流通業(小売)

クラウド型帳票作成システムで作業時間半減 新たな商品開発へ ミネック(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年04月21日 06:00

この記事に書いてあること

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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


香川県発の「峰山ハチミツ」を生産、販売するミネックが、請求書などの帳票作成を効率化するクラウドサービスを積極活用することで、業務効率化とともに新しいビジネスの可能性を広げている。

本社の近くの峰山公園でハチミツを生産するミネック


ミネックの本社は、高松市の市街地に近い石清尾山の山頂に広がる峰山公園の近くにある。直売所や山のふもとのハチの巣箱から収穫したハチミツを材料に季節ごとに新商品を投入し、取引先は香川県の特産品ショップや道の駅など20店以上に広がっている。

峰山公園に置かれたハチの巣箱

峰山公園に置かれたハチの巣箱


花が咲き誇り、ミツバチが舞う峰山公園内は和やかな風景が広がる。その公園の近くにカフェとしての機能を備えたハチミツの直売所を構えている。「峰山公園の景色を見ながら飲み物やソフトクリームを味わっていただけるようにしています。ダイレクトに伝わるお客様の声や反応は、新しい商品を企画する上で非常に役立っています」。ミネックの経理担当として夫の天野洋平社長を支える天野綾子さんは、朗らかに話した。

巣箱の近くでハチが舞う様子

巣箱の近くでハチが舞う様子

本業の設備管理業から養蜂(ようほう)業にチャレンジ


順調に拡大している養蜂事業だが、ミネックの本業は浄化槽の設備管理だ。十数年前、岐阜県の健康食品会社に勤めていた天野社長が父親から事業を引き継ぐにあたり、新たな収益の柱にすることを目指して養蜂業への参入を決めたという。

「設備管理と養蜂。異色の組み合わせですが、夫も私も新しいことにチャレンジするのが好きなんです。設備管理は安定したビジネスですが、将来、どのような経営環境の変化が起こるかわかりません。収益源が多様化していた方が企業として生き残る確率は高まります」。天野さんは、養蜂業に取り組む狙いについてそのように説明した。

天野綾子さん

天野綾子さん


設備管理と養蜂で業務内容は大きく異なるが14人の社員全員で横断的に取り組むようにしている。異なる仕事を経験することで、幅広い視野が養えることに加え、企画力や提案力の向上などさまざまな効果を見込むことができる。

養蜂業は新規参入が難しいとされているが、天野社長の会社員時代の経験、知識が大いに活かされた。また、峰山には蜜源となる花が豊富に咲いているなど養蜂業を営む条件が整っている。自然に恵まれた峰山の地域資源を活用したさまざまな事業を展開することもできる。

「最初は受粉事業に専念しようと考えていたのですが、巣箱を置いて試験的にハチミツを生産したところ、非常においしいものが出来上がりました。これなら自分たちでこだわって商品化した方がお客さんに喜んでもらえると思ったんです」と天野さんは振り返った。2年かけて準備を進め、2014年からハチミツの生産、販売に本格的に乗り出した。「峰山ハチミツ」のブランドで季節ごとに味や香り、風味も異なるハチミツを販売し、生産者、生産場所、獲れた時期を明確に表示している。徐々に取引先を拡大する一方、社員全員でアイデアを出し合って、ハチミツを使ったナッツ漬けやハンドクリーム、ミツロウワックス、キャンディ、みかんジュースといった商品を開発していった。

ハチミツを材料に開発したさまざまな商品

ハチミツを材料に開発したさまざまな商品

事業拡大に伴って帳票作成の負担も増加した


取引先や扱う商品数が増えるにしたがって、見積書、納品書、請求書の作成に時間を取られるようになっていった。更に2019年10月から消費税が10%に引き上げられる一方で、食料品には8%の軽減税率が適用されることが決まった。商品や販売方法によって異なる税率に対応するため作成作業が煩雑になるのは目に見えていた。「業務内容が違うので設備管理事業のシステムを養蜂事業に使うことはできません。そこで、先を見据えて養蜂事業専用に作業を効率化できるシステムを導入することにしたんです」と天野さんは説明した。

帳簿作成システムで見積書をワンタッチで請求書に変換


消費税が切り替わる1カ月前に請求書作成や入金管理を効率化するクラウドサービスを導入したところ、当初想定していた以上に業務効率化が進んだという。

「以前は見積書を作成して納品が決まってからもう一度、同じ手間をかけて請求書を作成しなければなりませんでした。それが今は、見積書を作成するとワンタッチで請求書に変換できるようになったので、請求書の作成に使っていた時間は導入前の半分以下になりました。異なる税率もあらかじめ設定しておけばシステムが計算してくれます。ミスが起きやすく神経をつかう作業をシステムに任せることができるのは本当にありがたいですね」と天野さん。

クラウドサービスで請求書を作成する様子

クラウドサービスで請求書を作成する様子


オフィスのパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末でもクラウドにアクセスできるので、外出先でも請求書を作成できるようになった。「テレワークが広がる中、請求書を郵送ではなくデータで送ってほしいというお客様も増えているので、素早いレスポンスをする上で、大きな効果を発揮してくれています。隙間時間を上手に使って作業ができるので、空いた時間をほかの作業に回すことができるようになりました。気持ちに余裕がでることで新しい企画にも取り組みやすくなりました」(天野さん)。

請求データの一覧で、入金確認も一覧で把握できる


入金確認も以前は、銀行通帳の入金状況とエクセルで作成した請求書を1件ずつ確認していたため時間がかかっていたが、今は請求データの一覧を見るだけで状況を一目で把握できるようになった。設定した締め切りを過ぎても入金がない請求先は赤く表示されるので、未入金の把握もしやすいという。入金が完了した後の消込もワンタッチで済ませることができる。検索もしやすいので、久しぶりに注文があった取引先のデータもすぐに引き出すことができるという。

ミネックのオフィスの様子(手前に複合機、正面に社員のスケジュールを表示した電子黒板)

ミネックのオフィスの様子(手前に複合機、正面に社員のスケジュールを表示した電子黒板)

デジタル時代に備えてオフィスをリノベーション


2019年に、デジタル時代に対応したより働きやすいオフィスにするため、社員のスケジュール表の表示など多目的に活用できるテレビモニターを設置するなどリノベーションを行った。新型コロナウィルスの感染防止対策として、2020年4月から、テレワークの導入や勤務場所の分散を行ったことで、一時は社員間の情報共有がしにくい状況が生まれたが、デジタルに先行投資していたことが奏功し、すぐにカバーすることができたという。「コロナ禍によって以前より効率よく仕事ができる体制を作ることができました」と天野さん。恵まれた自然とICT環境を両立したミネックのオフィスは、DXの新しい時代を象徴する働き場所といえるかもしれない。

「攻め」の業務にもICTを活用


新しい取り組みの一つとして日本酒の蔵元と連携し、ミードと呼ばれるハチミツを発酵させて作るアルコール商品を開発した。甘くてすっきりした味わいが特徴で5月から発売する予定だ。「養蜂業とともに、自然体験やスポーツなどを通じて地域の子どもたちの成長を手助けする事業も展開していきたいと思っています。ホームページを活用した商品情報の発信とネット通販にも力を入れていきたい」と天野さんは先を見据える。

ミネックの本社外観

ミネックの本社外観


業務の効率化に取り組む「守り」だけでなく、「攻め」にもICTを活用しようとしているミネックの姿勢にこれからの大きな可能性を感じた。

事業概要

会社名

株式会社ミネック

本社

香川県高松市峰山町1837番地

電話

087-861-6200

設立

1981年7月

従業員数

14人

事業内容

浄化槽点検・管工事事業、養蜂事業

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