脱炭素とは?必要性や日本・各国の取り組み・できることについて説明
2024年08月28日 18:57
この記事に書いてあること
脱炭素は、気候変動問題の被害を最小限に食い止めるため、温室効果ガス(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを指します。CO2排出量を低減する「低炭素」からさらに前進した目標です。世界各国の政治・経済が脱炭素社会の実現のために動きだしている今、改めて脱炭素の概要、定義や目標、メリットと課題などを解説します。
脱炭素とは

脱炭素とは、前述の通り地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量をゼロにする取り組みです。 脱炭素化の目標は、世界各国で掲げられています。日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目標としています。
カーボンニュートラルとの違い
脱炭素と同じ意味で使われることの多いカーボンニュートラルという言葉があります。
カーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガスの排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになることです。つまり、排出量をゼロにする「脱炭素」の考え方に対して、排出量を出来るだけ抑えて吸収量を増やすことで、実質的に排出量をゼロにするという考え方です。
脱炭素とカーボンニュートラルは、排出量をゼロにする方法に違いがあります。まず、脱炭素は、排出量ゼロを目標にしています。これは、例えば化石燃料の使用を完全にやめる必要があり、すぐに達成することは困難です。一方、カーボンニュートラルは、排出量を抑えて吸収量を増やすことで、実質的に排出量をゼロにするという手法です。
例えば、再生可能エネルギーを導入することで、排出量を抑えることができます。また、森林の面積を増やしたり保護したりすることで、CO2を吸収することができます。
どちらもCO2の排出量を削減し地球環境を保護することを目標にしていることに違いはありませんが、現状ではCO2の排出を全く止めることは非常に困難なため、カーボンニュートラルを目指す方が現実的な考え方と思われます。
日本は2020年10月に菅元総理が国会の所信表明にて、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す、「カーボンニュートラル宣言」おこないました。
脱炭素とカーボンニュートラルは微妙なニュアンスの違いはありますが、同義で使用されることが多いようです。
本記事では以降、カーボンニュートラルの取り組みも含めて、CO2排出量の削減への取り組みを脱炭素と表現しております。
脱炭素が必要な理由

なぜ今、脱炭素が必要なのでしょうか。主な理由は、以下の通りです。
地球温暖化で気候変動が起きているから
地球の平均気温は18世紀後半の産業革命以降、約1度上昇したとされています*。
*出典:全国地球温暖化防止活動推進センター | 温暖化とは?地球温暖化の原因と予測
主な原因として考えられているのが、人間の活動による温室効果ガスの排出です。温室効果ガスは、太陽からの熱を地球に閉じ込める働きがあります。そのため、化石燃料の燃焼や森林伐採などの人間活動によって大気中の温室効果ガスの濃度が増加すると、閉じ込められる熱量が増えて地球の平均気温が上昇し、地球温暖化が進行するのです。
地球温暖化に大きく影響する現象としては、海面の上昇や異常気象、生態系の変化などをもたらす気候変動があります。海面上昇や異常気象は大きな災害を引き起こす要因になり得ますし、生態系が変化すると生物多様性の減少などを引き起こすことも考えられるでしょう。
地球温暖化は人類にとって重大な脅威であり、これを防止するためにも温室効果ガスの排出量削減が急務となっています。
化石燃料が枯渇する恐れがあるから
脱炭素は化石燃料の枯渇問題とも関係しています。化石燃料は、石炭、石油、天然ガス、ウランなどの地下資源です。これらは有限であり、いずれは枯渇すると考えられています。現在の消費量のまま推移すると、石炭の可採年数は約139年、石油は約54年、天然ガスは約49年、ウランは約128年と推定されています。
出典:JAERO|世界のエネルギー資源はあとどれくらいもつの?
また、化石燃料は燃焼すると温室効果ガスを排出します。温室効果ガスの排出量を削減するためには、化石燃料の使用を抑えることが重要です。
脱炭素に向けた取り組み
脱炭素に向けては、現在、多くの国で2050年までにカーボンニュートラルを実現することが掲げられています。
各国の取り組み状況
脱炭素化に向けての取り組みは、各国で様々です。ここでは、いくつか代表的な取り組み例を紹介します。
| 脱炭素に向けた代表的な取り組み例 | |
| EU | ・全てのセクターで電化を重点化 ・産業、輸送、建物での水素利用 ・産業、輸送、建物での合成燃料利用 ・全セクターでのエネルギー効率向上 ・資源、材料効率の工場 |
| イギリス | ・電気自動車の普及や熱需要の電化 ・増加した電力需要に対応するために脱炭素電源での発電量を4倍に増加 ・BECCSなどのネガティブエミッションで相殺 |
| アメリカ | ・気候変動への対応、クリーンエネルギーの活用、雇用増を同時達成する「ウィン・ウィン・ウィン」の実現 |
| 中国 | ・新エネ車産業発展計画 ・国家適応気候変動戦略2035 |
参考:資源エネルギー庁|第2節 諸外国における脱炭素化の動向
日本の取り組み状況
一方で、脱炭素化に向けて日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
そもそも日本では、以下のことが脱炭素化の課題として挙がっています。
- ・エネルギー供給の多くを化石燃料で行っている
- ・運送業での脱炭素化が遅れている
- ・鉄鋼業でのCO2排出量が多い
こういった課題の解決も踏まえ、以下のような施策が講じられています。
| 施策例 | 概要 |
| 株式会社脱炭素化支援機構の設立 | 脱炭素化に向けた取り組みを支援することを目的として、政府系ファンドである産業革新機構と民間企業が共同で2022年7月設立。脱炭素化技術の開発や導入、脱炭素化投資の促進、脱炭素化人材の育成などの支援 |
| 地球温暖化対策計画などの見直し | 2030年度の温室効果ガス排出量削減目標を26%削減から46%削減に引き上げ。2050年までにカーボンニュートラル実現を明記 |
| 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の策定 | カーボンニュートラル実現に向けてエネルギー、産業、生活で重点分野を定め、取り組みを進めていく戦略を策定。再生可能エネルギーの最大限の導入、脱炭素型の産業構造への転換、脱炭素型のライフスタイルへの転換など |
| 地方公共団体の脱炭素化への取り組み支援 | 地方公共団体の脱炭素化計画の策定、人材育成、事業の支援、補助金や助成金の交付、情報提供など |
| 脱炭素経営の取り組み促進 | 企業の脱炭素経営に関する情報提供、補助金や助成金の交付 |
参考:脱炭素ポータル|2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の検討と具体的な取組を紹介します
脱炭素に向けてできること

ここからは、脱炭素社会の実現に向けてできることを、企業・個人それぞれの観点から見ていきます。
企業ができること
企業が脱炭素化に向けてできることとして、脱炭素経営があります。脱炭素経営とは、気候変動対策の視点を経営に取り込み、温室効果ガスの排出量を削減しながら、企業価値を向上させる経営手法です。
脱炭素経営を進めるにあたっては、以下の流れで取り組んでいきます。

まずは自社の事業活動における温室効果ガス排出量を算定し、国際的な枠組みである「TCFD」や「SBT」などを活用した、削減目標を設定します。そして、こういった枠組みや報告書を参考にしながら、設定目標や取り組み内容、排出量の実績などの情報開示を定期的に行います。
個人ができること
次に、脱炭素化に向けて個人ができることを紹介します。
例えば、以下のような行動が挙げられます。
- ・電気の使用量を減らす
- ・節水する
- ・公共交通機関や自転車・徒歩で移動する
- ・マイ箸・マイバッグなどを持参する
- ・省エネ家電に買い替える
- ・フリマ・シェアリングサービスを利用する など
まとめ
脱炭素社会の実現は、地球温暖化の防止という大きな目的と同時に、エネルギー安全保障の確保や持続可能な経済成長に繋がる可能性を持っています。課題は少なくありませんが、達成のためには政府、産業・経済界、そして国民の理解と協力が欠かせません。
※本記事に掲載の会社名および製品名はそれぞれの各社の商号、商標または登録商標です。
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