バーナム効果とは?具体例とビジネスへの活用方法を解説
2025年05月28日 07:00
この記事に書いてあること
性格診断テストを受けて、自分の性格を言い当てられているように感じた経験はありませんか。実は、こうした診断には「バーナム効果」と呼ばれる心理効果が活用されています。バーナム効果について理解しておくことは、ビジネスを効果的に推進していく上でも重要なポイントの1つです。
今回は、バーナム効果の具体例やビジネスでの活用方法、効果的に活用するためのポイントをわかりやすく解説します。バーナム効果を活用する際の注意点についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
バーナム効果とは
そもそも、バーナム効果とはどのような心理効果を指すのでしょうか。プラシーボ効果や確証バイアスといった、関連する心理効果とあわせて見ていきましょう。
多くの人に当てはまる事象を自分事として捉える心理効果
バーナム効果とは、実際には多くの人に当てはまる事象であるにもかかわらず、「自分のことを言われている」「自分のことを理解してくれている」と捉える心理効果のことです。たとえば、冒頭で紹介した性格診断テストを受けた際、次のような診断結果が出たとしましょう。
- ・ふだんは社交的ですが、1人の時間も大切だと思っています。
- ・自分の判断や行動が正しかったか、真剣に悩むことがあります。
- ・他人に認められたいと思いながら、自分を責める傾向があります。
思い当たる節がある、と多くの人が感じるのではないでしょうか。上記はいずれも「多かれ少なかれ、誰にでもある一面」を述べているに過ぎません。しかし、「あなたはこのような性格です」と指摘されると、まるで自分のことを見透かされているかのように感じてしまう場合があります。これはバーナム効果の典型的な例です。
プラシーボ効果との関係
バーナム効果と関わりの深い心理効果として「プラシーボ効果」が挙げられます。プラシーボ効果とは、思い込みが強く作用することにより、実際には存在しない効果が得られる心理効果のことです。
たとえば、乗り物に酔いやすい人が「強力な酔い止め薬」と言われて小麦粉を飲んだことで、車酔いをしないことがあります。これは「強力な酔い止め薬を服用したのだから、車酔いしないに違いない」といった思い込みによる作用です。バーナム効果にも思い込みが強く影響している点において、共通点がある心理効果といえます。
確証バイアスとの関係
確証バイアスとは、自身が強い関心を寄せていることや気になっていることに目が向いてしまい、他の情報を取り入れられなくなる心理効果のことを指します。たとえば「私は雨男だから、大事な外出の用がある日は必ず雨が降る」と考えている人がいたとしましょう。実際には、外出時に晴れている日もあったはずです。ところが、「雨天」と「外出」の条件がそろった日のことが強く記憶に残っているために、「自分は雨男だ」と捉えていると考えられます。
確証バイアスは、バーナム効果と連動して作用するケースが多く見られます。実際には誰にでも当てはまることでも「自分のことを理解してくれたに違いない」と思い込んだために、それ以外の情報が遮断されてしまっている可能性があるのです。
バーナム効果の具体例

バーナム効果が活用されている身近な例を紹介します。多くの人が経験していることの中にも、実はバーナム効果が巧みに活用されているケースは少なくありません。
血液型診断
血液型診断では「几帳面」「おおらか」といったように、性格を大まかにカテゴライズした結果が提示されます。実際には、状況や場面によって几帳面にもおおらかにもなることがあるといったように、多面性があるのが人の性格というものです。裏を返すと、「几帳面」も「おおらか」も多かれ少なかれ誰もがもっている特徴の一端といえます。
血液型は4種類だけではなく、また血液型と性格に関連性があるという根拠も存在しません。しかしながら、「自分に当てはまっている」と感じると、ついその結果を信じ込んでしまうことは決してめずらしくないのが実情です。
おみくじ
おみくじにもバーナム効果が表れやすい傾向があります。たとえば「なくし物が見つかる」と書かれていた場合を考えてみましょう。おみくじには具体的にいつどのような形で見つかるのかが書かれておらず、抽象的な書き方がされている点が大きな特徴です。なくした物がいずれ見つかる可能性は十分にあるため、実際には誰にでも当てはまることが書かれているに過ぎません。しかし、おみくじは自分で主体的に引いていることから、書かれている内容を信じたいという心理効果が働きやすい傾向があります。
日常会話
日常生活にも、バーナム効果が作用しているシーンは数多くあります。たとえば、初対面の人と話した際に「少し心配性なところがあるみたいですね」「細かいことが気になってしまうほうですか?」などと言われた際に、「この人は私のことを理解してくれている」と感じる場合があります。
実際には、「心配性」「細かいことが気になる」は、どちらも多くの人に当てはまる特徴です。しかし、自分のこととして指摘されると、相手が自分の性格をよく理解しているように感じられることは決してめずらしくありません。
バーナム効果がビジネスに活用されている例

バーナム効果はビジネスにおいても多方面で活用されています。代表的な例として、マーケティング・営業・人材採用・人材育成での活用方法を見ていきましょう。
1. マーケティング
マーケティング領域では、キャッチコピーなどにバーナム効果が活用されているケースが多く見られます。たとえば「熟睡できるマットレス」よりも、「ぐっすりと熟睡したいですよね」と問いかけられた時のほうが、自分事として捉えやすいという人は多いのではないでしょうか。
実際には、できればもっと深く眠りたいと感じている人は決して少なくないため、「熟睡できずに困っていませんか?」は多くの人に当てはまる問いかけといえます。しかし、「自分のことを言われているようだ」「これは何かの縁に違いない」と感じることにより、紹介されている商品やサービスへの興味関心が高まるという仕組みです。
営業
営業活動においても、しばしばバーナム効果が活用されています。見込み客と話す際、はじめから自社商品の説明を始める営業担当者よりも、見込み客が抱えている悩みや課題を熱心に聞いてくれる担当者のほうが信頼できると感じるケースは少なくありません。さらに、「より効率的な業務の進め方をお探しでしょうか?」といったように、自社の課題を言い当てられたように感じると、「この人は信頼できそうだ」と感じられるものです。
このように、バーナム効果は人との信頼関係を強化する効果を発揮することがあります。見込み客との信頼関係を構築する際には、バーナム効果を存分に活用できるでしょう。
3. 人材採用
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バーナム効果は人材採用の領域でも活用されているケースが見られます。たとえば「やりがいを感じられる環境です」「風通しの良い環境で思う存分力を発揮してみませんか?」といった、多くの求職者が求めていると思われる文言を求人に掲載するようなケースです。
求職者は「希望している条件に当てはまりそうな会社かもしれない」「働きやすい職場のようだ」と感じ、応募先の候補として検討する可能性があります。同様のことは、会社説明会や面接の場においてもいえるでしょう。採用担当者や面接官が自分のことを理解してくれていると感じるほど、その企業への共感が高まりやすい傾向があるからです。
4. 人材育成
企業における人材育成にも、バーナム効果がしばしば活用されています。多くの人は自分のことを理解してくれていると感じる人に共感し、信頼を寄せることから、上長や経営者が部下や従業員を褒める際の言葉として多くの人に当てはまるフレーズを使うことがあるのです。
たとえば「バランスよく考えていますね」「周りをよく見ようとしているようですね」といったことは、多かれ少なかれ誰にでも当てはまる心がけです。一方で、1on1や上長との会話の中でこうした言葉を投げかけられることによって、「自分のことをよく見てくれている上司のようだ」と部下が感じるケースは少なくありません。信頼関係を築き、指導やアドバイスを受け入れてもらうための素地をつくる上で有効な手法といえます。
バーナム効果を引き出すためのポイント

バーナム効果を引き出す上で重要なポイントがいくつかあります。幅広い領域で活用できる汎用的な手法として、下記の4点を押さえておきましょう。
ポイント1:呼びかけ・問いかけで始める
バーナム効果の「肝」となるのは、当事者意識を抱いてもらうことです。よって、言い切りの文体ではなく呼びかけや問いかけから始めるほうが効果的といえます。その際には、特定の相手を絞り込んだ呼びかけ・問いかけを用いるのがポイントです。
たとえば、「皆さんは……ではないですか?」という表現は、万人を対象とした問いかけです。これを「〇〇さんは……ですよね」「あなたは……でお困りではありませんか?」と対象を絞り込む表現に置き換えることで、当事者意識を抱きやすい表現へと変えられます。このように、特定の個人に対する呼びかけ・問いかけから始めることは、バーナム効果を生むための基本といえるでしょう。
ポイント2:解釈に幅をもたせる
血液型診断やおみくじが典型例であるように、解釈に幅のある表現を用いることもバーナム効果をもたらすコツといえます。一例として、「10年後も健康でいられると、自信をもって言えますか?」という問いかけは、確定していない未来に関する問いです。誰もが多かれ少なかれ、「10年後も健康かどうかは何とも言えない」と感じていることでしょう。今の時点で健康な人も、健康面に不安を感じている人も、どちらも当事者になり得る表現といえます。
このように解釈に幅をもたせることで、相手は自身の不安や課題を言い当てられたように感じる可能性が高まります。意図的に幅をもたせることも、バーナム効果を引き出すための工夫の1つです。
ポイント3:ネガティブな言葉を使わない
バーナム効果を生むには、ネガティブな言葉は避けたほうが得策です。多くの人はネガティブな情報よりも、「もっと良くなる」「より素晴らしくなれる」といったポジティブな印象を抱く言葉に惹かれる傾向があります。
一例として「眠れなくて悩んでいませんか?」といったコピーは、「よく眠れない」という不安や悩みを直接的に言い当てています。一方で、自身のネガティブな感情と直接結び付いてしまうため、現実を直視したくないという心理が働きがちです。「ぐっすり眠りたいですよね?」といったポジティブな表現に置き換えることで、抵抗なく当事者意識を抱きやすい表現になります。
ポイント4:信頼性を重視する
情報の発信者が信頼できる人物や組織であることを伝えるのも重要なポイントの1つです。生活者の多くは、自身が得た情報が正確で信頼に足るものかどうか、常に不安に感じています。その道の専門家や権威のある組織が発信していることが確認できれば、自分事として抵抗なく受け入れやすくなるでしょう。
たとえば、専門家によるコメントを掲載したり、購入者のレビューを併記したりするのは、信頼性を担保する上で効果的な手法です。信頼性の高い情報を発信していることを裏付けるのは、企業に対する信頼を損なわないためにも重要なポイントといえます。
バーナム効果を活用する際の注意点

バーナム効果は当事者意識を醸成する上で効果的な手法です。一方で、効果の高い手法であることから、活用する際には注意しておくべき点も少なくありません。次に挙げる3点は、バーナム効果を意識的に活用する際に必ず守るようにしましょう。
過度な使用は控える
バーナム効果の過度な活用は禁物です。あくまでも相手との信頼関係を築くためのきっかけとして活用するのが、基本的なスタンスと捉えてください。
上司が部下との信頼関係を築くために、バーナム効果を駆使した場合のことを考えてみましょう。はじめのうちは「自分のことをわかってくれている」と部下が感じたとしても、常に誰にでも当てはまりそうな抽象的な褒め方しかされないとしたら、かえって不信感を抱くのではないでしょうか。バーナム効果は関係性が浅い段階でのみ活用し、ある程度関係性が構築されてからは具体性のある話をしていくことが重要です。
誇張表現にならないよう注意する
広告コピーなどにバーナム効果を活用する際には、誇張表現にならないよう十分に注意しましょう。誇大広告と見なされてしまうと、景品表示法や健康増進法、薬機法といった法令に抵触する恐れがあるからです。
「今のままではあなたの健康が危ない!」などの不安をあおるような表現も、相手に不快感や不信感を抱かせる原因となりがちです。安易な決め付けにもとづいた表現になっていないか、複数の目で確認・協議した上で広告表現を決定していく必要があります。
情報の裏付けとターゲット分析を徹底する
情報の裏付けを徹底することも重要なポイントの1つです。たとえば、顧客によるレビューを自社で創作してしまうなど、根拠のない情報を掲載しないようにしましょう。
また、ターゲットにそぐわない訴求も禁物です。一例として、独身の方に対して既婚者向けの訴求をすれば、「なぜ結婚していると決め付けているのだろう?」と不快な思いをさせてしまう恐れがあります。当事者意識を抱いてもらうための表現は、安易に決め付けられてしまったという違和感を与える表現と紙一重です。ターゲット分析を十分に行い、該当しない事例が頻発することのないよう十分に注意する必要があります。
バーナム効果をビジネスで適切に活用しよう
バーナム効果は、実際には多くの人に当てはまる事象を「自分のことを言われているようだ」と感じさせる心理効果です。ビジネスにおいても幅広い領域で活用できる心理効果のため、その特性と仕組みを理解しておくことで事業活動をより効果的に進められる可能性があります。
一方で、効果の高い心理効果であるがゆえに、活用する際には注意しておきたいポイントもあります。今回紹介した活用時のポイントと注意点を参考に、ぜひバーナム効果を適切に駆使してビジネスに役立ててください。
記事執筆
バックオフィスラボ編集部 (リコージャパン株式会社運営)
バックオフィスラボは、バックオフィス業務を「総務」「経理」「人事労務」「営業事務」「法務」「経営企画」の6つに分類し、法令解説や最新トレンド紹介など、バックオフィス業務の改善に役立つヒントを発信しています。
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