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なぜいい商品が売れるとは限らない?プロスペクト理論で顧客行動を理解する

From: ダイレクトマーケティングラボ

公開日:2025年12月15日

この記事に書いてあること

絶対に必要ないと分かっているのに、コンビニでつい手に取ってしまう商品がある。たまたま見ていた通販サイトで、それまで買う気もなかったのにある商品が気になって仕方がない。

誰しも、こんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

こうした一見”非合理的”な行動を説明してくれるのが、行動経済学の代表的な理論である「プロスペクト理論」です。

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プロスペクト理論で顧客の意思決定を理解する

おそらくほとんどのマーケティング担当者が、「いい商品なのに思ったほど反響がない」「自社よりもスペックが劣る商品の方がなぜか売れている」といったもどかしさを感じたことがあるのではないでしょうか。
それを説明するプロスペクト理論の核の一つが、「確実性効果」です。

あなたなら、AとBのどちらを選択しますか?

・ケース1
A:確実に1万円もらえる(100%1万円が手に入る)
B:50%の確率で2万円が当たる
この場合、1万円 × 100% = 1万円と2万円 × 50% = 1万円なので、期待値は同じです。にもかかわらず、多くの人が「確実に1万円」を選びがちです。

・ケース2
A:確実に1万円失う
B:50%の確率で2万円失う
こちらも期待値は同じですね。つまり、ケース1、2ともに、全ての選択肢で期待値は同じなわけです。にもかかわらず、多くの人がケース1ではAを、ケース2ではBを選びがちです。

このことから分かるように、人は確実に得られるものを過大評価し、不確実なものを過小評価してしまう傾向があります。例えば、「必ず2万円以上の商品が入っている福袋」(ケースAに対応)と「10万円分の商品が入った『当たり』がある福袋」(ケースBに対応)では売れ行きが変わってくるわけです。

マーケティングで活用できる価値関数の3ポイント

プロスペクト理論をマーケティングに応用する上で欠かせないのが「価値関数」です。価値関数から導かれる3つの心理的特徴を理解することで、マーケティング施策の精度が高まります。

まずは価値関数を理解しよう

確実性効果をグラフ化したものが、「価値関数」と呼ばれるグラフです。例えば先ほどのケース1、2では、このような価値関数を描きます。

価値関数の図

このように、「利得の幅よりも損失の幅の方が大きなカーブを描く」ことを意識してマーケティング施策を打つことがポイントです。

ポイント① 人は利益より損失に強く反応する(損失回避性)

プロスペクト理論を提唱したダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの研究によると、人は利益を得る喜びよりも、失うことの痛みの方を2倍以上強く感じるとされています。新商品をリリースするときには、その商品が「当たり」だったときに感じる喜びよりも、「ハズレ」だったときのがっかり感の方が2倍以上も強い、ということになります。

例えば、iPhoneが世界的にヒットし続けている要因はさまざまですが、ビジュアルが大きく変わらないことは、その要因の一つでしょう。ユーザーが新しいiPhoneを試すときに「今回はハズレかもしれない」というリスクを感じにくいのです。

ポイント② 人は絶対額より割合に敏感(感応度逓減性)

1万円の商品が千円引きだと、とてもお得な印象を受けますよね。一方で、100万円が千円引きであっても、私たちはさほどお得感を感じません。これが「感応度逓減性」です。

人は金額の絶対値より「変化の割合」に反応するため、グラフのように、価値関数の曲線は金額が大きくなるほど緩やかになります。

ポイント③ 人は基準点を元に判断する(参照点依存性)

人は、物事の絶対的な価値よりも、基準点(参照点)との比較で判断しています。
同じ商品について書かれたコピーが3種類あるとします。

A「この商品は1万円です」
B「この商品は、他社に比べて30%お得です」
C「この商品には、他社の製品に比べて有効成分が2割増しです」

AよりもB、Cの方が、「買ってもいいかな」と思いやすいのではないでしょうか。
同じ価値のある商品であっても、参照点を設定することによって購買判断に大きく影響するのです。

多くのサービスが、プロスペクト理論を応用している

ここまで紹介した理論的な要素は、すでに多くの企業がマーケティング施策に活用しています。私たちが日常的に接している事例を見てみましょう。

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ポイント還元セール・タイムセール

プロスペクト理論は、実際に多くのシーンで活用されています。
期間限定セールやポイント還元は、顧客に「今買わないと損をする」という感覚を強く意識させます(損失回避性)。
さらに、普段の価格や付与率を参照点として比較することで「今はお得」と感じさせる仕組みです。商品やサービスを訴求する際には、参照点をどこに設定するかによって、顧客の意思決定をポジティブに導く効果が変わってくるといえます。

初月無料のサブスク

サブスクリプションサービスでよく見かける「初月無料」「最初の3ヶ月は大幅に割引」といった施策は、感応度逓減と「定価」という参照点依存性をうまく利用しています。
特に、「無料」の場合は割引よりも大きな心理的インパクトがあり、顧客が強くお得感を抱きやすいのです。

会員制システムにおける「ランク」

ホテルやクレジットカード、ECモールなどのサービスでは、購入額に応じて会員ランクが設定されていることがあります。
顧客は「現在のランク」を参照点として認識しており、「せっかく獲得したランクを下げたくない」という損失回避性の心理が働きます。

満足保証や返金保証も購買へのハードルを下げる

「これを買って損をするのではないか」という不安を払拭する施策として使われているのが、満足保証や返金保証です。「満足いかなければ返品できます」などの一言を示しておくことで、損失に対する不安を減らし、意思決定のハードルを大きく下げることができるのです。

プロスペクト理論の多用は厳禁?使い過ぎると逆効果に

プロスペクト理論は非常に活用のシーンが多い理論ですが、過剰に使い過ぎると、顧客のエンゲージメントや信頼を失うおそれがあります。
短期的な売上の増加だけではなく、顧客との長期的な信頼関係の構築のためにも、顧客の不安を取り除き、安心感を与える方向で理論の活用を意識しましょう。

セールをしすぎると「参照点」が変動してしまう

あるドーナツチェーン店は、人気の高かった「ドーナツ100円セール」を2016年に廃止しました。100円セールの頻度が高かったことで、顧客の参照点が「定価」から「100円」に変わってしまい、「定価では買わない」顧客が増えてしまったことが要因の一つです。

長期的な信頼構築を損ねないことが重要

「損を避けたい心理」を利用して過度に不安をあおることは、一時的な購買促進にはつながっても、ブランドへの不信感を生むリスクがあります。また、「これまで投資した時間やお金を無駄にしたくない」という心理的ハードルを下げるために、累計購入額に応じた特典や会員ランクなどの設定を行うことは有効ですが、過度に使うと「囲い込み」と捉えられ、信頼を損ねるリスクもゼロではありません。顧客にとってもメリットがある施策と組み合わせるなどの工夫が必要です。

顧客が求めているものを知るために理論を活用しよう

プロスペクト理論は、顧客理解を深めるツールとしても活用できます。自社の施策や他社の施策を教材に、「顧客はなぜ買わないのか」「どんな比較基準を持っているのか」をプロスペクト理論の視点で分析することで、エンゲージメントを高め、顧客体験全体を改善するヒントが得られます。

プロスペクト理論を上手く活用して、顧客の心を動かすマーケティングを

プロスペクト理論を理解すれば、セールやサブスク、会員制度、返金保証といった施策をより効果的に設計することが可能になります。短期的な購買を促すために活用するだけでなく、顧客との長期的なエンゲージメントや信頼構築のためにプロスペクト理論を活用していきましょう。

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記事執筆

ダイレクトマーケティングラボ編集部 (リコージャパン株式会社運営

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