その表現、ステマかも?現場での見極め方
公開日:2025年10月21日
この記事に書いてあること
2023年10月の景品表示法改正で、ステルスマーケティング(ステマ)は不当表示として規制対象に。知らないうちに違反してしまうと、行政処分やブランド毀損のリスクがあります。本記事では、ステマの定義と背景、現場で注意すべき表現の見極め方、そして最新の規制ポイントをわかりやすく解説します。
口コミのフリをした「ステマ」
広告であることを分からないように隠して商品やサービスを宣伝する手法が、ステルスマーケティング(以下ステマ)です。本来は広告でありながら、「個人の感想」や「信憑性の高い口コミ」に見えるため、消費者の正常な判断力を損なわせてしまうとして問題視されてきました。
私たちは往々にして、利害関係のない第三者の声を「本音」だと判断しがちです。また、「多くの人が支持しているものは良いものだ」と捉える傾向もあります。レビューサイトで高評価がついている商品に対しては、「きっと良いものに違いない」という信頼を抱きやすいのです。
2023年には日本でも、ステマに対して規制がかかることになりました。もともと、広告においては「景品表示法」という法律で規制されていましたが、SNSが急速に拡大したことで、従来の規制ではカバーしきれない「ステマ」という広告形態が生まれたのです。消費者保護の観点から各国でステマに対して規制強化の必要性が高まり、現在のような規制が導入されることになりました。
意図しないステマで企業が受けるダメージは大きい
日本では2023年に景品表示法が改正され、ステマについて「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」という定義が定められました。この規制の主体となるのは、商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。
仮にステマに該当する発信を意図せずに行ってしまった場合、企業が被る損害は想像以上に大きいため、注意が必要です。
信用を失うだけでなく、不買運動に発展するケースも
ステマが発覚すると、消費者は「だまされた」と感じ、企業やブランドに対して不信感を抱くようになります。インターネット上に一度公開された情報を完全に削除することは極めて困難なため、ステマに関する情報や批判的な口コミは、SNSやまとめサイトなどに残り続けます。これが「デジタルタトゥー」となり、検索エンジンで企業名や商品名を調べた際にステマの問題が繰り返し表示されてしまうのです。
また、消費者によるステマの告発を機にSNSで大炎上するケースも世界中で起こっています。ある世界的飲料メーカーでは、飲料プロモーションのブログを有名ブロガーに依頼し、ユーザーの不買運動に発展しています。
損害賠償請求を受ける可能性も
ステマによって消費者が不利益を被った場合には、広告主である企業が損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。海外では特に、ステマによって商品の品質や効果について誤認させられた結果、健康被害などの被害が生じた場合、その損害賠償額は莫大なものになるおそれも否定できません。これにより、企業は金銭的にも大きな打撃を受けることになります。海外では、大手映画制作会社がステマによる損害賠償として100万ドルを超える賠償金を支払うケースも見られました。
ステマが起きやすい典型的な3ケース
マーケティングに関わる人が知っておくべき法律の一つに「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」があります。
ステマについては、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示」であり、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある」(景品表示法5条3号)かどうかが重要なポイントです。
例えば、ある商品を開発・製造したA会社がその商品に対する広告を打つとします。その際に、一般消費者がそれを「A社が出している広告」としてではなく、「第三者の表示」として誤認してしまうような場合には、ステマに該当するおそれがあるわけです。
ステマが特に起こりやすいシーンとして典型的なのが、「アフィリエイト広告」「インフルエンサーの投稿」「口コミ投稿」です。
アフィリエイト広告
個人のブログやSNSで「この商品を買ったらとても良かった」と紹介し、それがアフィリエイトリンクであることを明記しない場合、ステマに該当します。
インフルエンサーの発信
インフルエンサーに商品を提供したり、報酬を支払ったりしてPRを依頼する際、「#PR」「#広告」などの表示がない場合には、広告であることを判別するのが困難なため、ステマに該当します。インフルエンサーはステマ規制の対象にはなりませんが、インフルエンサーに発信を依頼した広告主が罰せられる可能性があります。
無償提供であってもステマに該当し、景品表示法違反になるおそれがある点には注意が必要です。
従業員やユーザーからの口コミ投稿もステマになりうる
従業員が個人アカウントで自社商品について口コミやレビューなどを投稿するケースも同様です。広告主である企業が何らかの対価を支払っている場合には、ステマに該当するおそれがあります。
ステマを未然に防ぐ!今すぐできる3つの対策
こうした「起こりやすいステマ」を未然に防止するために、企業はどのような対策を取れば良いのでしょうか。
広告であることを徹底的に明示する
「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難」となるケースを避けるため、消費者が一目で広告だと認識できることが重要です。
「広告」「PR」などの表記を記載する際には、下記の点に該当する事項がないか注意しましょう。
- ・文字のサイズが読めないほど小さい
- ・文字が背景と同化している
- ・スクロールしなければ表示されない位置に表記している
これらの行為は、ステマに該当するおそれが高いため、避けましょう。「タイアップ」「コラボ」などの曖昧な表現を使うことも同様です。
SNSの場合、ハッシュタグの中に紛れ込ませたり、動画のごく短時間だけ表示したりする行為も避けましょう。
社内のチェック体制を構築する
インフルエンサーやアフィリエイターなど、外部の個人や業者に広告を依頼する際には、契約書に「広告表示の義務」を明記するだけでなく、公開前には広告表示が適切に行われているかを社内でチェックする体制も整えましょう。
組織全体でステマのリスクを管理するためには、明確なルールとチェック体制が必要です。どのような行為がステマに当たるかを具体的に示した社内ガイドラインを作成し、全従業員に周知し、定期的に研修などで知識のブラッシュアップまでフォローできると安心です。
過去に掲載した広告コンテンツもチェックする
ステマに該当するかどうかは客観的な事実に基づいて判断されるため、「ステマに該当するとは知らなかった」「大丈夫だと判断した」としても通用しません。過去に作成して今も掲載し続けている広告コンテンツにステマに該当するものがないか、改めてチェックし直すことも重要です。
意図せずステマをしてしまったときの対応策
早急に広告の停止・修正を行う
ステマと疑われる事態が発生した場合、まずは対象となる投稿や記事などの広告を削除する、または広告であることを明記するなどの対応が最優先です。
確約手続
ステマによって景品表示法違反があったと認定されれば、措置命令の対象になります。このとき、自主的に再発防止策を策定して実行することを消費者庁に申し出ることにより、消費者庁が違反認定を行う前に調査を終わらせることができます。
返金措置
ステマによって消費者が誤認し、商品やサービスを購入してしまった場合には、事業者が消費者に返金をすることで、課徴金額が減額されるという措置です。手間がかかることから、実務上ではあまり使われていませんが、こういった方法があることも抑えておくとよいでしょう。
効果的なPRの作り方
ステマが規制対象となった背景には、ステマの効果の高さもありました。信憑性が高い「口コミ」や「インフルエンサーの発信」などを通じて消費者の判断を意図的に誘導することで、高い広告効果が期待できるわけです。
ステマを避けつつ広告効果を高めるためには、どういった点に注意すればよいのでしょうか。
世界観やストーリーの表現でターゲットの共感を呼ぶ
広告に対するユーザーの不快感を払拭するためには、「これは見る価値のある広告だ」と感じさせることが有効です。例えば、世界観のある写真に感覚的なコピーが人気の「麦焼酎 いいちこ」や、「そうだ 京都、いこう」というコピーで有名なJR東海のキャンペーンなどが、その一例として挙げられます。商品やサービスを通じて、ユーザーが得られる体験や感情にフォーカスし、ターゲットの共感を呼ぶ世界観やストーリーで表現している好例です。
エンゲージメントに主軸を置く
広告にはさまざまな役割がありますが、その一つが共感や信頼を得ることです。消費者からの共感や信頼は、商品やサービス、ひいては会社そのものの寿命を延ばし手くれるものといえます。
JR東日本では、交通系ICカードである「Suica」のペンギングッズを展開。ペンギンマスコットを通じて、SuicaやJR東日本に対する愛着を醸成することにより、広告っぽさをうまく抑制しながら共感や親近感を高めている好例です。
また、ターゲット層と親和性の高いインフルエンサーを起用することで共感を得てエンゲージメントを高めたり、従業員自身が広告を通じて商品に対する思いなどをSNSで発信したりすることも、エンゲージメントを高めるための一つの方法です。
UGC広告で、顧客の生の声を上手に活用しよう
UGC(ユーザー生成コンテンツ)広告とは、ユーザーが自発的に投稿したレビューなどを広告素材として使用する手法です。例えば無印良品では、ユーザーがSNSで投稿した無印良品に関する投稿を公式アカウントでも紹介しています。UGC広告では、ユーザーの許可と投稿元の明記が欠かせません。無印良品では、公式サイト上に「SNS使用に関する確認書」を掲載し、包括同意を得る運用を行っています。
ステマ規制の理解を深め、質の高い広告運用を目指そう
広告は単に商品やサービスを訴求して購買意欲を高めるツールとして活用できるだけでなく、消費者との関係を構築し、共感や信頼を得るためにも活用することができます。しかし、ステマは消費者からの信頼を毀損してしまいます。
ステマについて正しく理解し、ユーザーに「見る価値がある」と感じさせるコンテンツを作ることができれば、単なる商品紹介を超えた深いエンゲージメントが生まれます。ステマによるリスクを回避しつつ、信頼される広告戦略を構築してみてはいかがでしょうか。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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