デジタルマーケティングの事例6選から学ぶ成功のコツ・戦略の立て方
2019年12月18日 00:00
この記事に書いてあること
【2025年9月2日更新】
近年、マーケティング手法の1つとして「デジタルマーケティング」が広く浸透しつつあります。従来のマーケティング活動とどう違うのか、具体的にどういった効果があるのか知りたいと考えていた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、デジタルマーケティングの基礎知識や主な手法をはじめ、手法ごとの成功事例と成功のポイント、事例から学べることをわかりやすくまとめています。デジタルマーケティングを成功させるコツと戦略の立て方も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは、デジタル技術を利用して展開されるマーケティング全般のことです。デジタル技術を駆使することで、たとえば、Webサイトの閲覧履歴やメールへの反応、購買履歴といった顧客の行動や反応に関するデータ(レスポンスデータ)を蓄積・分析し、マーケティング施策に活かすことが可能になります。
こうしたデータにもとづいて、顧客とのつながり(コミュニケーション)を強化していくことが、デジタルマーケティングを実践する主な目的です。ITの普及やIoT・AIといった先進技術の発展により、膨大な量のデータを収集・管理し、高度で正確な分析が可能になったことが、デジタルマーケティングの普及を後押ししています。

デジタルマーケティングの基本事項については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
デジタルマーケティングとは?成果につながる手法と導入ポイントをわかりやすく解説 | ダイレクトマーケティングラボ | リコー
デジタルマーケティングの主な手法
デジタルマーケティングの手法は多岐にわたります。代表的な手法として挙げられるのは次の6点です。
- 1.Webマーケティング
- 2.メールマーケティング
- 3.デジタル広告
- 4.アプリマーケティング
- 5.CRM/MA
- 6.IoT連動
Webマーケティングの成功事例
Webマーケティングとは、Webサイトを活用したデジタルマーケティングの手法のことです。WebサイトはBtoB/BtoCを問わず幅広いターゲットにとって身近な媒体であることから、デジタルマーケティングの中でもとくに多く用いられている手法といえます。Webマーケティングの成功事例と成功のポイント、事例から学べることを見ていきましょう。
Webを駆使して消費者の意識変化をキャッチ|株式会社マンダム
化粧品メーカーの株式会社マンダムは、ニキビなどの肌トラブルを解消したい男性をターゲットとする商品を提供してきました。しかし、現代の男性若年層が、トラブルのない肌だけでなく、見た目や清潔感を意識しているというニーズをいち早く察知し、さらに新しい顧客を生み出すことに成功しています。
成功のポイント
ニーズの変化をいち早く察知できた背景には、消費者や市場の意識調査の実施があります。あわせてSNSを活用した啓蒙活動も展開し、女性が語る理想の男性像を発信したり、商品の使用方法や男性のスキンケアに関するWebコンテンツを増やしたりすることで、自社ブランド「GATSBY」の認知・拡大につなげています。
見込み顧客の獲得のみならず育成も行うことにより、より高い確度で顧客を生み出す仕組みを作り上げているのがポイントです。
事例から学べること
市場のニーズには普遍的なものと変化していくものがあります。先入観や自社の願望にもとづいて商品・サービスの開発を進めるのではなく、現状の市場ニーズを正確にキャッチしておくことは非常に重要なポイントです。
この事例のように、消費者の意識調査や市場調査を徹底して実行することは、市場の実態をより高い解像度で把握する上で役立ちます。デジタルマーケティングにおいても、従来のマーケティング活動と同様、ニーズの把握が重要なポイントとなることを示唆している事例です。
メールマーケティングの成功事例

メールマーケティングとは、メールを駆使したマーケティング手法のことです。メールマガジンやステップメールなどが代表的な手法として挙げられます。メールマーケティングの大きな強みは、ターゲットのメールアドレスさえ取得すれば施策を実行できる点です。メール配信システムなどの活用により、施策を自動化・省力化しやすい点も大きなメリットといえます。
メールマガジンとブログの相乗効果|サンロフト
Web集客を軸に地方の中小企業のマーケティング活動を支援しているサンロフトでは、自社ブログとメールマガジンを組み合わせた戦略を展開しています。オウンドメディア経由で潜在層との接点を築き、メールマガジンで見込み客との接点を強化していくという戦略です。メールマガジンとブログの相乗効果により、見込み客の発掘から育成までを実現しています。
成功のポイント
オウンドメディアとメールマガジンのそれぞれの特性を活かし、見込み客の興味関心に合わせて施策を設計していることが成功のポイントと考えられます。知名度が極めて高い企業を除けば、企業名や商品・サービスの名称でユーザーが直接検索する「指名検索」によって自社サイトを訪問する可能性は低いといわざるを得ません。見込み客が関心を寄せていると思われるテーマで情報を発信し、その中から自社に興味をもった見込み客へ自社情報を提供するという、カスタマージャーニーを踏まえた戦略設計といえます。
事例から学べること
デジタルマーケティングには数多くの手法があるため、見込み客との関係性の段階に応じて適した媒体を使い分けていくことが重要です。この事例では、見込み客との接点の深さや強さに応じて、ブログとメールマガジンを適切に使い分けています。自社の都合で戦略を設計するのではなく、あくまでも見込み客の心理や行動に根差した戦略構築を実践することが重要です。まずは見込み客の視点に立ち、カスタマージャーニーマップを作成しておく必要があるでしょう。
デジタル広告の成功事例
デジタル広告とは、Web広告や動画広告、デジタルサイネージといったデジタル技術を活用した広告戦略全般のことです。ターゲットに合わせて広告を出し分けるといったパーソナライズが可能なことに加えて、複数のパターンの広告クリエイティブをA/Bテストで検証するといったこともできます。また、ターゲットやシーンに合わせて多彩な媒体を選べるため、たとえば時間帯によって広告の内容を変えたり、セール情報などを時期ごとに告知したりするといった戦略を実行したい場合にも効果的です。
AIを活用した広告の最適化|株式会社USEN
業種特化型のPOSレジ「USENレジ」を提供している株式会社USENでは、CV(コンバージョン)の最大化に向けて広告クリエイティブを改善する施策を試みました。さまざまなパターンの広告クリエイティブから得られたデータをスコアリングし、AIを活用して広告のコピーや色などを要素ごとに検証するという取り組みです。この取り組みが功を奏し、CVを従来の数倍にまで増加させることに成功しています。
成功のポイント
マーケターの直感や経験則に依存することなく、データドリブンな改善を積み重ねたことが成功の要因と考えられます。デジタルマーケティングを取り入れる大きなメリットの1つは、定量的なデータを収集・活用できる点です。マーケティング戦略や施策にデジタル技術を取り入れるだけでなく、運用・改善の段階においてもデータにもとづく客観的な判断と意思決定をしていくことが求められています。
事例から学べること
とくに広告運用に関しては、市場調査をどれほど綿密に実施しても実際のニーズや見込み客の反応は予測しきれない面があります。自社の都合や願望にもとづいて戦略を設計するのではなく、データに根差した客観性の高い分析によって改善を積み重ねていくことが重要です。施策を改善する際のPDCAサイクルを高速で回していくことは、デジタルマーケティングを成功へと導く上で重要な要素といえるでしょう。
アプリマーケティングの成功事例

アプリマーケティングとは、スマートフォンやタブレットで利用可能なアプリを軸としたマーケティング手法のことです。モバイル端末が急速に普及した昨今において、見込み客の手元へ情報を届けられるリアルタイム性の高さが強みといえます。また、アプリを提供する企業側は各ユーザーの行動履歴を詳細に把握できる点が大きなメリットです。
アプリで購入前の負担を軽減|株式会社良品計画
シンプルでベーシックなデザインの日用雑貨や衣類、文房具などで人気を博しているブランド「無印良品」を展開する株式会社良品計画では、自社アプリ「MUJI passport(ムジパスポート)」を提供しています。ユーザーはマイルと呼ばれる独自ポイントを貯めることで買い物に利用できるほか、ランク認定やそれに付随したボーナスポイントも利用可能です。
また、アプリの活用によりリピート効果が期待できるなど、店舗側にとってもメリットの大きい手法といえます。無印良品では、アプリに店舗検索や在庫検索の機能をつけることで、購買行動履歴を可視化できるようにしました。これにより、ユーザーが何に興味があり、どのようなものを求めているのかをデータ化し蓄積できるようになっています。
成功のポイント
アプリを通じて収集されるユーザーの購買履歴から、ユーザーニーズを捉えたサービスの提供へとつなげている点が成功のポイントと考えられます。MUJI passportアプリでは、次の機能を利用可能です。
- ・クーポンの取得・利用
- ・チェックインによるマイル付与
- ・誕生日特典プレゼントの受け取り
- ・ネットショッピング
- ・ネット注文・店舗受け取りサービスの利用
- ・商品や店舗の検索
- ・お気に入り商品リストの利用
- ・配送リストの作成
- ・商品レビュー投稿・閲覧
- ・イベント予約
- ・インテリアの相談に関するオンライン予約
- ・MUJI HOTEL予約
アプリはユーザーの利便性を高めるだけでなく、パーソナライズされた顧客体験を提供することで、満足度の向上にもつながっています。こうした顧客にとっての明確なメリットが、アプリ活用の成功要因といえるでしょう。
事例から学べること
アプリマーケティングの核心は、ユーザーデータのきめ細かな把握にあるといっても過言ではありません。ユーザーのニーズを可視化し、データにもとづくサービス提供を実践していくことが重要です。そのためには、アプリを利用するメリットをユーザーに提供し続けていく工夫が求められます。無印良品の事例は、ユーザーに寄り添ったサービスの提供がファンの獲得につながることを示している好例です。
CRM/MAの成功事例
CRMは(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、顧客の情報や接点の履歴を一元管理し、関係を強化するためのツール、MAは(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)は、見込み客へのアプローチやフォローアップなどのマーケティング業務を自動化するツールです。顧客情報をCRMで管理し、MAで顧客の行動履歴にもとづく施策を自動化することにより、顧客との接点を増やしコミュニケーションを強化できます。従来は埋もれがちだった顧客データを有効に利活用できることが、CRM/MAを活用する大きなメリットです。
ファンの心理と行動を分析して収益増|オリックス・バッファローズ
オリックス野球クラブ株式会社が運営するプロ野球球団・オリックス・バッファローズでは、ファンクラブにおけるイベント開催やDM、販促活動などの広報活動は、別々の部門がそれぞれ実施していました。そのため一定の効果が得られたとしても、各活動の相乗効果が期待できない状況にありました。
そこでCRMを導入し、チケットやグッズの購入、飲食のデータなど、ファンの行動データを一元的に把握できるようにしました。また、各部門で連携が取れる体制を整え、これまで見えていなかった課題を明確化するための仕組みを整備しています。
成功のポイント
部門間でデータを共有できるようになったことで、チームの勝敗にかかわらずスタジアム来場数やグッズなどの購買率を上げることに成功しました。複数のサービスを横断して会員データを活用できる仕組みを整えたことが、大きな成功要因といえます。結果として会員ごとのニーズに合わせたクロスセルが可能となり、売上伸長につながりました。
事例から学べること
この事例で示されているとおり、データをいかに一元管理するかがデジタルマーケティングの成否を二分するポイントといっても過言ではありません。「点」の各活動を「線」でつなげていくことで、顧客にシームレスなサービスを提供できるからです。デジタルマーケティングを取り入れる際には、複数の媒体から得られた顧客データを一元化するための手段を並行して構築していく必要があります。
IoT連動の成功事例

IoT(モノのインターネット)とは、さまざまな機器や端末をインターネットに接続し、オンライン化する仕組みのことを指します。従来はオフラインで使用されてきた機器・端末がインターネットに常時接続されることにより、多種多様なデータを利活用できる点が大きなメリットです。
収集したデータを顧客とのコミュニケーションに活用|ライオン
生活用品メーカーのライオン株式会社では、自社商品の歯ブラシにセンサーを組み込み、子どもの成長に合わせた歯みがきトレーニングに役立つ仕組みを提供しています。専用アプリと連携することにより、子どもが進んで歯みがきを続けられるよう、音声やイラストで磨き方をアドバイスする仕組みです。また、収集されたデータを元に歯ブラシを交換するタイミングや、体格に合った歯ブラシの購入の提案もしています。
成功のポイント
歯ブラシを使用する各ユーザーの状況をデータによって可視化し、的確な時期にレコメンドを実施していることが成功のポイントといえます。単にデータを収集するのではなく、日頃からユーザーにとって役立つ情報を提供し、継続的にコミュニケーションを図っている点が一連の施策の大きな特徴です。
事例から学べること
歯ブラシを購入する消費者の深層心理には、オーラルケアや虫歯予防・歯周病予防をしたいというニーズがあります。こうした以前から存在するニーズを、IoTを活用してよりきめ細かく実現できるようにしたのが上記の事例です。
デジタルマーケティングは、あくまでも顧客との新たな接点の創出やコミュニケーション手段の多角化を実現するための戦略といえます。自社の商品・サービスに求められていることや、自社ならではの強みをあらためて振り返り、デジタルマーケティングによって強化できるポイントを探っていくことが大切です。
事例から学ぶ成功のコツと戦略の立て方

今回紹介した6社の事例を元に、デジタルマーケティングの戦略を立てる際に意識しておきたいポイントをまとめました。
ターゲット層を明確にする
デジタルマーケティングにおいても、従来のマーケティングと同様にターゲット層を明確にしておくことが非常に重要です。まずはリード(見込み客)のターゲティングとペルソナ設定を行いましょう。
その上で、訴求すべきターゲットにとってデジタルデバイスの活用が適しているかどうか、慎重に検討しておく必要があります。仮にターゲットのデジタルデバイスの使用率が低いようなら、むしろアナログな手法を軸に戦略を構築するのがベターかもしれません。デジタルマーケティングの導入ありきではなく、ターゲットありきで戦略を設計していくことが重要です。
具体的な目標値を定める
次に、デジタルマーケティングによってどのような成果を得たいのか、ゴール設定を行う必要があります。たとえば、どのくらいのアクセス数やコンバージョン率、収益があれば成功といえるのか、といった指標を明確にしておくことが大切です。
目標値は希望的観測にもとづいて決めるのではなく、既存の顧客データや購買履歴を参考に検討していくのが望ましいでしょう。目標値が定まったら、その目標を達成するために必要とされる施策をゴールから逆算して設計していきます。
システム部やセールス部と連携する
システム部やセールス部門との連携も重要なポイントの1つです。マーケティングの対象範囲が大規模であるほど、企業全体で戦略に取り組む必要があります。デジタルマーケティングも例外ではなく、さまざまな部署と連携できることが大切です。
マーケティング業務だからマーケティング部門だけで取り組むのではなく、各部門の協力体制が必要になります。業務フローや内容を確かめた上で、Webページなどの更新・管理はシステム部、顧客対応や営業は営業部など、専門チームで取り組めるように調整しておくことがポイントです。
オートメーションツールの導入
適切なオートメーションツールを導入することで、施策を自動化していくことも大切です。デジタルマーケティングの仕組みの構築や運用には少なからずコストがかかります。とくに、はじめてデジタルマーケティングに取り組む際には、周囲や上層部の理解が得にくい場合もあるでしょう。しかし最初から多くのコストをかける必要はありません。無料の分析ツールなどを利用してコストを抑えてスタートしていき、徐々に実績をあげていくことで理解を得やすくなります。
無料のツールでも、自社のデジタルマーケティングの目的に適した機能があれば運用することは充分可能です。上手に利用すれば人件費やサイトの運営費などのコスト削減が期待できます。
顧客体験を軸とした戦略設計
デジタルマーケティングであっても、従来のマーケティング活動と同様に顧客体験を軸とした戦略設計が鍵を握ります。デジタルツールの活用やオムニチャネル化は、あくまでも手段にすぎません。顧客の心理を分析した上でカスタマージャーニーを整理し、顧客体験を軸に据えた戦略を構築していくのがポイントです。
デジタルマーケティングを取り入れるとなると、ツールの選定や活用方法に耳目が集まりがちです。ツールありきではなく、顧客体験をどのように向上させていくのかを念頭に置き、ゴールを明確にして施策を講じていくことが求められています。
デジタルマーケティングの事例を参考に戦略を策定しよう
デジタルマーケティングを取り入れることで、顧客のレスポンスデータを蓄積・活用して新たなコミュニケーションのあり方やタッチポイントを創出できます。従来は埋もれがちだったデータを有効に利活用することにより、より良質な顧客体験やパーソナライズされた購買体験を提供可能です。今回紹介した6社の事例を参考に、ぜひ自社にとって効果的なデジタルマーケティングの戦略策定を実践してください。
記事執筆
ダイレクトマーケティングラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「ダイレクトマーケティングラボ」では、デジタルと紙の特性を理解しているリコーが、販売促進やマーケティングに携わるすべての方に、企業と顧客との最適なコミュニケーション施策のヒントをお届けします。
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