デジタルマーケティングとは?成果につながる手法と導入ポイントをわかりやすく解説
2025年06月26日 07:00
この記事に書いてあること
マーケティングの手法は多岐にわたりますが、その中でもデジタル技術を活用した手法や活動は「デジタルマーケティング」と呼ばれています。さまざまなデジタルツールやIoT・AIといった先進的な技術が広く浸透しつつある昨今、デジタルマーケティングへの理解を深めておくことは企業にとって重要なポイントの1つです。
今回は、デジタルマーケティングに関する基本事項や主な手法、具体的な活用例を紹介します。デジタルマーケティングを導入する際に留意しておきたいポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
デジタルマーケティングとは
はじめに、デジタルマーケティングに関する基本事項を整理しておきます。
デジタル技術を駆使したマーケティング活動全般
デジタルマーケティングとは、デジタルデバイス(PCやスマートフォン、タブレットなど)を介して顧客のレスポンスデータを蓄積・活用することで顧客とのつながり(=コミュニケーション)を強化していくマーケティング手法のことです。マーケティングの手法は非常に幅広く存在しますが、それらのうちデジタル技術を駆使しているものは基本的にデジタルマーケティングに含まれると捉えて差し支えありません。
昨今はデジタルデバイスやデジタルツールが広く普及し、多くの事業者・生活者に活用されています。こうした技術を効果的に活用することによって、見込み客との信頼関係を強化したり、自社が届けたいメッセージをより正確に伝えたりできることは、デジタルマーケティングを取り入れる大きなメリットです。
Webマーケティングとの違い
Webマーケティングはデジタルマーケティングの中でもよく知られている手法です。前述のとおり、デジタル技術を駆使したマーケティング手法は基本的にすべてデジタルマーケティングに含まれます。よって、Webマーケティングもデジタルマーケティングの一種です。

デジタルマーケティングの領域にはPCやスマートフォンだけでなく、デジタルサイネージやビッグデータ、AI、IoTのエッジデバイスであるセンサーなども含まれます。デジタルマーケティングは、Webサイトを訪問した顧客や見込み客を対象とするWebマーケティングに限らず、潜在的にニーズのある顧客を対象に訴求できるマーケティング手法といえます。
デジタルマーケティングが企業にとって重要な理由
デジタルマーケティングの重要性が高まっている背景には、モバイルデバイスの急速な普及があります。ターゲットが情報を得るためのチャネルが多様化したことにより、膨大な情報に誰もが手軽にアクセスできる時代になりました。企業は実店舗での販売活動や対面での商談といった機会に限らず、多彩なデジタル媒体を通じてターゲットとの接点を築いていく必要に迫られています。
オンライン/オフラインを問わず、複数の媒体を通じて顧客との接点を築いていく手法を「オムニチャネル」といいます。たとえば、実店舗で商品を購入した顧客の購買データがECサイトに反映され、リピート購入を促すような仕組みはオムニチャネルの典型例です。デジタルマーケティングを成功させるには、特定の媒体やツールに依存するのではなく、複数のデジタル媒体を駆使するオムニチャネル戦略を講じていくことが求められています。
デジタルマーケティングの主な手法

デジタルマーケティングの主な手法として、下記の6つが挙げられます。
- ・手法1:Webマーケティング
- ・手法2:メールマーケティング
- ・手法3:デジタル広告
- ・手法4:アプリマーケティング
- ・手法5:CRM/MA
- ・手法6:IoT連動
それぞれ具体的に見ていきましょう。
手法1:Webマーケティング
Webマーケティングは、Webサイトを活用したデジタルマーケティングの手法です。ホームページやオウンドメディアの運営、Web広告の活用、SNSや動画を用いたマーケティング手法なども、広い意味でのWebマーケティングに含まれます。
Webマーケティングのメリットとして、事業者・生活者の双方にとって身近なメディアである点が挙げられます。スマートフォンやPCで手軽に閲覧できることから、ターゲットとの接点を築くためのベーシックな手法の1つです。また、集客力のあるWebサイトを構築できれば、長期にわたって集客やブランディングに効果を発揮する可能性があります。
手法2:メールマーケティング
メールマーケティングは、メールを用いたマーケティング手法の総称です。メールマガジンの運営や、ステップメールの運用などが主な手法として挙げられます。
メールマーケティングを取り入れるメリットとして、デバイスを問わず情報を届けられる点が挙げられます。ターゲットがメールアドレスさえ保有していれば、メールアドレス情報のみで見込み客との接点をつくることが可能です。さらに、メール配信システムを活用することにより、顧客ごとに配信のタイミングやその内容を最適化するパーソナライズも可能となります。比較的低コストで実施でき、現在でも有効性の高いデジタルマーケティングの手法の1つです。
手法3:デジタル広告
デジタル広告とは、インターネット上で表示される広告全般のことです。先に挙げたWeb広告も、デジタル広告に含まれます。Web広告以外にも、音声広告や動画広告、デジタルサイネージのほか、タクシーの車内で流れる動画広告などがデジタル広告の代表的な手法です。
デジタル広告は、ターゲットやシーンに合わせて多彩な媒体を選べる点が大きなメリットです。ポスターなど紙ベースの掲示物とは異なり、時間帯によって広告の内容を変えたり、セール情報などを時期ごとに告知したりすることもできます。また、動画や音声を駆使することで、視覚や聴覚に訴えるインパクトのある表現も可能です。
手法4:アプリマーケティング
アプリマーケティングは、スマートフォンやタブレットで利用可能なアプリを軸としたマーケティング手法です。ターゲットにアプリをインストールしてもらう必要があるものの、企業独自の戦略を講じやすいというメリットがあります。
アプリマーケティングの大きな強みとして、スマートフォンやタブレットの通知機能を活用できる点が挙げられます。キャンペーン情報やクーポンの配布など、時期限定の施策をタイムリーに伝えることが可能です。さらに、実店舗で利用できるクーポンをアプリ上で配布するなど、オンラインとオフラインをつなぐツールとしても活用できます。自社オリジナルアプリを多くのユーザーに利用してもらうことは、認知度やブランディング効果の向上にも寄与するでしょう。
手法5:CRM/MA
CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)といったツールは、デジタルマーケティングを支える仕組みとしてよく用いられています。顧客および見込み客の状況を整理するとともに、相手の状況に合わせたオファーなどを実現する上で効果的です。
たとえば、Webサイトにて資料請求フォームを表示した見込み客のうち、CVに至らなかった層に対して資料の有用性などを伝える案内メールを自動送信する仕組みを構築する、といった手法が想定されます。CRMやMAを活用することでマーケティング施策を自動化し、見込み客の獲得や育成を効率よく進められる点が大きなメリットです。
手法6:IoT連動
デジタルマーケティングにおいて、IoT(モノのインターネット)が活用されるケースも増えています。さまざまな機器・設備に設置されたセンサーなどを通じて、従来は測定が困難だった顧客のデータや行動履歴を収集可能です。これにより、さらにきめ細かなマーケティング活動を展開できます。
一例として、プリンターにIoT機能を搭載することにより、インク残量が少なくなってきたタイミングで購入を促すメールやDMを送るといった施策が想定されます。企業にとっては顧客のニーズが顕在化する時期を見極めやすくなることに加え、顧客にとっては最適なタイミングで必要な商品・サービスの提供を受けられる点が大きなメリットです。パーソナライズされた顧客体験が求められつつある中、IoTのデジタルマーケティングへの活用は今後ますます進んでいくでしょう。
デジタルマーケティングの活用例

デジタルマーケティングを効果的に取り入れている2社の事例を紹介します。
自動車業界での活用例
活用例
自動車業界におけるデジタルマーケティングの活用例として、コネクテッドカーが挙げられます。コネクテッドカーとは、センサーを搭載しインターネットと高度に結びついている自動車のことです。運転状況がリアルタイムで送信され、ディーラーは各ユーザーの状況を把握できます。
得られるメリット
ディーラーへ送信された情報を元に、最適なタイミングでユーザーに点検や消耗品の交換などのアプローチがしやすくなる点が大きなメリットです。また、車両の位置情報や速度の情報をビッグデータとして蓄積し、渋滞情報に活用することなども検討されています。
小売業での活用例
活用例
多くの紳士服量販店では、色やサイズの違う紳士服(とくにビジネススーツ)を大量にディスプレイして販売しています。ビジネススーツは形がほぼ決まっているため、顧客は色や材質の違いに個性を求めるためです。そのため紳士服量販店は大規模な店舗を構えねばならず、店舗の建設費や人件費が経営を圧迫していました。
現在ではWebサイトから顧客にあらかじめ洋服の種類や色を選んでもらい、実店舗では試着と採寸のみを行うといったサービスが始まっています。
得られるメリット
顧客にとっては、実店舗で希望の洋服を確実に試着できるようになり、効率的に買い物ができるという利便性があります。紳士服量販店にとっては、オーダーのあった商品のみを顧客の来店時に準備しておけばよいため、ディスプレイや在庫の削減、店舗を小型化できる点が大きなメリットです。
デジタルマーケティングを導入する際のポイント

デジタルマーケティングを効果的に取り入れるためのポイントを紹介します。
市場調査の実施
デジタルマーケティングにおいても、従来のマーケティング戦略と同様に市場調査が欠かせません。自社側の先入観や願望にもとづく施策の推進に終始することのないよう、まずは市場の実態を把握しておく必要があります。
具体的には、アンケート調査やグループインタビュー、覆面調査などの方法によって既存顧客や生活者の声を収集していくことが大切です。その上で調査結果を分析し、現状における自社の立ち位置や他社と比較した場合の強みを明らかにしていきます。デジタルマーケティングの手法ありきで戦略を構築するのではなく、自社の強みを効果的にアピールするための施策を検討していくのがポイントです。
カスタマージャーニーの作成
顧客満足度の向上を実現するには、カスタマージャーニーを作成しておくことが大切です。カスタマージャーニーとは、顧客が商品の検討から購入、使用、消費までのプロセスを指します。顧客エンゲージメントを強化する上で、カスタマージャーニーの質を高めていくことは欠かせないポイントです。
デジタルマーケティングでは、さまざまなデジタルデバイスが顧客接点の入り口(チャネル)として活用されます。「便利だった」「時間が節約できた」「また利用したい」といった顧客の生の声をデータとして収集し、次の施策に活かしていくことが重要です。デジタルマーケターには、さまざまなデバイスやデータを理解し、「カスタマージャーニー」を包括的な顧客体験として考える資質が求められます。
マーケティング戦略の設計
デジタルマーケティングにおいても、綿密なマーケティング戦略の設計は不可欠です。誰に・何を・どのような価格帯で・どのように提供するのか、といった点を十分に検討しておく必要があります。
マーケティング活動の主な目的として、自社やその商品・サービスを「どう見てほしいのか」といった狙いと、ターゲットが実際に「どう見ているのか」を一致させることが挙げられます。つまり、マーケティング戦略を設計する際にはそもそも自社およびその商品・サービスを「どう見てほしいのか」を明確にしておかなくてはなりません。その上で、ターゲットに何をどのような手段で伝えていくのかをデザインしていくことが大切です。デジタルデバイスやツールの活用は、そのための手段の1つとして位置づけるべきでしょう。
チャネル間のデータ統合
複数のチャネルを通じて得られたデータを統合することは、デジタルマーケティングを成功させる上で非常に重要なポイントです。顧客との接点となる各チャネルには、膨大なデータが発生します。量だけでなく、顧客の好みや購買履歴をはじめ、来店時間や購買の時間、天気の情報や人口統計まで、その種類は非常に広範囲に及ぶでしょう。
データを効率的に整理・統合することで、顧客の次の行動把握やライフサイクルに合わせたタイムリーな販促活動に活かせます。顧客満足度を向上させていくためには、統一感のある、よりパーソナライズされたマーケティング手法が必要です。各チャネルを通じたデータの収集・統合は、デジタルマーケターにとって重要な戦略決定材料となります。
社内外の体制構築が成功の鍵
デジタルマーケティングの普及に伴い、専門性が高まることを予測して専門部署をつくるなど、対応を急いでいる企業が増えています。部署だけでなく、デジタルマーケティングを牽引していくデジタルマーケターの育成も、重要な課題の1つです。
ただし、このような広範囲にわたる専門知識の習得やテクノロジーの利用は、もはや数人の担当者や自社だけではカバーしきれないことも考えられます。現実的には、デジタルマーケティングにノウハウを有するパートナーとコラボレーションしていくことがその対策になるでしょう。
デジタルマーケティングの実施目的を軸に据えた戦略構築を
デジタルデバイスの普及や新しいテクノロジーの登場に伴い、デジタルマーケティングは急速な進歩を遂げつつあります。今後もさまざまなサービスにおいて積極的に利用され、ビッグデータやAIを活用したレコメンデーション(購買の推奨)システムや、在庫管理の効率化などに寄与していくでしょう。
一方で、デジタルマーケティングはあくまでも数あるマーケティング手法の一部にすぎません。デジタルデバイスやツールの導入を目的化することのないよう、手段である点を念頭に置いて取り組むことが重要です。今回紹介した主な手法や活用例を参考に、ぜひデジタルマーケティングの実施目的を軸に据えて戦略構築を進めてください。
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