工場全体の空調を細かく制御してCO2排出量を大幅削減 費用対効果も高く、投資額を2年余りで回収 株式会社 富信 様(岐阜県)
2024年11月18日 09:15
この記事に書いてあること
株式会社富信様は、1973年の創業以来、年間約5億本のねじを製造する冷間圧造メーカーです。
冷間圧造とは、金属を加熱せずに常温で力を加え塑性変形させる特殊な加工技術のことを指します。
富信様は、この冷間圧造の肝である工程設計において独自のノウハウを蓄積し、自動車部品や一般規格品などの分野で、100分の1mm精度の加工を実現しています。
また、同業他社に先駆けてSDGsに関する取り組みを推進しており、その活動は各方面から注目されています。
今回、リコージャパンがサポートしたのは、工場全体にエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入するプロジェクトです。
広大な製造工場の空調を制御し、省エネとCO2削減に大きな効果をもたらしています。この取り組みに関して、代表取締役の各務正敏様と、SDGsに関する多くの活動を担当されているESG推進室室長の加藤忠義様に、SDGsに対する考え方や、EMS導入の成果についてお話を伺いました。
EMS(Energy Management System)
2030年までにCO2排出量を2021年比50%削減する野心的目標を設定
富信様のSDGsに対する取り組みは、2021年に策定した「10年ビジョン」にまでさかのぼります。このビジョンは、「2030年までに富信はこうありたい」という社内目標を示したもので、その中の大きな部分をSDGsに関連する活動が占めています。
10年ビジョンを策定した背景について、各務社長は次のように語っています。
「私の故郷であるこの地域では、耕作放棄地が増えるなど、地域をこのままにしてはいけないという強い思いがありました。私たちはものづくりの企業ですが、地域ともっと密接に関わり、環境や自然を守る存在でありたいと考えるようになったのです。また、今後、SDGsに対する取引先からの要求が一層厳しくなると予想されます。他社に先んじてこうした難しい課題に挑戦することで、社員の士気が高まり、技術力の向上にもつながると感じました」
株式会社 富信 代表取締役社長 各務(かかむ) 正敏 様
このビジョンに基づき、富信様は迅速に行動を開始しました。
まず、各務社長の思いを加藤様が中心となってSDGsの17目標に照らし合わせ、再整理しました。
そして、SDGs推進室を設立し、会社全体でSDGsに取り組む姿勢を「SDGs宣言書」としてまとめ、活動内容や地域の情報をホームページやSNSを通じて発信しています。
さらに、2023年2月には、温室効果ガス排出量削減に関する国際的イニシアチブ「SBT(Science Based Targets)」の認定を取得し、2030年までにCO2排出量を2021年比で50%削減するという目標を掲げました。
この目標は、SBTが推奨する42%削減を上回る野心的なものです。
具体的な取り組みとして、社内の照明をLEDに置き換え、グリーン電力*の利用を開始。次に決めたのがEMSの導入です。
グリーン電力:太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー(再エネ)で発電された電力で、発電時にCO2を発生しないのが特徴
2年余りで投資を回収し、CO2排出量も大幅削減
EMSは、工場内のすべての空調システムを監視し、温度と湿度を計測して冷暖房を自動制御することで、電力需要(デマンド)をコントロールします。
加藤様は、その導入効果を次のように高く評価しています。
「リコーさんから最初に提示されたシミュレーションでは、年間の電力削減量が37,730kWh、耐用年数が5~7年で、投資回収期間は3年とされていました。導入から1年4ヶ月が経過しましたが、これまでの実績で電力削減量はシミュレーションを大きく上回る72,208kWhに達し、現時点で投資額の約60%を回収できています。このペースでいけば、2年強で投資を回収できる見込みです。工場のエリアごとに細かく調整しているため、最初は暑い寒いという意見もありましたが、1年を通して最適な設定を見つけ、現在ではほとんど調整の必要がなくなりました。職場の快適性を維持しながら、電力使用量とCO2排出量の大幅な削減を実現できていることに満足しています」
株式会社 富信 ESG推進室 室長 加藤 忠義 様
EMSの稼働状況は社内に設置された大型ディスプレイで常に確認できる
空調室外機に取り付けられたEMSの制御子機
SDGsの取り組みが若い社員の獲得にも寄与
富信様のSDGsの取り組みは、CO2削減だけにとどまりません。
ユニークな活動の一つに、周辺の耕作放棄地を活用して農業を立ち上げ、野菜やお米を販売していることが挙げられます。
また、社内や地域の除草作業に役立てるため、敷地内で4頭のヤギを飼育し、自然との共存を図っています。
最後に各務社長は、
「もともと地域を少しでも活性化したいという思いから始めた活動ですが、結果的に会社のイメージアップにつながっています。会社説明会やインターンシップには、これまで考えられなかった学校からの参加者も増えました。今の若い世代は、企業を選ぶ視点が大きく変わっていると感じます。SDGsを実現しながら、技術力を維持し、競争力も備えた企業であり続けることを目指しています」
と語ってくださいました。
会社名 | 株式会社 富信 |
本社 | 岐阜県加茂郡八百津町野上1605 - 20 |
HP | https://www.tomishin.co.jp/ |
創業 | 1973年1月 |
事業内容 | ・自動車部品 ・圧造特殊パーツ ・六角穴付きボルト ・家電部品、自転車部品 ・コンピューター部品 |
※本記事に掲載の会社名および製品名はそれぞれの各社の商号、商標または登録商標です。
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