明確なポジショニング戦略でターゲットに魅力を伝えよう!
2019年01月10日 00:00
この記事に書いてあること
マーケティングって、結局どんなことなんだろう。専門的な知識や理論でありながらも、実は私たちの身近にあって、仕事やプライベートを魅力的に改善してくれるものなんです。今日から使えるマーケティングの知識や使い方を、がんばり屋の女の子、神山さんと一緒に学んでいきましょう!
前回、渡辺部長からSTP分析の説明を受け「セグメンテーション」「ターゲティング」、理想のお客さま像「ペルソナ」の設定までを行った神山さん。今回はだいふくにゃんこの「ポジショニング」を決めていきます。神山さんはお客さまにとって、だいふくにゃんこが一番魅力的に見えるポジショニングを見つけることができるでしょうか?
主要キャラクター紹介
神山さとみ
24歳、独身(彼氏ナシ)。サンライズカンパニー第三事業本部商品企画室所属。美大のデザイン科を卒業後、新卒で入社。家電事業の営業アシスタントを1年経験した後、かねてからの希望だった商品企画室に異動。キャラクターグッズ「だいふくにゃんこ」を開発する。
渡辺部長
46歳。妻と2人の子供がいる。サンライズカンパニー営業・戦略グループマーケティング部部長。長らく大手商社に勤め、MBAも取得済み。サンライズカンパニーの社長に請われ、半年前より転職して現職に就いた。
だいふくにゃんこ
神山さんが企画したぬいぐるみ。素材はビーズで、ぷにゅっとした触感が魅力。その何も考えてなさそうな表情が女子社員のハートをとらえ、社内限定で人気上昇中。
ターゲットが変われば何が変わる? 商品のポジショニングとは?
部長:
「セグメンテーション」「ターゲティング」「ペルソナ」の設定と、今までは私たちが提供する価値を誰に届けたら良いのか考えてきたけれど、今度はその価値をどのようにアピールしたらお客さまに選んでいただけるかを考えよう。つまりだいふくにゃんこを必要とするお客さまにとって、どうやったら一番魅力的に見えるかということを考えていく。これをポジショニングというんだ。
神山:
一番魅力的に見える…ですか?
部長:
そう、競合よりもね。
神山:
ミケタマちゃんよりも…ですか?
部長:
その通り!ポジショニングで重要なことは、お客様が「これなら買いたい!」と思う要素(KBF)を洗い出し、競合より魅力的に見える打ち出し方を考えていくことだ。 神山さんが一番最初に言ったKBFを覚えているかい?
神山:
「ミケタマちゃんより安い価格」……です。
部長:
最初は何も考えないでだいふくにゃんこを開発してしまったから、結果的にミケタマちゃんとポジショニングが被り、価格でしか差別化できないと思った。ちがうかい?
神山:
(トホホ……そこまで言わなくても)部長のおっしゃるとおりです………
部長:
しかしもう、だいふくにゃんことミケタマちゃんの差別化ポイントが「価格」でないことはわかっているよね? そしてだいふくにゃんこの特徴が、ただ単なる「癒し」でないこともわかってきた。ユーザーの声からニーズを探ることで、違うターゲットが見えてきただろう? 当然ミケタマちゃんとはポジショニングを変えることになる。
神山:
ポジショニングを変える、とはどのようなことなのでしょうか? KBFが変わるということですか?
部長:
そう。ターゲットが変われば、当然KBFやポジショニングも変わる。良い例として「シーブリーズ」があるよ。神山さんは「シーブリーズ」を知っているかい?
神山:
はい。高校生の時、部活のあとによく使ってました! 汗がべたつかず肌がスッキリするんですよね!
部長:
世代のギャップを感じるなぁ…… 僕らの時代には「シーブリーズ」は、マリンスポーツのあとに使うものだったんだ。
神山:
え? マリンスポーツというと、サーフィンとか海水浴とかですか?
部長:
そうだよ。もともと「シーブリーズ」は海で日焼けしたときに肌に塗るローションとして、その爽快感を売り物にしていた。が、若者の海離れ、日焼けを避ける傾向から売上は低迷してしまったんだ。
神山:
わかります。泳ぐとベタつくから海水浴なんてしませんし、日焼けなんて最近の女子にはもってのほかです!
部長:
だ、だよね。そこでメーカーはマリンスポーツが好きな若者から女子高生を中心とする若い女性にターゲットを変更した。容器を細身にしてバッグに入れやすくし、カラフルな色を揃えて、汗をかいたときのリフレッシュローションとして訴求方法を変えたんだ。これをリポジショニングという。
神山:
リポジショニング……
部長:
そう。これが大ヒットして、シーブリーズは売上を挽回した。製品の本質を変えず、ターゲットとKBF、ポジショニングを変えて成功した好例だよ。
前のターゲット
マリンスポーツが好きな若者
前のKBF
- 海で使える。日焼けのケアができる
変えたターゲット
女子高生を中心とする若い女性
変えたKBF
学校や街、どこでも使える。汗のケアができる
<シーブリーズ リポジショニングの図>
(よくわかるこれからのマーケティング 金森努 著 同文館出版 より引用)
ターゲットが変わればKBFも変わる! だいふくにゃんこのポジショニングを決定しよう!
神山:
なるほど! ではだいふくにゃんこも、さっそくリポジショニングしましょう!
部長:
いやいや、そもそもだいふくにゃんこは何も考えないで開発してしまったから、もともとのポジショニングがないよね? だからリポジショニングはできない。
神山:
(もう!そんなに何回も言わなくても……)確かに何も考えていませんでしたけど(泣)
部長:
ごめんごめん、言い過ぎた。ここで言いたいことは、それほどポジショニングは重要だと言うことだ。ターゲットが変わればKBFも変わり、ポジショニングも変わる。これまで行ってきた「ターゲティング」やペルソナ設定によって、ターゲットが明らかになった。まずは、前に決めたKBFをもう一度見直してみようじゃないか。
神山:
はい……価格はもちろん無視できませんが、ターゲットのニーズをKBFに反映させるとこうなるのではないでしょうか?
前回のターゲット
アラサー女子
今回のターゲット
昼寝でスキッとリフレッシュして、午後もバリバリ仕事したいと考えているアラサー女子
前回のKBF
代替品と比べて割高感を感じない価格
ストレスや疲れを、場所を選ばずすぐに癒してくれるぬいぐるみ(枕)
今回のKBF
代替品と比べて割高感を感じない価格
ハードに働くアラサー女子のストレスや仕事疲れを、会社ですぐに癒してくれるぬいぐるみ枕
部長:
うむ。なぜKBFに「アラサー女子」と「会社」というキーワードを追加したんだい?
神山:
はい。アラサー女子って部下の教育もあれば、上司からの要求レベルも高くなるので、ストレスがたまりやすいと思うんです。 ペルソナのモデルになったプログラム開発部のA子先輩なんか、そりゃあもう……
部長:
わ、わかった! いや、よくわからないが、なんとなくわかる。つまりこの商品は「デスクでお昼寝」するのに最適。「癒やし」を与えてくれる「ぬいぐるみ」であると同時に、「快眠」できる「枕」で、会社での昼寝に使えば「午後への活力」を与えてくれる商品というわけだね。 これがミケタマちゃんに比べて、だいふくにゃんこが一番魅力的に見える訴求点かい?
神山:
はい、お客さまがだいふくにゃんこを欲しいと思うポイントだと思います。
部長:
うむ。ペルソナを意識した、良い変更だ。それでは神山さん、だいふくにゃんこのポジショニングを一言で言い表すとどうなる?
神山:
デスクでの昼寝の効果を最大化できる【癒し系快眠ぬいぐるみ枕】ではどうでしょう。ストレスの中で働くアラサー女子にとっては、他のぬいぐるみやただの枕より、一番魅力的に映ると思います。
部長 :
よし。それではいよいよどうやって売るか、施策立案を始めよう! ここからは、実際に商品を販売することを想定した項目を決めていく。
神山:
いよいよ販売の施策ですね。少し落ち込みましたが、また元気が出てきました!
部長:
その調子だ! 私たちのマーケティングは、着実に進んでいるよ。自信を持ってさらに分析をしていこう!
まとめ
神山さんは渡辺部長の指導でSTP分析を終え、新しいポジショニングを導き出しました。次は具体的にどうやってお客さまに価値を届けるのか、4Pを使った販売施策の立案に進みます。第9回もお楽しみに!
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