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TCFDとは?―気候変動と金融の関係を理解する―

From: GXラボ

2023年06月27日 16:53

この記事に書いてあること

気候変動に対する企業の情報開示を推進するTCFDが注目されています。このコラムでは、TCFDの説明とそのメリットや意義について探ります。気候変動リスクの評価や機会創出に貢献し、企業の長期的な競争力向上や投資家の持続可能な投資判断を促進するTCFDの重要性を解説します。

TCFDとは何か?

気候変動は現代社会において最も深刻な課題の一つです。その影響は環境だけでなく、経済や金融にも大きな影響を与えています。気候変動による異常気象や自然災害の増加、資源の枯渇、産業の脆弱性などがその一例です。これらの問題は企業や金融機関にも大きなリスクをもたらす可能性があります。

そこで、TCFDが注目されています。
TCFDとは「Task force on Climate-related Financial Disclosures」の略称で、日本語訳では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれています。

TCFDは、2015年にG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)からの要請を受けグローバルな金融リーダーシップ・イニシアチブである金融安定理事会(FSB)によって設立された組織です。
TCFDをわかりやすく言うと、企業が自社の気候変動によるリスクや機会に関する財務情報を開示することを求める枠組みのことです。

TCFDの目的と重要性

TCFDは、気候変動に関連する情報開示を通じて、持続可能な経済成長を促進し、気候変動対策を推進することを目指しています。
企業は気候変動のリスクと機会を正確に評価し、適切な対策を講じるための情報を開示します。これにより、投資家はリスク管理に役立つ情報を得ると同時に、持続可能な成長への投資機会を把握できます。また、企業の情報開示により透明性と信頼性が向上し、投資家と企業の信頼関係を築きます。TCFDの目的は、気候変動の課題に対処しながら経済的な成果を上げるための枠組みを提供し、持続可能な未来の実現に貢献することです。

気候変動に関連する情報開示は、投資家にとっても重要な要素となっています。投資家は企業の気候変動リスク管理や持続可能な成長への取り組みを把握し、持続可能な投資判断を行うことができます。また、企業の情報開示により透明性と信頼性が高まり、投資家と企業の関係が強化されます。TCFDの目的は、持続可能な経済成長を支援し、気候変動対策を加速させることです。投資家にとっては、リスク管理や成長機会の評価、透明性の向上が期待されます。

TCFDの情報カテゴリと開示要件

TCFDは20176月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する下記の4つの項目について開示することを推奨しています。

■ガバナンス
どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。

■戦略
短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えたか。

■リスクマネジメント
気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。

■指標と目標
リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。
※引用元:TCFDコンソーシアムWEBサイトより

これらの情報開示項目は、気候変動に関する企業の取り組みとその結果を投資家や利害関係者に対して透明にすることを目的としています。企業がこれらの項目に基づいて情報を開示することで、気候変動リスクの評価や取り組みの効果の評価が容易になり、持続可能な経済成長と気候変動対策の推進に貢献することが期待されています。

TCFDのシナリオ分析

TCFDの2017年の提言は、前述した最終報告書に加え、付録文書、シナリオ分析のための技術的な補足書という3つの文書から成り立ちます。
TCFDのシナリオ分析とは、気候変動に関連するリスクと機会を特定し、それが企業の財務にどのように影響を与えるかを検討・評価することです。
企業がシナリオ分析を実施する意義は、将来のビジネス環境の変化に対するリスクを管理し、経営戦略を策定・調整する際の重要な指標を得ることです。特に、気候変動はその影響が広範で長期的であるため、そのリスクを適切に評価し対応することは企業の持続可能な成長にとって必要不可欠です。
シナリオ分析を行う手順は以下の通りです。

1. シナリオ分析の範囲を設定
分析の目的、対象となる事業部門や地域、時間枠、気候リスクのタイプ、関連する気候変動シナリオの選択などが含まれます。

2. 適切なシナリオの選択
IPCCの4℃上昇シナリオ、パリ協定が掲げる2℃上昇、1.5℃上昇の場合といった複数のシナリオを考慮に入れることが含まれます。

3. シナリオの適用と影響の評価
選択したシナリオをビジネスモデルに適用し、それが企業の財務パフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを評価します。

4. 結果の解釈と戦略への組み込み
シナリオ分析の結果を解釈し、それを戦略的な意思決定に組み込みます。リスク管理策の検討や、ビジネスモデルの変更、投資計画の見直しなど。

5. 通信と開示
シナリオ分析の結果とその結果に基づく行動計画をステークホルダーに対して開示します。企業の気候リスク管理の透明性を高めることで、投資家やその他のステークホルダーからの信頼を獲得を目指します。

このプロセスを通じて、企業は気候変動リスクに対する準備性を高め、新たなビジネスチャンスを捉えることができます。

TCFDの利点と意義

TCFDは企業にとっても投資家にとっても様々な利点が生まれます。

【企業にとっての利点】

●リスク管理の向上
TCFDの情報開示により、企業は気候変動に関連するリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。リスク管理の向上により、ビジネスの持続性と競争力を確保できます。

●透明性と信頼性の向上
TCFDに従った情報開示により、企業の気候変動への取り組みや成果が透明になります。これにより、投資家やステークホルダーからの信頼を高め、企業の評判やブランド価値を向上させることができます。

●投資家とのコミュニケーション強化
TCFDの情報開示は投資家とのコミュニケーションを強化します。企業は気候変動に関する戦略や目標、リスク管理の取り組みを明確に伝えることで、投資家の関心を引き、資金調達の機会を拡大できます。

●ビジネス機会の創出
TCFDの情報開示により、企業は持続可能なビジネス機会を特定できます。低炭素技術やクリーンエネルギーへの投資やイノベーションによって、新たな市場や顧客を獲得し、ビジネスの成長を促進できます。

これらの利点により、企業はリスク管理の向上、透明性と信頼性の向上、投資家とのコミュニケーション強化、ビジネス機会の創出、法的要件への適合といったメリットを享受することができます。また、気候変動への積極的な取り組みは企業の社会的責任を示すものとなり、サステナビリティの観点からも重要です。

投資家にとっての利点

●リスク管理の向上
気候変動に関連するリスクを把握し、投資ポートフォリオのリスク管理を改善できる。

●リターンの最適化
持続可能な成長機会を特定し、リターンを最大化できる。

●投資判断の根拠
企業の気候変動対策やガバナンス情報に基づいて、持続可能性を考慮した投資判断ができる。

●透明性の向上
企業の気候変動への取り組みや成果が透明になり、信頼性の高い投資先を選べる。

●リスクの早期識別
気候変動に関連するリスクを早期に識別し、適切な対策を講じることができる。

これらの利点により、投資家は持続可能な投資ポートフォリオの構築や長期的な投資成果を追求することができます。

TCFDの利点は、投資家と企業の両方にとって大きな意義を持ちます。投資家はリスク管理や成長機会の最適化を実現し、企業はリスク管理、透明性の向上、法的要件への対応、持続可能な成長の推進に役立てることができます。また、TCFDの取り組みはグローバルな規模での気候変動対策を促進し、持続可能な未来の実現に向けた重要な一歩となります。

まとめ

2023年428日現在、TCFDに対して、世界全体では金融機関をはじめとする4,458の企業・機関が賛同を示し、日本では1,306の企業・機関が賛同の意を示しております。
※引用元:経済産業省WEBサイト TCFD賛同企業・機関一覧より

東京証券取引所は2022年4月以降、東証プライム市場に上場する企業に対し、TCFDに基づく情報開示を実質義務化しており、今後もTCFDに基づく情報開示の要求が増えていくでしょう。

また、企業が気候変動に関するリスクと機会を把握し、持続可能な戦略を策定する必要性が認識されています。これらの要素により、TCFDの普及は加速し、企業や投資家にとっての基準となるでしょう。さらに、持続可能性への取り組みが企業価値の評価に大きな影響を与えることが予想されます。TCFDは、持続可能な経済の実現に向けた重要な枠組みとして、ますますの普及が期待されています。

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