プライミング効果とは?マーケティングに役立つ心理学を具体例とともにわかりやすく解説
2018年02月20日 00:00
この記事に書いてあること
【2025年11月6日更新】
ビジネスにはさまざまな心理効果が活用されています。今回紹介する「プライミング効果」もこうした心理効果の1つです。
この記事では、プライミング効果がもたらされる仕組みやビジネスに活用されている例をわかりやすく解説しています。プライミング効果を活用する際に注意しておきたい点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
プライミング効果とは

はじめに、プライミング効果とはどのような心理効果のことを指すのか整理しておきます。
プライミング効果の定義
プライミング効果とは、あらかじめ受けた刺激が無意識のうちに行動に影響を与える心理効果のことです。先立つ刺激を「プライマー」、これに影響を受ける刺激を「ターゲット」と呼びます。
私たちはさまざまなことを意識的に考え、行動を選択しているように思えますが、実は無意識のうちに心理効果の影響を受けているケースが少なくありません。プライミング効果も、まさにこうした心理効果の1つといえます。
プライミング効果の身近な例
実は、多くの人が子どもの頃にプライミング効果を利用した遊びを経験しています。次のような遊びをした記憶がないでしょうか。
「ピザと10回言って」
「ピザ、ピザ、ピザ……」
「(ひじを指して)ここは?」
「ひざ」
「違うよ、正解は『ひじ』でした」
ピザという言葉を繰り返し口にしたことで、その語感が印象に強く残りやすくなります。この状態で「ひじ」と言おうとしても、「ピザ」につられて思わず「ひざ」と言ってしまうという遊びです。これは典型的なプライミング効果の活用例といえます。
プライミング効果の種類
プライミング効果には、大きく分けて「直接プライミング」と「間接プライミング」の2種類があります。
直接プライミングとは、プライマーとターゲットが一致しているパターンを指します。具体的には「おいしそうなステーキの映像を見るとステーキが食べたくなる」といった心理効果です。この場合、ステーキの映像がプライマー、ステーキを食べたいという欲求がターゲットとなっています。
一方、間接プライミングではプライマーがターゲットに間接的な影響を与える点が特徴です。雪景色の写真を見るとスキーやスノーボードをしたくなる、といったように「連想」のプロセスを介する点が直接プライミング効果と異なっています。
プライミング効果がもたらされる仕組み
プライミング効果はどのようにしてもたらされるのでしょうか。記憶のメカニズムから読み解いていきましょう。
プライミング効果と深い関わりがある「プライミング記憶」
私たちの記憶が「短期記憶」と「長期記憶」に分かれていることをご存知の方も多いでしょう。このうち長期記憶は、さらに言葉による記憶と動作による記憶に分類されます。動作による記憶の中でも、先にインプットされた情報による潜在的な記憶のことを「プライミング記憶」といいます。プライミング効果と深く関わっているのが、このプライミング記憶です。
先ほどの「ピザ」と「ひじ」の遊びを振り返ってみましょう。「ピザ」と繰り返し口にしたことで、プライミング記憶には「ピザ」が先にインプットされます。その記憶が残っていることによって、自分では「ひじ」と言ったつもりでも「ピザ」と語感が似ている「ひざ」を連想しやすくなるのです。このように、潜在的な記憶に行動が影響を受けている状態がプライミング効果の正体といえます。
脳の「関連づける」機能がプライミング効果をもたらす
脳の仕組みには未解明の部分も多く残されていますが、物事をそれぞれ単独で記憶しているわけではないことはわかっています。関連性のある物事とセットでインプットすることによって、整理された状態で記憶されているのです。かき氷やスイカのイラストを見ると、子どもの頃の夏休みが思い出されるという方は多いでしょう。これは、かき氷やスイカを食べた記憶と夏休みの記憶が強く結びついているからです。
このように、関わりが深いものは連想されやすく、無意識のうちに思考や行動に影響を与えています。脳の「関連づける」機能がプライミング効果をもたらしているのです。
プライミング効果は実生活にも応用可能
プライミング効果は、実生活のさまざまな場面で応用可能です。身近な例を2つ見ていきましょう。
学習効果を高める工夫
語学や資格試験に向けた勉強をする際には、プライミング記憶を活用することで学習効率を高める効果が期待できます。一例として、「applause(拍手かっさい・称賛)」という英単語を覚えたい場合には、人に拍手を送って称賛している様子を連想したり、実際に拍手をしながら覚えたりするほうが記憶に残りやすくなるでしょう。動作と関連づけられることによって、英単語の意味を単独で覚える場合よりも記憶が強化されるからです。
ビジネスで活用する工夫
プライミング効果はビジネスにも応用可能です。生活者が想起するイメージは、過去の記憶と密接に関連しています。よって、商品やサービスを単独で訴求するよりも、関連性の高い場面や言葉とあわせてアピールするほうが高い効果を得やすいと考えられます。ジュースを訴求するのであれば、ジュース自体の味や香りだけをアピールするのではなく、「暑い日に汗をかいている人が涼しげな顔でジュースを飲んでいる表情」を紹介するほうが、「このジュースは暑い日に飲むとおいしい」というイメージが強化されやすくなるでしょう。
プライミング効果をビジネスに活用している例

では、プライミング効果はビジネスでどのように活用されているのでしょうか。生活者がしばしば遭遇するシーンの具体例とともに、プライミング効果が与えている影響について解説します。
1. SNSマーケティングへの活用例
【例】
格安航空券を販売している旅行代理店が、広告にリゾート施設やビーチの画像をSNS広告に掲載しているのを見かけた。
【解説】
格安航空券の購入を検討する人は、飛行機に乗ること自体が目的ではなく「旅行に出かける」ことが本来の目的です。したがって、「手頃な価格で航空券を購入することで何が手に入るのか」という具体的なイメージが購入を後押しします。広告に掲載されている居心地の良さそうなホテルや、くつろいで過ごせそうなプールサイドの写真を載せることによって、「久しぶりに海外旅行をしてみようか」「そのためには航空券を予約しなければ」という思考に結びつきやすくなるのです。
2. 動画マーケティングへの活用例
【例】
ノートパソコンを販売するメーカーが、企業経営者や上級管理職を思わせる人物が製品を軽やかに扱っている様子を動画で紹介しているのを目にした。
【解説】
余裕をもって仕事をこなすスマートなビジネスパーソンが、軽やかにノートパソコンを操作している映像を見た視聴者には「仕事ができそうな人が使っているパソコン」というイメージが形成されます。ビジネススキルが高い人が好んで使うツールというイメージが培われることで、「自分もそうありたい」「仕事ができる人と思われそう」といったように、無意識のうちに抱いている願望を呼び覚ます効果が期待できるでしょう。
3. レビューマーケティングへの活用例
【例】
店頭で見かけて気になっていた商品をECサイトで検索したところ、高評価のレビューが多く見られたためオンラインで購入することに決めた。
【解説】
レビューマーケティングとは、顧客の口コミや評価を活用するマーケティング手法のことです。ユーザーレビューに高評価が多数付けられているのを目にした消費者は、「これだけ多くの人が高く評価している」「信頼できる商品のようだ」と感じるでしょう。実際には商品を利用したことがないにもかかわらず、購入前の段階で商品に対する信頼感が高まっている状態といえます。第三者の影響力により、商品やサービスに対して好印象を抱くようになり、結果として購買行動につながりやすくなる効果が期待できます。
4. キャンペーン企画への活用例
【例】
店頭でスキンケア用品の試供品を手渡された。無料でもらえたので何気なく使っていたものの、実際にスキンケア用品を購入する際には同じ商品を選んでいた。
【解説】
試供品を無料配布するキャンペーンは、消耗品や日用品などを中心に多くの業界で見られます。これは、商品を実際に手に取ることで生活者の記憶に残りやすくなり、購入を検討するきっかけになるからです。実際に使ったことがある商品は、パッケージデザインやブランドロゴ、商品名などが想起されやすくなる傾向があります。これにより、商品の購入を検討する際には真っ先に想起される商品として候補に挙がりやすくなるのです。
5. アンケート調査への活用例
【例】
店頭で簡単なアンケートに回答したところ、「環境にやさしい洗剤を選びたいと思ったことはありますか?」という設問が印象に残り、次に購入する際には植物由来の成分を使った洗剤を選びたいと思うようになった。
【解説】
企業が実施するアンケート調査には、市場調査などの目的以外にも「商品の特長や差別化ポイントに気づいてもらう」といった目的が含まれている場合があります。ポジティブな回答を引き出す設問にしたり、日頃心がけていることについて問う項目を設けたりすることで、商品に好印象を抱いたシーンや購入につながる動機が想起されやすくなるからです。上の例でいえば、「環境にやさしい洗剤を選びたい」という生活者の潜在的なニーズを思い起こさせる役割を果たしています。
6. 店頭での掲示物への活用例
【例】
飲食店で席についた瞬間に、テーブル上に置かれたデザートメニューの写真が目に飛び込んできた。注文する際、食事と一緒にデザートも注文することにした。
【解説】
先に記憶したものが行動に影響を与えるプライミング効果は、飲食店でもしばしば活用されています。この例のように、食事前にデザートの写真を目にすることで「食後のデザートを注文する」という選択肢が挙がりやすくなるのです。食事のメニューとともにデザートも注文してもらうことにより、客単価を引き上げる効果が期待できます。
プライミング効果を活用する際の注意点

ここまで見てきたとおり、プライミング効果は幅広いシーンに応用できる心理効果です。一方で、活用する際には注意が必要な点もあります。とくに次の2点については、ビジネスでプライミング効果を活用する際に慎重な対応が求められるでしょう。
意図していない想起につながる可能性がある
プライミング効果はポジティブな要素だけでなく、ネガティブな要素を想起させる可能性もあります。たとえば、「たまたま体調が優れない時に食べた食品がおいしくなかった」といった、ピンポイントの記憶が強く残ってしまうこともあり得るのです。
仮に「ボリューム満点」「こってり豚骨風味」といったセールスポイントをうたっている食品だったとすれば、商品そのものに「量が多くて食べきれない」「味が濃すぎる」といった悪い印象を抱き、そのイメージが固定化されてしまう可能性があります。このように、企業側が意図していない方向にプライミング効果がもたらされるケースもあることを想定しておく必要があるでしょう。
効果や持続性は限定的であるケースも多い
プライミング効果は万人に対して再現性が確認されている心理効果ではありません。したがって、その効果に対して過度な期待を抱くのは避けたほうが無難です。また、プライミング効果の持続性は限定的であるケースも多いことが知られています。一度訴求したイメージが、長期間にわたって持続するとは限らないことを念頭に置く必要があるでしょう。
生活者の中には、プライミング効果が有効に作用して購入を後押しされる層も存在します。一方で、プライミング効果が得られず購入商品の選択肢に挙がらないことも十分に考えられるのが実情です。プライミング効果を駆使する=必ず売れるようになる、というものではない点に留意する必要があります。
プライミング効果をビジネスに取り入れてみよう
プライミング効果は、人が意識していないところでインプットされた印象やイメージが行動に影響を与える心理効果です。この心理効果をビジネスに有効活用することによって、商品の購入を後押ししたり、サービスの利用を具体的に検討してもらったりする効果が期待できます。今回紹介した具体例や注意点を参考に、プライミング効果をビジネスに取り入れてみてはいかがでしょうか。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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