全業種対象

グリーン成長戦略とは?重要な14分野の実行計画についてわかりやすく解説

From: GXラボ

2024年11月29日 17:48

この記事に書いてあること

グリーン成長戦略が世界中で注目されています。
これは、地球環境の保全と経済成長を同時に実現しようとする、前向きで持続可能な取り組みです。
日本を含む多くの国々がこの戦略に基づいた政策を展開しており、新たなビジネスチャンスの創出と社会の持続可能な発展を目指しています。

この記事では、グリーン成長戦略とその背後にある理念、そして具体的な実行計画について詳しく解説します。

グリーン成長戦略とは

グリーン成長戦略とは

グリーン成長戦略とは、経済活動を通じて環境問題を解決し、持続可能な社会を実現するための政策指針です。この戦略の核心は、環境保護と経済成長を相反するものではなく、相互に促進する力として捉えることにあります。

エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの活用拡大、低炭素技術の開発など、成長が期待される14の重要分野に対して国として高い目標を掲げ、実行計画を策定しています。
これらは、地球温暖化の抑制だけでなく、新しい産業や雇用の創出、エネルギーの安全保障強化にも寄与するとされています。

参考:経済産業省|グリーン成長戦略(概要
参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

グリーン成長戦略において成長が期待される14分野

グリーン成長戦略において成長が期待される14分野

グリーン成長戦略において、成長が期待される14の分野は以下の通りです。
これらの分野は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた重要な産業政策・エネルギー政策の柱とされています。

エネルギー関連産業 輸送・製造関連産業 家庭・オフィス関連産業
①洋上風力・太陽光・地熱
②水素・燃料アンモニア
③次世代熱エネルギー産業
④原子力
⑤自動車・蓄電池
⑥半導体・情報通信
⑦船舶
⑧物流・人流・土木インフラ
⑨食料・農林水産業
⑩航空機産業
⑪カーボンリサイクル・マテリアル

⑫住宅・建築物・次世代電力マネジメント
⑬資源循環関連
⑭ライフスタイル関連

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

①洋上風力・太陽光・地熱

「洋上風力・太陽光・地熱」は、再生可能エネルギーの中でも重要な分野であり、脱炭素社会の実現に向けて積極的に取り組んでいます。具体的には、以下のような目標や施策があります。

洋上風力発電:
2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万kWを導入することを目指しています。また、系統・港湾のインフラを計画的に整備し、海底の長距離直流送電の整備も検討しています。

太陽光発電:
2030年を目途に、次世代型太陽電池の研究開発を重点化し、グリーンイノベーション基金の活用も検討しています。また、アグリゲーションビジネスやPPAモデルなど関連産業の育成・再構築を図りつつ、地域と共生可能な適地の確保などを進めています。

地熱:
次世代型地熱発電技術の開発を推進し、超臨界地熱発電の実現に向けて要素技術開発などを推進しています。また、リスクマネー供給や科学データの収集などを推進し、法令や規制の見直しや地域調整による案件開発を加速しています。


参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 洋上風力・太陽光・地熱産業

②水素・燃料アンモニア

水素と燃料アンモニアを化石燃料に対して、十分な競争力のあるクリーンエネルギー源となるように段階的目標を設定し、導入拡大を図ります。
これには技術開発支援、コスト低減、輸送・貯蔵技術の商用化、国際標準化推進が含まれます。
具体的な目標としては、2030年に水素の国内導入量を300万トン、2050年には2,000万トンへ拡大し、供給コストを20/Nm3以下に抑えることで、化石燃料と競争できる水準を目指します。
これにより、水素発電や燃料アンモニアの技術開発と早期実用化を国内外で進め、2030年には石炭火力の20%を燃料アンモニアに代替することを実現します。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 水素・燃料アンモニア産業

③次世代熱エネルギー産業

2050年までに都市ガスのカーボンニュートラル化を目指し、合成メタンの既存インフラへの注入率を2030年には1%2050年には90%まで引き上げる計画です。

これにより、新規インフラ投資による追加負担を避けつつ円滑な脱炭素化を実現し、総合エネルギーサービス企業への転換を図ります。
また合成メタンの供給をLNG価格と同等にするための技術開発と海外サプライチェーンの構築を進めています。一般家庭においては、約14,000円の年間追加負担を回避することが期待されます。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 次世代熱エネルギー産業

④原子力

原子力は、エネルギー供給の安定性と脱炭素社会の実現に向け、重要な役割を果たしています。
高速炉、小型モジュール炉、高温ガス炉を含む先進原子力技術の開発について国際連携を通じて推進し、2030年までに各技術の実証を目指しています。
また、ITER計画をはじめとする核融合研究も進めています。
これらの取り組みは、2050年には放射性医薬品材料の医療分野での活用など、国民生活の向上に貢献することが期待されています。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 原子力

⑤自動車・蓄電池

自動車・蓄電池の分野においては、電気自動車(EV)やハイブリッド車の普及は、輸送部門のCO2排出量削減に、蓄電池技術の進化は、再生可能エネルギーの安定供給や電力需給の調整に不可欠です。

2035年までに新車販売の電動車100%実現、2030年までに商用車の電動化2030%実現、2040年には100%実現を目標に設定しています。
車載用蓄電池の製造能力を2030年までに100GWh、充電インフラを15万基設置し、水素ステーションを1,000基整備する計画です。
これにより、移動の安全性・利便性向上、移動時間の有効活用、電動車を「動く蓄電池」として活用することでスマートシティーの高度化や災害時のレジリエンス向上を目指します。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 自動車・蓄電池

⑥半導体・情報通信

半導体・情報通信の分野では、次世代パワーの半導体やデータセンターや情報通信インフラの省エネ化を目指しています。

2040年までに半導体・情報通信産業のカーボンニュートラル実現を目指し、次世代パワー半導体や環境配慮型データセンターの研究開発を支援します。
また、データセンターの国内立地や最適配置を推進し新たなデジタルサービスの提供を可能にすることで家電の電気料金負担を軽減し、国民生活の利便性向上を図ります。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 半導体・情報通信

⑦船舶

船舶の環境性能向上は、グリーン成長戦略の重要な一環です。
低炭素化技術の導入やエネルギー効率の向上により、海運業界のCO2排出量削減に貢献します。
将来的には、近距離及び小型船に対する水素燃料電池システムやバッテリー推進システムの普及、遠距離及び大型船のための水素・アンモニア燃料エンジン技術の開発を推進します。

また、2025年までにゼロエミッション船の実証事業を開始し、省エネ・省CO2排出船舶の普及促進枠組みを整備。さらに、LNG燃料船の高効率化と温室効果ガス削減効果の高いエンジン技術の開発にも注力します。
これらの取り組みにより、早期のゼロエミッション船の商業運航実現を目指します。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 船舶

⑧物流・人流・土木インフラ

持続可能な物流システムや、効率的な人流、環境に配慮した土木インフラの整備は、社会全体のCO2排出量削減に繋がります。

今後の取り組みとして、電動車の高速道路利用時のインセンティブ付与による普及促進、ドローン物流の実用化・商用化、カーボンニュートラルポートの形成、革新的建設機械の導入、空港の脱炭素化と航空交通システムの高度化が進められます。
これらは、2050年に高齢者を含むすべての国民が享受する利便性の高い公共交通サービスの実現、災害リスクの軽減、健康で快適な生活空間の提供を目的としています。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 物流・人流・土木インフラ

⑨食料・農林水産業

食料・農林水産業では、「みどりの食料システム戦略」を通じて、食料・農林水産業の持続可能な生産力向上を目指し、化石燃料を使用しない園芸施設、次世代有機農業技術の確立、農林業機械・漁船の電化・水素化、人工林の循環利用の促進、CO2ゼロエミッション化を含む技術革新と社会実装を推進しています。

これらの取り組みは、国民生活の質の向上、健康寿命の延伸、そしてCO2の吸収・貯留を通じたネガティブエミッションの実現に貢献することを目指しています。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 食料・農林水産業

⑩航空機産業

航空機業界では、航空機の軽量化、燃料効率の向上や代替燃料の開発によるCO2排出量の削減が進められています。
これらの取り組みは、グリーン成長戦略の一環として支援されています。

具体的には、航空機の電動化と水素航空機の実現に向けたコア技術の研究開発、軽量で耐熱性の高い新材料の導入、及び低騒音電動航空機の開発が進められています。
これらの技術革新により、2050年には空港周辺の住民や乗客にとって許容性の高い低騒音旅客機の実現が期待されています。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 航空機

⑪カーボンリサイクル・マテリアル

「カーボンリサイクル・マテリアル」分野は、二酸化炭素の有効利用と新しい材料の開発を目指すものです。
この分野では、CO2を資源として再利用する技術の開発や、環境負荷の低い新素材の創出に取り組んでいます。

今後のカーボンリサイクルとマテリアル分野の取り組みは、CO2吸収型コンクリートやセメント製造技術の開発、カーボンフリー燃料の商用化、プラスチック原料の人工光合成技術の低コスト化、ゼロカーボン・スチールの実現などを含みます。
これらの技術革新は、2050年までに環境に優しい製品の提供、より高機能な自動車や電子機器の同価格での利用を可能とし、交通や移動のコスト低減、強靭かつ長寿命な構造物の実現を目指します。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 カーボンリサイクル・マテリアル

⑫住宅・建築物・次世代電力マネジメント

住宅や建築物のエネルギー効率化、次世代電力マネジメントシステムの導入は、都市部のCO2排出量削減に大きく貢献します。
これらの施策は、持続可能な都市開発を目指す上で不可欠です。
将来の取り組みとして、住宅・建築物では省エネ基準の適合率向上と規制措置の強化、省エネリフォームや投資促進が計画されています。

次世代電力マネジメントでは、分散型エネルギーの活用、電力マネジメントの最適化、再生可能エネルギーと電動車・蓄電池の組み合わせによる新ビジネスの促進が目指されています。
これらは、2050年までに電気料金の節約、レジリエンスの向上、そして省エネルギーな生活環境の実現を国民にもたらすことを目的としています。

参考:経済産業省| 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略住宅・建築物・次世代電力マネジメント産業

⑬資源循環関連

資源の有効活用と循環型社会の実現は、グリーン成長戦略の基本的な目標の一つです。
廃棄物の削減、リサイクルの促進により、環境負荷の低減と資源の持続可能な利用を目指します。

具体的には、バイオプラスチックの導入拡大、リサイクル技術の高度化、低コスト化、高効率エネルギー回収技術の開発などを通じて、2030年までに約200万トンのバイオプラスチックを導入し、2050年には廃棄物処理施設を通じた安定的な電力・熱供給や防災拠点としての活用を目指しています。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 資源循環関連

⑭ライフスタイル関連

持続可能なライフスタイルの普及は、個人レベルでのCO2排出量削減に繋がります。省エネ製品の選択、エコフレンドリーな消費行動が推奨されています。

今後の取り組みは、観測とモデリング技術の向上、地球環境ビッグデータの活用促進、J-クレジット制度の電子化とブロックチェーンを用いた取引市場創出、地域脱炭素化の推進と大学間・産学官連携の強化に集中します。
これにより、2050年には一人ひとりに合ったエコで快適なライフスタイル実現、非エネルギー面でのメリットの実現、災害時の自給自足能力による安心・安全な暮らしの確立を目指します。

参考:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 ライフスタイル関連

グリーン成長戦略はビジネスチャンスに変えられる!

グリーン成長戦略はビジネスチャンスに変えられる!

グリーン成長戦略は「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策です。
グリーン成長戦略は単に環境問題の解決策ではなく、企業が新たな成長軌道に乗るための動力源となります。
そうした中で日本でも企業への資金的なサポートが行われています。
グリーン成長戦略の補助金制度は、グリーンイノベーション基金を中心に展開されています。
この基金は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた様々な分野での研究開発や社会実装をサポートする目的で設立されました。
総額2兆円が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって運用されており、長期的な経営課題としての研究開発への取り組みや、成果を社会実装に繋げるためのコミットメントが求められています。

参考:NEDO|グリーンイノベーション基金事業

まとめ

グリーン成長戦略は、環境と経済の両立を目指す重要な取り組みです。
この戦略に基づく政策や技術革新は、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となります。
また、新しいビジネスチャンスの創出や社会の持続可能な発展にも貢献します。
私たち一人ひとりがこの取り組みを理解し、支持することが、将来への大きな投資となるでしょう。

※本記事に掲載の会社名および製品名はそれぞれの各社の商号、商標または登録商標です。

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

GXラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

GXラボ

https://www.ricoh.co.jp/magazines/green-transformation/

「GXラボ」は、脱炭素社会の実現と企業価値の向上をご支援する 新たな情報提供プラットフォームです。

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:GXラボ 編集部 zjp_gx_lab@jp.ricoh.com