
パーソナライズとは?意味やメリット、取り入れる際の注意点と活用事例を紹介
2024年09月04日 07:00
この記事に書いてあること
現代のマーケティングにおいて欠かせない手法の1つに「パーソナライズ」があります。パーソナライズという言葉自体は聞いたことがあるものの、具体的に何を指しているのか、取り入れるメリットはどのような点にあるのか、疑問に感じていた方も多いのではないでしょうか。
今回は、パーソナライズの概要と求められる理由、取り入れるメリット・注意点についてわかりやすく解説します。パーソナライズの精度を高めるツールや、具体的なサービス事例とあわせて見ていきましょう。
パーソナライズとは
はじめに、パーソナライズの概要を解説します。カスタマイズやレコメンドといった仕組みとの違いをしっかりと理解しておくことが大切です。
一人ひとりに合わせて最適な情報やサービスを提供すること
パーソナライズとは、個々の行動履歴や購買履歴に応じてサービスやコンテンツを提供することを指します。たとえば、ECサイトで商品を購入後、同ジャンルの商品や関連商品が「おすすめ商品」として表示されるといったことは、多くの方が経験しているのではないでしょうか。このように、顧客一人ひとりに合わせて最適な情報やサービスを提供するのがパーソナライズの基本的な考え方です。
カスタマイズとの違い
カスタマイズとは、顧客自身が欲しい情報や自分の好みに合わせてサービスなどを設定することを指します。たとえば、ニュースサイトなどでユーザーが求める情報が優先的に表示されるよう、「お気に入り」などを登録するのはカスタマイズの好例です。
一方、パーソナライズはサービスなどの提供企業側がユーザーの好みや購買行動を分析し、一人ひとりに合った情報やコンテンツを提供することを指します。主導権がユーザー側にあるのがカスタマイズ、企業側にあるのがパーソナライズと考えて差し支えないでしょう。
レコメンドとの違い
レコメンドとは、コンテンツを提供する側がユーザーの属性などをもとに判断する「おすすめ」機能のことを表します。動画配信サービスの「おすすめ動画」や、ECサイトの「おすすめ商品」が表示されるのは、レコメンド機能によるものです。
パーソナライズとレコメンドは一見するとよく似ていますが、ユーザーを分類する際の考え方が大きく異なります。レコメンドの場合、似たような傾向があるユーザーに向けてグループ単位で情報を提供する方法が一般的です。これに対して、パーソナライズではユーザー一人ひとりの行動傾向を分析した上で情報を提供します。
パーソナライズが求められる理由
近年、パーソナライズを取り入れるサービスが増えつつあります。なぜパーソナライズは多くのサービスに求められているのでしょうか。主な理由として、下記の4点が挙げられます。
最大の理由は「消費者ニーズの多様化」
パーソナライズが必要とされる最大の理由として、消費者ニーズが急速に多様化していることが挙げられます。消費者一人ひとりがスマートフォンを所有し、個別に情報を収集できる現代においては、万人向けの施策は効力を失いつつあるのが実情です。顧客それぞれの趣味嗜好や行動などにもとづいた情報を提供し、よりきめ細かくニーズに応えていくことが求められています。消費者は「多くの人におすすめ」の情報を得たいのではなく、「私にとって必要な情報」を得たいと考えていることが、パーソナライズが普及している大きな要因といえるでしょう。
BtoBで求められるパーソナライズ
BtoBにおいては、見込み客を育成するインバウンド型の施策において、優良顧客の育成にパーソナライズが活用されています。見込み客のニーズや検討度合いに合わせた情報を提供していくことにより、信頼関係が深まり購買意欲を高める効果が期待できるからです。自社に適した情報が提供されることにより、企業担当者は「自社のことを第一に考えてくれている」「自社のニーズをよく理解している」と感じるため、発注先の有力候補に挙がることが期待できます。
BtoCで求められるパーソナライズ
BtoCにおいては、個人消費者の離脱抑制と継続的な利用を促すための施策として活用されています。今まさに欲しいと思っていた商品が提示されたり、自分の好みに合った情報が提供されたりすることによって、消費者は他サービスへと乗り換えるよりも現状のサービスを利用し続けたほうがよいと感じるようになるでしょう。このように、BtoCにおいては消費者の「囲い込み」をするための施策としてパーソナライズが求められています。
従来のマーケティング手法との相違点
従来のマーケティング手法には、大きく分けて「マスマーケティング」と「マンパワーによるマーケティング」の2つがあります。マスマーケティングとは、不特定多数の生活者に対して情報を発信するマーケティング手法のことです。一方、マンパワーによるマーケティングとはイベント開催や展示会のように人の手で顧客接点を創出する手法のことを指します。これらの手法には、それぞれ下記のようなメリット・デメリットがありました。
パーソナライズは、マスマーケティングとマンパワーによるマーケティングがそれぞれ抱えていたデメリット面を解消し、メリット面を引き出せる手法といえます。
パーソナライズ化によって得られるメリット
パーソナライズ化を推進することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリット5点を見ていきましょう。
ユーザーニーズにきめ細かく応えられる
パーソナライズを取り入れることにより、一人ひとりのユーザーの興味関心に即したサービス提供が可能になります。ユーザーニーズにきめ細かく応えることにより、顧客満足度の向上につながる点が大きなメリットです。
ユーザーは興味のない情報や、欲しいと思わない商品を見たいとは思いません。ユーザーの好みやニーズをより詳細に把握した上で情報を届けることにより、ユーザーに「自分のためのサービス」として認識してもらえる効果が期待できます。
顧客との良好な関係性を構築できる
ユーザーごとに趣味嗜好に合った情報を届けることは、顧客との良好な関係の構築にも寄与します。欲しい情報が素早く手に入る体験は、多くの顧客にとって心地よいものです。ちょうど関心を寄せていた情報がいち早く届けられることにより、顧客はそのサービスに信頼を寄せるようになります。顧客が特定のサービスを利用し続けることにより、趣味嗜好やニーズを知るための情報がいっそう豊富に集まるようになるでしょう。結果として、顧客との間に信頼関係を築けるというメリットがあります。
既存顧客の囲い込みができる
パーソナライズが効果的に機能することによって、既存顧客の囲い込みができるというメリットもあります。ユーザーは自分自身の好みに合った提案を受けられるサービスを繰り返し利用する傾向があるからです。別のサービスに乗り換えた場合、再び自分の好みやニーズを理解してもらわなければなりません。顧客の趣味嗜好やニーズにもとづいた情報が提供されることは、特定のサービスを継続利用する重要な動機となるでしょう。
マーケティング施策の効率が高まる
マーケティング施策の効率が高まることも、パーソナライズがもたらす効果の1つです。一人ひとりにフォーカスして「個客」への理解を深めることにより、収集するデータの精度が高まります。結果として、一人ひとりが求める情報やコンテンツを効果的に提供できるようになるからです。顧客が望んでいない情報・求めていないコンテンツを配信する頻度が低くなり、マーケティング施策が有効に作用するケースが増えていくことが想定されます。
潜在顧客を取り込める
パーソナライズは潜在顧客の取り込みにも効果を発揮する可能性があります。見込み客は必ずしも自身のニーズや課題に気づいているとは限りません。相手の状況や行動から、必要と思われる情報やサービスを提供することにより、見込み客は自身の潜在的なニーズに気づく可能性があります。潜在ニーズから顕在ニーズへと移行したことをきっかけに、購入・利用を検討し始めるケースも少なくないでしょう。
パーソナライズを取り入れる際の注意点
パーソナライズに取り組む際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。パーソナライズ化のための施策が逆効果をもたらすことのないよう、下記の3点に留意して施策を講じていくことが重要です。
情報の偏りによって信頼度が下がる恐れがある
パーソナライズ化を過度に行うと、ユーザーごとに配信される情報の幅が極端に狭くなる恐れがあります。似たような情報ばかりが繰り返し表示されることで得られる情報が画一化されてしまい、かえってユーザーの利便性を低下させることにもなりかねません。結果としてサービス提供事業者に対して不信感を抱いたり、信頼低下につながったりする可能性があります。情報が偏りすぎないよう、パーソナライズされた情報と一般的な情報をバランス良く配信することが大切です。
顧客が本当に望んでいる情報とは限らない
見込み客がある時点で興味関心を寄せていた情報だからといって、将来にわたって関心を抱き続けているとは断定できません。過去の行動データにもとづいてパーソナライズ化したことにより、今現在の興味関心からは外れた情報を提供してしまう恐れがあります。マーケティング施策において、情報は鮮度が重要です。過去に収集したデータを使い回すのではなく、常に新たなデータを施策に反映させていく必要があります。
SEOとの兼ね合いを考慮する必要がある
Webサイト経由で提供される商品・サービスの場合、SEO(検索エンジン最適化)は重要な対策の1つです。一方で、上位キーワードは多くのユーザーのニーズを反映していることから、パーソナライズされた情報との整合性が取れないケースは少なくありません。たとえば、「ソロキャンプ」というキーワードで検索する30代男性が多いからといって、30代男性のユーザーが誰しもソロキャンプに興味があるわけではないのが実情です。上位キーワードに表れているユーザーニーズが、どのユーザーにも当てはまるとは限らない点に注意する必要があります。
パーソナライズの精度を高めるツール
パーソナライズ化を効果的に進めるには、各ユーザーのニーズに即した施策を実行していくためのツールが欠かせません。パーソナライズの精度を高めるツール例を紹介します。
各チャネル施策を統合するMA
MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティング活動を自動化するためのツールのことです。複数の施策を同時並行で実行しつつ、効果検証を適切に実施するには必須のツールといえるでしょう。たとえば、見込み客の行動データから検討段階をスコアリングし、一定以上のスコアに達した時点で商品・サービスの訴求メールを送付する、といった施策を自動化できます。
営業活動にはDSRの活用が有効
BtoBにおけるパーソナライズ施策には、DSR(デジタルセールスルーム)の活用をおすすめします。DSRとは、見込み客との間で情報やコンテンツを共有するための仕組みのことです。見込み客が目にしている情報やコンテンツが把握できていれば、商談の際に既知の情報を重複して提示したり、反対に未知の情報を把握しているものとして話を進めてしまったりするリスクを低減できます。見込み客の意思決定プロセスに最適化した提案をするためにも、DSRを活用して情報共有の精度を高めていくとよいでしょう。
パーソナライズを活用したサービスの事例
パーソナライズを活用しているサービスの事例を紹介します。それぞれの事例における活用方法・効果・参考になるポイントを見ていきましょう。
顧客が『欲しい』商品をおすすめする:Amazon
【活用方法】
ECサイト大手であるAmazonでは、パーソナライズ施策として「レコメンド機能」を提供しています。Amazonで買い物をすると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といった案内が表示されるのがレコメンド機能です。
【効果】
購入した商品と他のユーザーの購買行動の傾向にもとづいてレコメンドを表示することにより、顧客の購買意欲を刺激する効果が期待できます。多くのユーザーが購入している=それだけ価値のある商品ではないか、といった期待値を高められる点が大きなメリットです。
【参考になるポイント】
商品の閲覧履歴や購入履歴、購入頻度といったあらゆる情報をもとに、顧客が求めていると想定される商品を表示していることがポイントです。たとえば、商品をショッピングカートに入れたときや、Kindleで書籍を読む前・読んだ後にレコメンドを表示することにより、顧客の興味関心が高まっているタイミングで効果的に購買意欲を刺激しています。
ユーザーが興味のある記事を表示:ニュース系キュレーションメディア
【活用方法】
キュレーションメディアとは、顧客が興味をもっているジャンルやテーマにもとづき、情報を選定して表示するプラットフォームのことです。代表的なサービスにGunosyやNewsPicksなどがあります。過去に閲覧した記事や連携しているSNSアカウントの情報から、ユーザーが興味をもっている分野をパーソナライズして記事を表示するという仕組みです。
【効果】
ユーザーが今まさに興味をもっている情報が表示されやすくなるため、顧客満足度を高める効果が期待できます。パーソナライズに成功すれば、ユーザーにとって効率よく情報を収集できるメディアとなるため、他のメディアに乗り換えるリスクを抑えられるでしょう。
【参考になるポイント】
日々移り変わっていくニュースやSNSの話題に対して、リアルタイムでユーザーニーズを収集・活用していることがポイントです。顧客の行動データを蓄積して将来的に活用する、というスタンスではなく、情報の即時性を重視することは、パーソナライズを効果的に進める上で重要な視点といえます。
DM発送で2本目の眼鏡の購入が増加:メガネスーパー
【活用方法】
メガネスーパーでは顧客に合わせたDM発送で、2本目の眼鏡購入率を上げることに成功しています。従来は月に2回、眼鏡購入者にお礼状代わりのDMを送付していました。このDMを、眼鏡を購入してから1週間以内に届くように送付のタイミングを変えたのです。
【効果】
購入後に生じる新たなニーズに対応しやすくなる効果が期待できます。購入した眼鏡を使用しているうちに、「遠視用を購入した顧客が、手元用眼鏡の必要性に気づく」「近視用眼鏡の購入者が、運転用に度付きサングラスの必要性に気づく」といったケースは少なくありません。そのタイミングでニーズに合ったDMを送付することにより、2本目の眼鏡の購入率を2倍近く伸ばす成果を上げています。
【参考になるポイント】
購入直後のニーズの変化を捉えていることが、この施策のポイントです。購入までのプロセスだけでなく、購入後も続く顧客との関係構築を重視することは、リピーターの創出に欠かせない視点といえます。購入後のフォローにパーソナライズの要素を取り入れる考え方は、多くの業種で応用できるのではないでしょうか。
パーソナライズはデジタル・アナログを問わず有効な手法
今回紹介した事例にも見られるように、パーソナライズはデジタル・アナログを問わず有効な手法といえます。顧客は「大勢の顧客のうちの1人」として扱われたいのではなく、「自分にとって必要な情報を提供してほしい」と感じているはずです。こうした顧客のニーズを丁寧に拾い上げていくためにも、マーケティング施策にパーソナライズの要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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