「現場を止めない」BCP対策としてポータブル蓄電池を導入 南魚沼市が選んだ、安全・柔軟な電力確保のかたち 南魚沼市役所(新潟県)
2025年07月22日 15:19
この記事に書いてあること
新潟県南部、標高2,000メートル級の山々に囲まれた魚沼盆地に位置する南魚沼市様。
南魚沼産コシヒカリの産地としても知られ、豊かな自然と交通の利便性を兼ね備えた地域です。
上越新幹線・越後湯沢駅から市内中心部までは車で30分ほどのところに位置しています。交通の大動脈である関越自動車道が市内を縦断し、太平洋と日本海を結ぶ交通の要衝としての役割も担っています。
同市では、過去の地震や水害により一時的に電力供給が途絶え、市民生活に大きな影響が及びました。
この経験を踏まえ、BCP(事業継続計画)強化の一環として、安全性と柔軟性に優れたポータブル蓄電池の導入が実現しました。
今回は、この取り組みを中心となって推進された、南魚沼市 総務部情報管理室 室長 貝瀬光行様と、係長 井口峰(たかし)様にお話を伺いました。
災害時にも業務を継続するために必要だった備え
南魚沼市役所様では、早くから非常用発電装置や防災用蓄電池の配備を進めてきました。
しかし、これまでの備えだけでは十分ではないという課題も見えてきたことから、市では“現場を止めない”ことを最優先に掲げ、新たなBCP対策を本格的に始動しました。
取り組みを加速させた背景には、「市役所は住民にとって最後の砦であり、災害時であっても窓口業務を継続できる体制を整えるべきだ」という市長の強いリーダーシップがありました。
加えて、情報インフラを守るという観点からも、災害時の業務継続を支える電力供給体制の見直しは喫緊の課題となり、ポータブル蓄電池の本格導入が検討されることになったのです。
安全性と実効性を見極めた蓄電池選定のプロセス
ポータブル蓄電池の選定にあたっては、まず「一定時間、MFP(複合機)とPCを安定稼働させること」が最低条件とされました。加えて、特に重視されたのが安全性と耐久性です。
近年、リチウムイオン電池による火災事故の報道が相次いでいたことから、安全性が高いといわれるリン酸鉄を採用した蓄電池を選定するため、市役所とリコージャパンの双方で情報収集を進めました。その結果、安全性と耐久性に加え、柔軟な運用が可能な点が評価され、エコフロー(EcoFlow)社の製品が有力な候補として浮上しました。
「私たちが“これが良さそうだ”と考えていた機種と、リコーさんから提案された機種がまったく同じだったのです。自分たちの判断が後押しされたようでうれしかったですね。選定した機種はリン酸鉄リチウムイオン電池採用により高い安全性に加えて寿命も長く、定期的なバッテリー交換が不要なため、維持管理が容易でコスト面でも納得できました」と、機種検討や現場との調整などに尽力された井口様は話します。
さらに、持ち運びができる点も高く評価されました。
庁舎内だけでなく、災害時には別の場所へ移動して使える柔軟性が、自治体のBCP対策として大きな魅力となったのです。
正式な導入の前には、約1週間の試用期間を設け、複合機との接続テストや充電制御の挙動など、細部にわたる実証実験が行われました。
人事異動の多い行政機関では、新任の職員でも迷わず操作できることが求められるため、運用面の分かりやすさも重要な検討項目でした。
「実効性のある設備を導入したいという思いが強かったので、十分な試用期間を設けてもらいました。
そうした姿勢にリコージャパンさんが根気よく付き合ってくださったことに、本当に感謝しています」と、貝瀬様は語ってくださいました。
非常時の対応力を高めながら、脱炭素への歩みも加速
入念な検証を経て、本格導入が実現したのは2023年のこと。まずは複合機対策として6台を導入し、その後、UPS(無停電電源装置)の代替用としてさらに7台が追加され、現在は合計13台のポータブル蓄電池が庁舎内で稼働しています。
今後は、既存UPSの置き換えや新たな部署への展開も視野に、段階的な増設が予定されています。

DELTA:定格出力1,500W。主に複合機およびPCのバックアップ電源として使用

RIVER:定格出力380W。主にPCのバックアップ電源として使用
災害時の備えと並行して、南魚沼市ではCO₂削減にも積極的に取り組んでいます。
その象徴的な事例の一つが、冬季に貯蔵した雪を夏季の冷房に活用する「雪冷房」です。
これは、雪から溶けだした冷水を循環させ、不凍液を介して熱交換を行い庁舎内に冷風を送り込むことで、夏の電力使用量を抑制するというもの。
冷水循環式と呼ばれるこの仕組みは、雪国ならではの再生可能エネルギー活用策として注目されています。
また、市内には多くの「雪室倉庫」が整備されており、雪資源を有効活用する動きが地域の産学官連携によって広がりを見せています。
南魚沼市では、こうした地域特性を活かした独自の取り組みを通じて、脱炭素社会の実現を目指しています。
積雪地帯ならではの知恵と工夫を凝らした、南魚沼市の挑戦。今後のさらなる展開にも、注目が集まります。

「雪冷房」に使うため、市役所の敷地内に集積された雪

| 名称 | 南魚沼市役所 |
| 所在地 | 新潟県南魚沼市六日町180-1 |
| HP | https://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/ |
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