リフレーミング効果とは?心理学用語の意味を具体例とともにわかりやすく解説
2017年08月08日 00:00
この記事に書いてあること
【2025年10月22日更新】
同じものを見ていても人によって捉え方や感じ方が違うように、私たちの認識は「ものの見方」次第で大きく変わります。この点に着目して提唱されたのが「リフレーミング」という概念です。
この記事では、リフレーミングの種類や特徴、取り入れるメリットについてわかりやすく解説しています。リフレーミングを実践するための手法や、活用できる場面の具体例、取り入れる際の注意点とあわせて見ていきましょう。
リフレーミングとは
リフレーミングとは、物事の枠組みを見直し、異なる視点から捉えることを表す心理学用語です。リフレーミングに対する理解を深めるために、まずはコミュニケーション心理学(NLP)との関係や、ポジティブシンキングとの違いについて紹介します。
コミュニケーション心理学(NLP)との関係
コミュニケーション心理学(NLP:Neuro Linguistic Programing)とは、心理学・言語学・心理療法を組み合わせた実践心理学のことです。「脳の取り扱い説明書」とも呼ばれることがあるように、実生活上で活かせるノウハウが研究対象となっています。
リフレーミングの概念も、コミュニケーション心理学に含まれます。つまり、リフレーミングもまた「脳の取り扱い説明書」のうちの1つです。
リフレーミングとポジティブシンキングの違い
ポジティブシンキングとは、ネガティブに感じられる物事を前向きに考える思考法のことです。たとえば、雨の日は憂うつだと感じているときには、雨が上がって晴れたら何をしようか、と前向きに考えてネガティブな気持ちを払拭しようとすることを指します。
一方、リフレーミングは物事の見方や考え方そのものに変化を促す手法です。一見ポジティブに思える事柄であっても、視点を変えれば課題があることに気づく場合もあります。このように、リフレーミングは必ずしもネガティブな要素を覆い隠そうとするのではなく、あくまでも視点を変えることに重きを置いている点が大きな違いです。
リフレーミングの種類と特徴の一覧

リフレーミングにはさまざまな手法が存在します。ここでは「状況リフレーミング」「内容リフレーミング」「行動リフレーミング」について、それぞれの特徴と具体例を確認していきましょう。
状況リフレーミング
状況リフレーミングとは、現在置かれている状況や背景の枠組みを捉え直す手法のことです。たとえばコップに入っている水を目にした際、「半分しか水が入っていない」と捉えるか、「まだ半分も残っている」と捉えるかによって、その意味合いは大きく変わるでしょう。同様に、期限が迫っている仕事を抱えているとき「もう1日しかない」と考えるか、「まだ1日ある」と考えるかによって、状況の捉え方は大きく変わります。このように、視点を変えることで物事の別の側面を見出そうとするのが状況リフレーミングと呼ばれる手法です。
内容リフレーミング
内容リフレーミングとは、内面的な感じ方や印象に変化を促す手法のことです。たとえば、身近な同僚のことを「無口で暗い人」と捉えるか、「控えめで落ち着いた人」と捉えるかによって、印象は大きく変わります。部下に対しても「行動が遅い」と決め込むのではなく、「慎重に判断を下すところがある」と解釈することで、相手のよい面に着目できるでしょう。このように、異なる視点から物事を捉えることで新たな価値を見出せる点が内容リフレーミングの特徴です。
行動リフレーミング
行動リフレーミングとは、自分自身の行動に表れる癖や習慣を捉え直す手法のことです。たとえば、「今日の会議では一度も発言できなかった」と捉えていると、過去の行動や態度を悔やむ思考から抜け出せなくなってしまうでしょう。そこで、「なぜ発言できなかったのだろう?」「次回はどうすればいい?」と視点を変えることで、事前準備を入念に行うことや、必ず1回は発言するといった次に向けた目標を見出しやすくなります。このように、自身の行動を客観視することで改善していくための手法が行動リフレーミングです。
リフレーミングの種類と特徴一覧表
| 種類 | 定義・特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| 状況リフレーミング | 現在の状況や背景の枠組みを捉え直すことで、意味の受け取り方を変える手法。 | ・「もう1日しかない」→「まだ1日ある」 ・「半分しか水がない」→「半分も残っている」 |
| 内容リフレーミング | 人や物事に対する印象・感じ方を変えることで、新たな価値を見出す手法。 | ・「無口で暗い人」→「控えめで落ち着いた人」 ・「行動が遅い」→「慎重に判断する人」 |
| 行動リフレーミング | 自分の行動や習慣を客観的に捉え直し、改善や前向きな行動につなげる手法。 | ・「発言できなかった」→「次回は準備して1回は発言する」 ・「なぜできなかった?」→「どうすればできる?」 |
リフレーミングを取り入れるメリット
リフレーミングを取り入れることによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な3つのメリットを紹介します。
モチベーションアップにつながる
1つめのメリットは、モチベーションアップにつながることです。困難な状況や今すぐに解決するのは容易ではない課題に対しても、常に新たな視点に立って前向きに取り組みやすくなります。モチベーションを維持しやすくなることで、結果として新たな挑戦や成長の機会を得やすくなる点が大きなメリットです。
ストレス耐性や課題解決能力が向上する
ストレス耐性や課題解決能力の向上につながることも、リフレーミングを取り入れるメリットの1つです。たとえミスや失敗を経験したとしても、そこから学ぶ機会を意識的に広げていくことによって、成果が出るまで挑戦し続ける姿勢が身につきます。すでに起きてしまったこと(過去)を引きずるのではなく、これからどうすればいいのか(未来)に目を向けやすくなるため、物事をよい方向へと進められるでしょう。
人間関係がより円滑になる
より円滑な人間関係の形成に役立つことも、リフレーミングを取り入れるメリットといえます。視点を変えることによって固定観念に囚われにくくなり、他者の長所や優れた点を見つけるきっかけになるからです。こうした考え方・捉え方が習慣化すれば、チームワークやマネジメントを前向きに実践しやすくなるでしょう。誰にでも長所と短所がありますが、その区別は捉え方1つで変わるケースが少なくありません。他者を「〇〇な人」と決め込まず多様な視点をもつ上で、リフレーミングの手法を取り入れる意義は十分にあります。
リフレーミングを実践する5つの手法

リフレーミングを仕事や日常生活に取り入れるにあたって、役立つ手法を紹介します。
手法1:「もし〜なら」のリフレーミング
「もし〜なら」のリフレーミングは、意識的に仮定を挙げることによって、実現するための具体的な行動を見出す手法です。「As If」の手法とも呼ばれることもあります。
【例】
・資料作成の期日まで、まだあと1週間ある
↓
・もしあと3日しかなかったとしたら、どうするだろう?
上記の例では、「もし期日が3日後だったとしたら」と仮定することにより、やるべきことを先延ばしにするのを防ぐ効果が期待できます。結果として前倒しで作成を進められ、余裕をもって提出できるでしょう。
手法2:言葉のリフレーミング
言葉のリフレーミングとは、使う言葉を見直すことで物事の捉え方や認識を見直す手法のことです。物事や状況に当てはめる言葉を変えたことがきっかけとなり、思考が行き詰まるのを防ぐ効果が期待できます。
【例】
・細かいことが気になってしまう
↓
・細かいことに目が行き届いている
実際、「目が行き届く」ためにはそもそも「気にする」必要があるため、これを長所と捉えるか短所と捉えるかは紙一重です。自身や他者の思考・行動にどのような言葉を当てはめるかによって、弱点と捉えていた面をむしろ強みとして活かせる可能性があります。
手法3:時間軸のリフレーミング
時間軸のリフレーミングは、過去/現在/未来を行き来する過程で、発想の転換や新たなアイデアの創出を図る手法です。
【例】
・なぜ今頃になって単純なミスに気づいたのだろう?
↓
・今の段階でミスに気づけてよかった
上の例では、過去の視点に立っていると「ミスに気づくのが遅い」という発想から抜け出せなくなってしまいがちです。しかしながら、視点を未来に移すことによって「むしろ今気づいてよかった」と思い直せるでしょう。
手法4:解体のリフレーミング
解体のリフレーミングとは、物事の枠組みを一度外し、ゼロベースで考え直す手法のことです。より細かい単位に物事や状況を分解して考えることで、解決すべき課題が浮き彫りになるケースは少なくありません。
【例】
・やるべき仕事が山積みでストレスを感じる
↓
・午前中に終わらせるべき作業をピックアップしてみよう
この例では、仕事全体を1つの単位で捉えているために、「仕事量が多い」こと自体がストレスの原因となっていました。そこで、すべての仕事を一度に完了させようとするのではなく、まずは午前中に着手しておくべき作業を見極めることで、着実に処理するモチベーションが湧いてくるよう自身を仕向けています。
手法5:Wantのリフレーミング
Wantのリフレーミングとは、「結局のところ、どうしたいのか」を先に考えることで、打開策を模索する手法のことです。手段や方法論に拘泥せず、目的を再確認する上で役立ちます。
【例】
・チームに活気が感じられず、意欲が湧かない
↓
・そもそも、このチームで達成したい目標は何だっただろう?
上記の例では、「チームに活気が感じられるかどうか」といった表面的な印象や雰囲気に目を向けるのではなく、チームの本質的な存在意義に視点を移しています。結果として、各メンバーが果たすべき役割や作業の進捗状況、目標との差異など、着目すべきポイントが他にもあることを再認識できる可能性が高まるでしょう。
リフレーミングの具体例
リフレーミングを活用して視点を変え、物事をよりよい方向へと進めている具体例を紹介します。
例1:キャリアプランへの活用例
【現状】自分は今の仕事に向いていない気がする
↓
【リフレーミング後】未知の知見やノウハウにふれるチャンスかもしれない
将来的なキャリアプランについて考えるとき、現状の自分にできることを軸に捉えるのか、今後どのような仕事をしていきたいのかを軸に捉えるのかによって、今やるべきことが大きく変わることはめずらしくありません。仮に転職するとしても、今すぐにこなせる仕事に絞って探そうとすれば選択肢は限られてしまうでしょう。このように、キャリアプランを考える際にもリフレーミングによる視点の拡張には重要な意義があります。
例2:マネジメントへの活用例
【現状】何度指導しても部下のミスが減らない
↓
【リフレーミング後】そもそもミスが発生しにくい仕組みにするには?
マネジメントにおいては、部下の個人的な特性に目を向けるべき場面と、仕組みそのものに目を向けるべき場面があります。部下が十分に注意して業務を進めているにもかかわらず、同じミスを繰り返してしまうようなら、そもそもミスが発生しやすい作業フローになっているのかもしれません。仕組みを見直すという視点に立つことによって、「部下の意見を取り入れる」「業務の属人化を防ぐ」といった対策を講じられるでしょう。
例3:マーケティングへの活用例
【現状】競合他社よりも価格を下げるのは不可能
↓
【リフレーミング後】独自の付加価値を打ち出せば、むしろ価格を上げることも可能
リフレーミングは、マーケティング上の課題解決にも効果を発揮します。すでに顕在化している課題のみに目を向けるのではなく、別の方向性を探ってみることによって、まったく別の解決策が見えてくるケースも少なくありません。たとえば、従来は主に子ども向けに販売されていたお菓子を大人向けの「プチ贅沢」へと路線変更することによって、販売価格の引き上げに成功している事例が多々見られます。商品・サービスの訴求方法や販路に行き詰まりを感じた際には、リフレーミングを意識してみてはいかがでしょうか。
リフレーミングを取り入れる際の注意点

ここまでに見てきたとおり、リフレーミングは発想の転換に役立つ手法といえます。一方で、活用方法を誤るとマイナス効果をもたらすことにもなりかねません。リフレーミングを取り入れる際に意識しておきたい注意点について解説します。
先入観をできるだけ排除する
リフレーミングを実践するにあたって、先入観(バイアス)をできるだけ排除しておくことは非常に重要なポイントです。自分にとって都合よく物事を捉え直した場合、他者の立場や置かれている状況を軽視する原因となるおそれがあります。
たとえば、「商品の売上が伸びていない」と感覚的に捉えていたとしても、実際にどの程度伸び悩んでいるのかは調べてみなければわからないでしょう。現状認識がそもそも思い込みにもとづいていないか疑い、客観的なデータなどを元に第三者の視点に立って確認する習慣を身につけることが大切です。
リフレーミング自体を目的化しない
リフレーミングはあくまでも多様な視点を得るための手段にすぎません。手段と目的を履き違えると、物事を都合よく捉えることに終始してしまい、具体的な行動につながらないおそれがあります。
思考や捉え方を変換したからといって、それだけで自身の能力やスキルが向上するわけではありません。リフレーミングは発想の転換を促すための手法と捉え、その先にある「では、どう行動すればいいのか」を意識する必要があります。
リフレーミングを活用して柔軟な思考を手に入れよう
気づかないところで思い込みや考え方の癖に囚われてしまい、思考の硬直化を自ら招いていることは誰にでもあります。リフレーミングは、こうした硬直化した思考を解きほぐし、別の視点を得るための手段の1つとして有効です。今回紹介した主な手法や具体例、取り入れる際の注意点を参考に、ぜひ仕事や日常生活でリフレーミングを活用してみてください。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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