建設業(設備)

セキュリティを強化したネットワークサーバーで本社と拠点の情報を共有 無駄な作業の削減に成功した 高橋造園(香川県)

From: 中小企業応援サイト

2022年07月20日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

香川県丸亀市の高橋造園が、本社と運営を担う公園の事務所との情報共有やセキュリティ強化にICTを積極活用している。公の業務に携わる企業として社会的責任を果たしたいとの思いが、その活用の原動力になっている。

45年以上にわたって人と環境を調和させる仕事に取り組む

現存12天守のひとつとして知られる丸亀城、讃岐富士と呼ばれる飯野山など、歴史や自然の資産に恵まれた香川県中西部の丸亀市。同市内の閑静な住宅街の一角に高橋造園は本社を構えている。「父親の代から45年以上にわたって人と自然が相手の仕事に取り組んでいます。樹木、石、土など自然の材料を通じて皆様に心の和みを提供したいという思いで事業を続けています」。6月上旬、本社で取材に応じた高橋成法(しげのり)社長は、事業への思いを穏やかな表情で話した。

デジタルとアナログをバランスよく活用

高橋社長は、本社社屋を2020年9月に新築するにあたり、デジタル時代に対応できるようにオフィスのネットワーク環境を整えるだけでなく、社員が対面でコミュニケーションを取りやすいようにレイアウトを工夫したという。「デジタルとアナログをバランスよく活用することを心掛けています。社員みんなが働きやすい場所にしたいと思い、デザインしました」と高橋社長。地域貢献への思いから本社は、子どもたちの安全確保に協力する丸亀市の「こどもSOS」にも登録している。

高橋造園の外観

高橋造園の外観

2011年から香川県満濃池森林公園の指定管理運営を受託

設立当初は個人住宅の庭園づくりを主力事業にしていた高橋造園は、10年以上前から公園の指定管理業務の受注に力を入れてきた。「より広く地域に貢献したいという思いで取り組んでいます」と高橋社長は話す。公共分野の仕事を請け負うにあたり、企業としての社会的責任を常に意識しているという。「企業が存続していくには、社会に必要とされる存在にならなければなりません。デジタル技術は、取引先や地域の人々の役に立つからこそ使っていきたいと思っています」

高橋造園が所属する香川県造園事業協同組合が、2011年から、香川県の選定を受け、仲多度郡まんのう町にある香川県満濃池森林公園の指定管理運営を担っている。その業務において管理運営責任会社として申請から実務のほぼすべてを同社が行っている。同公園は空海ゆかりの満濃池の西南岸に位置し、広さ約64ヘクタール。自然豊かな遊歩道をはじめ、緑の広場、森林学習展示館、森林の館、野鳥の森、ファミリー広場などを備えた県民にとっての憩いの場所だ。広大な公園の維持、管理だけでなく、集客イベントの企画や情報発信まで業務内容は幅広い。

満濃池森林公園内の第2運動広場(撮影者:高橋社長)

満濃池森林公園内の第2運動広場(撮影者:高橋社長)

満濃池森林公園内のファミリー広場(撮影者:高橋社長)

満濃池森林公園内のファミリー広場(撮影者:高橋社長)

「公園の指定管理業務は会社としてはじめての経験でした。書類の作成や、ホームページを通じた情報発信、マスコミへの対応などこれまで経験したことがなかった業務が多く、当初は大変でしたが、社員は仕事を通じて大きく成長してくれました。公園を支えてくれているボランティアの方々をはじめ、従来の事業では知り合えなかった多くの方とネットワークを作ることもできました。新しい取り組みに挑戦して本当によかったと思っています」と高橋社長は満足そうに話した。

十数キロ離れた本社と公園事務所の情報共有が課題だった

公園事務所と本社は十数キロ離れており、公園事務所に勤務する社員の勤怠管理や給与計算、報告書の作成といった業務は公園事務所で行っている。以前は本社と公園事務所のハードディスクがそれぞれ独立していたため情報が共有できず、業務データは、月末に公園事務所からメールで送ってもらうなどして本社で集約していた。作業は1ヶ月分をまとめて行っていたため、電話などで確認しなければならないことも多く、月あたり3日程度割かれていたという。

外とつながるネットワークサーバーが月末の情報集約作業を解消した

その課題を解決するために1年前に導入したのが、アプリを利用することで離れた場所から本社のハードディスクの情報にアクセスすることができるNAS(ネットワーク接続型ストレージ)だ。社員は与えられた権限に応じて、本社の内外で文書や写真などの情報を見ることができる。「私自身も外出時、空いた時間にノートパソコンから本社にアクセスして決済などの業務をこなせるので非常に助かっています。以前はパソコン別に行っていたデータのバックアップもまとめてできるようになりました」(高橋社長)。

本社に設置しているNAS

本社に設置しているNAS

新しいNASの導入後、本社と公園事務所の担当者は、日常的にWeb会議システムを併用し、文書を共有しながら打ち合わせができるようになった。「不明な点があるとその場で確認して業務が完了するので、月末にまとめて情報を集約する必要がなくなりました。時間の隔たりがあると改めて確認しなければならないことがどうしても増えますし、それが積み重なって大きな時間のロスになっていたことが、便利になることで改めてよくわかりました。業務を効率化することで生まれた時間を公園の運営に向けることで、これまで以上に利用者に満足してもらえるようにしていきたい」と高橋社長は話した。

導入したNASは、アプリを使うだけで、保存しているデータにアクセスできるので、VPN(専用のネットワーク回線)を構築する必要がなく、時間と費用を節約することもできたのもありがたかったという。

巧妙化するサイバー犯罪に対応 UTMを導入してセキュリティを強化

NASの導入とあわせて行ったのがセキュリティの強化だ。これまでも対策は行っていたが、公共の仕事に関わる企業として更にしっかりと対処しておく必要があると考え、不正アクセスの侵入を防ぐファイアウォールの機能に加え、ウイルス対策ソフト、Webフィルタリング、不正侵入防御、不正侵入検知といったさまざまな機能を備えた「UTM(統合脅威管理)」と呼ばれるシステムを導入した。

「これまでコンピューターウイルスの被害を受けたことはありませんが、サイバー犯罪は複雑かつ巧妙化し、役所や大企業だけでなく中小企業が標的になるケースも増えています。知らない間にウイルスに感染してしまうと取引先に大きな迷惑をかけることになってしまいます。十分な備えをしておけば余計な心配をすることも減りますし、その分、仕事に専念できます」と高橋社長はセキュリティについての考えを示した。

将来を見据えて農業にも取り組む ICTに精通していることが強みになる

高橋造園は、2010年から県の認可を受けて農業事業にも参入している。農地を借りて田んぼをつくり、減農薬仕様のヒノヒカリを栽培している。「農業はあらゆる産業の基盤と思っています。しかし、後継者不足に悩む農家が多いなどさまざまな課題があり、事業を通じてその解決に少しでも役に立つことができればと思っています。今は、私の趣味の延長のようなものですが、先を見据えて地道に取り組んでいこうと思っています」と高橋社長は和やかな表情で話した。

高橋造園

公共の仕事に携わる責任感を胸にICTの活用を続ける高橋造園。その思いがこれからも会社の成長を支えていくに違いない。

また、これからの農業はICTとAIの組み合わせで劇的に変化する業界と言われている。高橋社長のような社会的な志とデジタルに強い人が担うにふさわしいジャンルだ。

事業概要

会社名

株式会社 高橋造園

本社

香川県丸亀市三条町1349番地3

電話

0877-24-1182

設立

1971年4月

従業員数

12人

事業内容

造園の設計・施工及び土木構造物の施工(ISO9001 14001)、指定管理者事業/p>

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