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脱炭素社会とは?解決すべき課題や日本の取り組みについて解説

From: GXラボ

2024年08月06日 19:35

この記事に書いてあること

毎年のように起こる異常気象や自然災害は、地球温暖化による気候変動が原因だと考えられています。地球環境を守るために脱炭素社会を目指すことは重要だとされていますが、具体的にどういった取り組みが必要か明確でない方も多いでしょう。

この記事では、脱炭素社会とは何か、今日本ではどのような取り組みが行われているのか、わかりやすく解説しています。脱炭素社会について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

脱炭素社会とは

脱炭素社会とは、CO2の排出量ゼロを目指す社会のことです。地球温暖化をもたらす温室効果ガスのうち、最も排出量が多いのはCO2であるため、これを減らすことが気候変動や異常気象を防ぐことにつながります。

かつては「低炭素社会」の実現が目標とされていましたが、低炭素社会は、CO2の排出量を抑えることが目的でした。しかし、これ以上の気温上昇を防ぐためにはできるだけ早くCO2ゼロを実現しなくてはならず、現在では脱炭素社会を目指すことが世界共通の認識となっているのです。

日本では、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しています。カーボンニュートラルとは、CO2の排出量から樹木などによる吸収量を差し引き、実質的にゼロにすることを目指すものです。最終的にゼロを目指す点は同じですが、脱炭素はCO2の排出量をゼロを目指し、カーボンニュートラルは実質ゼロを目指すという違いがあります。

脱炭素社会の実現のために日本が解決すべき課題

脱炭素社会の実現のためには、以下の4つの課題を解決しなくてはなりません。

エネルギー供給の多くを化石燃料で補っている

日本のエネルギー自給率は11.3%、およそ9割を海外からの輸入に頼り、そのうちの83.2%が化石燃料です。

一次エネルギーの種類 割合
石炭 25.4%
石油 36.3%
天然ガス(LNG) 21.5%
原子力 3.2%
水力 3.6%
再エネなど 10.0%

参考:経済産業省資源エネルギー庁|安定供給

化石燃料の割合が多いと、それだけCO2の排出量も増えます。また、輸入に依存している今、海外の政情不安などによって日本のエネルギー供給に支障をきたし、価格高騰の煽りをまともに受けるなどの悪影響も懸念されています。

鉄鋼業のCO2排出量が多い

日本国内における部門別CO2排出量は製造業が3割強と大きな比率を占めています。その製造業の内訳をみると35%が鉄鋼業です*
鉄鋼業のCO2排出量が多い理由は、その工程が要因です。工場を稼働させる際や製造工程で、鉄鉱石以外にも石炭や石灰石などの原料、化石燃料を使うことでCO2が排出されます。さらに、炭素と鉄を結びつけて鋼鉄を作り出す際にもCO2が排出されるのです。
つまり、脱炭素社会の実現のためには鉄鋼業の脱炭素化が大きなカギとなっています。

*出典:経済産業省資源エネルギー庁 | 鉄鋼業の脱炭素化に向けた世界の取り組み

運送業において脱炭素化が遅れている

運送業では、輸送手段が車であること、またECサイトの市場拡大やライフサイクルの変化に伴い少量の荷物を頻繁に配送する機会が増えたことから、荷物の積載効率が低下したために脱炭素化が進んでいないと考えられています。

一方で欧米では、自動車の電動化やバイオ燃料への転換など、低炭素化政策が継続的に進められており、今後も拡大傾向です。つまり、欧米に比べて日本は後れをとっているのが実情です。

このような現状を脱するため、国内でも以下のような取り組みを行なっています。

  • 自動車による貨物輸送を鉄道や船舶の利用するモーダルシフトへの転換
  • 連結トラックの導入
  • 宅配ボックスなどを利用した置き配の普及
  • EVトラックの導入

参考:一般財団法人 運輸総合研究所|米国の交通分野の脱炭素燃料への転換推進策に関する現地調査報告
参考:環境省|物流分野におけるCO2削減対策促進事業(国土交通省連携事業)

家庭でのCO2排出量が多い

全国地球温暖化防止活動推進センターのデータによると、家庭からのCO2排出量は全体の15.3%を占めており、決して無視できる割合ではありません。

排出量の内訳は、以下の通りです。

家庭からのCO2排出量の内訳 割合
電気から 46.8%
ガソリンから 23.0%
都市ガスから 9.9%
灯油から 8.2%
LPGから 5.1%
ゴミから 4.0%
水道から 1.7%
軽油から 1.3%

*出典:全国地球温暖化防止活動推進センター | 日本の部門別二酸化炭素排出量(2022年度)

CO2削減のためには、私たち一人ひとりの意識改革も必要です。

脱炭素社会の実現に向けた日本の取り組み

脱炭素社会の実現に向けて、日本で行われている取り組みについてご紹介します。

株式会社脱炭素化支援機構の設立

株式会社脱炭素化支援機構とは、地球温暖化対策推進法に基づくファンド事業を行う会社で2022年10月に設立されました。国の財政投融資と民間からの204億円の出資をもとに、1000億円規模の脱炭素事業の実現を目指しています。

また、さまざまな事業への投融資(リスクマネー供給)を行うことで、地方創生や人材育成などにも貢献します。

地球温暖化対策計画などの見直し

地球温暖化対策計画とは、地球温暖化対策推進法に基づく総合計画のことで、もともとは2016年5月に閣議決定されたものです。当初は中期目標として、2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比で26.0%減としていました。

パリ協定ではすべての国が削減目標を5年ごとに更新する義務があるため、計画の見直しが行われ、2030年度の削減目標46%が設定されました。

さらに、50%削減への挑戦として、以下のような対策が盛り込まれています。

  • 住宅や建築物の省エネ基準への適合義務づけ拡大
  • 水素・蓄電池などの研究開発及び社会実装を支援
  • 2030年度までに100以上の脱炭素先行地域を創出

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の策定

2050年カーボンニュートラル成長戦略とは、経済産業省が関係省庁と連携して策定したもので、経済と環境の好循環を作るための施策です。

今後成長が期待される14の分野について具体的な実行計画を策定しています。ここに一例をご紹介します。

  • 1.洋上風力・太陽光・地熱産業:次世代型太陽電池の研究開発など
  • 2.自動車・蓄電池:2035年までに新車販売で電気自動車100%など
  • 3.物流・人流・土木インフラ:ドローン物流の実用化・商用化を促進など
  • 4.食料・農林水産業:2050年までに化石燃料を使用しない園芸施設への完全移行など
  • 5.カーボンリサイクル・マテリアル:CO2吸収型コンクリート、CO2回収型のセメント製造技術の開発など

このような目標実現のため、企業の前向きな挑戦を後押しする政策も同時に実施されています。

地方公共団体の脱炭素化への取り組み支援

国だけでなく、地方公共団体でも脱炭素化への取り組みが進んでいます。2023年12月28日時点で1,013の自治体が「2050年までにCO2排出実質ゼロ」を表明しています。

地方公共団体の取り組み支援として、以下が行われています。

  • 脱炭素先行地域の選定
  • 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
  • 設備導入支援
  • 計画策定などの支援
  • 人材支援

企業による脱炭素経営の取り組み促進

脱炭素経営とは、温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す経営のことです。企業の脱炭素経営への取り組み促進のため、2023年9月から事業者向けの情報開示を行い、勉強会が開催されています。

企業が脱炭素経営へ取り組む際の流れは、下図の通りです。

たとえば気候関連財務情報開示を経営戦略に活かすため、気候変動の基礎を理解し、企業が気候変動に対応した具体的な取り組みの開示を推奨するTCFDの理解を深めるなど、各企業が積極的に脱炭素に取り組める体制づくりがなされています。

脱炭素ライフスタイルへの転換支援

国や自治体、企業だけでなく、私たち一人ひとりが脱炭素に取り組むことも大切です。ライフスタイルを脱炭素へと転換していくため、さまざまな支援が行われています。

省エネ住宅を新築・リフォームや電気自動車への買い替えなどで補助金がもらえる場合があります。

サステナブルファッションの推進

サステナブルファッションとは持続可能なファッションのことで、生産から着用、廃棄まで生態系や地球環境に配慮した取り組みのことです。98%を輸入に頼っている衣料品は、材料の調達から製造、廃棄まで大量のエネルギーを消費します。

そこで、廃棄のない世の中を目指し、以下のような1着の服を長く大切に着る取り組みが行われています。

  • 長く着ることを前提とした丁寧な服づくり
  • 古い衣服の回収・リサイクル
  • リペア(修繕)サービスの拡充

ゼロカーボンドライブへの取り組み支援

ゼロカーボンドライブとは再生可能エネルギーを使って作られた電力を使い、電気自動車などを活用して、走行時のCO2排出量をゼロにしようというものです。

以下のような取り組み支援が行われています。

  • クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
  • 国立公園の駐車料金無料キャンペーン
  • 自治体や企業の電動車を地域住民とシェア

エネルギー対策特別会計を活用した取り組みの実施

エネルギー対策特別会計とは、石油石炭税や電源開発促進税を財源とした特別会計で、4つの使い道があります。

  • 1.エネルギー需給構造高度化対策
  • 2.燃料安定供給対策
  • 3.電源立地対策
  • 4.電源利用対策

具体的には、太陽光パネル導入の補助やEVカーシェアリング、地域の防災に役立つ自立・分散型エネルギー設備などの導入支援などを行っています。

環境金融の促進

環境金融とは、環境に配慮した取り組みを評価しながら融資の条件を決めたり、実施したりすることをいいます。金融のグリーン化とも呼ばれます。

たとえば企業に融資をする際に、環境保全のためにどのような取り組みをしているのかを調査・評価します。日本政策投資銀行では「環境格付」と、その格付けに応じた融資を実施しています。

気候変動の国際交渉

世界全体で地球温暖化に取り組むためにさまざまな国際交渉が行われています。

2020年までは京都議定書が、2020年以降はパリ協定での取り決めが国際目標となっており、先進国・途上国の区別なく温室効果ガスの削減に取り組んでいます。

2021年10月にはグラスゴー合意が採択され、世界の気温上昇を産業革命前の1.5度以内に抑える努力目標が盛り込まれています。

環境省RE100の取り組み

RE100とは、2014年に結成された、自らの事業の電力を100%再エネで賄うことを目指す企業連合です。2030年度は60%、2050年度までに100%を目指します。

環境省も参加しており、環境省RE100として新宿御苑や国立水俣病総合研究センターなど電力消費量の多い直轄施設の再エネ100%の電力調達などを行っています。

機運の醸成

機運の醸成とは、良いタイミングやチャンスを得るための状況を少しずつ作り上げていくことです。

脱炭素化のための行動を活性化させるために、国や自治体はさまざまな情報発信を行うとともに、省エネ住宅建設の補助金を出したり、脱炭素化の設備導入に伴う財政的な支援・技術支援などを行ったりしながら機運の醸成に努めています。

環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表

白書とは政府の施策の現状について周知させることを目的とした、政府の刊行物です。以下の白書は環境省が作成している白書です。

  • 環境白書:環境保全に関する施策についてまとめたもので、毎年テーマが変わる
  • 循環型社会白書:廃棄物処理とリサイクルの現状や廃棄物を減らすための施策についてまとめたもの
  • 生物多様性白書:生物多様性の保全と持続可能な利用に関する施策をまとめたもの

2009年からはこの3つがひとつの白書として発行されています。

まとめ

今回は脱炭素社会実現に向けた具体的な取り組みについてご紹介しました。脱炭素社会とはCO2の排出量ゼロを目指す社会であり、パリ協定に基づいてさまざまな施策が進められています。

2050年にはカーボンニュートラルを目指しており、経済産業省が中心となって成長戦略も策定されています。取り組みへの理解を深め、一人一人が脱炭素社会を目指すことが大切です。


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