OMOとは?オムニチャネルやO2Oとの違い、効果的な活用方法を徹底解説!
2024年12月06日 07:00
この記事に書いてあること
近年、マーケティングにおいて「OMO(Online Merges with Offline)」という用語をよく目にするようになりました。OMOとはどのような手法を指しているのか、取り入れる効果やメリットが気になっていた方も多いのではないでしょうか。
今回は、OMOが重要視される主な理由や取り入れるメリット・デメリット、導入効果を高めるための対策についてわかりやすく解説します。OMOの具体的な成功事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
OMOとは
はじめに、OMOの基本的な定義について解説します。オムニチャネルやO2Oといった、関連するマーケティング用語との違いを押さえておくことが大切です。
オンラインとオフラインを統合させるマーケティング手法
OMOとは、オンラインとオフラインの統合を図るマーケティング手法のことです。たとえば、店舗やカタログ、サポートセンターといったオフライン施策と、ECサイトやスマホ決済、SNS、ブランドサイトといったオンライン施策を統合し、顧客データの一元管理が可能な仕組みを実現することを指します 。
OMOの重要なポイントとして、徹底した「顧客目線」「顧客体験志向」に根差している点が挙げられます。企業側の都合で顧客情報を一元化するのではなく、顧客にとってより快適で最適化された購買体験を実現することがOMOの本質的な目的です。
オムニチャネルとの違い
オムニチャネルとは、店舗やWebサイト、カタログやコールセンターなど、あらゆる販売・流通チャネルをシームレスに統合し、顧客接点をさまざまな場面で創出しようとする戦略のことです。
オムニチャネルの特徴として、顧客接点を企業側の視点から重視している点が挙げられます。OMOが顧客目線にもとづいて購買体験の向上を図ることを目指す戦略であるのに対して、オムニチャネルは顧客接点を強化するために企業側の視点で講じられる戦略という点が両者の大きな違いです。
O2Oとの違い
O2Oは「Online to Offline」の略です。インターネット(オンライン)の情報を駆使して、実店舗(オフライン)での購買行動へと導くことを目指すマーケティング戦略を指します。
OMOとの大きな違いとして、O2Oはあくまでもオフラインを主体とした戦略という点が挙げられます。オンラインは実店舗への送客手段の1つであり、最終的な目的は実店舗での購買と捉えている点が大きな特徴です。一方、OMOではオンラインとオフラインのどちらがメインの販路といった区別はなく、両者を融合させることで顧客体験の向上を目指している点が大きく異なります。
OMOが重要視される3つの理由
近年、OMOに注目が集まっている背景には、主に3つの理由があります。
- ・理由1:オンラインでの購買活動が活況になりつつある
- ・理由2:消費者の購買行動が変化している
- ・理由3:テクノロジーの発展
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由1:オンラインでの購買活動が活況になりつつある
近年、「オンラインで買い物をする」という体験は日常的なものとなりつつあります。スマートフォンやタブレットを使って気軽に商品を選び、購入できる仕組みが十分に整いつつある状況といえるでしょう。
こうした時代においては、商品の販路を実店舗に限定する必要はありません。むしろ、オンラインでもオフラインでも商品を選び、購入できる仕組みを提供することが、顧客体験の向上につながる可能性が高いといえます。オンラインでの購買活動が活況になりつつあることは、OMOが重要視される理由の1つです。
理由2:消費者の購買行動が変化している
消費者の購買行動が変化していることも、OMOが必要とされている理由といえます。消費者にとって、求める商品を手に入れるための手段は「実店舗を訪れる」こととは限りません。同じ商品がECサイトで販売されていれば、店舗まで出向く時間や手間を省きつつ商品を入手できます。反対に、オンライン上では実感しにくい商品の質感や重さ、手触りなどを確認したい場合には、店舗で実物を確認する場合もあるでしょう。このように、消費者にとって都合のよい購買手段を自由に選べる仕組みを提供することは、消費者の購買行動に合わせていく上で重要なポイントです。
理由3:テクノロジーの発展
キャッシュレス決済のユーザビリティが向上し、誰もが利用しやすくなったこともOMOが重要視される理由の1つです。かつては買い物をするには「実店舗で現金を支払う」か、「通販などで代金を振り込む」といった方法を選ぶ必要がありました。キャッシュレス決済が普及したことにより、実店舗でもECサイトでも同じ決済手段を活用できます。また、キャッシュレス決済が直感的に利用しやすいUIになったことも、利用者の増加を後押ししている一因です。このように、テクノロジーの発展によってOMOの仕組みがより身近になったことも、OMOが注目されている理由といえます。
OMOを取り入れるメリット
OMOを取り入れることによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。とくに企業側にとってのメリットを中心に見ていきましょう。
消費者のニーズを把握しやすくなる
オンラインとオフラインで収集した顧客情報を一元管理できるようになることで、消費者のニーズを把握しやすくなります。オンラインでの購買行動とオフラインでの購買行動がひも付けられ、同一の消費者として管理・分析できるようになるからです。
OMOの手法を取り入れていない場合、たとえば自社のECサイトで買い物をした顧客と、実店舗で買い物をした顧客が同一人物かどうかを判別する手段がありません。そのため、ECサイトで購入したばかりの商品を実店舗でPRしてしまうといったことが起こり得ます。こうした情報の分断を防げることは、OMOを取り入れるメリットの1つです。
顧客体験の向上につながる
オンラインとオフラインが統合されることは、顧客体験の向上にも寄与します。前に挙げた例のように、オンラインでの購買体験を店舗が把握していないことによって生じるデメリットは、販売機会の喪失だけではありません。顧客にとって「すでに購入した商品を再びすすめられる」という体験は、決して心地よいものではないからです。
反対に、オンラインとオフラインでの購買行動を把握することにより、顧客が真に求めている商品をより的確に提案できる可能性が高まります。結果として顧客体験が向上し、企業に対する信頼や愛着が深まっていくでしょう。
機会損失のリスクを低減できる
機会損失のリスクを低減できることも、OMOを取り入れる重要なメリットの1つです。購入したという事実だけでなく、購入に至るまでの行動や購入後の行動も含めて分析可能になることで、購買意欲が高まったタイミングを逃しにくくなります。
たとえば、ECサイトで繰り返し同じ商品ページを閲覧している消費者は、その商品の実物を確認するための店舗を訪れている可能性があります。このとき、オンラインでの行動を把握していなければ無関係の商品を提案してしまいかねません。消費者のニーズを的確に見極め、機会損失のリスクを抑えられることは、OMOを取り入れる大きなメリットといえます。
LTVの最大化が期待できる
OMOはLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の最大化にも効果を発揮します。LTVを最大化するには、同じ顧客に繰り返し商品を購入してもらったり、より単価の高い商品を選んでもらったりすることが重要です。オンラインとオフラインの情報が統合されることにより、顧客ごとにパーソナライズされた購買体験を提供しやすくなります。結果として他店で購入するよりも、同じ店舗・ECサイトを利用し続けた方が顧客にとってメリットが大きいと感じられるでしょう。
国内人口が減少しつつある今、顧客ごとのLTVを高めていくことは安定的な売上を確保する上で重要なポイントです。LTVの最大化が期待できることは、OMOを取り入れるメリットの1つといえます。
OMOを取り入れるデメリット
OMOにはデメリット面もあります。メリットだけでなく、デメリットも把握した上で取り入れるべきか判断することが大切です。
事業内容によって向き不向きがある
OMOはどのような事業内容にもフィットするとは限りません。たとえば、実店舗で現物を見なければ購買に至らない商材を取り扱っているようなら、オンラインとオフラインを融合させる施策はあまり現実的とはいえない場合があります。
また、オンラインのチャネルが店舗ホームページのみの場合など、顧客接点を創出する仕組みとして十分とはいえない場合も、OMOを取り入れる効果はあまり期待できません。このように、OMOは事業内容や現状のチャネルによって向き不向きがあるのが実情です。
短期的な効果は期待できない
OMOは取り入れれば即座に効果が出る施策ではありません。オンライン・オフラインでそれぞれ収集した顧客情報を統合したのち、データを一定期間分析する必要があるからです。よって、OMOは長期的な運用を見据えて取り入れることが前提となります。今すぐに売上伸長を図りたい場合や、集客につながる即効性のある施策を求めている場合には、OMOは優先度の低い取り組みといえるでしょう。
仕組みの構築に工数がかかる
OMOを実現するための仕組みを構築するには、相応の工数とコストがかかる点もデメリットの1つです。データベース構築や各種分析ツールの導入・運用が必須となるため、新たにツールやシステムを導入しなくてはなりません。また、運用には知識やスキルが求められることから、社内に対応できる人材が在籍していない場合には新たな人材の確保を検討することになるでしょう。このように、導入するには一定の工数がかかることを念頭に置いて取り組む必要があります。
社内体制の整備が求められる
OMOによって統合された顧客データを活用するには、社内体制の整備も不可欠です。顧客データの管理運用のための体制を整えるほか、データを活用した実店舗での接客や顧客対応を実践していくためのアニュアルなども準備する必要があります。
OMOを取り入れるにあたって避けなくてはならないのは、データが統合されたものの実際には活用されていないといった状況です。こうした事態に陥るのを防ぐためにも、OMOを効果的に運用していくための体制構築が求められます。
OMOの効果を高めるための対策
OMOの導入効果を高めるために講じておきたい対策について解説します。オンラインとオフラインのデータを統合するメリットを最大限に引き出すには、次の4点を実践していくことが重要です。
販売経路のマルチチャネル化
1つめの対策は、販売経路のマルチチャネル化です。複数のチャネルで販促・販売が可能な状態にしておくことで、OMOのメリットを活かせます。
マルチチャネル化を図る際に意識しておきたいのが「顧客視点」です。単にチャネルを増やすのではなく、顧客接点として効果的なチャネルを増やしていく必要があります。カスタマージャーニーマップを作成し、商品を認知してから購買に至るまでのプロセスを可視化しましょう。その上で、どのような顧客接点が求められているのかを逆算して考えていくのがポイントです。
ツールの適切な活用
OMOには各種ツールの活用が不可欠です。CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)といったツールの特性を理解し、効果的に活用していく必要があります。また、決裁システムの導入をはじめ、実店舗に設置するセンサーなど、顧客の利便性向上を図るためのツールを取り入れていくことが重要です。
現実的には予算の都合上、すべてのツールを導入できるとは限りません。自社にとって必要なツールの優先順位を見極め、とくに優先度の高いものから順次導入していくことをおすすめします。
現場担当者の育成
OMOの効果を高めるには、現場担当者を育成していくことも大切なポイントといえます。OMOはあくまでも顧客体験の向上を図るための施策です。店舗での接客や顧客対応がおろそかになってしまうようでは、本末転倒といわざるを得ません。
たとえば、ECサイトにおける顧客行動をデータからどのように読み取ればよいのか、読み取ったデータを実店舗での接客にどう活かすべきか、といった点を接客マニュアルに落とし込んでおく必要があります。顧客接点として極めて重要な実店舗での接客を、現場任せにしないことが大切です。
顧客体験の向上につながる店舗づくり
OMOの効果を高めるには、実店舗での顧客体験そのものを向上させていくことも重要です。接客のあり方や顧客対応に対する考え方をあらためて見直し、顧客視点での対応ができているか現場のスタッフとともに考える場を設けることをおすすめします。
接客について顧客の立場から考えるためのワークショップを開催したり、実際の顧客対応を想定したロールプレイングを取り入れたりするのもおすすめの方法です。店舗スタッフが「頭では理解していても、いざ顧客を目の前にすると実践できない」といった状況に陥らないよう、実践的な研修の場を設けましょう。
OMOの成功事例3選
OMOの成功事例を紹介します。各社がどのようにOMOの仕組みを活用し、顧客体験の向上を図っているのかを知るとともに、自社で取り入れられる施策を検討する際のヒントにしてください。
事例1:オンラインショールーム
家具やインテリア用品の製造・販売を手がける企業では、自宅にいながらショールームのスタッフに相談できる仕組みを取り入れました。実際にショールームを訪れる前に相談しておくことで、顧客は自分に合った家具やインテリア用品をイメージしやすくなります。
また、ショールーム現地にもタブレット端末を設置し、リモートで別店舗のスタッフに相談できる仕組みを導入しています。これにより、担当者がすぐに接客対応できない場合にも顧客を待たせることなく、きめ細かな対応ができるようになりました。
事例2:スタイリングのパーソナライズ
衣類のセレクトショップを展開する企業では、実店舗の会員データとECサイトのアカウントをひも付けることにより、顧客管理の一元化を図っています。オンラインとオフラインで一貫性のあるサービスを提供することにより、顧客のニーズをより的確に捉えたサービスを提供するための仕組みです。
実店舗・ECサイトを問わず、商品購入後にはスタイリングの提案をすることで、購入後も顧客とのつながりを保つことに成功しています。パーソナライズされた購買体験を提供することにより、顧客エンゲージメントの向上を実現している好例です。
事例3:購買データを活用した動画広告
小売業を対象としたコンサルティング会社では、POSデータに購入者情報を付加することにより、各店舗の近隣に住む顧客向けの動画広告を配信しています。POSデータにはどの商品をどの顧客が購入したのかが反映されているため、購入履歴を元に配信する動画広告を出し分けられるという仕組みです。
この試みにより、男性用化粧品の売上が顕著に伸びるなど、パーソナライズされた広告施策の効果が表れ始めています。求めていた情報をタイミングよく提供されることによって、購買意欲が刺激されることを示す好例といえるでしょう。
OMOを効果的に取り入れて顧客体験の向上を図ろう
消費者のライフスタイルが多様化し、購買行動も細分化が進む現代において、OMOを取り入れたマーケティング施策の重要性は今後ますます高まっていくと考えられます。消費者の暮らしに密着し、一人ひとりの興味関心や価値観に沿った施策を実行していくことが求められているからです。今回紹介したOMOの効果や成功事例を参考に、ぜひ顧客体験の向上を図る施策を取り入れてください。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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