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AI PCとは?AI時代に必要なPCの選び方ガイド

From: ウェブマガジン

2025年10月28日 11:00

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生成AIの普及により、PCに求められる条件は大きく変化しました。従来のCPUやメモリ中心の評価軸では不十分となり、AI処理を支えるNPUの有無やローカル環境での応答速度が重要な基準になりつつあります。そんな今注目のAI PCは、ノイズ除去や翻訳、画像生成といった多様な処理をクラウドに頼らず実行でき、業務効率や創造性を大きく高める効果も期待されています。

本記事では、AI PCの必要性や求められるスペック条件、活用シーンを紹介。Copilot+ PCやインテル® Core™ Ultra プロセッサーとの関係性まで幅広く解説します。

なぜ今、AI PCが必要とされているのか?

テキストや画像、動画などのコンテンツを自動的に作成する人工知能技術「生成AI」の普及によって、PCに求められる条件は大きく変化しています。

従来のPCは、OfficeソフトやWebブラウジングといった一般的な業務用に設計されていました。しかし、昨今ではAIの台頭により高負荷かつ複雑な演算処理が日常的に行われるようになっています。とくに生成AIは膨大なデータをもとに推論を繰り返すため、従来型のCPUでは処理速度や作業効率に限界が見えてきています。このため、単純に「CPUやメモリが高ければ十分」というわけではなく、実際の用途(AI処理、データ分析など)に合わないPC選びが、かえって業務トラブルの原因となるケースも多く指摘されているのです。

こうした背景から注目されているのが「AI PC」です。AI PCとは、AIの推論や処理に適したNPUを、CPUGPUと同じひとつのチップ(SoC)に集約した設計を採用するPCを指します。NPUを搭載することで、クラウドに依存せず、PCのローカル環境でAI処理を高速で行える点が特徴です。

例えばオンライン会議中のノイズキャンセリングや背景ぼかし、AIによる自動翻訳や文字起こし、さらには写真や動画の生成や編集など、幅広い活用が期待されています。AIを業務やクリエイティブ活動に取り入れるには、PCそのものがAIの活用を前提に設計されていることが不可欠であり、その新しい基準として位置付けられるのがAI PCなのです。

NPU搭載AI PCのイメージ

生成AIの登場とPCスペックの関係

生成AIを実際の業務に取り入れようとすると、PCにかかる負荷はこれまでとは比べものにならないほど大きくなります。従来は文書作成や Webブラウジングといった比較的軽い処理が中心で、CPU性能と一定のメモリがあれば十分でした。しかし生成AIは膨大なパラメータを扱う推論を短時間に繰り返すため、CPUやメモリに瞬時に高い負荷がかかります。

とくに問題となるのは処理の遅延や安定性です。AIによる翻訳や音声認識、画像処理はリアルタイムでの応答が前提となっており、処理能力が不足すると作業効率に直結する支障が発生します。クラウド経由で生成AIを利用する場合でも、ローカル側での性能が不十分だと本来の効果を発揮できません。さらにクラウドは外部にデータを送信するためセキュリティ面での配慮が欠かせず、ローカル処理が可能なPCの必要性は一層高まっています。

CPU/GPU/NPUの違いとローカルAI処理への期待

PCの演算処理を長年担ってきたのはCPUです。CPUOSやアプリケーションの制御に使われる汎用的な計算を得意としてきました。しかし、生成AIのように膨大な並列計算を必要とする処理では性能が不足しやすくなります。その限界を補うために活躍してきたのがGPUです。GPUは画像描画や動画処理を得意とし、ディープラーニングの学習や推論でも活用されてきました。

そして今、AIの台頭によって近年注目されているのがNPUNeural Processing Unit)です。NPUAI推論に特化した演算ユニットで、CPUGPUに比べて低消費電力かつ効率的に処理を実行できます。これにより、リアルタイムのノイズ除去や背景ぼかし、音声認識や翻訳といった機能をクラウドに依存せずローカルで実行できるようになりました。これにより、応答速度やセキュリティの面で大きなメリットもたらしています。

さらに重要なのは、NPUが非搭載の場合には将来的に一部のAI機能が利用できないケースも想定されることです。今やNPUの搭載有無はPC選びにおける重要な基準となりつつあります。

 CPU  PC全体の演算 PC全体の制御や汎用的な演算を担う中枢的存在。あらゆるアプリやOSの処理を実行します。
 GPU  画像や映像など 画像や映像の描画に特化し、大量の並列演算を高速に処理できます。AIや映像編集にも活用されます。
 NPU  AI推論 AI推論専用の演算を担い、省電力かつ効率的にAI処理が実行できます。ネット環境に依存せず、リアルタイムな処理に強みがあります。

AI PCに求められるスペック条件とは?

AI PC選びでもっとも重要なのは、AI処理を快適に実行できるだけのスペックを備えているかどうかです。従来のPCCPUやストレージの性能を中心に評価されてきましたが、生成AIを日常的に活用するには新たな視点が求められます。

AI処理は短時間で膨大な演算を繰り返すため、処理遅延や作業中断をいかに防ぐかがカギとなります。そのためには、応答速度を確保できる設計や、安定した処理を支える十分なメモリが欠かせません。さらに、AI専用の演算ユニットであるNPUの有無が業務効率を大きく左右します。

これに加え、AIを前提としたハードとソフトの連携設計が行われているかどうかも見極めが必要です。単に「高性能」であるだけでなく、「AI利用を前提に設計されているか」が新しい判断基準になっています。

「処理遅延」や「作業中断」を防ぐには

生成AIを日常業務に取り入れる上でもっとも懸念されるのは、処理遅延や作業の中断です。例えば、会議中にリアルタイム翻訳を行いながら議事録をAIで自動生成するといったように複数の作業を同時にAIで処理するケースを考えてみましょう。

この場合、従来のPCでは処理が追いつかず、音声が途切れたりテキスト出力が遅れたりする懸念があります。こうした遅延は不便なだけでなく、業務効率や成果の質にも直結します。とくに営業現場で顧客との対話中に遅延が発生すると、円滑なコミュニケーションが阻害されるだけでなく、判断の遅れによってビジネスチャンスを損なうリスクもあるのです。

それに対し、AI PCではNPUAI処理を担うため、CPUGPUの負担を分散させ、応答速度を維持することが可能です。また、AI処理は一時的に高い負荷がかかることが多いため、安定性を確保する仕組みが欠かせません。AI PCは電力効率を高めて発熱を抑えつつ連続処理を可能にする設計や、バックグラウンドでの並行作業に対応できるアーキテクチャを備えています。これによりAI処理中でもほかの業務が滞らない「業務を止めないPC」として、実際の現場で使える環境が整えられます。

メモリ・NPU・レスポンスの重要性

AI処理を快適に実行する上で、とくに注目すべきはメモリ・NPU・レスポンスの三要素です。

メモリ

メモリは、AIモデルが処理する膨大なデータを一時的に保持する役割を担います。容量が不足すると処理が分割され、結果的に遅延やフリーズの原因になります。生成AIを実務で活用するには、最低でも 16GB以上のメモリを備えることが推奨されます。

NPU

NPUは、AI専用の演算を高速かつ省電力で実行する中核的な存在です。NPUが非搭載のPCでもAI機能を利用できますが、応答速度や同時処理能力に制限が生じます。NPU搭載型ならクラウド依存が減り、ローカルでの安定したAI処理も可能になる上、セキュリティリスクの低減にもつながります。

レスポンス

レスポンスは、ユーザーの体感に直結する指標です。いくら演算能力が高くても、操作から結果が返ってくるまでに時間がかかれば業務効率は下がります。AI PCはメモリとNPUを効果的に組み合わせ、即応性を確保することで「待たされない作業環境」を実現します。

AI処理を快適にする三要素

  • メモリ
  • NPU
  • レスポンス


これらの要素は、業務効率の向上はもちろん、イライラしない快適な作業環境をもたらす、AI 時代におけるPC選びの必須条件と言えるでしょう。

AI前提設計の具体例

AI PCの特徴は、単なるハードの高性能化だけでなく「AIを前提とした設計」という点にあります。例えば、オンライン会議アプリとNPUが密接に連携し、発言中のノイズを自動で除去しながら同時に文字起こしを行うといった機能は、AI PCだからこそ可能になります。クラウドに依存せずPC内で処理を完結させる設計により、機密情報を扱う業務でも、ローカル処理によりリスクを抑えながらAIを活用できます。

さらに、クリエイティブ用途においてもAI前提設計の利点は顕著に表れます。例えば、画像編集ソフトでは、NPUが搭載されていればAIによる自動補正や生成処理をリアルタイムで実行可能。動画編集でも、AIがシーンを解析して自動的に編集候補を提示するなど、作業効率が飛躍的に向上します。こうした作業効率の向上は、単なるCPUGPUの性能向上だけでは実現しにくい領域です。

AI PCの真価は、ハードとソフトが連動してユーザーが意識せずともAIを活用できる点にあります。業務の快適さや生産性の向上を支える仕組みそのものが、AI前提設計として位置付けられているのです。

AI PCはどんな業種に適しているか?活用シーン別に解説

AI PCは「AIを使えるPC」というだけでなく、業務や働き方を変える実践的なツールとして位置付けられており、技術者や研究者に限らず、幅広いビジネスシーンに恩恵をもたらします。

例えば、膨大な資料を扱いながら効率的に業務を進めたい人にとっては、AIによる要約や自動整理機能が大きな助けになります。また、会議や出張など移動が多い人にとっては、リアルタイム翻訳やノイズ除去、音声入力による議事録作成といった機能が生産性を高めてくれるでしょう。さらに、デザインやコンテンツ制作を担う職種においては、画像や動画の生成・編集をローカルで快適に実行できる点が強みと言えます。

つまりAI PCは「誰が使うか」ではなく、「どのように使うか」によって真価を発揮するものと言えます。ここからは、代表的な活用シーンを具体的に見ていきます。

AIを活用するビジネスシーン

業務効率を上げたいビジネスパーソン

日々の業務を効率的に進めたいと考えるビジネスパーソンにとって、AI PCは業務を支える頼もしい味方となります。例えば、膨大なメールや資料を短時間で処理しなければならない場面では、AIによる要約や情報抽出機能を活用することで、必要なポイントだけを迅速に把握できるようになります。

また、文書作成やプレゼン資料の準備といった定型的な業務においても、AIが文案を提示し、レイアウトや表現を自動的に整えることで、仕上げに集中できる環境が整います。従来は手作業で時間を要していたタスクが短縮されることで、よりコアな業務に時間を充てられるようになるのです。

オンライン会議においても同様です。リアルタイム翻訳や文字起こし機能は意思疎通を円滑にし、議事録作成の負担を軽減するでしょう。加えて、ノイズキャンセリングや背景処理といった機能が自動的に働くことで、集中力を妨げない快適なコミュニケーション環境が整えられます。これらの処理はNPUによってローカルで行われるため、遅延が少なく安定性が高い点も大きな利点と言えるでしょう。

創造性やモビリティが求められる職種

AI PCの価値は「創造性」と「モビリティ」が求められる分野でも際立ちます。デザインや動画編集、マーケティング資料の制作といったクリエイティブ業務では、AIを活用した自動補正や生成機能が大きな武器になります。

例えば画像編集ソフトでは、NPUを利用してリアルタイムに色調補正や背景除去を行えます。従来クラウドに依存していた処理がローカルで完結することで、応答速度が向上し、アイデアをすぐにカタチにできるのです。

移動の多い職種にもAI PCは適しています。出張先でのプレゼン準備や即時の資料整理・翻訳、現場での音声入力による記録など、モバイル環境での活用シーンはさまざま。NPUの省電力設計は、バッテリー駆動の持続時間を延ばし、外出先でも安定して AI機能を利用できるという点で大きな利点となります。

このように、AI PCは創造性を発揮したいクリエイターや、機動力を重視するビジネスパーソンにとっても信頼できるパートナーとなり、働き方の幅を大きく広げてくれるでしょう。

Copilot+ PCやインテル® Core™ Ultra プロセッサー・ファミリーとの関係性

AI PCの普及に伴い、各メーカーや提携企業がさまざまな取り組みを進めています。その代表例が、マイクロソフトが提唱する「Copilot+ PC」と、インテルが展開する「インテル® Core™ Ultra プロセッサー・ファミリー」です。これらはいずれもAI時代を見据えた新しい基準として発表されており、ユーザーにとってPC選びの目安となる存在です。

Copilot+ PCはWindows 11環境におけるAI活用を加速する位置付けで、標準装備として生成AIを日常的に利用できる環境の提供を狙いとしています。一方、インテル® Core™ Ultra プロセッサー・ファミリーは、CPUGPUNPUを統合した設計を特徴とし、AI処理を効率化するプラットフォームとして注目されています。いずれも「AIを前提にした設計」という点が共通しており、従来のPCとの差別化を明確に示しています。

Core UltraとCopilot+の概念ビジュアル

共通点と交点:NPU 40TOPS、RAM 16GBの意味

Copilot+ PCとインテル® Core™ Ultra プロセッサー・ファミリーに共通しているのが「NPU 40TOPS」です。TOPSTera Operations Per Second*)はAI演算性能を示す指標で、Copilot+ PCは「40 TOPS以上のNPU」を満たすことが必須要件として定義されています。
NPUがローカル環境でAI処理を高速に行うためには、それに耐えうる大容量のメモリが必要です。そのため、AI PC選びでは、「RAM 16GB」というキーワードも重要になってきます。AI処理は一時的に大量のデータを保持する必要があり、メモリが不足すると処理が分割され、遅延や不安定さの原因になります。そのため、ビジネス用途で生成AIを快適に使うには16GB以上が実用ラインであり、大規模なモデルを扱う場合は、さらに多くのメモリを搭載することが望まれます。

5 TOPSTera Operations Per Secondの略で、プロセッサーが1秒間に行える演算の回数を表します。

まとめ:AI PCという選択がPC選びを変える

生成AIの普及によって、PCに求められる条件は大きく変わりました。従来はCPUやメモリの性能が主な基準でしたが、AIを活用する時代においては、NPUの有無やローカルで処理できる設計、そしてAIを前提としたハードとソフトの連携が重要な判断軸となっています。

この流れの中で登場したAI PCは、単なる高性能マシンではなく、業務効率や創造性を支える実践的なツールとして位置付けられます。Copilot+ PCやインテル® Core™ Ultra プロセッサー・ファミリーが示す「NPU 40TOPS」「RAM 16GB」といった数値基準は、AI PCに求められる新しい当たり前の指標と言えるでしょう。

AI PCの導入は、処理の遅延を防ぎ、安定した作業環境を提供するだけでなく、働き方そのものを変えていく力を持っています。つまり、これからのPC選びは「スペック表の比較」ではなく「AI活用を前提に設計されているか」という視点が重要です。AI PCという選択は、ユーザーに新しい基準での価値を提示し、PC選びの常識を大きく変えていくものとなるでしょう。

よくある質問

QPCスペックが十分なのに動作が重い理由は?
A:「CPUもメモリも多いはずなのに動作が重い…」というときは、PCの裏側で動いているものが原因になっていることが多いです。常に動いているセキュリティソフトやバックグラウンド更新、常駐アプリが負荷をかけ、さらに発熱で性能が自動的に落ちることもあります。
AIを使う作業では瞬間的に大きな処理が行われるため、CPUGPUだけに頼ると遅れが出やすいです。NPUを搭載したAI PCなら、このAI処理を分担できるので、「待たされない快適さ」を実感できるでしょう。

Q:クラウドAIなのにPCが重くなる理由は?
A:「処理はクラウドでやってるのに、なんでPCが重いの?」と思うかもしれません。実際には、音声を送る前の準備や、返ってきた結果を表示する作業はPC側で行われています。古いPCAIに最適化されていないPCでは、この部分で処理が追いつかず重く感じてしまうのです。AI PCはそもそも高性能なPCとして設計されているため、クラウドAIの利用時もサクサク動きやすいのがポイントです。

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