製造業(その他)

二歩先を目指す段ボールメーカーが、「おもしろい+クラウド・3D-CAD」で次の展開へ FUJIDAN(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年05月20日 06:00

この記事に書いてあること

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FUJIDAN(フジダン)は香川県東かがわ市に拠点を置く段ボールメーカーだ。本田展稔社長の指揮の下、「おもしろいで未来を拓く、スピードで他社に差をつけろ」を行動指針に、他社が思いつかない、やっていない製品開発と販売先開拓に力を入れている。ICTを活用することで、その取り組みをさらに強化しようとしている。

おもしろさとスピード重視で新規事業を生み出す


その大きな成果の一つが、段ボールのデザインや段ボールを使った工作キットの販売、集客イベントの企画に取り組んでいる関連企業、hacomo(ハコモ)。工作が大好きな社員が発案してスタートした会社。企業間取引が中心の段ボール業界の中で、消費者向けの商材を扱う企業として存在感が高まっている。TOPの写真は、hacomoが企画して全国の博物館や美術館などのイベントで展示している段ボールで作った作品。工作キットでは年間何千個も売れるシリーズも出ている。
「hacomoはFUJIDANのおもしろさを体現してくれています。ひとつひとつの商品の販売額は小さいのですが、大きな情報発信効果を発揮してくれています」と長谷川満経営戦略室長は話した。

「段ボールの国内市場は飽和状態で、大企業を含む他社との競争は激しさを増しています。一般的な段ボールを作っているだけでは価格競争に巻き込まれ、結局は消耗してしまいます。他社が思いつかない発想とスピードを武器に、一歩先ではなく二歩先を行くことを目指して事業に取り組んでいます」。東かがわ市の自然に恵まれた環境に立地する本社・工場で長谷川室長はFUJIDANの考え方を説明した。

FUJIDANの本社工場

FUJIDANの本社工場

キャラクターを作ってユーチューブで動画配信

Youtubeで発信 70歳が近い段ロボしゃちょー(上の写真)がレーシングカートで大爆走(下の写真)(2021年1月)
Youtubeで発信 70歳が近い段ロボしゃちょー(上の写真)がレーシングカートで大爆走(下の写真)(2021年1月)

Youtubeで発信 70歳が近い段ロボしゃちょー(上の写真)がレーシングカートで大爆走(下の写真)(2021年1月)


情報発信に積極的で、Youtubeの動画配信に力を入れている。Youtube用に段ボールをモチーフにしたキャラクター「段ロボしゃちょー」を考案し、本田社長自らが着ぐるみを着て動画に登場することも。「段ボールの積み上げに挑戦するといった動画の企画は社員全員でアイデアを出して考えています。新しいことにチャレンジする会社と思っていただけたらうれしいです」と長谷川室長はにこやかに話した。
実際、Youtubeでの発信もあり、自由な社風と社員を大切にする姿勢が伝わり、若手社員の採用も順調に伸びている。

健康経営にも積極的に取り組む

食堂からは、四季を感じる自然の風景が眺められ、春には「たけのこ掘り」も出来る

食堂からは、四季を感じる自然の風景が眺められ、春には「たけのこ掘り」も出来る


創業から事業を営んでいる東かがわ市内で、2016年に旧本社工場の2.5倍となる新本社工場を建設した。「ロケーションとして一番いい場所に社員が使う食堂を配置しています」と長谷川室長。食堂は社員のなごみの場の他に、社員を対象にした健康講座や健康体操の会場としても使用されるなど健康的な労働環境を整える健康経営を象徴する場にもなっている。

ロボットによる工場作業の負担軽減とIoT化へ

自社開発した無人段ボール供給ロボット「ロボットフィーダー®」

自社開発した無人段ボール供給ロボット「ロボットフィーダー®」


工場内は、独自開発した段ボールをまとめて生産機械へ供給するロボットをはじめ、全長50メートルに達する最新の5色印刷機、細かい加工を可能にするレーザー加工機などの設備が並び、近未来のような光景が広がる。「ロボットは社員を重労働から解放したいという思いから導入しているのですが、結果として生産性の向上に大きく貢献してくれています。ロボットの活用はこれからも進めていく予定です」と長谷川室長は話した。

現在、工場での生産性向上のためにRFIDの導入に取り組んでいる。製品タグをRFIDにすることで出荷時のピックアップ作業の大幅効率化を狙っている。

特殊強化段ボール、貼箱の販売に注力 消費者向け商品も


数トンの重量物を梱包可能な特殊強化段ボールの販売に力を入れている。国連のSDGs(持続可能な開発目標)に対応するため、瀬戸内海の重工業地帯では輸出向け製品の梱包に、環境に配慮した素材を使う動きが加速しており、「リサイクルの優等生」といわれる段ボールにとって追い風になっている。

特殊強化段ボールパレット

特殊強化段ボールパレット


和菓子などで用いられる高級感のあるパッケージ、貼箱にも注力する。貼箱は、付加価値が高い商品の包装材として一定の需要がある一方で、生産をやめる業者が増えている。競合相手が減る状況を商機ととらえ、香川県の特産品、和三盆糖向けの小箱を中心に、新しい需要を掘り起こそうと飲料向けなどさまざまな用途開発を行っている。

貼箱の商品写真

貼箱の商品写真

紙中心のワークフローを変えたかった


先を見据えたさまざまな取り組みを進めるFUJIDANにとって、業界の長年の慣習から申請業務や社員のスケジュール管理が紙文書中心であることが大きな課題だった。加えて、当時使っていた総務・営業系のシステムは、コストがかさむ上に汎用性が低いこともあって使い勝手が悪かったという。

「業務を進める上で大きな支障があったわけではないのですが、先のことを考えて、これまで以上のスピードで意思決定できる体制を整える必要がありました。そこで着目したのがクラウドサービスの活用でした」と長谷川室長は説明した。

クラウドサービス活用で業務をスピード化


2020年秋から本格的な検討を始め、2021年春に、会社ごとの業務内容に合わせてシステムを構築できるクラウドサービスを導入。残業や休暇などの申請、営業担当者の日報、スケジュール管理の各業務について、パソコンやスマートフォンといった端末を通じて情報の共有や決裁ができるようにシステムを組み立てた。システム担当の大木力さんは「テンプレートの種類が豊富でアレンジもしやすかったので、大きな苦労をすることなく営業と総務部門のシステムを構築することができました」と振り返った。

システム導入と活用は長谷川室長(右)と大木さん(左)の二人三脚で進めている

システム導入と活用は長谷川室長(右)と大木さん(左)の二人三脚で進めている


クラウドサービスの活用は、コストとスピード化の両面で効果を生んだ。「1日あたり数十件にのぼる申請案件はすべて社長が決裁しています。以前は出張などで外出するとその日のうちに決裁いただけないこともあったのですが、今はどこからでもシステムにアクセスできるので即日決裁が可能になりました。使い勝手が大幅に上昇したうえ、従来利用していたシステムを新たなクラウドサービスに変更することで月次費用も3分の1程度になりましたし、紙の使用も減りました」と長谷川室長は話した。
更に活用が進めば、仕事の見える化が進み、開かれた社風から様々な提案や改善策が生まれ成長への原動力となっていくだろう。鬼に金棒という言葉があるがFUJIDANにとっては、開かれた社風、社長自らが新たなチャレンジをする会社、そこに格好の道具(クラウドサービス)を手に入れたと言える。

3D-CADで納期までの期間が半分 顧客の信頼アップ


同時にもうひとつ導入したのが、営業マンが使う3D-CAD。数百種類にのぼる段ボールの精巧な立体図を設計できる。以前は、顧客の会社や工場を訪問し、段ボールで梱包する製品や商品を採寸した後、本社に戻り、簡単な製図ソフトで図面を作成した上で再度訪問しなければならなかった。修正があればまた帰社してやり直して後日持っていくという非常に手間のかかる仕事だった。もちろん顧客もその都度対応するのでお互いに貴重な時間を図面のやり取りに費やしていた。しかし、導入後そのプロセスは大きく変わった。顧客にパソコンやタブレットで立体図を見てもらうことで、イメージを共有しながら寸法変更など細かい調整がその場でできるようになった。商談後、3D‐CADのデータを本社に送信すれば仕事が完了するのでわざわざ戻る必要もなくなった。

「訪問回数やお客様に対応していただく時間を減らすことができただけでなく、膨大な紙の資料を持っていく必要もなくなりました。商談に入ってから納品までに要する期間は以前の半分程度になり、生まれた時間で、お客様と今後の商品企画の話をする余裕も生まれました。もちろん新たなお客様の開拓に向けることができるようにもなりました。本社に持ち帰っていた仕事がどこでもできるようになったので直行直帰が可能になり、残業時間も減少しています」と長谷川室長はうれしそうに話した。

3D CAD宙吊り梱包提案

3D CAD宙吊り梱包提案


3D-CADは現在力を入れている特殊強化段ボールの営業担当が活用している。世界ではアフターコロナに向けた経済活動が再開され、輸出品に使用されることが多い特殊強化段ボールの受注はコロナ禍前を上回る水準で伸びている。これから積極的な営業活用を展開していく上で3D‐CADは大きな武器になる。顧客とイメージをリアルタイムで共有できるのは大きな強みだ。思い描いていたものがすぐに形になることで顧客の満足度と信頼が大幅に向上する。

今後FUJIDANは、GPSを活用した物流管理も考えていきたいという。特殊強化段ボールと貼箱を中心に事業者向けのECサイトの構築も検討している。ICTを活用することでFUJIDANはその特色をさらに強化していくに違いない。

事業概要

会社名

株式会社FUJIDAN

本社

香川県東かがわ市白鳥1820

電話

0879-25-2381

設立

1957年3月

従業員数

115人

事業内容

段ボールケース製造・販売、特殊三層段ボール製造・販売、印刷紙器、包装資材、包装機器企画・販売、パッケージコンサルタント

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