一貫性の原理(法則)とは?ハロー効果とともにマーケティングで活用するには?
2017年05月17日 00:00
この記事に書いてあること
【2025年10月22日更新】
私たちの日頃の行動や振る舞いには、意識していないところで深層心理が深く関わっています。「一貫性の原理」「一貫性の法則」と呼ばれる心理効果もそのうちの1つです。
この記事では、一貫性の原理の概要とこの心理効果を活用したテクニック、マーケティングへの活用例をわかりやすく紹介しています。一貫性の原理と同様に、認知バイアスを活用した「ハロー効果」の活用例とあわせて見ていきましょう。
一貫性の原理・一貫性の法則とは
はじめに、一貫性の原理・一貫性の法則とはどのような心理のことを指すのか、基本事項を確認しておきましょう。
行動や発言・考え方に一貫性をもたせたいという心理
一貫性の原理・一貫性の法則とは、人は自分の発言や行動、態度、信念を一貫したものにしたいと内心感じており、それにもとづいて無意識に振る舞う心理のことを指します。一貫した考えをもちたいと意識していなくても、自然と「私の考えや行動には一貫性があるはずだ」と思い込んでいることは、実はめずらしくありません。
たとえば皆さんが洋服を購入する際に、今まで着たことがあるテイストの服と似たアイテムを選んでいることはないでしょうか。服装のテイストを統一させたいと思っていなかったとしても、いつの間にか判断の一貫性を保とうとしている好例といえます。
なぜ人は一貫性を求めるのか
実は、人が一貫性を求める背景には合理的な理由があります。一貫した考え・行動をとることによって、「選択を減らせる」「社会的な評価につながる傾向がある」という2つのメリットを得られるのです。
先ほど挙げた、洋服を購入するシーンの例を考えてみましょう。毎回、新しい服を買うたびに着る服のテイストを変えるとしたら、コーディネートや自分に似合うかどうかなど、さまざまなことを考えなくてはなりません。一方、着る服の傾向をそろえておけば、悩む余地を最小限にとどめられます。つまり、選択に必要なエネルギーを抑え、購入する服を効率よく選びやすくなるのです。
また、発言や行動の整合性が取れている人は、社会的にも信用されやすい傾向があります。発言するたびに言うことが変わる人よりも、いつも一貫した考えにもとづいて発言する人のほうが信頼できると感じるでしょう。多くの人は、そういった人物を目指すべきだと心のどこかで思っています。一貫性の原理は、社会的な評価を得たいという心理の表れでもあるのです。
一貫性の原理とコミットメントの関係
一貫性の原理とコミットメントには密接な関係があります。コミットメントとは「約束」「公約」といった意味を表す言葉です。小さなコミットメントを得ることが、購買や契約といったより大きなコミットメントを得るためのステップになるケースは少なくありません。ここには一貫性の法則が深く関わっています。
たとえば、スーパーで実施している「試食」をイメージするとわかりやすいでしょう。試食は自由にできますが、試食させてもらった以上、何も買わないのは申し訳ないと感じる人は多いのではないでしょうか。結果として、「商品を購入する」というより大きな決断を下すためのハードルを下げる効果が得られるのです。
一貫性の原理を応用したテクニック

ここからは、一貫性の法則を応用した実践的なテクニックを紹介します。いずれも、行動や発言などに一貫性をもたせたいという心理を活用したテクニックです。
1. 段階的要請法(フット・イン・ザ・ドア)
段階的要請法とは、小さな要求への承諾を得ることによって、徐々に大きな要求にも応えてもらうテクニックのことです。たとえば、アパレルショップの店頭で次のような場面に遭遇したことはないでしょうか。
【段階的要請法の具体例】
店員:スプリングコートをお探しですか?
客:え、えぇ… (YES①)
店員:お客さまの雰囲気にぴったりの新作コートが入荷したのですが、袖だけ通してみますか?
客:はい、袖を通すだけなら (YES②)
店員:とてもお似合いですね! これからの季節、お出かけが楽しくなりそうです!
客:このコート、いいですね (YES③)
はじめに「スプリングコートを探している」という意思表明をしてもらい、次に実際に袖を通してもらうことで、徐々に大きな要求を受け入れてもらっています。最終的に購入すべきか検討する段階で、「NO」とは言いにくくなっていくのです。「せっかく試着までしたのだから」という心理が働くことによって、購入という最終的な意思決定へとつなげている好例といえるでしょう。
2. 特典除去法(ローボール・テクニック)
特典除去法とは、まず好条件を提示して了承を得たのち、好条件を減らしていく手法のことです。消費者は購入を意思決定するにあたって、「今買うべき理由」を必要としています。いずれ購入するのではなく、その場で決断してもらうためにこのテクニックが用いられるケースが少なくありません。
たとえば、店頭で目に留まった商品のポップに「〇%オフ」と表示されていたとします。消費者にとって、通常よりも好条件で購入できることが伝わるでしょう。その際、値下げが「本日限り」といった情報を同時に得たとすれば、当日購入する必然性が生じるはずです。
このように、特典除去法は「好条件を知ったからには活用したい」という心理を突いたテクニックといえます。ただし、頻繁に利用すると信頼を失いかねない手法でもあるため、ここぞという場面で活用するのが得策です。
3. アップセル・クロスセル
アップセル・クロスセルも一貫性の原理を活用した販促の手法といえます。
- ・アップセル:購入を検討している商品よりも上位の商品を提案すること
- ・クロスセル:購入を検討している商品と関連する商品を提案すること
具体的には、自転車の購入を検討している消費者に「変速機能付きのモデルもあります」と提案するのがアップセルです。あるいは、「盗難防止のチェーンロックはお持ちですか?」と問いかけることによって、クロスセルにつながる可能性があります。自転車を購入しようとしている消費者には、より快適かつ安全に自転車を利用したいという心理が働きやすいため、こうした販売手法が効果を発揮することは決してめずらしくありません。
一貫性の原理のマーケティングへの活用例
一貫性の原理は、マーケティング領域においても有効なテクニックとして応用可能です。実際にマーケティングに活用されているシーンを紹介します。
無料お試し・トライアル期間の提供

【例】
- 1.店頭で「試供品」を無料配布
- 2.消費者は「無料なら」と気軽に商品を手にする
- 3.購入検討時、実際に利用した経験のある商品が有力候補に挙がる
無料お試しやトライアル期間は、「無料なら試しに使ってみよう」という小さな決断を促すには適した手法といえます。近い将来、購入を検討する際には「一度も利用したことがない商品」は認知されておらず、「実際に使ったことがある商品」の記憶が残っているため、購入する商品の候補に挙がりやすくなるでしょう。利用メリットや商品の特長について実体験を通して知ってもらうという意味においても、試供品やトライアル期間を設けることには大きな意義があります。
アンケートの依頼
【例】
- 1.店頭で「アンケートにご協力ください」と声をかける
- 2.来店客がアンケートに回答する
- 3.「乗りかけた船だから」と、店舗で関連商品を購入する
店頭やWebサイト上などで、簡単なアンケートに協力してもらうのも一貫性の原理を応用したマーケティング手法です。時間や労力がかかりすぎない範囲で回答してもらうことで、「せっかく労力を費やしたのだから、購入を検討してもいいかもしれない」と感じてもらえる効果が期待できます。
これは、「協力的な姿勢を示す」という行動・態度に一貫性をもたせたいという消費者心理を応用した手法です。アンケートに協力したことによって「関係者」の1人になってもらい、その結果として顧客化へとスムーズに導ける確率が高まります。
SNSでの投稿やシェアの促進
【例】
- 1.SNSで気になるコンテンツを見つける
- 2.コンテンツに「いいね」を付けたり、シェアしたりする
- 3.商品名やブランド名が記憶に残り、購買行動につながる
SNSにユーザーの興味を引くコンテンツを投稿し、「いいね」やシェアを促す手法です。SNSで投稿やシェアをした時点で、ユーザー自身がその商品・サービスを多少なりとも支持している姿勢を表明することになります。ユーザーは無意識のうちに、商品・サービスを支持するというスタンスに一貫性を保とうとするでしょう。結果として、同じ商品・サービスを購買したり、継続利用を後押ししたりする効果が期待できます。
認知バイアスを活用した「ハロー効果」

一貫性の原理は、行動心理学における「認知バイアス」を活用した手法です。認知バイアスとは、人が無意識のうちに特定の思考に偏った判断を下すことを指します。こうした効果を活用しているのは、一貫性の原理だけではありません。ここでは、同様に認知バイアスを活用している「ハロー効果」を紹介します。
ハロー効果とは
ハロー効果とは、「ある特徴が全体の評価に影響を与える心理効果」のことです。日常生活からビジネスシーンまで、いたるところで見られる心理効果といえます。
一貫性の原理と同様、ハロー効果はポジティブな方向に作用することもあれば、ネガティブな方向に作用することもあります。ハロー効果によって「1を聞いて10を知る」こともあれば、「木を見て森を見ず」といった状態にもなり得る、と捉えるとイメージしやすいでしょう。
ハロー効果の具体例
ハロー効果がどのように作用するのか、よくあるビジネスシーンをもとに見ていきましょう。
取引を検討している企業の担当者が、自社の商品についてプレゼンを実施したとします。その際、担当者の話し方がしっかりしていることや、はきはきと自信をもって話しているように見えることによって、「信頼できそうだ」「優秀な担当者のようだ」と判断したことはないでしょうか。
実際には、話し方はビジネススキルのほんの一部に過ぎません。本当にその担当者が優秀かどうか、信頼できる企業かどうかは、話し方だけでは判断できないのが実情です。しかし、話し方がしっかりしていれば信頼性が高まり、頼りなさそうに映れば信頼が揺らぐといったことは現実には数多くあります。このように、ハロー効果は対外的な信頼性に深く関わっている心理効果といえるでしょう。
マーケティングへの活用例
ハロー効果もまた、一貫性の法則と同様にマーケティング領域において広く活用されている心理効果です。具体的な活用例を見ていきましょう。
【例1:第三者の影響力】
商品・サービスのプロモーションなどに際して、著名人やインフルエンサーを起用するケースは少なくありません。実際にその人物が商品・サービスを利用した体験談として「これまでにない、素晴らしい商品です」「便利さに驚きました」といったコメントを掲載することにより、自社以外の第三者による実感を伝えられます。著名人が利用しているというイメージは、消費者に「間違いない商品のようだ」といったイメージをもたらすでしょう。結果的に、自分自身が実際に利用したことがない商品・サービスに対して安心感を抱く大きな要因となり得ます。
【例2:受賞歴・公認】
商品のパッケージなどに「〇〇賞受賞」「〇〇協会公認」といった文言を記載するケースも多く見られます。これは、いわゆる「お墨付き」であることを伝えるためのメッセージです。すでに一定の評価を得ている商品であり、権威性があることを端的に伝える効果が期待できます。これは、購入する商品に対して「選択を誤りたくない」「せっかくお金を払うなら少しでも間違いのないものを選びたい」といった消費者心理に訴える効果が期待できる手法です。
【例3:消費者による口コミ】
一般消費者による口コミにも、ハロー効果が深く関わっています。口コミの発信者は消費者であることから、中立な視点に立った評価が確認できると考える人も多いからです。ポジティブな評価が見られる商品や、口コミの件数そのものが多い商品は、多くの消費者に支持されていると見なされる傾向があります。とくにECサイトでは、ユーザーレビューの件数や総合評価が購入の決定打となるケースもめずらしくありません。
まとめ
一貫性の原理は、人が各自の行動や態度、信念を一貫したものにしたいと無意識のうちに感じていることによる心理効果といえます。この心理効果を理解することで、セールスや交渉の場で小さなYESを積み上げ、より大きな承諾・合意を得るといった応用も可能です。消費者や見込み客の心理を深く知り、効果的なマーケティング戦略を実現してみてはいかがでしょうか。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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