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建設会社がペット霊園事業に進出 異分野への挑戦をICTが支える 香川ペット葬儀社(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年04月18日 06:00

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JR予讃線・海岸寺駅近くの幹線道路沿いにペット霊園「やすらぎの里」がある。昨年9月、40年以上の歴史を持つこの霊園の運営を引き継いだのが、高松市に本社を置く建設会社、日本ガス圧接四国だ。建設会社による異色の新事業への進出は注目を集め、引き継いでからの利用者数は前年同期を上回るペースで増加している。新事業開拓の成功例を生み出した背景には、最高のペット霊園を作りたいという企業トップの温かい思いとICTの活用があった。

ペットと飼い主のために最高の霊園を

ペット霊園からの瀬戸内海の眺め

ペット霊園からの瀬戸内海の眺め


「やすらぎの里」は青々とした瀬戸内海を一望できる場所に立地している。自然豊かで穏やかな雰囲気に包まれた霊園内には火葬施設、納骨堂、散骨堂が並び、数多くのペットたちの写真が飾られている。「建設業の道に進んだのですが、子どものころは動物と関わる仕事をしたいと思っていました。長い間、昔の夢を忘れていたのですが10年前、愛犬の弔いをお願いしたペット霊園の対応に疑問を抱いたんです。自分ならペットを亡くした飼い主の気持ちにもっと寄り添った仕事ができると思ったことが、ペット霊園事業を志すきっかけになりました」。取材に訪れた3月下旬、霊園内の建物で取材に応じた四宮靖幸社長は、穏やかな表情で語った。

四宮靖幸社長

四宮靖幸社長

M&Aで10年越しの夢を実現


だが、事業の立ち上げは簡単にはいかなかった。新たにペット霊園を設立するには立地場所の周辺住民の同意などさまざまなハードルを越えなければならなかった。候補地を見つけても結局は断念することが続き、市街地から離れた場所に設けることも検討したが、今度はアクセスの利便性や建設コストが壁になった。

10年近く試行錯誤が続き、気持ちが折れかけていたころ、大きなチャンスが訪れた。「取引している金融機関が、後継者がいないペット霊園の経営者を紹介してくれたんです。経営者に思いをしっかりと伝えたところ、事業を譲っていただけることになり、M&A(事業の合併・買収)という形でペット霊園の運営が実現することになりました。諦めなくて本当に良かったです」と四宮社長は当時を振り返った。

最新のペット用火葬炉や防犯対策としてカメラも導入


昨年9月末に事業を引き継いだ後、真っ先に取り組んだのが霊園の設備の改修だった。「最高の環境でペットを弔ってあげたい。そう思って設備を整えました」と四宮社長。環境に配慮した無煙式のペット用火葬炉を2基導入した

「以前の火葬炉は炎が激しく燃え上がるのが見える焼却炉のような構造でした。火葬に立ち会っている飼い主は、亡くなっていることがわかっていても『焼かれているペットが可哀想』と感じてしまいかねません。そのような辛い気持ちにしたくないと思い、金属製の扉を備えた最新の火葬炉を導入しました。霊園を利用いただく飼い主の要望に合わせてこれからも設備投資を続けていきます」と四宮社長は霊園の運営方針について話した。

その他に、事務所、立ち合い葬や参拝で訪れる人のための待合室、トイレを新築したほか、安置用の冷蔵設備も設けた。セキュリティカメラも5基設置して防犯対策も完備した。今回の霊園事業は、新分野の開拓に意欲的に取り組む企業の事例として注目されており、経済産業省の事業再構築補助の対象として認定された。

ペット霊園内に設置しているセキュリティカメラ

ペット霊園内に設置しているセキュリティカメラ

引き継いだ膨大な利用者情報をデジタル化


施設の改修と合わせて実施したのがICTの導入だ。以前の経営者は高齢でICTに詳しくないこともあって、霊園を利用した飼い主の情報はすべてノートに記録するなど紙ベースで業務を行っていた。膨大な利用者の情報を引き継ぐにあたり、四宮社長は売上管理システムを導入し、情報をデジタルで管理するようにした。

「過去40年分にのぼるノートのうち、とりあえず直近5年分から数千人分の名前、住所、ペットの命日などの情報をデジタル化しました。ペットの命日や合同慰霊祭などさまざまなお知らせのハガキを郵送するタイミングもシステムで簡単にチェックできます。これから先も利用者のデータは増え続けますし、データが多ければ多いほどシステムは、きめ細やかな利用者への対応に効果を発揮してくれます」と四宮社長は話した。

火葬の依頼は年中無休で受け付けている。犬と猫を中心に、うさぎ、ハムスター、爬虫類、オウム、文鳥、金魚などあらゆる動物を弔っている。交通事故で亡くなっている動物を引き取って弔うこともある。警察犬、盲導犬、セラピー犬、災難救助犬、介助犬の火葬は無料で引き受けている。「人間のために貢献してくれた動物へのせめてもの恩返しです」と四宮社長は静かな口調で話した。

以前の経営者は立ち合い葬を1日2件に制限していたという。「顧客情報を紙だけで管理するのは大変で、事務に手間を取られる分、弔いの業務を制約せざるを得なかったのでしょう。その点、今はシステムのおかげで効率的に事務作業を行うことができるようになったので、飼い主のご希望に合わせて立ち合い葬の件数を増やしています」と四宮社長は話した。

口コミとネットの情報発信で利用者を開拓


3月からホームページ作成システムを導入して、積極的な情報発信に取り組んでいる。霊園のスタッフが毎日、ブログを更新し、霊園で葬儀を行ったペットへのお悔みや、霊園の四季折々の話題を掲載している。「利用いただいた方の口コミとネットによる発信で相乗効果を生み出したいと思っています。20代、30代を中心にホームページを見て霊園のことを知り、利用してくれる人が増えています」と四宮社長は手ごたえを感じている。今後、システムの機能を活用して配布先の特徴に合わせた多彩なパンフレットを制作する準備を進めている。

ホームページを編集している様子

ホームページを編集している様子

ICTを使わない手はない 長期で見れば投資以上の効果


さまざまな取り組みが効果を発揮し、霊園の利用者数は前年同期を上回るペースで増加している。「企業がICTを活用しない手はありません。導入費用はかかりますが、業務を効率化することで時間を生み出せれば、よりお客様の気持ちに寄り添ったサービスを提供することができます。しっかりとしたサービスをしていれば、多くの方に支えていただけますし、長い目で見れば投資した以上の効果が得られます。持続可能性を重視することは事業を進めていく上でなにより大切なことと考えています」。ICTを積極的に活用する理由について四宮社長はこのように話した。

ペット霊園の事務所

ペット霊園の事務所


「ペットはかけがえのない家族です。ペットが亡くなっても、金銭的な理由で丁寧に弔ってあげることができない人がいるのなら、是非とも相談してほしいと思っています。ペットを『ありがとう』と温かい気持ちで見送り、飼い主がいつでも気軽に訪れて思い出すことができる場所として霊園を末永く運営していきたいと思っています」とこれからの抱負を語る四宮社長。今後、高松市でペットの命日などで参拝しやすいように小規模な納骨堂を設ける計画や移動式の火葬炉を導入する計画も進めている。

本業との二足のわらじで多忙な日々を送る四宮社長。理想的なペット霊園の運営にICTはこれからも力を貸してくれるに違いない。

事業概要

会社名

有限会社日本ガス圧接四国(香川ペット葬儀社)

本社

香川県高松市楠上町1-4-15

電話

087-897-6633

設立

2003年1月

従業員数

10人

事業内容

土木建築工事、ペット葬祭・霊園の管理

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