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ESGレーティングとは?評価項目や活用事例をわかりやすく解説

From: GXラボ

2023年12月15日 14:24

この記事に書いてあること

ESGレーティングとは、各企業のESG関連における取り組み状況やリスクなどを可視化したものです。実際に、各企業がどのような取り組みを行っているのか確認できるため、投資判断の重要な情報源にもなっています。

企業の長期的な存続と収益を実現させるために必要だといわれているESGレーティングですが、どのような評価項目があるのか、活用するメリットとデメリットは何なのか、見ていきましょう。

本記事では、ESGレーティングの評価項目や活用事例をわかりやすく解説します。

ESGレーティングとは

そもそもESGとは、2006年に国際連合が責任投資原則(PRI)の中で提唱したもので、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉です。企業を中長期的に継続させていくためには、ESGの観点を踏まえた経営が必要だといわれています。

ESGレーティングとは、そういった企業が行っているESG関連の取り組みやリスクなどを集計・分析し、スコア化したものです。企業ごとに数値化し、ランキング形式で表しているので「ESG格付け」とも呼ばれています。

ESGレーティングは、投資における判断基準の重要な指標の1つになっています。ESGレーティングが高い企業は事業におけるESGに関連したリスクや問題に対して、積極的に取り組んでおり、長期的な存続と収益が期待できると判断され、長期投資家から投資資金を得ることができます。

逆に、ESGレーティングが低い企業はESGへの取り組みが不十分だとみなされ、投資対象から外されることになります。

つまり、ESGレーティングで評価されることで、長期的な事業の存続と利益が見込める企業であることをアピールできるのです。

ESGレーティングの目的

ESGレーティングの主な目的は、各企業がESGを通して社会にどのような貢献ができるか、問題点やリスクに対してどのように対応しているかを世間に示すことです。

企業にとっては、長期的な持続と収益を実現するためにESGレーティングが活用されています。ESGによる取り組み状況やリスクなどを目に見える形にすることで、今後、社会にどのような貢献ができるか把握しやすくなるのです。より良い経営を目指すためにも、ESGレーティングは大きな役割を担っていると言えるでしょう。

またESGレーティングは、投資家や運用機関にとってもリスクの少ない投資先を選ぶという目的があります。

ESGレーティングの必要性

ESGレーティングは、各企業がESGに対してどのくらい積極的に取り組んでいるのか、評価するための必要な材料です。

ESGの中には、投資家や運用機関だけでは数値化できないものも多くあります。また、企業自身が開示している情報だけでは信憑性が低く、信用に値する企業かどうか判断できません。

そのため投資家や運用機関は、ESG関連の取り組みやリスクなどを数値化してスコア化する「ESGレーティング」に注目するようになりました。

ESG投資」という言葉があるように、投資家や運用機関がESGレーティングを参考にして投資先を選ぶケースが増えているため、ESGレーティングは投資において重要な役割を担っていると言えます。

ESGレーティングの評価項目

ESGレーティングの評価項目は、EEnvironment /環境)、SSocial/社会)、GGovernance/ガバナンス)の3つです。それぞれの特徴について、詳しく説明しましょう。

  概要
E(環境) CO2排出量の削減など環境への取り組み
S(社会) 職場や社会的な人権対策
G(ガバナンス) リスク管理など企業としての管理体制

E(環境)」は環境へ配慮した企業の取り組み方、「S(社会)」は職場環境の向上など人権問題に対する取り組み方、「G(ガバナンス)」は企業としての管理体制が評価されます。

それぞれ、どのような点が注目されるのか、具体的に見ていきましょう。

E (環境)

E(環境)イメージ

E(環境)」では、環境に関わる取り組みが評価されます。

主な評価項目は以下のとおりです。
•   CO2の排出削減量などの環境問題対策
•   再生可能エネルギーの使用率

ESGの中でも、特に「E(環境)」はさまざまな企業が力を入れています。気候変動や温暖化が地球全体の課題となっているため、環境への取り組みがそのまま企業の評価へ直結するからです。

環境に対して誠意をもって取り組むことは、取引先や消費者からの要請に応え、財務的な損失や社会的信頼の低下といったリスクの低減につながります。

評価の算出方法は評価機関の基準によって異なりますが、環境問題に対する取り組みは企業の持続可能性に多大な影響を及ぼします。特に、気候変動、地球温暖化、生物多様性の喪失は考慮すべき環境問題です。

S (社会)

S(社会)イメージ

S(社会)」では、社会に関わる取り組みが評価されます。

主な評価項目は以下のとおりです。
•   職場環境や雇用関係など従業員に関する人権対策
•   サプライチェーンなどの人権リスク
•   地域コミュニティへの貢献
•   ダイバーシティーの推進

従業員が働きやすい環境づくりをしているか、社会的な人権問題に向き合っているかなど、社会や人権に対する取り組み方に対する評価が「S(社会)」の特徴です。日本においては、女性活躍推進や国籍・性別・価値観などの多様性が重要視されています。   

G (ガバナンス)

G(ガバナンス)イメージ

G(ガバナンス)」では、公正な企業統治に関する取り組みが評価されます。

主な評価項目は以下のとおりです。
•   リスクの監視・管理のための情報開示と法令遵守
•   業績に悪影響を及ぼす不祥事回避の仕組みづくり
•   資本効率に対する向上心

企業として透明性かつ健全性のある自己管理体制が整っているか評価するのが「G(ガバナンス)」の特徴です。2023年、中古車売買を手がける大手企業の不祥事が話題になりましたが、不正が発覚すると途端に企業の価値が下がります。ガバナンスは、投資家や運用機関が持続可能な企業かどうか判断するための重要な評価項目です。

ESGレーティングを活用するメリット

ESGレーティングを活用する大きなメリットは、社会的信頼性を高められるという点です。

企業がESGに関連する取り組みをどのように行っているのか、3つの評価項目から分析し数値化しているので、ランキング上位に入るほど社会的信頼を得ることができます。社会的信頼を集めるほど、持続性かつ収益性の高い企業と評価されることになります。

また、企業の持続可能性を高められるという点も、ESGレーティングを活用するメリットです。ESGに対する取り組みを積極的に行い、リスクの少ない管理体制を整備し、経営に対する適切な監理機能を備えている企業である、とESGレーティングを通してアピールできます。

ESGレーティングを活用するデメリット

ESGレーティングを活用するデメリットは、明確な評価基準がないので評価機関によって結果に差が生まれてしまう点です。

評価機関ごとの結果に差が生まれると、企業がESGレーティングを活用しても信憑性に問題があるとみなされます。信憑性を高めるためには、企業の情報開示において一定の基準を設けることが大切です。

2020年に経団連が実施した「ESG情報開示に関するアンケート結果」によると、約7割の企業が「早期に統一すべきである」「統一が望ましい」と回答しています。*

ただし、ESG関連の取り組みは企業の独自性に影響する可能性があるため、経営戦略やブランド構築などを考慮しながらESGレーティングの統一性を目指すことが必要です。

*出典:経団連|ESG情報開示に関するアンケート結果の概要

企業におけるESGレーティングの活用事例

日本を代表するお菓子メーカー「森永製菓」では、包装の環境配慮や循環利用、気候変動の緩和と適応を主な課題として取り上げています。それぞれの重要課題に対して積極的に取り組んでおり、長期目標をしっかりと掲げています。

たとえば、新たな主力商品の包装材料となるプラスチック使用量を25%削減、プラスチックごみの削減に向けたリサイクルプログラムの開始などです。

また、気候変動問題への対応策として、「工場におけるCO2排出削減」の施策などを実施しています。森永製菓の主な取り組み内容*を下記にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

工場におけるCO2排出削減
•    CO2排出量の見える化の推進
•    高効率な生産体制の確立
•    省エネ施策の実施(効率的な空調の実施など)

フロン使用設備での取り組み
•    オゾン層破壊係数の低い代替フロンへの切り替え、ノンフロン化の検討
•    フロンガスの漏えい防止管理強化
•    オゾン層破壊係数ゼロで温暖化係数も低い自然冷媒設備の導入

物流における取り組み
•    同業他社との共同輸配送による積載率向上、輸配送車両の削減

*出典:森永製菓|地球環境の保全 森永製菓グループのサステナビリティ 森永製菓株式会社

ESGレーティングの評価機関一覧

ここでは、ESGレーティングの評価機関を紹介します。

評価機関 概要
CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト) 2000年にロンドンで設立された非営利団体。気候変動・水セキュリティ・フォレストの3つに分けられた質問書の回答をもとに、8段階のスコアで評価される。
ISS-ESG Institutional Shareholder Service(ISS)の責任投資部門。企業の取り組みをE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の観点から格付け評価する。業界別で高評価を受けた企業は「プライム」に認定される。
Sustainalytics オランダに本社を置く企業で、どの程度リスクにさらされているか、どの程度リスクを管理できているか、管理できていないリスクはどの程度かという3つの項目でESGリスクレーティングを算出する。
S&P Global ESG E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の3項目から評価する「ディメンションスコア」と、業界別項目による「評価基準スコア」で格付けされる。
MSCI モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社による評価機関。業種別にESGリスクマネジメントの程度を分析し、算出したスコアから7段階で格付けする。
格付投資情報センター(R&I 日本を代表する信用格付会社。業界ごとに細かい評価項目が設けられており、国際資本市場においてESGファイナンス評価の先駆者となっている。
株式会社日本格付研究所(JCR) 日本を代表する評価機関で、信用リスク分析に長けている。流通関連業界、金融関連におけるカバー率は70%という高い水準を維持している。
DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社 ノルウェーに本部を置く自主独立財団。2011年よりESGファイナンスの第三者評価業務を開始し、グローバルに活動している。

まとめ

ESGレーティングは、ESGに対する各企業の取り組み状況やリスクなどを数値化し、スコア化したものです。ESGに対してどのくらい積極的に取り組んでいるのか目に見える形になるので、企業にとっては社会的信用を獲得し、持続可能性をアピールできる要素となります。

投資家や運用機関にとっても、ESGレーティングを活用することでリスクの少ない投資先を見つけることが可能です。ただし、ESGレーティングにもデメリットがあるため、活用する前にしっかりと把握しておく必要があります。ESGレーティングの特性やメリット・デメリットを把握し、うまく活用できれば、企業の改革と長期的な成長へとつながります。


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