サーキュラーエコノミーとは?循環経済の仕組みや三原則についてわかりやすく解説
2024年11月28日 16:31
この記事に書いてあること
私たちは今、地球規模の大きな問題に直面しています。
一つは環境問題。大気・水質汚染、気候変動、地下資源の枯渇といった問題をニュースで見ない日はありません。
もう一つは、経済システムの問題です。大量生産・大量消費型の経済は、資源の浪費や環境破壊を加速させ、社会格差が拡大しています。
今注目されているサーキュラーエコノミーは、「循環」を重視した新しい経済システムです。環境問題の対策だけでなく、経済にも持続的な成長をもたらし、しかも誰でも参画できるという革新的な取り組みです。
サーキュラーエコノミーとは
サーキュラーエコノミーとは、従来の「作る・使う・捨てる」という直線的な経済システムから脱却し、製品や素材、資源をできる限り長く循環させる活用する経済システムのことです。
持続可能な社会を目指す新たなシステムで、「循環型経済」とも呼ばれます。製品や素材を長く使うことで廃棄物を減らすだけでなく、資源を再利用・リサイクルする、サービス化などを通じて、資源の効率的な利用と経済成長の両立を目指します。
引用元:環境省 | 令和3年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」
サーキュラーエコノミーと3Rの違い
3Rとは「Reduce(リデュース:減らす)」「Reuse(リユース:再利用する)」「Recycle(リサイクル:再資源化する)」の3つのRを組み合わせることで、廃棄物発生量の抑制を目指すものです。
サーキュラーエコノミーとは、どちらも資源循環を目指す点で共通していますが、差異もあります。
サーキュラーエコノミーは、「廃棄物を出さない」ことを目指すのに対し、3Rは廃棄物が発生することを前提に、量の削減を目指します。
また、3Rは主に廃棄物となった製品の処理に焦点を当てています。廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーに対し、3Rは廃棄物の有効活用を目標にしています。
サーキュラーエコノミーとリサイクリングエコノミーの違い
上記の3Rを基本とした取り組みに「リサイクリングエコノミー」があります。
リサイクリングエコノミーはリユース、リサイクルを活用して、廃棄までの寿命を長くすることです。
サーキュラーエコノミーとはどちらも資源循環を目的としている点で共通していますが、以下のような違いがあります。
資源循環の範囲
サーキュラーエコノミーは、製品の製造から廃棄まで全ての段階において資源循環を考えます。リサイクリングエコノミーは、主に廃棄物となった製品をリサイクルすることに焦点を当てています。
廃棄物への考え方
サーキュラーエコノミーは、「廃棄物を出さない」ことを目指します。リサイクリングエコノミーは、「廃棄物を資源として活用する」ことを目指します。
具体的な取り組み
サーキュラーエコノミーは、製品の設計段階から、耐久性や修理性を考慮したり、シェアリングサービスなどを導入したりと、さまざまな取り組みを行います。リサイクリングエコノミーは、リサイクル技術の開発や、リサイクルしやすい製品の開発などを行います。
目指す社会
サーキュラーエコノミーは、資源枯渇や環境汚染などの問題を解決し、持続可能な社会を目指します。リサイクリングエコノミーは、資源循環を通じて、環境負荷を低減し、資源の有効活用を目指します。
サーキュラーエコノミーは、リサイクリングエコノミーを含む、より広範な概念だということがわかります。
サーキュラーエコノミーとサステナブルの違い
私たちの社会が持続可能性を志向するうえで、「サステナブル」という言葉も頻出します。
サーキュラーエコノミーとの違いは、まず、対象です。サーキュラーエコノミーは、資源循環に焦点を当てています。
サステナブルは「環境、社会、経済」の3つの側面における持続可能性に焦点を当てています。
サーキュラーエコノミーは、製品のライフサイクルに関わる全てを、サステナブルは、環境保護、社会貢献、経済成長といった広範な対象への取り組みを指します。
サーキュラーエコノミーの取り組みが、リサイクルやリユース、シェアリングエコノミーなど「モノ」に直接関わっているのに対し、サステナブルの取り組みはSDGs(持続可能な開発目標)、あるいはESG投資などに拡大しています。
サーキュラーエコノミーの三原則
2010年に英国で設立されたサーキュラーエコノミーを推進する国際的な組織「エレン・マッカーサー財団」は、サーキュラーエコノミーの三原則として以下を掲げています。
・廃棄物と汚染を排除する
・製品と原材料を循環させる
・自然を再生する
サーキュラーエコノミーは、これらの三原則に基づき、資源循環を促進することで、持続可能な社会の実現を図ります。
引用:ELEN MACARTHUR FOUNDATION(エレン・マッカーサー財団)|What is a circular economy?
廃棄物と汚染を排除する
廃棄物と汚染を排除するとは、製品の設計段階から廃棄物や汚染が発生しない設計・製造方法を採用することです。
耐久性の高い製品設計、修理サービスの提供、部品の交換・修理を容易にする設計、リサイクル可能な素材や分解・再利用しやすい素材の選択、資源・エネルギー使用量の削減、廃棄物発生量の抑制などによる生産効率化などが挙げられます。
製品と原材料を循環させる
製品や原材料を最も価値の高い状態を保って循環させることです。修理やリユース、リサイクル、使用済み製品をより価値の高い製品にアップグレードするアップサイクルなどが挙げられます。
自然を再生する
経済活動によって自然環境に与える影響を最小限に抑え、自然環境を再生させる取り組みです。再生可能エネルギーの利用、生物多様性の保全、環境修復活動、化学肥料や農薬の使用を減らし、自然環境に負荷をかけない農業などがあります。
これらの原則は、資源循環を促進し、持続可能な社会を目指すための基盤となります。
サーキュラーエコノミーのメリット
サーキュラーエコノミーが実現されるとどのようなメリットがもたらされるでしょうか。ここでは、(1)環境保護につながる(2)経済成長が見込める(3)社会課題を解決できる――の3点を挙げます。
環境保護と脱炭素につながる
資源を循環利用することで、新たな資源採掘の必要性を減らし、有限な資源の枯渇を防ぐことができます。
例えば、金属資源をリサイクルすることで、鉱山開発による環境破壊を抑制できます。
また、製品製造過程におけるエネルギー消費や廃棄物処理による温室効果ガス排出量を抑制できます。
例えば、紙をリサイクルすることで、製紙原料となる木材の伐採を減らすことで、CO2排出量を削減できます。
廃棄物量を減らすことで、環境汚染を抑制できます。海洋プラスチック汚染は、プラスチック製品の回収とリサイクルを徹底することで改善できる可能性があります。
さらに、脱炭素化への貢献という方向では、製造工程での省エネルギー化、 資源の再利用や製品の寿命延長により、製造工程で必要となるエネルギーをはじめ、製造、輸送、廃棄といったライフサイクル全体でのCO2排出量を削減する効果が表れるでしょう。また、化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えを普及の促進も期待されます。
経済成長が見込める
サーキュラーエコノミーは、新たな市場を創造する雇用創出、資源価格の安定を実現する可能性を持っています。
リサイクルやリユース、シェアリングなどのビジネスモデルが生まれ、新たな市場が創造されます。
例えば、サブスクリプションサービスは、モノの所有から利用へと消費形態を変え、新たな市場を開拓しています。
循環型経済システムの構築により、リサイクルや修理、サービス業などの新たな雇用が産まれます。
例えば、家電製品の修理サービスは、製品寿命を延ばすと同時に、技術者の雇用を生み出すでしょう。
資源循環によって資源価格の変動を抑え、経済活動の安定化に貢献することができます。
金属やエネルギーの価格高騰と経済へのマイナス影響を抑制できるという考え方です。
社会課題を解決できる
サーキュラーエコノミーの実践は、世界的な問題となっている貧困問題、不平等・健康問題を改善するツールとしての役割が期待されています。
サーキュラーエコノミーにより必要な製品やサービスを低価格で提供することで、貧困問題の解決に貢献できます。
地理的な格差、経済的・社会的格差、政治的な格差を、サーキュラーエコノミーの実践で解消していくという考え方です。
また環境汚染を抑制することで、人々の健康を守ることにも貢献できます。
これらは、SDGsの目標である「貧困をなくそう」、「つくる責任 使う責任」、「気候変動に具体的な対策を」等といった社会課題にも密接な関わりがあります。
サーキュラーエコノミーのデメリット
さまざまな効果が期待されるサーキュラーエコノミーですが、デメリットについても知っておく必要があります。ここでは、技術・インフラの不足、高いコストが発生する、消費者の意識を変える必要がある、制度・規制を整備しなければならない、の4点について説明します。
技術・インフラが不足している
サーキュラーエコノミーを本格的に推進するには、製品の回収・分解・再利用・リサイクルなど、様々な技術やインフラが必要です。
しかし、現状では、これらの技術やインフラが十分に整備されていないという問題があります。
高いコストが発生する
サーキュラーエコノミーの仕組みを導入するには、新たな設備投資や人材育成、資源循環のための回収などのコストがかかります。特に、初期段階ではコストが大きく、企業にとって負担になるリスクがあります。
消費者の意識を変える必要がある
サーキュラーエコノミーの成功には、消費者の意識改革も欠かせません。
リサイクルやリユースを積極的に選択する消費者が増えなければ、循環システムはうまく機能しないためです。
制度・規制を整備しなければならない
技術や設備、インフラが稼働するためには、社会に新しい制度や規制が必要となります。
リサイクルに関する法律や、廃棄物処理に関する規制などが課題です。特に、すべての企業が同じルールで競争できない場合、市場は健全に成長できません。
企業におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み事例
近年、多くの企業がサーキュラーエコノミーに取り組んでおり、業界ごとにさまざまな事例があります。
メリット、デメリットを踏まえた上で、企業は自社のビジネスにどのように取り込んでいるでしょうか。
自動車業界
トヨタ自動車は、使用済み車両を回収・リサイクルし、新たな車両の製造に使用しています。具体的には、車両の設計段階からリサイクル性を考慮し、リサイクルしやすい素材を使用しています。
また、回収した車両を解体し、部品を再利用するなど、リサイクル素材として活用しています。ホンダは電気自動車のバッテリーを再利用するサービスを開始しています。
使用済みバッテリーを回収し、蓄電システムとして再利用することで、資源の有効活用と廃棄物削減を目指すものです。
アパレル業界
ユニクロは古着回収プログラムを実施しており、回収した衣料品をリサイクル、リユースしています。
回収した衣料品は、新たな衣料品にリサイクルしたり、途上国に寄付したりしています。
日本でも人気のH&Mは、衣料品のレンタルサービスを開始しています。顧客は月額料金を支払うことで、一定期間自由に衣料品をレンタルすることができます。
衣服の所有から利用へと意識を変え、衣服の過剰生産や廃棄物を削減することを目的としています。
食品業界
食品メーカーは、食品ロス削減に積極的です。
イオン は、賞味期限間近の商品を値引き販売したり、フードバンクに寄付したりしています。また、食品ロスを削減するための技術開発にも取り組んでいます。
キユーピーは、製法や容器包装の改良によって、賞味期間延長を通して、食品ロス削減に取り組んでいます。
まとめ
AIによる廃棄物分別、バイオ技術による資源化など、最新の技術が導入され、サーキュラーエコノミーの取り組みは世界的に加速しています。
障壁はすぐ解決することは難しいかもしれませんが、行政と企業が新しい技術や制度の構築などに向けて努力を続け、また、消費者が自分事として草の根的に取り組むことで、サーキュラーエコノミーは持続可能な社会の実現の推進力となるはずです。
※本記事に掲載の会社名および製品名はそれぞれの各社の商号、商標または登録商標です。
記事タイトルとURLをコピーしました!