
一貫性の原理
2017年05月17日 00:00
この記事に書いてあること
ブレてる人、なんて言われたくない! 一貫性の原理
こんにちは。夫婦喧嘩になると、自分が悪いと気づいてもなおファイティングポーズを取るコピーライター、Kです。さて、連載第6回目は「一貫性の原理」をご紹介しましょう。一貫性の原理とは、「自分の発言や行動、態度、信念を一貫したものとしたい」と、私たちが無意識に振る舞う心理です。何事につけ「ブレた人にはなりたくない」ってことなわけですが、なぜに人間はそんなクソ真面目なんでしょうか。理由は大きく分けて2つあるといわれていますよ。
生きてくのが楽だから
ひとつは「生きてくのが楽だから」。意外ですか? 考えてもみてください。あなたは日々たくさんの選択を迫られています。寝不足だから1時間遅刻しちゃおうかな、朝ごはんどうしよう、どんな服を着ていこう、電車は何両目に乗るかな、などなど、細かいものも含めると一説には1日1万件の選択をしているのだとか。その一つひとつをその都度考えて答えを出す、なんてことしていられませんよね。といって、てんでバラバラに選択しているわけでもありません。そんなことをすれば、変人のレッテルを貼られ、引かれてしまうのがオチ。
多くの人に共通する合理的な行動を、無意識に瞬間的に選んでいるのです。その行動の正体が一貫性の原理。ルーチンに従うことって、実はラクチンなことでもあるんです。人間のそんな性質が、商品やサービスの購入行動にも現れていますよ。
一貫性のあるファッションはおしゃれの原則ですよね。それに服選びの時間や悩みを減らしてもくれます。一日中街をぶらついたのに、結局はいつものお店で着回しのきく服を買った――。こんなことがあると徒労感ハンパないですから。私Kはよくやらかしちゃうんですが、「50%OFF!」の値札に目がくらみ、一貫性はどこへやらタンスの肥やしを増やしてしまうことも…。一貫性、大事です。
信用できる人間だと思われたいから
もうひとつは「信用できる人間だと思われたいから」。世の中、ブレない人、スジの通った人は尊敬されます。逆にいうと、そうじゃない人は軽蔑されたり無視されます。これ、集団で生きる人間には耐えがたい苦痛です。目立つのは好きじゃなくても、信用はされたいですもんね。
そんな私たちの「一貫性好き」はヒーロー/ヒロイン像に強く反映されています。アニメでも実在の人でもいいです、あなたの好きだったヒーロー/ヒロインを思い浮かべてみてください。発言や行動、態度、信念が一貫していませんでしたか? 命がけで私たちを守ってくれませんでしたか? 悪役だって同じです。深い闇を抱え人間を絶望の淵へ追いやろうとするその決意は、決してブレることはないのです。(ヒーローに負けて日和ってしまうような悪者は本物じゃない!)
私Kの好きなヒーローたちも、一貫性に関してたくさんの名言を残しています。少しだけ紹介しますね。
■メジャーリーグ現役レジェンド イチロー選手
「第三者の評価を意識した生き方はしたくない。
自分が納得した生き方をしたい」
うわあああ、かっこいいい! 有言実行! こんなセリフ、私が口にしても誰にも信用されないっす…。
■永遠の不器用ヒーロー 故・高倉健さん
「やくざには命より大切な仁義ってもんがある」
「人生で大事なものはたったひとつ。心です」
若い頃には一本気なやくざ者として、後年は無骨な律儀者として輝きを放った国民的名優、健さん。役柄が変化していっても、もちろん私生活においても、「情」に厚い男であり続けました。ああ健さん、また会いたいなぁ…。
脱線話が長くなってすみません。約束したこと、誓ったことは、どんなに困難だろうと必ず果たさないとだめだ――。私たちはヒーロー/ヒロインに共感しながら「一貫性」は善であると、幼い頃から自修を重ねてきたようなもので、「ブレている自分」を他人に知られてしまうことは恥ずかしい、かっこわるいことなんですね。
一貫性の原理、店頭での会話でも。
一度自分で表明した言動は貫かなきゃ、という心理は、店頭での会話でも成り立ちます。
最初の会話で、あなたはコートを探していると(しぶしぶながらも)意思表明しました。そして、袖を通すことに同意し、試着後には心が動きだします。店員さんの小さな提案に自分の意志で「YES」と答えているうちに、あなたの中で店員さんへの警戒心が薄れ、ポジティブな共感が芽生えるとともに「NO」とは言いづらくなっていきます。一貫性の歯車が回りだし、ついには、このコートを買うことが店員さんに対するあなたの言行一致の証明となるのです。
まとめ
一貫性の原理は、膨大な選択に合理性を与え、暮らしに秩序をもたらします。そして、望ましい人格のロールモデルとなり、人と人を信頼で結びつけます。もし人間社会にこの一貫性の原理が働かなかったとしたら、ちょっと怖いと思いませんか? 一人ひとり、その都度考えることや行動が違う。みんなのお手本も存在しない、野生動物たちにも劣る殺伐とした集団…。
なんてことを考えるとですね、夫婦喧嘩のときの私Kの意地っ張りなんざ目くじら立てる問題じゃないわけです。一貫性のない世の中は人間的じゃない。わかりますね、女房殿。え、なに、新しいスプリングコートがほしい? それが女の一貫性だって? それをやさしく見守るのが男の一貫性? わ、わかってますよ、女房殿…。
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