行っていた仕訳の一部が自動化されるほか、帳簿作成や集計、財務諸表の作成も行えるため、仕訳業務の省力化やスピード化、また入力ミスの削減にもつながります。
また、会計データが自動で集計されるため、決算期ではないタイミングでも、リアルタイムに財政状況の確認ができます。随時、経営判断に役立つ情報がまとめられるのも、会計システムのメリットです。
ペーパーレス化の推進
請求書などの紙書類を減らすことも、会計業務の効率化につながります。ペーパーレス化で、書類の検索や確認をスムーズに行えるほか、書類管理の効率性も向上します。書類の持ち出しや紛失による情報漏えいを防げるため、セキュリティ強化にもつながるでしょう。
ペーパーレス化やクラウド型の会計システム導入によって、社外からも資料や会計システムにアクセスできるようになるため、リモートワークなど働き方の選択肢が広がります。会計担当者の労働環境を改善できるのも、ペーパーレス化のメリットです。
管理会計とは?
社外への情報提供という目的を持つ財務会計に対して、管理会計は、社内向けの会計です。経営層が有効な経営判断を行えるよう、財務状況や経営状況に関する会計情報をレポートとしてまとめます。社内で活用する情報のため、会計の方法や報告のフォーマット、また集計の時期も企業によって異なります。
部署別、製品別など、経営層が知りたい内容に応じて会計情報をまとめられるため、財務諸表だけでは見えにくい事業の課題や、詳しい経営状況を把握できます。
管理会計の業務内容
管理会計の業務は主に、予実管理、原価管理、経営分析、資金繰り管理の4つです。その具体的な内容は、次のとおりです。
予実管理
予実管理とは、予算と実績を比較することで経営の課題を洗い出す管理会計のアプローチです。部門ごとの達成度や、計画の進捗状況を確認することで、資金調達や経営戦略の立案ができます。エクセルなどのツールや、会計システムの集計機能を活用して実施します。
原価管理
原価管理では、製品やサービスの材料費や人件費、設備費などの原価を集計して報告します。コストの可視化によって、製品価格の見直しなどの経営判断が可能です。
経営分析
経営分析も、重要な管理会計業務のひとつです。財務諸表や業績、原価等に関する資料をもとに、事業の収益性や生産性、成長性など、多岐にわたる視点から会社の状況を分析します。
資金繰り管理
収入や支出などの現金の流れを管理・分析することで、会社の資金の状況を把握するのが、資金繰り管理です。資金繰り管理によって、資金の過不足の確認や、資金調達に関する計画立案も可能になります。
管理会計の課題
財務データを経営判断に活かせる管理会計。ただ、管理会計業務にも課題や注意が必要な点があります。
管理会計は、財務会計に比べて詳細な分析が必要で、部門別やテーマ別のレポートなど資料の種類が多岐にわたるため、作業量が多くなり、担当者の業務を圧迫する可能性もあります。
また、会計情報をエクセルなどで手入力して計算する場合は、繰り返しの作業による人的ミスが起こり、正確な会計を行えないケースもあります。会計担当者の負担を軽減しながら、経営に役立つ正確な管理会計を行うためには、業務を効率化するための工夫が求められます。
管理会計業務を効率化する具体策
詳細な分析が必要な管理会計業務は、どのように効率化していけば良いのでしょうか。以下に、有効な取り組みをお伝えします。
管理会計システムの導入
管理会計業務は、システムの活用によって効率化、スピード化ができます。管理会計システムは、販売システムや会計システムとの連携や、データのインポートなどの機能を備えています。データの集計やレポートの出力も可能なため、手のかかる予実管理や原価管理業務を省力化できます。
自動化によって入力ミスや計算ミスも軽減できるため、詳細かつ正確な管理会計を実現できます。
経理関係フォーマットの統一
管理会計業務の効率化には、会計に関わる書類のフォーマットや、予算管理方法を社内で統一することも有効です。各部署の会計関連の書式や記載ルールが異なることで、書類の不備や読み取りミスによる非効率が発生します。社内で、書式や予算入力のルールを揃えることで、作業の時間の短縮や正確性の向上を実現できます。
スマートな会計業務で会社を支えよう!
会社の経営状況の把握や適切な経営判断に欠かせない、財務会計と管理会計。それぞれの業務を効率化して正確な会計を行うことが、会社が成長するための土台作りや、新しいチャレンジにもつながります。
一方、会社にとって重要な会計業務に携わる社員が、やりがいや充実感を持って働ける環境作りも大切です。会計の仕組みの変更や、システムの導入には費用や準備が必要ですが、自社のスマートな会計業務につながる、新しい施策を取り入れてみてはいかがでしょうか?
記事執筆
バックオフィスラボ編集部(リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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