
ドライブレコーダー、NAS、アプリの合わせ技で遠隔点呼 低コストで現場に負担をかけない仕組みを実現 四国ロジテック(香川県)
2022年07月22日 06:00
この記事に書いてあること
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。
陸送事業を手掛ける香川県の四国ロジテックが、複数のデジタル技術を組み合わせて、陸送業者に必要な点呼業務を遠隔で行っている。独自の工夫でコストと現場への負担をかけずに大きな効果を生み出している。
大型車両を目的地に送り届ける
四国ロジテックは、日野自動車が生産する大型車両の陸送を中心事業とする千代田運輸(本社・東京都日野市)の四国エリアを管轄する子会社だ。所属するドライバーが、トラックやバスなど大型車両の新車・中古車を運転して指定された場所まで安全に届けることを業務内容にしている。香川県高松市内のオフィス街に本社を置き、高知市内に営業所を構える。
社員の8割はドライバー 本社が運行管理を担う
四国ロジテックの社員の8割はドライバーだ。ドライバーは、日野自動車や用途に合わせて車両を改造する架装メーカーの工場などに赴いて車両に乗り込み、目的地に向かう。ドライバーへの陸送手配や運行管理を行うのが本社の仕事だ。
「大型車両の運転には高い技能が必要です。経験の浅い人が習熟するまで、最低1年以上はかかります。臨時雇いでは勤まりにくい業務内容なので、ドライバーはみんな正社員として採用しています」。6月中旬、本社に取材に訪れた際、経営方針を説明しながら栁本二三男(やなぎもと ふみお)社長はそう話した。栁本社長自身、トラックドライバーとして約20年の実績を持っている。「魅了されてしまうとなかなか離れられないのがドライバーの仕事です。我が社のドライバーも長い運転歴を持つベテランが多いんです」

栁本二三男社長
業界の模範になるよう安全管理を重視 定期的に研修会を開催
千代田運輸の創業者、水野勉氏は業界団体の一般社団法人日本陸送協会を設立した人物として知られている。そのため、千代田運輸のグループ企業は業界の模範になるように、同業他社以上に安全管理を強く意識しているという。グループ全体やエリアごとに運行管理者、ドライバーが一堂に集まって安全運転について学ぶ研修会を定期的に開催しているほか、新人やベテランなど経歴に合わせた研修やエコドライブの研修も行っている。コロナ禍においてオンライン研修も盛んに行われるようになっているという。
事故のリスクを減らし、自らの安全を守る独自のドライブレコーダーを導入
安全のためのICT導入にも積極的だ。5年前、NTTの協力を受けて開発した通信機能付きのドライブレコーダーをグループ全社で導入した。ドライブレコーダーには、急ブレーキを踏むなどの危険な行為を感知すると、運行管理者にデータが自動的に転送されるシステムが備わっている。記録した運行履歴を基に診断が行われ、その結果はドライバーと運行管理者にフィードバックされる。大型車両で走る際に注意を要する場所やドライバーの運転癖も分析できるという。「安全、安心な運転の徹底は、ドライバー自身のためであると同時に社会のためでもあります。このことをドライバーには強く意識してもらうようにしています」と栁本社長は話した。

四国ロジテックが活用しているドライブレコーダー
四国ロジテックの本社ではドライブレコーダーを通じて、ドライバーが運転している車両がどの地点を走っているのかをパソコンで確認している。「ドライブレコーダーを持っていくのは荷物になるし、自らの運転が可視化されるため、ドライバーたちは最初、それほど乗り気ではなかったのですが、使い始めると、事故のリスクを減らし自らの安全を守るシステムであることを理解してくれました。我々にとってもドライバーを見守る上で必要不可欠なシステムになっています」と栁本社長は述べた。
陸送業に必要不可欠な点呼業務にかかる負担は大きかった
安全運転の意識を高めるために運行管理者がドライバーに対して実施する点呼は、陸送業者にとって必要不可欠な業務だ。点呼は、出発前と目的地への到着後、遠距離陸送の場合は中間地点でも行わなくてはならない。以前は、携帯電話を通じて口頭で行っていたため時間がかかり、ドライバーと本社の運行管理者の双方に負担が掛かっていた。また、一定期間の保存が必要な記録も、口頭でのやりとりを基に用紙に書きこむ手間が発生していた。
「顧客の依頼に合わせるためドライバーの出発時間や到着時間はまちまちです。運行管理者はドライバーの行動に合わせる必要があるので、その都度、時間を割かれていました」と栁本社長は振り返った。

無停電電源システム(手前)とセットになったNAS。アプリを通じて外部から画像などを送信できる
現場に負担がかからず記録を残せる遠隔点呼を導入
この課題を解決してくれるのが、普段活用しているドライブレコーダーに、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)とスマートフォン用アプリを組み合わせた四国ロジテック独自の遠隔点呼システムだ。昨秋の導入以来、点呼業務にかかる社員の負担が大幅に減っただけでなく、記録をしっかりと残す「見える化」に大きな効果を発揮している。
ドライバーにはそれぞれの名前を記入した点呼確認表を配布している。点呼確認表には、十分な睡眠、体温、アルコールチェック、目まい・頭痛・吐き気・腹痛の有無、身体の異常、通常運行への支障の有無の6項目が記載されている。ドライバーは、それぞれの項目に回答を書き込んだ上で、体温計・アルコールチェッカーとセットでスマートフォンで撮影するだけで業務を終えることができる。

ドライバーが点呼業務のために送信してきた写真
アプリを起動して撮影するだけで業務が完了
アプリを起動して撮影すれば、そのまま本社のNASに転送され、日付ごとのファイルに保存されるので、メールに写真を添付して送信するといった作業の必要もない。点呼確認表にはラミネート加工が施され、書き込んだ後、拭くだけで何度でも繰り返し使うことができる。撮影した時間と場所は通信型のドライブレコーダーで証明することができるので、データそのものが記録にもなる。
現場を重視したからこそアイデアが生まれた
さまざまな機器やアプリの合わせ技は栁本社長の発案だ。昨年7月、サポート期限を迎えたNASを最新機種に更新したところ、NASと連動してスマホで文書や画像を共有できるアプリを無料で利用できることに気付いたという。

四国ロジテックのオフィスの様子
「アプリの機能を知った時、『これは遠隔点呼に使える』とひらめいたんです。私自身はそれほどICTに詳しいわけではないので、知識が豊富な取引先から情報を集め、試行錯誤しながら今の方式にしていきました。アナログをデジタルに無理やりくっつけるこの方法がうまくいくか最初は不安もあったのですが、システム会社の協力のおかげで形にすることができました」と栁本社長は明るい表情で話した。
ICTでドライバーが運転に集中できる環境を作る
遠隔点呼の導入にあたり、栁本社長は当初、最新型のIT点呼システムの導入を検討していた。既に活用しているグループ会社を視察するなど情報を集めた結果、機器の使用方法など覚えなければならないことが多く現場の負担が大きいと考え、導入を見送った。栁本社長自身、自らの経験から大型車両を陸送するドライバーの心身にかかる負担をよく分かっているだけに、ICTを活用した点呼業務を現場がなじみやすい簡単な方法にしたかったという。
「運転以外の業務が増えれば増えるほど集中力が削がれるので、その分、事故を起こすリスクは高くなります。運転に意識を集中してもらうには、それ以外の業務の簡素化が必要不可欠と思っています。ドライバーが安全かつ安心して運転に集中できる環境を作ることが社長としての大切な仕事だと思っています。今回の経験を通じてICTが便利なものであることを実感できたので、次の活用を考えていきたい」と栁本社長は先を見据えている。

四国ロジテックが入居しているビル
栁本社長の現場への思いが、既存の技術を組み合わせて、コストをかけずに仕組みを作り出す発想につながった。四国ロジテックの取り組みを通じて、トップの現場感覚がICTの活用にいかに重要かを再認識することができた。四国ロジテックが次にどのようなICTの活用方法を考え出すのか、今後が楽しみだ。
事業概要
会社名
株式会社四国ロジテック
本社
香川県高松市丸の内13-22
電話
087-822-5955
設立
1997年12月
従業員数
24人
事業内容
トラック、バスなど大型車両の運送
記事タイトルとURLをコピーしました!