ABテストとは?基本的な進め方と成果を上げるコツ・よくある失敗
2025年01月16日 07:00
この記事に書いてあること
ダイレクトマーケティングをはじめ、マーケティング施策の検証においてよく用いられる手法の1つに「ABテスト」が挙げられます。用語としては知っているものの、具体的な実施方法や効果的な進め方を確認しておきたいという方は多いのではないでしょうか。
今回はABテストを実施する際に知っておきたいポイントとして、ABテストの主な種類や比較に用いられる要素の例、基本的な進め方、成果を上げるコツについてわかりやすく解説します。ABテストの成功事例やよくある失敗例も挙げていますので、ぜひ参考にしてください。
ABテストとは
はじめに、ABテストに関する知識を整理しておきましょう。基本的な検証の仕方と、実施する目的をきちんと押さえておくことが大切です。
制作物を2パターン以上用意して検証するテスト
ABテストとは、同一の期間内にデザインやレイアウトの一部が違う制作物を2パターン以上用意して同時に走らせ、どのパターンのレスポンス率がいいかを検証するテストのことです。ダイレクトマーケティングの実務においては、とくによく用いられる検証方法として知られています。
ABテストはもともと、通販DMやチラシなどに用いられていたテスト方法でした。現代では、自動化されたツールを使って数パターンのクリエイティブを動的に表示し分けるWebの世界で発展し続けています。一定規模以上の来訪者数のあるサイトであれば、紙媒体よりも早いサイクルでABテストを実施でき、仮説検証のサイクルをより短くすることも可能です。
ABテストを実施する目的
ABテストを実施する目的は、クリエイティブの最適化と費用対効果の最大化にあります。ダイレクトマーケティングにおいて顧客とコミュニケーションを図る最大の目的は、ブランドや商品に対する顧客の認知や態度を変容させ、行動を起こさせることです。資料請求、会員登録、試供品の申し込み、商品購入といった行動をさらに促す画像・ボタン・テキストリンクなどのクリエイティブパターンの最適化を図り、費用対効果の改善につなげることを目指しています。
ABテストの主な種類
ABテストと一口に言っても、検証方法によっていくつかの種類があります。主な種類として挙げられるのは下記の4点です。
- ・同一URLテスト
- ・リダイレクトテスト
- ・複数ページテスト
- ・多変量テスト
それぞれの検証方法について具体的に見ていきましょう。
同一URLテスト
WebサイトのURLは変えずに、サイトの見た目などURL以外の要素のみを変えて実施する検証方法です。Webサイトのソースコードを変更する必要がなく、比較的容易に実施できることから、ABテストにおいてよく用いられる手法となっています。
リダイレクトテスト
Webサイトのページを訪れたユーザーを別のURLにリダイレクトして検証する方法です。リダイレクト先のページを新たに制作する必要があるものの、さまざまなパターンを柔軟にテストできる点がメリットといえます。前述のURLテストではサイトのソースコードを変更しないのに対して、リダイレクトテストではソースコードも変更する点が大きな違いです。
複数ページテスト
複数のページにわたって比較検証したい場合に用いられる手法です。対象となるページだけでなく、そのリンク先も検証の対象となります。ページ間の遷移状況やページ内の導線もあわせて検証できるため、コンバージョンにつながる導線を見極めたい場合に適した検証方法です。
多変量テスト
ABテストでは1つの要素のみ条件を変えて検証するのが基本的な進め方ですが、あえて複数の変更箇所を設けて比較する場合もあります。これが多変量テストと呼ばれる手法です。一度に多くの要素を検証できる点がメリットですが、一方で結果の差がどの要素によって導き出されたものかを判断するには条件を変えて検証を繰り返す必要があります。そのため、検証期間を十分に確保できる場合に用いるのが得策です。
ABテストで比較に用いられる要素の例
ABテストでは、コンバージョン率の向上につながりやすいポイントが比較する要素として選ばれる傾向があります。とくによく用いられる要素として挙げられるのは下記の5点です。
ファーストビュー
ファーストビューとは、そのサイトにアクセスしたユーザーが最初に目にする部分のことです。サイトの入り口に相当するため、ユーザーが受ける第一印象を大きく左右します。よって、第一にABテストを実施しておきたい要素といえるでしょう。
CTAボタン
CTA(Call To Action)ボタンとは、申し込みや資料請求といったユーザーの行動を促すためのボタンのことです。コンバージョンに大きく影響する要素であることから、ABテストにおいてもしばしば検証すべき要素として挙げられます。コンバージョンの改善を図りたい場合には、必ず検証を実施しておきたい要素の1つです。
見出し・タイトル
コンテンツの見出しやタイトルは、ユーザーが自分にとって必要な情報かどうかを判断する際に参考にする要素です。そのため、ユーザーニーズに合った情報を提供できているかを検証する際にABテストの対象となるケースが多く見られます。実際、内容は同じでも見出しやタイトルを変更したことで成果が伸びるケースは少なくありません。
導線
導線とは、ユーザーが必要な情報に到達するまでの道筋のことを指します。導線が最適化されていないWebサイトでは、離脱率が高くなったり回遊率が下がったりしがちです。ユーザビリティの向上や離脱率・回遊率の改善を図りたい場合に検証を実施しておきたい要素といえます。
入力フォーム
入力フォームは、ユーザーが行動する上での最終局面に当たる要素です。入力フォームの項目数が多すぎたり、ユーザーにとって答えにくい項目が続いたりすると、離脱する原因にもなりかねません。検討度合いの高いユーザーの離脱を回避したい場合には、必ず検証しておくべき要素といえます。
ABテストの基本的な進め方
ABテストにはさまざまな種類があり、検証する要素もさまざまですが、いずれも基本的な進め方は共通しています。ABテストの基本的な流れは下記のとおりです。
1. ABテストを実施する目的を明確にする
はじめにABテストをなぜ実施するのか、目的を明確にしておく必要があります。仮説立てや検証・評価を行うには、「何に対する仮説なのか」「何を検証・評価しているのか」という軸が必要です。
たとえば、CTAボタンのクリック率を改善したいのか、さらにその先にあるコンバージョンを改善したいのかによって、検証すべき要素や評価のポイントは大きく異なります。コンバージョンの改善が求められている場面で、クリック率ばかりを比較していても根本的な改善策にはつながりません。このように、まずはABテストを実施する目的を明らかにし、比較検証の軸を定めておくことが大切です。
2. 検証すべき箇所を特定する
次に、目的に即した検証箇所を絞り込んでいきます。検証すべき要素は、目的を達成するためにボトルネックとなっている可能性が高いと考えられる箇所です。該当する箇所を改善することによって、高い効果が見込まれる要素を優先的に検証する必要があります。
一例として、ユーザーの離脱率が高い箇所を分析することは、検証すべき要素の特定に役立ちます。入力フォームまで到達するユーザーの割合が高いものの、入力フォーム画面で離脱するユーザーが少なくないとすれば、検証すべき要素は入力フォームと考えられるでしょう。このように、ボトルネックとなっている箇所を特定することが重要です。
3. 仮説を立ててテストパターンを作成する
ボトルネックが生じている原因について仮説を立て、仮説を検証するためのテストパターンを作成します。ABテストを実施する目的の設定や仮説すべき箇所の特定に問題がなかったとしても、この仮説立てを誤ってしまうと導き出される改善策も大きくずれてしまうおそれがあるため注意が必要です。
的確な仮説を立てるには、自社のペルソナに対する深い理解が不可欠です。ペルソナの行動や行動を支える思考・感情を理解することによって、なぜその問題が生じているのかが理解できます。ペルソナの視点に立って仮説を立てていくのがポイントです。
4. ABテストを実施する
テストパターンを使って実際にABテストを実施します。実施する際にはツールを使用し、ランダムにユーザーを振り分けて各テストパターンを表示させるのが一般的な方法です。
ABテストの正確性を担保するには、最短でも2週間程度のテスト期間を必要とします。数日間などごく短期間でABテストを実施した場合、サンプルの傾向が偏ってしまうリスクがあるからです。
5. 結果を検証して改善策を検討する
ABテストの結果をもとに、仮説との差異を検証します。仮説どおりだった場合も、仮説とは異なる結果が出た場合も、なぜその結果が出ているのかをじっくりと検証することが重要です。
検証を通じて導き出された結論を踏まえて改善を図ったとしても、必ず改善効果が表れるとは限りません。異なる要素を比較することにより、予想とはまったく異なる検証結果が出るケースも珍しくないからです。ABテスト→結果の検証→改善のサイクルを繰り返し、小さな改善を積み重ねていくことが求められます 。
ABテストの成果を上げるコツ
ABテストの成果を引き出すには、実施方法や検証の進め方のコツを押さえておくことが大切です。次に挙げる5つのコツを実践していきましょう。
同時期に実施する
ABテストで特定の要素を比較する場合、同時期に集中的に実施することが大切です。時期をずらして実施した場合、ABテストを行ったタイミングの違いが結果に影響を与える可能性があります。
わかりやすい例では、ECサイトにおいてユーザーの購買意欲が給与支給日の前後で大きく変化するケースは珍しくありません。ABテストの実施時期が給料日の前後に分かれていたとしたら、購買意欲の前提条件が異なる状態で結果が導き出されることになります。実施時期の違いは複数の前提条件が変化する要因となりやすいため、必ず同時期に実施することが重要です。
2週間以上の検証期間を確保する
ABテストの検証期間は少なくとも2週間は確保する必要があります。短期間の検証ではサンプルとなるユーザーの傾向に偏りが生じるおそれがあり、結果の信憑性が十分とはいえないおそれがあるからです。
実際にABテストを実施してみると、日によって結果が異なるケースは少なくありません。検証期間を一定以上確保することによって、こうした日々の変動を平準化する効果が期待できます。
適切なユーザー数を確保する
ABテストに限らず、調査や検証を行う際には一定以上のサンプル数を確保することが重要です。対象となるユーザー数が少なすぎると、偶然にも極端な行動を取るユーザーがサンプルに含まれている確率が高まります。
別の見方をすると、サイトのアクセス数が少ないなど一定のユーザー数を確保できない状況であれば、ABテストを実施できる段階にないと言わざるを得ません。まずはアクセス数を改善する施策に取り組んだ上で、次の段階として成果を高めるためのABテストに取り組むという手順を必要があるでしょう。
検証は一度につき一箇所とする
ABテストで検証する要素は、一度につき一箇所に絞るのが基本です。複数の要素を同時に検証しようとすると、どの要素が結果に影響をもたらしたのか判断しにくくなってしまいます。たとえば、見出しなら見出しのみ、CTAボタンならCTAボタンのみ変更を加えたテストパターンを用意しましょう。
複数の要素を組み合わせて実施する多変量テストという手法も存在しますが、このような方法で検証を行うには対応する機能を備えたツールの活用が不可欠です。
分析ツールを活用する
ABテストの結果を適切に検証するには、アクセス解析ツールやヒートマップツールといった結果を可視化するためのツールを活用することをおすすめします。単に結果が「よかった」「よくなかった」ということだけがわかっても、なぜその結果が導き出されたのか具体的な要因を特定できない状態に陥りがちです。定量的な分析が可能なツールを駆使することで、ABテストの結果をより客観的に分析しやすくなるでしょう。
ABテストのよくある失敗例
ABテストのよくある失敗例を紹介します。次に挙げるパターンに陥らないよう、あらかじめ対策を立てた上で検証していくことが大切です。
長期的な視点でリソースを確保していない
ABテストは長期にわたって繰り返し実施していく必要がある取り組みです。短期的には大きな問題がないように見えたとしても、長期にわたる検証が担当者にとって大きな負担となることが想定されます。
社内でリソースを確保する場合、現実的には他業務と兼務するメンバーが大半を占めることになりがちです。ABテスト以外の業務が忙しい時期に入れば、リソース不足に陥る可能性は十分にあります。社内で運用する負担が大きいようなら、外部委託も視野に入れて検討しておく必要があるでしょう。
仮説立てが画一化する
ABテストを適切に実施するには仮説立てが重要なポイントとなるものの、自社内で仮説を立てるのには限界があります。課題の解決策を模索するためにABテストを実施するのであって、はじめから解決方法の見当がついていればそもそもABテストの必要性そのものがなくなってしまうからです。
必要に応じてユーザーを対象とした調査を実施するなど、仮説立てに役立つ情報を定期的に収集することをおすすめします。調査結果をもとに新たな視点を得ることにより、仮説を立てる際の着眼点が画一化されるのを回避しやすくなるでしょう。
一度に大きな改善効果を求めてしまう
ABテストは、一度実施しただけで成果につながる有効な改善策が導き出せるとは限りません。前述のとおり、ABテストを実施するタイミングによって結果が大きく変動することも決して珍しくないからです。
一度に大きな改善効果を求めず、ABテストを繰り返しながら地道に改善を重ねていくことが重要です。仮説が「正しかった」「正しくなかった」ということに一喜一憂するのではなく、徐々に改善の糸口を探っていくスタンスで臨むことが重要です。
ABテストの成功事例
ABテストを通じて施策の改善を図り、成功を収めた事例を紹介します。具体的にどのような要素について検証し、どのような結果を得たのかを知ることは、ABテストのモデルケースにもなるはずです。
事例1:多変量テストでLPを改善
金融サービスを展開する企業では、自社サービスの新規顧客を創出するためにLPの改善に取り組みました。その一環として、コンバージョンボタンをABテストにて検証しています。具体的に検証した条件は下記のとおりです。
- ・コンバージョンボタンの色
- ・コンバージョンボタンの形
- ・ボタン内テキストの文言
まずはコンバージョンボタンの勝ちパターンを把握した上で、ボタンに付随する商品画像の大きさやコンテンツを表示する順序、店舗ロゴの有無といった要素の検証を進めました。計画的に検証を進め、改善を重ねた結果、CVRを約120%改善することに成功しています。
事例2:複数ページテストでバナー広告を改善
PCの製造・販売を手がける企業では、自社のノートPCを販売するにあたってバナー広告のABテストを実施しました。用意したバナー広告のテストパターンは下記の2種類です。
パターンA:ユーザーの用途に合わせてカスタマイズできるという趣旨の文言
パターンB:ストレージ容量を増やす無料サービスが利用できるという趣旨の文言
検証の結果、パターンAはパターンBと比べてコンバージョンにつながる割合が高く、ユーザーニーズを捉えていることがわかりました。ユーザーにとってのメリットを直接的に訴求しているパターンBよりも、カスタマイズ性の高さを打ち出したパターンAの方がニーズに合致していることは、ABテストを実施したからこそ導き出せた結論です。
ABテストのコツをつかんで効果的に検証を進めよう
ABテストは効果的な検証方法ではあるものの、実施方法を誤ると信頼できる検証結果が得られないおそれがあります。よって、ABテストを実施する意義や基本的な進め方を把握した上で取り組むことが重要です。今回紹介したABテストのコツや成功事例を参考に、ぜひ効果的な改善策につながるABテストを取り入れてください。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「ダイレクトマーケティングラボ」では、デジタルと紙の特性を理解しているリコーが、販売促進やマーケティングに携わるすべての方に、企業と顧客との最適なコミュニケーション施策のヒントをお届けします。
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