研磨一筋70年の技をホームページで情報発信 新分野の開拓を目指す有限会社豊永.(三重県)
2022年01月27日 06:00
この記事に書いてあること
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。
三重県四日市市内で研磨加工一筋に取り組んできた有限会社豊永.が、「磨き屋プラスアルファ」の企業への進化を目指してホームページを活用した情報発信に力を入れている。デジタル技術を使った積極的な情報発信がもたらす新分野開拓の効果に注目が集まっている。
バフ研磨に特化して様々な金属に対応
豊永.はバフ研磨と呼ばれる技法に特化した企業だ。前身となった企業の創業から数えると約70年の歴史を持つ。自動車部品、バイクのパーツ、家具部品、建材部品、工場設備部品から自動車のアルミホイール、業務用ナイフ、刃物、什器、食器まで新品、中古を問わずさまざまな金属の研磨加工に対応している。
インパクトを打ち出したホームページ
「ホームページは情報発信だけでなく、業種や地域の枠を超えてネットワークを広げていくことにも効果を発揮しそうです。アクセスが順調なのを見ると仕事にも張り合いが出ますね」。工場での仕事を終えた後、オフィスのパソコンでホームページのアクセス状況をチェックしながら竹内正則工場長は話した。
ホームページは2021年12月初旬から開設した。フロントページにはインパクトのある「磨くを極める。」のキャッチコピーと共に、金属を持って並ぶ親子三代の姿や工場の画像などを表示している。竹内工場長は家業の継承者として長年、父親の巳年男(みねお)さんを支えてきた。その姿を見てきた次男の翔輝さんが、技を受け継ごうと日々、修行に励んでいる。
独自性を発揮する企業でありたいとの思いから社名の「豊永」の後に「.」をつけて目を引くようにしている。
豊富な経験と技術が求められるバフ研磨
研磨加工は金属の凹凸を滑らかにする最終工程として行われる。金属の表面にある異物や突起などをきれいに取り除くことで輝きを生み出す。金属に美しさと滑らかな手触りを与える上でかかせない工程だ。その中で、布などを巻き付けたバフと呼ばれるやわらかい素材に研磨剤をつけ、金属とすりあわせて表面を磨いていく技法をバフ研磨と呼ぶ。手先を使った細かい作業が多く、力の入れ方や研磨剤とバフの組み合わせによって仕上がりが変化するため、豊富な経験と技術が求められる。
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍に伴って発生した不況をはねのけることができたのも価格競争に走らずに、品質を評価して適正価格で発注してくれる取引先を開拓してきたからだ。それだけに技術には強いこだわりを持っている。
「研磨をかける金属は形や大きさがそれぞれ異なります。単に磨くだけなら機械でもできますが、なめらかな質感や感性に訴える光沢は、熟練した人の手でなければ生み出せません。この価値を認めてくださる取引先の思いに応えるためにも妥協することなく技を磨き続けなければならないと思っています」と竹内工場長は研磨への思いを話した。
匠の技でタンブラーの製造、販売に挑戦
長年の取引先との関係強化だけでなく、直接消費者に買ってもらえる商品を開発しようと2019年から金属産業がさかんな新潟県燕市の食器メーカーと共同で金属製タンブラーの製造、販売を手掛けている。
工場近くに設けているオフィス兼ショールームにはステンレス、チタン、銅などさまざまな素材で作った約100種類のタンブラーが並び、輝きを放っている。中でも二重構造で鏡面仕上げを施したステンレス製タンブラーは、ビールの泡立ちがきめ細かく保冷機能も優れた自慢の一品で、四日市市のふるさと納税の返礼品にも登録されている。冷たい液体を注ぐと模様の色が変わるタンブラーといったアイデア商品も扱っている。
システムを活用することで機動的な情報発信が可能に
会社の幹部としてさまざまな事業改革を進めてきたが、長年の課題になっていたのが情報発信だった。「自ら情報を発信していかなければ、どのような会社なのか、どのような技術を持っているのかを広く知っていただけません。以前から、情報を機動的に発信するために独自でホームページの運営をしたいと思っていたのですが、ハードルが高くコストもかかるというイメージがあってなかなか乗り出せませんでした」(竹内工場長)
ホームページ作成システムの導入によって、この状況を打開した。ホームページの開設と同時に日々の仕事の内容を写真と文章で発信する「豊永.日記」をスタートした。1週間に2回ほどのペースで、工場内での研磨作業や仕上がりの様子を発信している。技術力をアピールすることで新しい取引先を開拓する狙いがある。
竹内工場長が写真を撮影した上で文章を作成し、パート社員にアップロードを任せている。担当者はこれまでホームページ更新の作業をしたことがなかったが、操作方法などの説明を受けるとすぐに対応できるようになったという。
「思っていたよりもコストをかけず簡単にホームページの運営ができるようになったので驚いています。ほかの企業がどのような情報発信を行っているのか研究してホームページを充実させていきたい」と竹内工場長は話した。
知り合いのユーチューバーに会社の紹介をしてもらった動画もホームページに掲載している。情報を積極的に更新していることもあってアクセス数は徐々に伸びている。開設して間がないが「四日市 研磨」と検索すれば検索エンジンの上位に表示されるようになるなど滑り出しは上々だ。
今後もホームページのアクセスを増やしていくには、訪問者の動向をチェックしながら常に新しい情報を追加していかなければならない。現状を分析する上で効果を発揮するのがアクセス解析機能だ。訪問数や離脱率といったホームページの基本的なアクセス情報のほか、アクセス数の多いページの一覧、訪問者の性別や年齢層、アクセスに使ったデバイスの割合をグラフなどでわかりやすくチェックできる。
人材募集にもホームページを活用
ホームページを人材募集の窓口としても活用している。採用情報のページを作成し、会社の所在地、給与、仕事内容、福利厚生などの基本的な情報と共に長期間働きやすい環境などをアピールしている。竹内工場長は「バフ研磨の技を伝えていくために若い人材に関心を持ってほしいと思っています。バフ研磨の遣り甲斐や奥の深さ、楽しさを伝えることができるよう発信内容を工夫していきたい」と意欲的に語った。今後はホームページにタンブラーの通信販売の機能も付け加えるなどBtoCの機能も強化していきたいという。コロナ禍が落ち着いた後、多くの人に研磨を体験してもらうイベントを企画し、発信することも検討している。
「これまで頑張ってくることができたのは、支えてくれた同業種、異業種の皆様のおかげです。人と人とのつながりを大事にして、これからも新しい取り組みに挑戦していきたい」と竹内工場長は抱負を語った。「磨き屋プラスアルファ」を目指す豊永.のこれからの情報発信と新分野開拓に注目していきたい。
事業概要
法人名
有限会社豊永.
所在地
三重県四日市市川島町字宝谷4629-25
電話
059-328-8777
設立
2002年10月
従業員数
11人
事業内容
研磨加工業
記事タイトルとURLをコピーしました!