製造業(印刷)

「会社の魅力」を発信し、新卒者獲得に積極活用 社員みんなで作る企業ホームページ目指す コンドウ印刷(新潟県)

From: 中小企業応援サイト

2022年04月22日 06:00

この記事に書いてあること

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産経ニュース エディトリアルチーム

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「人手不足が深刻化する中、情報発信による人材採用活動は企業の存続にかかわる重要なテーマになっていると感じています。若い人たちに『こんな会社があるのだ』と知ってもらい、『働いてみよう』と思ってもらえるきっかけになってほしいと思っています」

新潟県長岡市でラベル・シール印刷を手掛けるコンドウ印刷の近藤清規会長は、自社のホームページを大幅にリニューアルした。これまで利用していたホームページ作成ソフトを2021年6月に操作が簡単な作成ソフトに切り替えると、操作性が飛躍的に向上。社内サイトのページ数も増え、これまで以上に内容を充実化させることができた。

リニューアルの大きな狙いは新卒者の獲得だ。自社のホームページを通じて、地元での就職を考えている高校生たちに会社の魅力をアピール。次世代を担う若手人材の獲得を目指している。

大手に引けをとらないCSR活動を展開


コンドウ印刷はバーコードプリンターでトップシェアを誇る大手企業の協力パートナーとしてラベルやシールを生産している。父が1977年に創業した会社を近藤清規会長が承継。妻の近藤保子社長と夫婦力を合わせて経営に携わっている。

コンドウ印刷の近藤清規会長(左)と近藤保子社長

コンドウ印刷の近藤清規会長(左)と近藤保子社長


特徴的なのは、大手に引けを取らないほどCSR(企業の社会的責任)活動に積極的に取り組んでいる点だ。

残業時間の削減など「働き方改革」を進める中で、近藤清規会長が2017年にCSR活動の実践法を紹介する本と出会い、勉強を始めたそうだ。「法令順守や人権の尊重など根本的な問題がテーマになっていて、会社としてしっかりと取り組まないといけないと感じました」と話す。経営の最重要課題の一つに位置付け、基本方針を策定。社員教育にも力を入れている。

働きやすい職場環境を作ることにも尽力。仕事と介護の両立する環境を整備に取り組む企業が認定される「トモニンマーク」、若手人材の採用・育成する「ユースエール」、健康経営を進める「健康経営優良法人2022」、新潟県が子育て支援を促進する企業を認定する「子育て応援プラス」など国や自治体が設けている数多くの認定制度を取得する。

こうした取り組みから、SDGs(持続可能な開発目標)の目標達成にもチャレンジ。太陽光パネルの設置や廃棄物削減などの環境対策にも取り組み、17ある目標達成のクリアを目指している。

ホームページは開設したものの、運用にはさまざまな課題が


地元企業の中でも社会的責任を重視した経営を展開するコンドウ印刷だが、これまで情報発信はあまり積極的ではなかったそうだ。ホームページを開設したのは2018年になってから。「少子化を背景に新規採用の獲得が厳しくなる中で、前向きに情報発信することで、優秀な若手の人材確保することを目指しました」と近藤清規会長は話してくれた。

ソフトを駆使してホームページやパンフレットを作成する近藤清規会長

ソフトを駆使してホームページやパンフレットを作成する近藤清規会長


ホームページの開設にあたっては、すでに利用していた業務システムのパッケージに含まれていたサービスを活用。近藤会長自らがホームページの運用・管理にあたったが、実際に運用してみると、いろいろな課題が浮かび上がってきた。

「採用したサービスが簡素なものでページ数は6~7ページほどに限られていました。それ以上に作成するための操作が難しく、運用が大変だったんです」と近藤清規会長は振り返る。

トップページや事業内容など基本的な取り組みを紹介すると、すぐにページが一杯になってしまう。特に厄介だったのが、レイアウトの細かい調整をするのにホームページ作成用の専門言語を使いこなさなくてはならなかったことだった。

会長自ら独学でベーシックなホームページ作成技術を習得。限られたページを有効に活用するため、更新のたびに古いトピックを削除して新しいトピックを入れるなど苦労しながら運用。日々のページ閲覧数をチェックし、より読まれるサイトにしようと頻繁にレイアウトの見直しも精力的に行った。

操作が簡単なHP作成ソフトに変更 情報発信の幅が飛躍的に広がる


だが、このままでは、近藤清規会長しかホームぺージを作成できない。しかも、負担も大きい。近藤保子社長は「更新などの作業もしてくれる専門の業者への委託も考えました」という。「自分たちの会社のことは自分たちで情報発信したいという思いも強かったんです」と二人は口をそろえた。

そんな中、取引先の地方銀行の支店長との会話が大きな活路となった。

「CSRや働き方改革の整備は進む一方で、社内のICT活用は遅れ気味でした。支店長にそんな相談をしたところ、サポートをしてくれる会社を紹介してくれました」と近藤保子社長は話す。紹介を受けた企業のサポートを受け、課題だったホームページのリニューアルにチャレンジ。操作が簡単なホームページ作成ソフトを新たに導入することにした。

新たな作成ソフトは、従来のサービスのような難しい言語を扱うことは全くない。画像の貼り付けも簡単で、これまでできなかった動画の貼り付けもできる。画面に表示されるホームページそのものを操作する感覚で簡単に画像や文章などを配置でき、文字の大きさや色なども簡単に調整できる。スマートフォン用の画面設定も自動的に対応してくれる。何よりも運用できるページ数が飛躍的に増え、情報発信の幅は大きく広がった。

就職希望の高校生たちに積極アピール 会社を知る「窓口」に


リニューアルの大きな目的は、地元での就職を目指す高校生たちへのアピールだ。

コンドウ印刷が拠点を置く長岡市は毎年2回、地元商工会議所やハローワークなどと連携し、就職希望の高校生に地元企業をマッチングする就職説明会を開催している。コンドウ印刷も例年、このイベントに参加していた。「就職説明会で会社に関心を持った高校生たちに自社のホームページにアクセスして、さらに自社の魅力を理解してもらいたい」(近藤保子社長)。リニューアルは、2月の説明会のタイミングに照準を合わせたそうだ。

高校生の採用ページには若手社員のメッセージも。社員の士気も上がっている。

高校生の採用ページには若手社員のメッセージも。社員の士気も上がっている。


リニューアルの最大の目的である「採用ページ」はこれまでとは比較できないほど充実した内容になった。就職希望者の関心が高い福利厚生や社内制度にも多くのページを割き、先輩社員たちのメッセージを掲載するコーナーも設けた。「働きやすい職場であることをサイト全体にちりばめています」と近藤清規会長は胸を張った。

ベースとなるデザインは、このソフトを開発した会社のデザイナーが担当。デザイナーによる聞き取りには社員たちも参加。社員たちの意見も取り入れた。「働きがいを一緒に!」という採用ページのメッセージはそんな聞き取りから生まれたそうだ。ホームページの運営については、「ゆくゆくは社員たちに運用を任せたい」と近藤保子社長は考えていたが、まさに、社員参加型のホームページ作りへの第一歩となった。

会社がこれまで取り組んできたCSRやSDGsなどの活動や働きやすい職場づくりは、大きなアピールポイントだ。「CSR宣言」と題して、活動内容を9ページに分けて、詳しく紹介している。残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2月の就職説明会は中止となったが、企業の魅力をアピールできる環境は整い、優秀な若手人材の採用にも手ごたえを感じている。

社員の士気にも好影響 「みんなでつくる」環境整う


近藤保子社長はこんなことも話していた。

「このソフトを導入したことが、社員の士気にも好影響を与えています」

導入したソフトには簡単にカタログを作成する機能が付いており、この機能を使って、就職説明会で配布する会社案内のパンフレットを作成した。作成作業に若手社員も参加してもらったところ、これまで会長が作成したものとは、違う感性のパンフレットができたそうだ。

就職説明会で高校生に配布するために作成したパンフレット。3枚折りで手渡しやすいスタイルにリニューアル

就職説明会で高校生に配布するために作成したパンフレット。3枚折りで手渡しやすいスタイルにリニューアル


50代後半の近藤清規会長。「どうしても親目線になってしまう」と笑った。最近、閲覧者の問い合わせに自動対応する「チャットボット」の機能を新たな追加した。「高校生たちがホームページにどんな印象や関心を持っているのか探っています」と近藤清規会長。高校生たちのハートに刺さるホームページづくりに役立てるという。

20代の若手社員はより高校生たちに近い感性を持っている。ネットに身近に接している若手社員たちは他の企業ページなどを参考にしながら意見を提案してくれたそうだ。そんな若手社員の頑張りに触れながら、近藤清規会長は「そろそろ運用を任せてもいいかな」とひそかに考えている。

ホームページは会社の「顔」 ビジネスチャンスつかむきっかけに


今の時代、ホームページは「会社の顔」ともいえる存在だ。ホームページの内容によって会社のイメージが大きく変わる。取引先や社員だけでなく、地域や地元住民など幅広いステークホルダーがその会社を知る窓口になっている。

新潟県長岡市のコンドウ印刷の本社

新潟県長岡市のコンドウ印刷の本社


「この会社はどんな会社なのだろうか」。求人だけでなく、ビジネスマッチングでも最初に関心を持った人は、まずホームページを検索する。その内容が期待に反していれば、その人はその会社をスルーし、別の会社のホームページを探してしまう。

せっかくホームページを開設していても本業が忙しくて、あまり手をかけていないという中小企業経営者はまだ多いが、それでは、せっかくのチャンスを自ら手放しているようなものだ。経営者だけでなく、多くの社員を巻き込んで、自分たちが働く会社をアピールすると、その会社の活気もホームページに現れてくる。コンドウ印刷のチャレンジはぜひ多くの企業経営者が参考にしてほしい取り組みだ。

事業概要

会社名

コンドウ印刷株式会社

本社

新潟県長岡市南陽2-951-12

電話

0258-86-6225

設立

1982年4月

従業員数

22人

事業内容

ラベル・シール印刷

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